歌詞や題名に花の名前が登場する曲を、みなさんはいくつご存じですか? 歌から花や植物の名前を知った経験もよくあるものですよね。ここでは、ガーデニングと並行して音楽も趣味というガーデンプロデューサーの遠藤昭さんが17曲ピックアップして、歌われている花についてご紹介します。みなさんは、何曲聞いたことがありますか?
目次
曲に乗って登場する花々
「花は思い出があるから美しい」といわれますが、同じく歌にも人それぞれの思い出があることでしょう。そして多くの歌の中で取り上げられ、その歌詞に表現される花の姿は、「花の図鑑」で説明される無機質なものではなく、豊かな形容表現があったり、恋愛や人生の比喩があったりして楽しいものです。私自身、サラリーマン時代は音楽普及の仕事に携わり、今でも音楽はガーデニングと並ぶ趣味なので、今回、Jポップスを中心に、歌に登場した花を15種取り上げてみたいと思います。
① 秋に花盛りのコスモス
百恵ちゃんが歌う歌詞の冒頭に合わせ、写真は我が家で咲かせた淡紅のコスモスと八重咲き品種です。
コスモスはメキシコが原産で、初心者にも育てやすい草花です。5月頃にタネを播いて育てます。過湿に弱いものの、日照・風通しのよい場所なら、どこでも育ちます。群生させると美しいです。切り花にも使えて、庭にあると重宝します。
「秋桜(コスモス)」(山口百恵)1977年
思い出の歌は、その人の青春時代のものが多いといいますが、多分、これを「思い出の曲」とする人々は60代の方ではないでしょうか? さだまさし作詞・作曲(上記曲へのリンクは、歌:さだまさし)。当時、山口百恵さんは18歳。「淡紅の秋桜」で始まる、あまりにも有名な歌です。
もう1曲のコスモスの歌といえば、
「コスモス街道」(狩人)1977年
旅する女の切なさを歌ったとか…。
② トロピカルなプルメリア
原産地は熱帯アメリカで、最近はホームセンターなどでも初夏から鉢植えが出回っています。熱帯植物なので、冬は陽当たりのよい屋内で管理します。20℃以上に保つと落葉せず、夏から咲きますが、室温が低いと落葉し、枝葉が充実しないと開花しません。開花が遅れて9~10月頃になり、タイミングが外れるとつぼみの状態で寒さを迎え、開花せずに終わってしまうので、冬の管理が開花のポイントのようです。
「プルメリア 〜花唄〜」(Aqua Timez)2009年
「この夢がこの夢がいつか叶う時には…」で始まり、歌詞の中にはプルメリアという花が出てこないのです。
③ 揺れるマリーゴールド
メキシコ・中南米原産でキク科の植物。暑さに強く、花期が7〜10月と長いので夏花壇によく使用されている一年草です。丈夫で、タネからでも簡単に育てられます。
花色はオレンジ系が中心ですが、近年はクリーム色なども流通しています。寄せ植えにも使いやすい花材です。
「マリーゴールド」(あいみょん) 2018年
歌詞の途中に、「揺れたマリーゴールドに似ている」という一節があります。はて? 何がマリーゴールドに似ているのか? 私が所属するバンドで、この曲を演奏したことがありますが、リズムが今風で、中高年のオヤジには難しい曲。
④ この歌で有名になったデイゴ
マメ科の落葉高木で、インド、マレー半島が原産。日本では沖縄で育ちます。沖縄を代表する花。デイゴは耐寒性がありませんが、近似種のアメリカデイゴは東京近辺でも越冬し、神奈川・湘南平塚にはデイゴの並木道があります。
「島唄」(THE BOOM)1993年
⑤ 神聖なハス
インド原産のハス科多年性水生植物で、根は根菜の蓮ですね。横浜・三渓園の蓮が有名です。実の様子が面白いので、写真を以下にアップしておきます。
この神聖な花が、まさかの大ヒットのアニメ「鬼滅の刃」のオープニングテーマになるとは!
