- TOP
- 花と緑
- おすすめ植物(その他)
- 「クリスマス」が名前に入る植物10選
クリスマスが近づくと、クリスマスツリーやクリスマスアレンジなど、“クリスマス”というフレーズが入った言葉を目や耳にする機会が増えますね。じつは、植物にも名前に“クリスマス”とつくものがあります。ちょうど冬に旬を迎える植物や、別名にクリスマスがついている南半球原産の植物など、ガーデンプロデューサーの遠藤昭さんが10種ピックアップ! どんな植物なのか、詳しく教えていただきます。
目次
クリスマスの名を持つ植物、何種類ご存じですか?
気がつけばクリスマスシーズン。植物の中でクリスマスにまつわるものといえば、クリスマスローズやクリスマスホーリーなどが有名ですが、真夏にクリスマスを迎える南半球ではモミの木をはじめ入手しづらいものばかり。そのため、代わりに花木などに“クリスマス〇〇”と名付けて飾るようになったと思われます。そんなわけで、じつは南半球にはクリスマスが名前につく植物が多いのです。
日本でもそんな名前をもつ植物を見かけるようになっています。今後、ますます出回るようになるかもしれませんね。ここでは、定番の植物はもちろん、まだ認知度が低いものも先取りして、由来や育て方をご紹介します。
定番のクリスマスプランツBest3
初めに、すでに定番になっている植物を3種ご紹介します。
1. クリスマスローズ
あまりにも有名ですね。当サイトGarden Storyにもたくさんの記事が公開されていて、ガーデニングの栽培品種としてはもちろん、最近は切り花でも見かける根強い人気の宿根草です。
学名:Helleborus
俗名:クリスマスローズ、ガーデン・ハイブリッド、レンテンローズ、
科名 :キンポウゲ科
属名:クリスマスローズ属(ヘレボルス属)
原産地:ヨーロッパ全域から地中海沿岸、バルカン半島、黒海沿岸、中国に自生
日本でクリスマスローズの人気が上昇したのは、この20~30年のことです。それまでは、ヘレボレスと呼ばれていて、どちらかいうとマニアックな園芸愛好家が育てる地味目な植物でした。急速に品種改良が進んだのも、この20年間のように感じます。「クリスマス」「ローズ」というネーミングも人気の一つの要因かもしれません。私も、30年近く育てています。
育て方など詳しくは下記の記事をご覧ください。
20年近く前に撮影した我が家のクリスマスローズの様子と今年3月を比較してみると、時代の流れを感じます。
20年前は一重が主流でした。
今では、八重が人気ですね。
2. クリスマスホーリー(西洋ヒイラギ)
鉢物やリースなど、クリスマスの花材では定番ですね。日本ではあまり大きな木は見かけませんが、樹高が7mに達する常緑高木です。日本の節分に使用するヒイラギに似ていますが、ヒイラギはモクセイ科で、クリスマスホーリー(西洋ヒイラギ)はモチノキ科なので、植物学的には異なります。
学名:Ilex aquifolium
和名:クリスマスホーリー、セイヨウヒイラギ(西洋柊)、イングリッシュ・ホーリー
英名:European holly、English holly
科名:モチノキ科
属名: モチノキ属
原産地:ヨーロッパ、北アメリカ、西アジア、アフリカ
【育て方】
クリスマスホーリーは比較的丈夫で育てやすい植物です。赤い実を付けさせるには、十分な太陽と施肥、水やりなどの管理が必要ですが、夏の西日と乾燥に弱いので注意。鉢植えの場合、夏の間は日差しの強い場所は避け、半日陰に移動するとよいでしょう。生け垣に使用する場合は、4月頃と9月頃に剪定します。
3. クリスマスフラワー(ポインセチア)
クリスマスの代表的な植物、ポインセチアは、クリスマスの頃に花屋に出回ることからクリスマスフラワーとも呼ばれます。一見、花に見える赤い部分は苞(ほう)で、苞葉ともいいます。
学名:Euphorbia pulcherrima
和名:ショウジョウボク(猩々木)、ポインセチア
科名:トウダイグサ科
属名: トウダイグサ属(ユーフォルビア属)
原産地:メキシコ
【育て方】
ポインセチアは、メキシコの山地を原産とするユーフォルビアの仲間を改良して作出されました。冬に出回りますが、寒さに弱いので、最低温度10℃以上で管理します。
ポインセチアは日が短くなると花芽ができる短日植物で、流通している鉢植えは、人工的に短日処理をしています。2年目以降に、短日処理のために自宅でダンボールを被せたりしても、綺麗な花のような苞を育てるには温度調整も必要なので、かなり難度は高いです。
越冬させて育て続けるには、鉢植えを明るい暖かい場所で乾かし気味に管理します。4月頃からは、明るい半日陰で育てて、成長期に液肥を月に2回程度与えます。挿し木で増やすことができます。
これもクリスマスプランツ! 南半球原産7選
これまでご紹介した3種は、北半球原産の馴染みの深いクリスマスの植物でしたが、ここからは、これから人気が期待される南半球のクリスマスが名前につく植物を7種ご紹介します。
