冴えたブルーの花が印象的なシノグロッサムは、春のガーデンでアイキャッチとなる存在感があります。この記事では、シノグロッサムの基本情報や特徴、名前の由来・花言葉、種類、よく似た花、育て方などについて、詳しくご紹介します。
目次
シノグロッサムの基本情報
植物名:シノグロッサム
学名:Cynoglossum amabile
英名:Chinese forget-me-not、Chinese hound’s tongue
和名:シナワスレナグサ(支那勿忘草)
科名:ムラサキ科
属名:オオルリソウ属
原産地:東アジア
分類:一年草
シノグロッサムの学名はCynoglossum amabile(シノグロッサム・アマビレ)、和名はシナワスレナグサ。ムラサキ科オオルリソウ属の一年草です。原産地は中国南西部などで、寒さにやや強い性質を持っていますが、寒冷地では冬越しが難しいので、春に種まきして育てるとよいでしょう。草丈は50〜70cmで、花壇では中段〜後段に向いています。
シノグロッサムの花や葉の特徴
園芸分類:草花
開花時期:4〜6月
草丈:50〜70cm
耐寒性:強い
耐暑性:弱い
花色:青、ピンク、白、紫
シノグロッサムの開花期は4〜6月です。花色は青、ピンク、白、紫。花径1cmほどの5弁花で、楚々とした小さな花ですが、花つきがよく満開時は見応えがあります。開花後には実がつき、種の採取が可能です。シノグロッサムの葉は、先がややとがる楕円形で対生につき、表面に細かい産毛を持っています。
シノグロッサムの名前の由来や花言葉
学名Cynoglossum amabileの「Cynoglossum」は「犬の舌」という意味で、葉の形が犬の舌に似ていることから。「amabile」は「かわいい」という意味です。
和名のシナワスレナグサは、ワスレナグサに似た中国原産の花という意味合いから名付けられたとされています。シノグロッサムの花言葉は「真の愛情」です。
シノグロッサムの園芸品種
シノグロッサムは、いくつかの園芸品種が流通しています。ブルーの発色が美しく、切り花にも向く‘メモリーマリンブルー’や、優美なパステルピンクの花を咲かせる‘ミステリーローズ’、清楚な白花が魅力のホワイトなどがポピュラーです。
シノグロッサムに似た花
シノグロッサムによく似た花がいくつかあるので、ここでは主なものをご紹介します。
ワスレナグサ
ワスレナグサの学名はMyosotis(ミオソティス)。ムラサキ科ワスレナグサ属の一年草です。原産地は世界中の温帯地域で、やや湿り気のある環境を好み、極端に乾燥すると葉が黄色く枯れ込んだり、しおれたりすることがあります。草丈は10〜50cm。一般に出回っている種類は10〜20cmですが、中には40〜50cmにまで成長する高性種もあります。開花期は3月下旬〜5月。花色はパステルブルーが最もポピュラーですが、ピンク、白、紫などもあります。
ブルンネラ
ブルンネラの学名はBrunnera macrophylla(ブルンネラ・マクロフィラ)。ムラサキ科 ブルンネラ属の多年草です。原産地は東ヨーロッパ、西アジア、西シベリアで、寒さに強い性質です。草丈は30〜40cm。開花期は4〜5月で、花色は青、白があります。葉はやや大きくぽってりとした楕円形で、白い斑入り葉がポピュラーです。
アンチューサ
アンチューサの学名はAnchusa。ムラサキ科アンチューサ属で、種類によって一年草、二年草、多年草に分類されています。原産地はヨーロッパ、アジア、アフリカなどで、寒さに強い一方で高温多湿に弱い特徴があります。開花期は4〜6月、花色は青紫、水色、ピンク、白。草丈は20〜100cmで、種類によって異なります。
シノグロッサムの栽培12カ月カレンダー
開花時期:4〜6月
植え付け・植え替え:10月下旬〜11月上旬、3月頃
肥料:3月上旬
種まき:10月頃
シノグロッサムの栽培環境
日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たりがよい場所で管理します。半日陰の環境でも育ちますが、極端に日照不足になると、葉色が冴えなくなったり、茎葉が間のびしたりするので注意しましょう。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】風通しのよい場所を好みます。水はけ・水もちのバランスがよい、ふかふかとして腐植質に富んだ土壌で育てましょう。
耐寒性・耐暑性
耐寒性は強いため、特に寒さ対策の必要はありません。耐暑性はなく、夏に枯れる一年草なので、夏には抜き取って処分しましょう。