「紅蓮華(ぐれんげ)」(LiSA)2019年
「強くなれる理由を知った……」で始まる曲で、一般的な人が持つ蓮の花のイメージとは異なるように感じますが。時代の変化でしょうか?
⑥ 燃えるダリア
ダリアは古くから親しまれてきた植物ですが、メキシコ原産で、やや日本の夏の蒸し暑さが苦手です。また、冬には球根を掘り上げて寒さを避けなければならず、素晴らしい花なのですが、栽培がやや難しくブームにはなりません。ですが、豪華で種類も多く、切り花としても根強い人気があります。オーストラリアで作出された‘エモリ―ポール’という世界一の巨大輪もあります(写真下)。
「DAHLIA」(X JAPAN)1996年
「果てしない夜空に……」、ダリアとの関連があまりよく分からないのですが、なかなかに激しい曲です。
⑦ 実家のサボテンの花
サボテンの花は、とても鮮やかな色が多く、長年育てていると、突然に開花することがあります。下の写真は、20年くらい経って開花した我が家のサボテンですが、その後、枯れてしまいました。
「サボテンの花」(チューリップ)1975年
チューリップなのにサボテンの花? 作詞・作曲は財津和夫さんで、福岡の実家に帰ったときに母親が育てていたサボテンの花に感動したのが本曲の原点とか。さて、財津さんは、サボテンの花をどのように表現しているでしょうか?
⑧ まさかのハナミズキ
庭木や街路樹に人気のハナミズキです。一部にアメリカハナミズキと呼ぶ方がいますが、これはハナミズキが北アメリカ原産で、かつてアメリカヤマボウシと呼ばれたことがあるため、混乱が生じたようです。アメリカハナミズキという正式な花木はありません。 花びらに見えるのは4枚の総苞片で、花は中央に小さく密集して咲いています。
「ハナミズキ」 (一青窈)2004年
この歌は、2001年にアメリカ同時多発テロの発生時、ニューヨークの友人の無事を祈って書いたそうです。テロで急に命を奪われた人に捧げる鎮魂歌です。誕生の由来を知ってから聞くと、また違った印象を受けるものですね。
⑨ 春色のスイートピー
我が家で育てたスイートピーは、微かに紫がかる淡い花色でした。
イタリアのシチリー島が原産地のマメ科植物です。つる性植物なので、タネを播いて支柱に絡めながら育てるのが一般的です。「スイートピー」は、その名前通りに甘い香りのするかわいい花です。ピンクや水色、赤、紫、白など花色が豊富です。
「赤いスイートピー」(松田聖子)1982年
聖子ちゃんの代表作の一つですね。「心に春が来た日は赤いスイートピー」だそうです。
⑩ たくましく咲くスミレ
ガーデニングでは、スミレの仲間はパンジーやビオラが主流で、スミレはベテランガーデナーに人気があります。花言葉は「謙虚」「誠実」「小さな幸せ」。道端に咲くスミレは、素朴で奥ゆかしいですね。
「スミレ」(ゆず)2003年
歌詞に「踏まれては立ち上がる」とあり、野生の、それもアスファルトの道路脇に生えているスミレを連想します。ちなみに歌詞には「スミレ」が一度も出てこない、青春の応援歌ですね。
⑪ 苦いレモン
レモンは5月頃に花が咲き、11月頃から収穫できます。我が家のレモンは樹齢30年近くになりますが、毎年、食べきれないほどのレモンが収穫できて、とても重宝しています。
育て方や活用法などはこちらもご参照ください。 『感動の果樹栽培「レモンの木」育て方と楽しみ方』
「Lemon」(米津玄師) 2018年
「胸に残り離れない 苦いレモンの匂い」という歌詞があり、甘酸っぱいレモンの思い出とは異なるようです。
⑫ 麦
草花の範疇からは外れる番外編ですが、私が中島みゆきさんのファンなのでご容赦ください。麦は実になる前に、穂の表面に白い小さな花が付きます。写真にも、それらしきものが見えるでしょうか。
「麦の唄」(中島みゆき) 2014年
NHK連続テレビ小説「マッサン」の主題歌です。中島みゆきさんは、文化庁の国語審議会委員を務めたこともあり、彼女の日本語力の素晴らしさには定評があります。さて、麦をどのように歌っているでしょうか?
