真夏に咲くイメージのトロピカルな美しさをまとう熱帯花木ですが、じつは開花のピークは、お盆過ぎから初秋にかけてという場合が多いのです。常緑性花木で半つる性のデュランタも、これからが見頃。白く縁取られた紫の小花が房状に枝垂れて咲くデュランタを20年以上育ててきた神奈川在住のガーデンプロデューサー、遠藤昭さんに、育て方のコツや品種バリエなどを教えていただきます。
目次
夏が似合う植物と温暖化の関係
夏はトロピカルなハイビスカスやプルメリア、ブーゲンビリアなどの熱帯花木が人気だが、残念ながらこれらの熱帯花木は、比較的温暖な地域である東京近辺でも外では冬越しができず、屋内に取り込まなければならない。しかし、近年の温暖化のせいか、20年ほど前は、多くの園芸書が「冬は屋内で……」と注意していた熱帯・亜熱帯花木が、庭木として定着し始めている。
私が今まで解説してきたオージープランツや南アフリカ原産の花木もこれに該当するのだが、南アメリカ原産のジャカランダやデュランタも同様だ。今回は、デュランタについて解説しよう。
秋まで開花するデュランタのプロフィール
学名:Duranta erecta またはDuranta repens
和名:タイワンレンギョウ、ハリマツリ
英名:. Golden dew drop、Sky flower
科名・属名:クマツヅラ科 デュランタ属
原産地:アメリカ・フロリダからブラジルにかけての熱帯アメリカ
分類:半耐寒性常緑低木(半つる性)*寒いと冬に落葉する場合がある
開花時期:7〜11月
私が20年以上育てているデュランタ
我が家のデュランタは、育ててかれこれ20年以上になる。入手当時は、デュランタ‘ライム’が観葉植物として人気だった。開花しやすいデュランタ‘タカラヅカ’はあまり流通していなかったと思う。じつは当時、私は観葉植物のデュランタ‘ライム’と花のきれいなデュランタとが品種が異なることを知らなかった。
知人からデュランタの苗をもらったが、当時主流だった観葉植物のデュランタ‘ライム’の苗だと思い込んでいたのだ。2〜3年鉢植えにして冬は屋内で育てていたが、ある日、都内の住宅街でデュランタが冬に庭で育っているのを発見したのをきっかけに、我が家でも翌年から庭に地植えにしてしまった。
すると冬は寒さで枯れたように見えたが、初夏に復活。9月には花を咲かせた。今でこそデュランタの花は知られているが、当時は見たことがなく、開花に感動したものだった。この時初めて、今育てているのはデュランタ‘ライム’ではなく、デュランタであったのだと気がついたのだ。
まさか、こんなに優美な色彩の花が咲くとは思っていなかった。そして花の咲くデュランタは、観葉植物のように室内で育てたのでは開花せず、開花には太陽が必要であることも学んだ。
デュランタの仲間3種
あれから20年が経ち、最近は住宅街の庭で咲いている姿を見かけるようになった。沖縄などでは、以前から生け垣に利用されていたようだ。デユランタの生け垣なんて、とても素敵だと思うが、残念ながら東京近辺では年中常緑とはいかないようである。
ここで、デュランタには主に下記3種があることを確認しておこう。
品種バリエ1 デュランタ(Duranta erecta またはDuranta repens)
花が濃青紫色で、花弁に白い覆輪が入るDuranta erecta ‘Takarazuka’が有名。樹高は2〜6m。
品種バリエ2 白花デュランタ(Duranta erecta ‘Alba’)
純白の花を咲かせる白花のデュランタは、「ホワイトラブ」という名前で見かけることがある。
品種バリエ3 デュランタ‘ライム’(Duranta ‘Lime’)
観葉植物扱いで葉がライム色。開花はしにくい。
デュランタが秋に開花のピークを迎える理由
ハイビスカスやプルメリアなどの熱帯花木を加温設備のない一般家庭で育てると、冬は屋内に入れても葉が落ちてしまう場合が多い。そしてハイビスカスやプルメリアは、夏になっても、ある程度葉が付いて枝が充実しないと開花しないようである。したがって、我が家での栽培経験では、これらの熱帯花木は、お盆過ぎから初秋にかけてようやく開花することが多かった。
デュランタも屋外で育てると、冬は葉を落としてしまう。初夏に葉が復活して、開花するのは9月頃の場合が多い。横浜にある我が家の場合、育てて20年以上になるが、幾度か寒さで枯れそうになった。しかし、初夏には根元から新芽が出て復活するたくましさがある。暖かい年は常緑の時もあった。近年は、暖冬のせいか、あるいは株が太くなったからか、冬も葉が落ちないことが多い。冬に葉が落ちなければ、8月頃から開花が見られる。
園芸店では初夏から開花株のデュランタが販売されているが、おそらく温室栽培のものだと思われる。
長い枝は2m以上あり、枝先につぼみをつける。半つる性の低木なので、たわわに咲く姿が美しい。開花が9月頃からのせいか、暖かい年は霜が降り始める12月上旬まで咲き続ける。我が家は西日もカンカンに射す所だが、負けじと咲いている。
長年、ガーデニングをやっていると、「丈夫で長もち」の植物が、やはり楽でよい。今年もデュランタが咲き始めた。これから11月頃まで咲き続けるだろう。
日本では実がなりにくいが、原産地では花後にたわわに実る。
デュランタの育て方
地植えの場合
神奈川・横浜にある我が家では地植えで育てているが、関東以西地域の太平洋側では、日当たりがよく、北風が当たらない場所なら地植えが可能だと思う。数年経って大きな株になれば、もし冬に葉が落ちたり、小枝が寒さで枯れたりすることがあっても、春には復活して秋には開花する。地植えの場合、ほとんど手がかからず、作業は、花後の剪定と寒肥を施す程度。なんて丈夫で長もちの優等生なんだろう。
鉢植えの場合
【置き場】屋外では日当たりのよい場所に置き、関東以北では冬は室内で管理を。霜の心配のない時期は屋外で日に当てて育てる。例えば、東京近郊の南向きのマンションのベランダなら、よほどの寒波が来ない限り、屋内に取り込まなくても大丈夫。真夏のピーカンの日は、鉢に直射日光が当たらない半日陰程度がよいだろう。
【肥料】成長期に10日に1回程度液肥を与える。置き肥でもOK。
【水やり】成長期には表面が乾いたらたっぷり。冬は控えめに。
【用土】赤玉土と腐葉土を7:3の割合で。一般的な植物と同様、市販の園芸培養土を使ってもよい。
【その他】病害虫は、ほぼ見かけない。鉢増しは、2年に1回程度を目安に、春に行う。株が乱れたり大きくなりすぎていたら、花後に屋内に取り込む前に剪定しよう。
デュランタの増やし方
挿し木で簡単に増やせる。方法は、春から初夏にかけて、一般的な挿し木同様に、15cm程度の挿し穂を鹿沼土などの清潔な土に挿し、明るい日陰に置く。乾燥しないよう水やりを忘れずに管理すると、1カ月程度で根が出て新芽が出始める。
寒さに気を付ければ、丈夫で優雅な花を咲かせるデュランタ。ベランダやテラスなどの都会的な場所にもマッチすることでしょう。冬も室温を保てば観葉植物としても活躍しますので、ぜひ育ててみてください。
Credit
写真&文 / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -
えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
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