在日オーストラリア人のお庭改造に密着!【オージーガーデニングのすすめ】

オリジナリティのある庭づくりや、ファッショナブルな植物を求める人に近年選ばれているオーストラリア原産の植物グループ「オージープランツ」。自宅の庭で100種以上のオージープランツを育ててきたガーデンプロデューサーの遠藤昭さんが、在日オーストラリア人の庭を手掛けました。オージープランツを多数取り入れ、カンガルーやコアラの置物が馴染み、日本に居ながらオージーライフスタイルを実現させた庭完成までの密着レポートをお届けします。
目次
オージーガーデニングの腕を振るう作庭

私は定年退職後、それまで趣味だったガーデニングを「仕事」にして、早12年近くになる。その期間は、植物園の相談員をしながら細々とオージーガーデンの作庭をしてきた。以前、オーストラリア大使館の「自然庭園」の庭づくりの手伝いをしたこともあったが、2022年春、東京郊外のテラスハウスに住む、在日オーストラリア人からオージーガーデンの作庭の依頼を受けたのだ。以前も在日オーストラリア人のガーデンレッスンは数件実施したことがあるが、作庭は初挑戦となる。

庭の施主は、私がかつて駐在したメルボルンの郊外の出身の方ということもあり、意気投合し、とても楽しく仕事をさせていただいた。庭にカンガルーとコアラの置物を配した陽気なオージーガーデンが出来上がったので紹介したいと思う。
なお、この庭のオリジナリティーに貢献してくれたカンガルーとコアラの置物は、施主がコツコツと通販で買い集めたコレクション!
庭づくりは2021年秋にスタート

最初にお声がかかったのは2021年の10月である。これから寒くなっていくという10月にオージープランツを植え付けるのは植物にとってよくないので、植え付け作業は暖かくなる春に実施することにした。それまでは既存の植物の中から不要なものを撤去し、来春に備えて伐採・伐根と整地をすることにした。10月早速、私と施主様で一緒に作業をしたのだが、オーストラリアの男はパワーがある。私の3倍位のスピードで、瞬く間に不要な植物を伐採・伐根してくれた。
オージーライフスタイルを実現する庭デザインとは

そして春3月がやってきた。冬の間にきれいに整地をしていてくれていたので、穴を掘って軽石などで水はけをよくし、植え付けるだけだ。テラスハウスの庭はほぼ正方形の10坪程度だが、日当たりのよい恵まれた環境。オージープランツにはもってこいの庭だ。事前に植栽したい植物を打ち合わせして決めておいた。
施工にあたっては、庭に接するリビングからの眺めや、庭に出ても心地よくオーストラリアの爽やかな風が感じられることを大切にした。オーストラリアでは日常的な「オージーBBQとワイン」が楽しめる、オージーライフスタイルが実現する庭だ。

テラスハウスという条件のため、隣家との境界や目の前に建つ棟からの視線を遮り、プライバシーを確保するために、ある程度の高さに育つアカシアやユーカリ、メラレウカなどを周辺に配置した。
そして、リビングからはBBQが楽しめる芝生越しに、低木のバンクシアやグレヴィレアの花が眺められるように植栽計画を考えた。
さて、オージープランツの植え付けだが、オージープランツは水はけがよいことが大事である。そのため、必ず植え穴の底に軽石を敷いてから植え付けるようにしている。

植え付ける時の用土は種類によってブレンドを変えるのも丈夫に育てるためのコツだ。例えば、メラレウカ、ユーカリ、アカシアは庭土に腐葉土を3割程度混ぜ込むような普通の植木の用土同様で良いが、バンクシアやグレヴィレアは、腐葉土・軽石・鹿沼土を各2割ずつ程度混ぜ込むようにしている。また、庭に植える場合には肥料は必要ない。

植えた植物リストは下記の通り。オージープランツを中心に16種を揃えた。
コーストバンクシア/カリステモン/グレヴィレア‘ピーチ&クリーム’/ジャカランダ/アカシアブルーブッシュ/木生羊歯ディクソニア/ドドナエア/コルディリネ・レッドスター/メディカル・ティーツリー/シルバーティーツリー/ハーデンベルギア/ニューサイラン/アガパンサス/カンガルーポー/フランネルフラワー