⑬ 日本を代表する花:桜
日本に桜は約600種あるといわれており、ソメイヨシノが桜の代名詞になっていますが、最近は早咲きの河津桜や、江戸彼岸桜も人気が出ているようです。
「さくら」(森山直太朗) 2003年
日本を代表する桜は、古くからたくさん歌われてきましたが、今よくメディアに出るのは森山直太朗さんの曲でしょうか? お母様の森山良子さんも「この広い野原いっぱい咲く花を~♪」と、花の歌を歌っていましたね。
もう一曲
「SAKURA」(いきものがかり) 2006年
サクラと少女の気持ちが、よく表現されている曲です。
⑭ 薫るシクラメン
シクラメンの原産地は、地中海沿岸のギリシャからチュニジアにかけて。一昔前は高級鉢花として扱われていましたが、耐寒性のあるガーデンシクラメンの普及もあり、入手しやすくなりました。シクラメンにはもともと香りはありませんでしたが、近年、芳香性のシクラメンも誕生し「シクラメンのかほり」が現実のモノに。さらに品種改良が進んで、紫系の品種やフリンジ咲きの品種も誕生している冬の風物詩です。
「シクラメンのかほり」(布施明) 1975年
小椋佳さんの名曲です。当時、香りのするシクラメンはなく、「かおり」ではなく「かほり」にしたのは、じつは小椋佳氏の奥様の名前が桂穂里さんで、シクラメンを奥様になぞらえて歌にしたとか。え~っ? ですね。
⑮ 今でも人気のバラとパンジー
バラとパンジーは、今でもガーデニングの双璧をなす人気の花で、ガーデニングをしていない方でも花姿をイメージできる世界的人気の植物ですね。50年前から今のブームを予測していた?
「あなた」(小坂明子) 1973年
小坂明子さんが高校生の16歳のときに作詞・作曲。第6回ヤマハポピューラーソングフェスティバル及び第4回世界歌謡祭でグランプリを獲得し、200万枚のレコードを売り上げた作品です。50年経った今でも通用する夢のマイホームを歌っています。
秋の夜長に花を聴く
いかがでしたか? 花をテーマに思い出す17曲をピックアップしてみました。若干、自分の好みが入っておりますが、お許しください。この原稿を書きながら、できるだけ自分で撮った写真を探し、YouTubeで曲を選んでいると、つい思い出にはまってしまい、まるで“部屋の片づけをして昔の写真を発見! 作業がストップしてしまう”のと同じ状態になってしまいました。書き終えて、改めて新しい世界が広がり、花と音楽の関係って、面白いな! と新鮮な気持ちです。花と音楽、ともに毎日を元気に生きてゆくのになくてはならないものですね。
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -
えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
- リンク
記事をシェアする
新着記事
-
ガーデン&ショップ
都立公園を新たな花の魅力で彩る「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」1年の取り組み
新しい発想を生かした花壇デザインを競うコンテスト「東京パークガーデンアワード」。第2回のコンテストは、都立神代植物公園(調布市深大寺)が舞台となり、2023年12月からコンテストガーデンが一般公開され、日…
-
園芸用品
【冬のうちに庭の悩みを一挙解決】生育、花つき、実つきを変える土壌資材とは⁈PR
庭づくりで最も多い「花が咲かない」、「実がつかない」といった生育不良。花であふれる景色や収穫を夢見て、時間をかけ、愛情もかけて手入れをしているのに、それが叶わないときは本当にガッカリするもの。でも大…
-
土作り
ガーデニングの成功体験に導いてくれる「メネデール」70周年記念プレゼントキャンペーン
植物を育てる人なら、プロも愛好家も何度となくお世話になったことがあるであろう植物活力素「メネデール」。大事にしていた植物が弱ってしまったとき、ピンチを救ってもらった人は少なくありません。また、植え付…