シノグロッサムの育て方のポイント
用土
【地植え】
丈夫な性質で土壌を選びませんが、植え付ける1〜2週間前に、腐葉土や堆肥などの有機質資材を投入し、よく耕してふかふかの土を作っておくとよいでしょう。
【鉢植え】
草花用にブレンドされた市販の培養土を利用すると便利です。自身で配合土を作る場合は、赤玉土7、腐葉土3の割合で混ぜ合わせるとよいでしょう。
水やり
【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、水切れしないように管理しましょう。根付いた後は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、水やりをして補います。その際は、株が蒸れるのを防ぐために株全体にかけるのではなく、ジョウロのハス口を外して、株元の地面を狙って与えてください。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。株が蒸れるのを防ぐために株全体にかけるのではなく、ジョウロのハス口を外して、株元の地面を狙って与えてください。
肥料
●元肥
苗を植え付ける際に施す肥料が、元肥です。元肥を施すことで苗の初期生育を助け、茎葉をしっかり茂らせることにつながります。
【地植え】
植え付ける前に腐葉土や堆肥などの有機質肥料を施しておきましょう。
【鉢植え】
鉢植えの場合、市販の培養土には肥料が含まれていることが多いので、元肥を施す必要があるかどうか確認し、必要な場合は緩効性化成肥料を施しておきます。
●追肥
植え付けた苗が順調に生育し、元肥の効き目が切れた頃に与えるのが追肥です。
【地植え】
秋に植え付けた場合は、生育が盛んになる少し前の3月上旬に、緩効性化成肥料を施すとよいでしょう。春に植え付けた場合は、元肥を施してあれば十分。あまり与えすぎると、茎葉ばかりが旺盛に茂ってかえって花つきが悪くなることもあるので注意します。ただし、生育が悪いようなら速効性のある液肥を与えて様子を見ましょう。
【鉢植え】
鉢栽培の場合は、水やりとともに肥料成分が流失しやすいので、追肥をして株の勢いを保つようにします。春から生育が盛んになるので、月に1度を目安に緩効性化成肥料を表土にばらまき、軽く土になじませます。もしくは10日に1度を目安に、速効性のある液肥を与えてもよいでしょう。開花期は開花促進の効果がある、リン酸やカリ分などを多く含んだ液肥を選ぶと花つきがよくなります。
注意する病害虫
【病気】
シノグロッサムに発生しやすい病気は、うどんこ病、モザイク病などです。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放置するとどんどん広がるので注意。症状が進むと光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用のある殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
モザイク病はウイルス性の病気で、アブラムシやアザミウマ、コナジラミなどの虫が媒介となって発生します。したがって、発症しやすい時期はアブラムシなどの活動が活発な春から秋にかけて。主に花や葉にモザイク模様が現れます。症状が進むとウイルスの種類によっては葉などが縮れてきたり、湾曲して変形したりし、株の生育が著しく悪くなります。治療効果のある薬剤はないので、発生したら抜き取って土ごと処分し、周囲に蔓延するのを防ぎましょう。アブラムシ対策をしておくことが、抑制につながります。
【害虫】
シノグロッサムに発生しやすい害虫は、アブラムシです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、シャワーではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
シノグロッサムの詳しい育て方
種まき
シノグロッサムの種まきの適期は10月頃で、発芽適温は15℃前後です。種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなります。
ただし、シノグロッサムの苗は春から花苗店に出回り始めます。手軽に栽培したいなら、苗の植え付けからのスタートがおすすめです。「1〜2株あれば十分だから、苗の植え付けから始めたい」という方は、後ろの「苗の選び方」の項に進んでください。
【直まき】
