グラベルガーデンというガーデンスタイルをご存じですか? グラベルガーデンとは、土壌に砂利を使用している庭のこと。手入れが比較的ラクで水やりにかかるコストも削減できるため、近年ますます注目されています。この記事では、その特徴やつくり方、またグラベルガーデンに適した植物についてご紹介します。
目次
グラベルガーデンとは
グラベルガーデンとは、どのような庭なのでしょうか。まずは、その特徴について解説します。
グラベルガーデンの概要
グラベルとは砂利のことで、グラベルガーデンとはその言葉どおり、砂利を敷いて植栽している庭のことです。乾燥した環境を好む植物を植えるのに適したガーデンスタイルで、通常の庭に比べてあまり手間がかからない、ローメンテナンスガーデンといわれています。特に、暑くて乾燥しやすい場所や日当たりのよい場所が、グラベルガーデンに最適です。
グラベルガーデンのメリット
グラベルガーデンにすれば、肥沃な土壌でなくても豊かな庭をつくることが可能です。雑草が旺盛にはびこりにくいため、手間が省けますし、乾燥に強い植物を選ぶので、頻繁な水やりの必要もなくなります。メンテナンスが楽で水の節約にもつながるうえ、芝生よりも安価。クールでスタイリッシュな庭づくりができます。
グラベルガーデンのつくり方
メンテナンスの手間が比較的かからないグラベルガーデン。とはいっても、自宅の庭につくることが可能か、気になっている方も多いのではないでしょうか。じつは、グラベルガーデンはDIYすることもできます。ここからは、グラベルガーデンの基本のつくり方についてご紹介します。
1.場所を選び準備する
まずは、敷地の中でグラベルガーデンをつくる場所を選びます。理想的な環境は、日当たりがよく、土壌の水はけがよい場所です。庭の一部をグラベルガーデンにする場合は、つくる位置と広さを決めましょう。
そこに雑草が生えている場合は、すべての草を抜くか、短期間で効き影響が残らない除草剤をまくなどして着手前に処理をしておきましょう。その後、表土が平らになるように整地します。
2.境界を作る
庭の一部分だけをグラベルガーデンにする場合は、仕切りを設けます。レンガや石などを利用して境界を縁取ることで、庭が引き締まって見え、砂利があちこちに広がるのも防げます。これにより、庭全体のバランスを保ちつつ、グラベルガーデンのエリアを見栄えよくすることができます。
3.砂利を敷く
砂利だけでもある程度雑草を防ぐ効果はありますが、防草シートを利用するとより効果的に雑草対策ができます。その場合は、まずグラベルガーデンのエリア全体に防草シートを敷き、その上に砂利を広げていきます。砂利の色や形は、家や庭の雰囲気に合わせてお好みのものを選びましょう。サイズは小粒のものが管理しやすく、特に石英や花崗岩がおすすめです。
グラベルガーデンにしたいスペースが広い場合は、予定の高さに印をつけた杭を一定間隔で打ち込んでおくと、砂利を均等に敷く際の目安になります。
4.植物を植える
砂利が均等に敷けたら植物を植えます。乾燥に強く、深く根を張る植物を選びましょう。おすすめの植物の種類については後述します。
植物を植え付ける前に、成長後のサイズを考慮して配置を決めます。位置が決まったら、砂利を掘って苗を植えます。乾燥を好む植物が多いグラベルガーデンでは、土の代わりに砂利を使うのが基本ですが、植え穴に水はけのよい土を入れたり、植物の種類によっては防草シートに穴をあけて植え穴を掘ってから植栽するとよいでしょう。植栽を終えたら砂利を整えます。
5.根付くまで水やりをする
植えた植物が根付くまでは、たっぷりと水をやります。その間、植物の様子をよく観察し、しっかりと根付いたら、水やりの回数を減らします。植物の葉が変色したり、しおれたりしている場合は水不足のサインなので、水を補ってやりましょう。
グラベルガーデンで必要なお手入れとは
グラベルガーデンは、メンテナンスの手間があまりかからないという利点があります。しかし、美しい庭を保つためには最低限のお手入れが必要です。
庭に木々が生えている場合は、砂利の上に落ち葉がたまることがあります。その場合は、レーキなどでかき集めるか、ガーデンブロワーを使って吹き飛ばすと効率よく落ち葉を取り除くことができます。また、防草シートを敷いていても雑草が生えてくることがありますので、小さいうちに適宜抜くことが必要です。
時間が経つと砂利が薄くまばらになることがあります。その場合は、必要に応じて砂利を補充します。
グラベルガーデンに適した植物
グラベルガーデンには、乾燥に強く根がしっかりと張る植物が適しています。
