名前も姿も愛らしい花、マーガレット。可憐な花姿で開花期も長く、寄せ植えやハンギングにも人気の高い植物です。近年は清楚な白の一重咲きのほか、黄色やピンクなどの花色のバリエーションに加え、ゴージャスな八重咲きなど、多くの品種が登場しています。神奈川の自宅の庭で20年以上マーガレットを育てている、自称“隠れマーガレットファン”のガーデンプロデューサー遠藤昭さんに、マーガレットの魅力や特徴、育て方のコツを教えていただきます。
目次
愛らしいイメージのマーガレット
「マーガレット」という響きは、なんとなく愛らしく、「ある年代」の人々の中には、少女漫画雑誌の『マーガレット』を思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか。もしかすると、そんな「ある年代」の人たちは、この雑誌の名前から、マーガレットの花に、少女っぽく可憐なイメージを重ねているのかもしれません。ジェンダーフリーの時代ではあっても、大の男が「僕はマーガレットが好きで育てています」というのは少々気恥ずかしさが伴うものです。しかし、園芸歴が30年に近い僕にとってマーガレットにはさまざまな思い出があり、また、ぜひ栽培をおすすめしたい花でもあります。そこで気恥ずかしさなんて乗り越えて、“素敵なマーガレット”についてご紹介したいと思います。
栽培のポイントは原産地を知ること
僕は、自分のPCに長年の間撮影した3万枚を超える植物写真を蓄積しています。多くはオージープランツや多肉植物、アガベといった葉物やマニアック系という、どちらかというとワイルド系の植物が多いのですが、なんと今回、マーガレットを検索したら、驚くほどたくさんの写真が出てきたのです。
じつは、「隠れマーガレットファン」でした!
前置きはさておき、僕が植物をご紹介するときに必ずこだわるのが、その植物の原産地です。原産地を知ることは、適した気候を知るヒント。すなわち「育て方」を理解するうえで大切な項目です。
原産地の気候から季節ごとの気温や雨量を知れば、そこに近い環境を庭に作るために気をつけるべきこと、置き場所や使用する土、水やり方法などが分かります。
マーガレットの原産地
マーガレットの原産地は、アフリカ大陸の西北に浮かぶ、スペイン領カナリア諸島です。基本的に、冬は温暖で雨が降り、夏は高温で乾燥する地中海式気候ですが、アフリカのサハラ砂漠にも近く、スペイン最高峰の3,718mのテイデ火山もあり、砂漠気候と亜熱帯気候に区分されます。年間の日照時間がおよそ3,000時間と多く、それに対し雨量は200mm程度とかなり乾燥しています。気温は冬でも平均が20℃近くあり、夏は25℃程度と、まさに常夏ですね。ちなみに、カナリア諸島原産の植物には、フェニックス・カナリエンシス、多肉植物の黒法師、エキウム、サイネリアなどがあります。いかにも乾燥している気候のようですね。
マーガレットの基本情報
学名:Argyranthemum
和名:モクシュンギク(木春菊)
英名: Margaret、Marguerite(フランス)
科名:キク科
属名:モクシュンギク属(アルギランセマム属)
原産地:スペイン領カナリア諸島
現在、一般に市場に出回っているマーガレットは、本来のマーガレットであるモクシュンギク(アルギランセマム・フルテッセンス)の園芸品種のほか、モクシュンギクと近縁種を交配させた園芸品種です。草花扱いされていますがじつは低木で、我が家でも10年ぐらいの大株に育ったことがあります。
マーガレットの魅力
マーガレットというと、昔は清楚な白が主流でしたが、最近は黄色やピンク、赤、そして八重咲きなども出てきました。そんなマーガレットの種類をご紹介していきましょう。
ピンクの八重咲きで埋まる、豪華マーガレットガーデンは、とても愛らしい光景です。
マーガレットは、単体で楽しむのはもちろん、寄せ植えにも使いやすい花です。花期が長いのも魅力ですね。
乾燥に強いので、ハンギングにも最適。秋に植え込んで、10月から5月いっぱいまで咲き続けてくれました。
マーガレットの育て方
●置き場所
先にご紹介したとおり、原産地のカナリア諸島の気候は、日照時間が年間およそ3,000時間。これは日本ではありえないのですが、できるだけ日当たりのよい場所で育てます。
また、原産地は常夏の国なので、寒さにはやや弱いのですが、関東以西でしたら、寒風や強い霜が当たらなければ越冬します。冬は南向きの陽だまりで育てましょう。もし霜が当たるようでしたら、寒冷紗で防寒すると安心です。
鉢植えの場合は、12~3月は、日当たりのよい室内で管理します。4~11月は、日当たりのよい戸外で管理します。高温多湿を嫌うので、梅雨時は雨の当たらない風通しのよい場所へ移動させ、梅雨明けから8月までは半日陰で管理します。
●管理
パンジーなどの多花性の草花同様に、花がらをマメに摘むことが、次の花を咲かせるためには大切です。鉢植えの場合は、生育期には2週間に1度程度、液肥を施します。乾燥気味に育て、水やりは表土が十分に乾いたらたっぷりと。地植えの場合の施肥は、植え付け時、及び春と秋に緩効性肥料を与えます。便利な資材は「マグァンプK」。鉢植えの場合も、植え付けのときに「マグァンプK」を施すのがおすすめです。
●増やし方
挿し木で増やします。適期は5~6月と、9~10月です。枝の先端を長さ5~7cmに切り取り、バーミキュライト、またはパーライトに挿します。酸性をやや嫌うので、鹿沼土は避けます。
●植え付け・植え替え
成長が早いので、鉢植えの場合は毎年、鉢増しをします。適期は3~6月と、9~10月です。入手したポット苗は根詰まりを起こしている場合が多いので、1回り大きな鉢に植え替えて生育を促します。根鉢を少々ほぐして植え替えますが、適期以外に植え替える必要がある場合は、根鉢をくずしません。
●土の選び方
高温多湿を嫌うので、水はけのよい用土に植え付けます。
あと、最後に「僕はマーガレット花粉症」です! 可愛いでしょう?
発症はミモザ花粉症と同じくメルボルン在住時代。なぜかクシャミと鼻水が出ると思ったら、テーブルに庭のマーガレットが活けてあり、その下には花粉が落ちていたのです。マーガレット花粉症の人、じつは結構いるのです。確かにマーガレットには花粉がいっぱいです。
でも、ミモザ同様、花粉症にメゲず、これからもマーガレットを育てます。
爺さんが約20年間育てて、学んだマーガレットの魅力、伝わりましたでしょうか?
これからがマーガレットの美しい季節です。ぜひ、お気に入りのマーガレットを探して育ててみませんか?
マーガレット・リバー地域のワイン
MargaretでPC検索をしていたら、Margaret river wineの写真がヒットしました。マーガレット・リバーはワイナリーで有名な地域。僕の愛する西オーストラリアの美味しいワインです。ぜひ、マーガレットの花を観賞しながらご賞味ください。日本でも購入できますよ!
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -
えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
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