ポットなどで育苗せずに、花壇に直接種を播くことを「直まき」といいます。日当たり・風通しのよい場所を選び、種まきの1〜2週間前に腐葉土や堆肥などを混ぜ込んで、ふかふかの土壌づくりをしておきましょう。種は、播く前日に、一晩水に浸けて吸水させておきます。花壇に種をばらまきし、ごく薄く土をかぶせて手で押さえます。発芽したら、苗が重なっているところや、込み合っている部分を間引いて調整します。間引く際は、ヒョロヒョロと伸びたか弱い苗や、傷がついている苗など、生育が悪いものを選ぶとよいでしょう。最終的に苗の間隔は20〜30cm取ります。
【ポットまき】
ビニール製の黒ポットに種を播いて育苗することを「ポットまき」といいます。培養土は、赤玉土7、腐葉土3の割合で混ぜ合わせた配合土を準備しましょう。市販の種まき用にブレンドされた培養土を用いてもかまいません。種は、播く前日に、一晩水に浸けて吸水させておきましょう。黒ポットに用土を入れ、2〜3粒ずつ種を播き、ごく薄く土をかぶせて手で押さえます。発芽後、弱々しい苗は間引いて最終的に1本残します。日当たりがよく暖かい場所に置き、適切に水やりをして管理しましょう。
苗の選び方
シノグロッサムは、種まきから育てることが多いですが、苗も出回っています。苗から育てる際は、黄色くなった葉や病害虫の痕がなく、株元がしっかりしていて間のびしていないものを選ぶとよいでしょう。
植え付け・植え替え
植え付けの適期は、10月下旬〜11月上旬か、翌年の3月頃です。ポットに種まきして育てた苗、または花苗店で入手した苗を植え付けます。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗を植え付けます。こんもりと茂るので、複数の苗を植え付ける場合は、20〜30cmの間隔を取っておきましょう。植え付けた後に、たっぷりと水やりします。
シノグロッサムは越年できない一年草で、暑くなると枯れてしまうので、植え替えの必要はありません。草姿が衰えたら、早めに抜き取って次のシーズンの草花を植えるとよいでしょう。
【鉢植え】
鉢の大きさは、5〜6号鉢に1株を目安にします。
用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。苗をポットから取り出して鉢に仮置きし、高さを決めます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として、大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。
シノグロッサムは越年できない一年草で、暑くなると枯れてしまうので、植え替えの必要はありません。草姿が衰えたら、早めに抜き取って次のシーズンの草花を植えるとよいでしょう。
日常のお手入れ
【花がら摘み】
シノグロッサムは次から次へと花が咲くので、終わった花は早めに摘み取りましょう。株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながります。また、いつまでも花がらを残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
【枯れ葉の整理】
葉が茂りすぎると、蒸れて茎葉が傷むことがあります。枯れ込んだ葉があれば、早めに摘み取って風通しをよくし、株まわりを清潔にしておきましょう。
【育苗中の冬越し】
シノグロッサムは寒さに強いので戸外で越冬できますが、苗が幼いうちは株元にバークチップなどを敷き詰めておくとよいでしょう。冬に水やりする際は、夕方に行うと凍結の原因になるので、気温が十分に上がった昼間に与えるようにしてください。
増やし方
シノグロッサムは、開花した後につけた種を採取し、種まきして増やすことができます。そろそろ開花期が終わるという頃に花がら摘みをやめて結実させ、完熟したら種を取ります。採取した種は密閉できる保存袋に入れて、種まきの適期まで涼しい場所で保管しておきましょう。
シノグロッサムの美しいブルーを庭に取り入れよう
発色の美しいブルーの花が魅力的なシノグロッサム。小花を次々と咲かせる姿は、楚々としてナチュラルスタイルの庭で活躍します。ガーデンやベランダに迎えて、優しい花姿を愛でてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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