3月中旬に知人にも手伝ってもらい、丸1日で植え付けを完了することができた。そして芝を張り、バークを敷き詰めた。昨年の10月の状態から大きく変化を遂げた。

オーストラリアでは、広い芝生の庭は基本だ。そして一般家庭でも、公園、学校などの公共施設でも地面が露出していることは滅多にない。必ず芝生かウッドチップ、あるいはグラウンドカバープランツで表面を覆うので、今回もそのようにした。
オーストラリアの住宅事情と比べると日本の住宅の庭は猫の額でしかないが、それでも施主様は喜んでくれた。

庭づくり完了後のお土産には、懐かしいオージーミートパイをいただいた! 美味しかった。
華やかさを増す4月以降の庭
植栽を終えた1カ月後には、芝生も緑になった。バークを追加し、フランネルフラワーやハナカンザシ等を植え、華やかで落ち着いた雰囲気になった。各コーナーの見所を紹介しよう。

左からアカシアブルーブッシュ、白い花はフランネルフラワー、ニューサイランの明るい剣葉がアクセントとなって引き締め役に。

何と言ってもカンガルーの像が存在感大です。その右は、グレヴィレア‘ピーチ&クリーム’。下草にグラス類のフォスツカ・グラウカを植え自然らしさを演出。

右手前のドドナエアの葉が4月は未だ銅色。その奥が、カリステモン、角地にはコルディリネ・レッドスターで引き締めた。

沢山のカンガルーとコアラたちが、このオージーガーデンの立役者だ。右がコーストバンクシア、その奥にジャカランダを植えたが、4月は未だ棒の状態。手前にカンガルーポーやウエストリンギアも見える。

その後、ジャカランダとバンクシアが開花した。
今回セレクトした植物を解説!
それでは、今回植栽した、植物について触れておきましょう。そのほとんどが、これまでに筆者が当サイトで紹介してきた植物なので、それらも併せてご紹介します。

木にしがみつくコアラの横には、最近人気のコルディリネ・オーストラリスを植栽。
●スタイリッシュな庭づくりに必須「コルディリネ・オーストラリス」

カンガルーがまるで動き出しそう⁈ 伸び上がる斑入りの葉が雰囲気を引き締めてくれるのがニューサイランです。

グレヴィレア‘ピーチ&クリーム’はオレンジからグリーンのグラデーションが美しい四季咲き性で、真冬以外4〜11月に咲き続けるのでおすすめです。

中央の小さなカンガルーを取り囲むよう赤と黄色の花をつけているのは、カンガルーポーです。ピンク花もポピュラーになりました。

バンクシアは、日本ではまだなかなか入手が難しく高価ですが、やはりオーストラリアの代表的な植物ですから、今回の庭に必須となりました。
●これからの庭木「バンクシア」に注目! 育て方と種類をオージープランツ栽培の達人が伝授

写真左は、ティーツリーと呼ばれていますが、メラレウカではなく、レプトスパルマンの仲間です。シルバーリーフがきれいな庭木です。
写真→は、最近人気のアカシアの仲間です。シルバーブルーの葉が魅力的。

ドドナエアは蒸し暑さにも比較的強く、寒さもマイナス5℃程度まで耐える常緑低木。関東以西では庭木としてもおすすめです。冬に銅葉になるのが魅力。

オーストラリア東海岸が原産のハーデンベルギアはつる性なので、フェンスに絡めて育てます。白花もありますが、今回は紫をチョイス。

コンパクトな株姿で最近、寄せ植え用花材としても人気です。花はドライフラワーにもなります。地際付近の彩りとして活躍してくれるでしょう。

花弁に細かい産毛が密生してフランネル生地のような優しい感触の花びらを持ち、銀白色の葉が織りなすモダンアートな雰囲気のフランネルフラワーは、オージープランツの代表品種です。
そして、植え付けから半年経過した9月の庭では、猛暑を超えて枯れる事もなく、すくすくと見違えるほどに成長していて一安心。日本の住宅事情であっても、故郷を身近に感じる陽気なオーストラリア人のオージーガーデン。とても楽しい庭づくりとなりました。
施主様は、この庭のことについてレポートを公開しています。異国で、故郷のオーストラリアの庭づくりを成し遂げて、喜んでいる様子が目に浮かびます。
Credit
写真&文/遠藤 昭
「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー。
30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
ブログ「Alex’s Garden Party」http://blog.livedoor.jp/alexgarden/
インスタグラム alex_garden_yokohama