初夏に大輪の豪奢な花を咲かせる牡丹。日本的なイメージもありますが、じつは英語圏でも「ピオニー」として広く愛される、ガーデナーにとっては憧れの花です。神奈川の自宅の庭で25年以上ガーデニングを楽しむベテランガーデナーの遠藤昭さんも、その美しさに魅了された一人。ちょっと意外な花との組み合わせから育て方まで、その魅力を幅広くご紹介します。
目次
牡丹とピオニー

牡丹という言葉のイメージは、私の中では、花札を連想してしまい、ボタンッ! という濁音の響きと共に、何となく古くさい、あまりよいイメージがなかった。きっと私の育ちがヨロシクないからだと思う。

ところが、ある時、海外の園芸雑誌でピオニーを見た時に、あまりの美しさに衝撃が走った。あの牡丹が、西洋の建物を背景に英語の説明文を見ると、まるで別物に見えたのだった。…これが牡丹? 日本人として恥ずかしいことだが、ピオニーと英語でいわれると別物のようで、新鮮なイメージになる。潜在的な西洋コンプレックスを持っているからだろうか? 一昔前は、園芸よりもガーデニングといったほうがカッコよくお洒落に感じた人も多かったと思う。ちなみに、英語のピオニーには、牡丹とともに芍薬も含まれる。


そんな、カルチャーショックのような経験の後に、「ピオニー」を育て始めた。この牡丹、いやピオニーは、欧米では高貴で美しい「高嶺の花」のようである。


ピオニーと花々の組み合わせ

以前にオーストラリアのGlobal Gardenというガーデニングサイトのレポ-トで、庭のオージーのハーデンベルギアを背景に牡丹を写した写真をアップしたら、とても好評で、数通のメールをいただいた。The peonies are beautiful – especially combined with the hardenbergia.…と、やはりハーデンベルギアとの組み合わせは意外だったのだろう。まあ、オーストラリアのバンクシアなどとは対照的な花姿である。その時の品種は、‘花王’という豪華なピオニーだった。

このピオニーであるが、本当の魅力はまだ知られていないと思う。直径が23cmほどもあるこの‘花王’というピオニーは、ご覧の通り、横のストレリチア(極楽鳥花)でさえ小さく見えてしまうほどの迫力と豪華さなのだ。極楽を超える花…。このくすんだピンクもとても高貴な色だと思う。

そして何よりもピオニーの魅力は、このどこまでも薄い花びらの美しさ。

その後、調子に乗って、普通はピオニーと一緒に写真に収める人はいないであろう、オージープランツのエレモフィラ・ニベアやグレヴィレア‘ロビンゴードン’、羊歯のディクソニアとも撮ってみた。とっても新鮮!



もう一つ、ニューサイランと共に撮ってみよう。ニューサイランを引き立て役に、ピオニーを浮き上がらせてみた。

そして、もう一つの主役級の花、バラとも組み合わせてみた。

モッコウバラとも。

この‘花王’の実物を見たら、きっとロザリアンたちもピオニーに魅せられてしまうに違いない。バラが大人気の日本のガーデニングだが、流行にとらわれずにさまざまな植物に目を向けると、自分らしいガーデニングが楽しめるようになると思う。鉢の置き場を変えるだけで、雰囲気も大分変わる。


こんなことをやって遊んでいるうちに、ふと、これがガーデニングの醍醐味だな! と真面目に感じた。
花や植物を組み合わせ、より美しい世界を創り上げるガーデニング。オージープランツとピオニーを組み合わせることで誕生する、今までに見たことのない新しい風景。自分の個性や創造性で作るガーデニングの世界。海外の園芸雑誌に掲載された「牡丹」=「ピオニー」をきっかけに、確実に自分のガーデニングの楽しみ方の世界が広がったことを実感した。


ピオニーの育て方

さて、最後に、ピオニーの育て方に触れておこう。
バラの育て方をご存じの方は多いと思うが、植え付け・植え替え時期と、剪定時期以外は、ほぼ同じと考えていい。植え付け・植え替えは9月の彼岸過ぎから11月頃が適期、そして剪定は9月に行う。
バラ同様に水はけのよい土で、日当たりのよい場所で育てる。ただし、真夏の西日や真冬の寒風は寒冷紗などで防いだほうがよい。植え付ける際は、50cm程度の穴を掘り、腐葉土・堆肥などのほか、元肥も入れる。肥料食いなのもバラと同じなので、芽出し肥、花後のお礼肥、そして9月に追肥をする。
発生しやすい病害虫もバラと似ていて、うどん粉病、黒斑病、そしてカイガラムシがつくため、適宜殺菌剤を散布し、カイガラムシは歯ブラシなどでの処理をしよう。

育て方の難易度はバラ程度だと思うので、気軽に「究極の美しさを放つピオニー」を育ててみませんか?
Credit
写真&文 / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -

えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
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