4. クリスマスカクタス(シャコバサボテン)
もともとはシャコバサボテンと呼ばれていましたが、クリスマスの頃に出回るので、最近はクリスマスカクタスと呼ばれることも増えた多肉植物です。
学名:Schlumbergera(Zygocactus)
和名:シャコバサボテン
その他の名前:クリスマスカクタス、デンマークカクタス、カニバサボテン
科名:サボテン科
属名:カニバサボテン属(シュルムベルゲラ属)
原産地:ブラジル南東部
シャコバサボテンはメキシコ原産ではなく、ブラジルの高山などで樹上や岩の上などに自生するサボテンの仲間です。和名は葉の形が蝦蛄(シャコ)に似ていることに由来します。“シャコ”ってどんな形? と思った方は検索してみてください。
【育て方】
シャコバサボテンの生育適温は20〜30℃ですが、花芽ができる適温は15℃前後です。ポインセチアと同じく短日性の植物で、日が短くなる11月頃からつぼみをつけ、クリスマス前後に開花します。
育て方で大切なのは、4月頃に各茎(扁茎)を3節以上残して先端を摘み取り、株の形を整えることです。摘み取った茎(扁茎)は、挿し芽にも利用できます。
意外と暑さが苦手で、夏は風通しのよい日陰になる場所で管理します。急に環境が変化するとつぼみが落ちたりしますので、寒くなって屋内に取り込む場合は、徐々に慣らしていきましょう。
5. オーストラリアン・クリスマスブッシュ(セラトペタルム)
オーストラリアン・クリスマスブッシュと呼ばれているのが、セラトペタルム(Ceratopetalum gummiferum)ですが、じつはニューサウスウェールズ・クリスマスブッシュともいいます。ちなみに、ニューサウスウェールズ州の州都はシドニーです。オーストラリアは州ごとに、クリスマスブッシュや、クリスマスツリーがあります。南半球ならではですね。
学名:Ceratopetalum gummiferum
英名:New South Wales Christmas Bush(ニューサウスウェールズ・クリスマスブッシュ)、サマークリスマスブッシュ
科名:クノニア科
原産地:ニューサウスウェールズ州
セラトペタルムは、オーストラリアのニューサウスウェールズ州原産のクノニア科の常緑中高木で、現地ではかなり大きくなるようです。日本では4~5月に花が咲きますが、現地では11~1月に開花することからこの名前が付いています。最近、鉢植えで出回っていますが、つぼみは早くから付いて、4~5月にかけて白い花が咲きます。花が終わると萼が大きくなって赤く色づき、花のように見えます。オージープランツのドドナエアと同様で、赤く色づいた萼のほうが花よりも美しいです。
【育て方】
オージープランツですので、日当たりのよい暖かい場所で、水はけのよい土で育てます。原産地が東オーストラリアなので、比較的日本でも育てやすく、最近は苗が流通しています。
6. オーストラリアン・クリスマスツリー(ニューシア)
オーストラリアン・クリスマスツリーは、西オーストラリア原産の寄生樹であるニューシア・フロリバンダ(Nuytsia floribunda)のこと。ニューシアやヌイチア・フロリバンダとも表記されます。オーストラリアでは花が咲く時期がクリスマスシーズンと重なるため、クリスマスツリーと呼ばれています。
現地では高さ10m、幅3mにも成長し、長い針のような緑の葉をつけ、オレンジイエローの花をたくさん咲かせます。
学名:Nuytsia floribunda
英名:Australian Christmas tree
科名:ミズナラ科(Loranthace)
原産地:西オーストラリア州
樹高:5~10m
【育て方】
暑さには強いですが、寒さには若干弱いため、冬は寒波や霜を避け、なるべく0℃以上で管理します。西オーストラリア原産なので、夏は乾燥して暑く、冬は雨が多い地中海式気候を好みます。つまり夏の高温多湿に弱く、冬は寒さと乾燥に弱いです。水はけのよい土で、水を切らさないように育てますが、用土の湿りすぎは根腐れを引き起こすため注意。水やりは、表土がしっかり乾いてからたっぷりと与えます。冬を含め、日当たりのよい場所で育てましょう。
7. ビクトリア・クリスマスブッシュ
日本でも最近人気のオージープランツの一つ、シソ科ミントブッシュ(Prostanthera)の仲間です。原産地では11〜1月に開花することから、クリスマスブッシュと呼ばれています。
上写真が日本で流通しているミントブッシュです。日本では初夏に咲きます。
学名:Prostanthera lasianthos
英名:Victorian Christmas Bush
科名:シソ科
流通名:ビクトリア・クリスマスブッシュ
原産地:ビクトリア州、クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、タスマニア州など東オーストラリア