ここでは、グラベルガーデンにおすすめの代表的な植物をご紹介します。
ラベンダー
ラベンダーは、シソ科ラベンダー属(Lavandula属)の植物の総称です。4〜7月に紫色の花を咲かせるハーブの仲間で、品種によっては四季咲き系もあります。花は香りがよく、ポプリなどにして楽しむこともできます。
日当たりがよく風通しのよい、乾燥した場所を好み、過湿を嫌います。温暖地で植える場合は、耐暑性の強いラバンディン系やフレンチラベンダー系を選ぶのがおすすめです。
ラムズイヤー
ラムズイヤー(Stachys byzantina)は、シソ科イヌゴマ属の多年草です。
香りがあり、ハーブとして利用されることもあります。ビロードのようなふわふわした柔らかな肌触りの葉が特徴で、初夏にはピンクや紫の小さな花を咲かせます。その美しいシルバーグリーンの色合いから、カラーリーフとしても高い人気があります。
エキナセア
エキナセアは、キク科エキナセア属(Echinacea属)の植物の総称です。6月中旬から8月にかけて、中心部が丸く盛り上がり、花弁が放射状に広がる花を咲かせます。花色は赤やピンク、オレンジ、黄、白、緑などさまざまです。
花後はこまめにカットすることが必要です。また、枯れた下葉も整理して株元の風通しをよくしましょう。
キャットミント
キャットミントはシソ科ネペタ属の園芸品種で、学名はNepeta ×faasseniiです。多くの種類があるネペタ属の中でも、日本で広く普及している品種です。
開花期は4〜10月で、青紫やピンク、白の花を長く楽しむことができます。暑さにも乾燥にも強い性質ですが、高温多湿には弱いです。生育旺盛でこんもりと茂りますが、梅雨から夏の間には短く切り戻して風通しをよくしましょう。
セダム
セダムはベンケイソウ科セダム属(Sedum属)に属する多肉植物の総称で、非常にたくさんの種類があります。開花時期や花色はさまざまですが、初夏に黄色い花を咲かせるものが多いです。
セダムには上に伸びるタイプと横に広がるタイプがあります。上に伸びるタイプは伸びすぎたら適度な位置で剪定しましょう。一方、横に広がるタイプは、蒸れを防止するために込み入った枝をすかすように剪定することが必要です。
グラベルガーデンが楽しめるスポット
グラベルガーデンを見られる場所は、国内外にたくさんあります。庭づくりの参考やフォトスポットとしてもおすすめの、有名なグラベルガーデンを3つご紹介します。
ベス・チャトーガーデン
イギリス南東部のエセックス州にあるのが、世界的に有名な「ベス・チャトーガーデン」。この庭園は、著名なガーデンデザイナー、ベス・チャトーが、1960年代から生涯をかけてつくり上げました。彼女は2018年に94歳で亡くなりましたが、その遺志は庭園を通じて今も生き続けています。
ベス・チャトーガーデンは7.5エーカーの土地に、グラベルガーデンをはじめ、ウォーターガーデン、ウッドランドガーデンなど、合計5つの異なる種類の庭園が配置されています。特に注目すべきは、イギリス国内でもっとも乾燥した地域にあるにもかかわらず、一度も水やりをされていないというグラベルガーデンです。水やりをされなくても、この庭は常に美しい状態を維持し続けています。
萌木の村
萌木の村は、イギリスの著名なランドスケープデザイナーであるポール・スミザー氏が監修した庭園です。山梨県北杜市にあり、約3万2000㎡もの広大な敷地にウッドランドガーデンやグラベル&ローズガーデンなど、さまざまな庭が整備されています。
はなふる
「はなふる」は、北海道恵庭市にある観光スポットで、2020年にオープンした公園です。ここは「花のまち恵庭」を広くアピールする都市公園として誕生し、2022年には全国都市緑化フェア「ガーデンフェスタ北海道2022」が開催され、多くの人が訪れました。注目は、北海道で今活躍する12人のガーデナーによりつくられたガーデンエリアで、グラベルガーデンをはじめとする7つの庭が楽しめます。
グラベルガーデンで美しい庭を実現しよう
グラベルガーデンは砂利を土壌にし、乾燥に強い植物を集めてつくる、近年注目されているガーデンスタイルです。砂利を敷いた庭は緑や花の色が引き立ち、水やりや草取りなどの手間もあまりかけずに、美しい景色を楽しむことができます。ぜひこの記事を参考に、お好みの植物を選んでオリジナルのグラベルガーデンづくりに挑戦してみてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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