【育て方】
オージープランツの栽培ポイントと同様に、日当たりのよい場所・水はけのよい土・乾かし気味・肥料は控えめに育てます。冬も温暖な地域では外で越冬しますが、屋内に入れるほうが無難です。
8. クリスマスベル(コーレア・レフレクサ)
コーレアは東オーストラリア原産のベルフラワーです。10~12月にサーモンピンクから赤に色づいた美しいベル状の花を咲かせるので、クリスマスベルと呼ばれています。寄せ植えのセンターツリーやアクセントにおすすめです。
学名:Correa reflexa
別名:Native fuchsia、Australian Christmas Bell
科名:ミカン科
原産地:東オーストラリア
【育て方】
寒さに弱いので、鉢植えで管理し、冬は0℃以上を保つようにしてください。
日当たりのよい所を好みます。他のオージープランツ同様に、できるだけ梅雨の雨などに当てないようにして、乾燥気味に育てます。施肥は春秋に、緩効性肥料を少量与えます。
9. ニュージーランド・クリスマスブッシュ(メトロシデロス・エクセルサ)
ニュージーランドのクリスマスブッシュは、マオリ語で「ポフツカワ」と呼ばれています。ニュージーランドのクリスマスツリーとも呼ばれ、毎年夏になると一斉に真っ赤な花を咲かせます。真夏のニュージーランドを象徴する木です。花が散ると木の下に真っ赤な絨毯が広がります。クリスマスブッシュの蜂蜜も土産物として有名です。
ポフツカワは、メトロシデロス・エクセルサ(Metrosideros excelsa)の通称です。ニュージーランド北東約 900kmの火山ケルマデック諸島に固有の植物で、ケルマデク ポフツカワとも呼ばれます
学名:Metrosideros excelsa(メトロシデロス・エクセルサ)
英名:ニュージーランド・クリスマスツリー
現地名称:Pohutukawa(ポフツカワ)
科名:フトモモ科メトロシデロス属
分類:常緑高木(最大樹高25mぐらいまで成長)
原産地:ニュージーランド
【育て方】
日向~明るい日陰で育ちます。水はけのよい土壌ならば、さほど場所を選びません。手間のかからない庭木として、ニュージーランドでは好まれています。剪定は花後にします。
10. クリスマスエリカ
クリスマスエリカは、もともとは南アフリカ原産のツツジ科のスズランエリカ(Erica formosa)です。通常エリカは、春に開花しますが、南半球ではクリスマスシーズンに開花するので“クリスマス”の名がつきました。「formosa」はラテン語で「美しい」という意味です。
学名:Erica formosa
別名:Christmas Erica、クリスマスエリカ、鈴蘭エリカ
科名:ツツジ科
原産地:南アフリカケープ州
【育て方】
南アフリカの地中海式気候の下で育つ植物なので、夏の高温多湿と冬の寒さ・乾燥を嫌います。
関東以西では露地植えで育ちますが、寒さの厳しい冬は、防寒が必要です。
クリスマスの名を持つ植物を覚えよう!
10種すべて知っていた! という方は、とても園芸レベルが高いですね。多くの方は、まさか南半球にクリスマスの名がついた植物があるとは! と、驚かれたのではないでしょうか。クリスマスツリーに憧れる気持ちから、その時期に咲く花にこんな名前を付けているのかもしれませんね。クリスマスの頃に南半球に旅する機会があったら探してみてください。
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -
えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
- リンク
記事をシェアする
新着記事
-
公共ガーデン
都立公園を新たな花の魅力で彩る「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」1年の取り組み
新しい発想を生かした花壇デザインを競うコンテスト「東京パークガーデンアワード」。第2回のコンテストは、都立神代植物公園(調布市深大寺)が舞台となり、2023年12月からコンテストガーデンが一般公開され、日…
-
園芸用品
【冬のうちに庭の悩みを一挙解決】生育、花つき、実つきを変える土壌資材とは⁈PR
庭づくりで最も多い「花が咲かない」、「実がつかない」といった生育不良。花であふれる景色や収穫を夢見て、時間をかけ、愛情もかけて手入れをしているのに、それが叶わないときは本当にガッカリするもの。でも大…
-
イベント・ニュース
コモレ四谷に麻布台ヒルズ…「大手ディベロッパーの取り組む都市の緑とオープンスペース」など 園芸・ガー…
40年以上の歴史を持つ老舗業界専門雑誌『グリーン情報』最新号から最新トピックスをご紹介! 2024年11月号の特集は、「大手ディベロッパーの取り組む都市の緑とオープンスペース」。ほかにも、新たな時代に向けた“…