イギリスのお茶菓子の定番中の定番といえば、「ジャムタルト」。ティールームで提供されるというよりは、お家で作る素朴な菓子として親しまれています。イギリス人にとっては、学校で作り方を習ったり給食にも出るような懐かしの味。今回ご紹介するのは、イギリスのお菓子の基本となるタルト生地「ショートクラスト ペイストリー」で作るレシピです。シンプルながら奥深いこの基本生地を学ぶのに最適な、素朴で懐かしい味わいのジャムタルトは、小腹が空いた時にパッと食べられる気軽さも魅力。ぜひ、花咲く庭を愛でるお家のティータイム用に作ってみてください。
目次
イギリスのお茶菓子の定番「ジャムタルト」

イギリスのお茶菓子の定番中の定番といえば「ジャムタルト」(イギリスの発音ではジャムターツ(Jam tarts))。ジャムタルトと紅茶があれば、そこはもうイギリスのお家のティータイム!
ティールームなどで出てくるというよりは、お家で作る素朴なお菓子です。日本で例えれば、緑茶と共に出てくるお煎餅といったところでしょうか。
ジャムタルトとは何か? というと、ご想像のとおりジャムが入ったタルトです。私はパティシエなので、ジャムだけでは素朴すぎて、スパイスやナッツなど色々足したくなってしまいますが、このジャムタルトは、絶対にこの素朴さがいい! というお菓子です。ちなみに、我が家の子供たちの感想は「美味しいけど……まあまあだね」という微妙な反応でしたが。
なんともシンプルなお菓子ですが、何種類かジャムを使えばカラフルになり、パッとテーブルが華やかになるのも人気の秘密ではないでしょうか。
ジャムを使ったイギリスのお菓子たち

以前ご紹介したクイーン・オブ・プディングやバタフライカップケーキ、ビクトリアスポンジもそうですし、ロールケーキのスポンジ生地にジャムを巻いたスイスロールというお菓子も定番で、あげれば切りがありません。イギリスの気候的に、短い夏の間に収穫したフルーツをジャムにして保存しておくのが、昔から習慣としてあるからでしょうか。
今回ご紹介する「ジャムタルト」はタルト生地の余りを使って作ることもできる手軽なお菓子なので、お子様と一緒に作るのも楽しいでしょう。イギリスでは学校で作ったりもするそうですよ。

ちなみに、今回ご紹介するタルト生地は“ショートクラスト ペイストリー”といって、イギリスのお菓子の基本となるタルト生地です。粉の量に対して油分が1/2というのが基本。そこに少量の水を入れてまとめるだけの生地で、砂糖も入っていないので、お菓子だけではなく、キッシュやミートパイなど、お料理にも使われます。油分はバターのほかに、ラードやマーガリンなどが使われることもあります。それによって食感も違ってくるので、シンプルですが奥が深い生地です。この生地は砂糖入りや卵入りなどバリエーションもあって、そういったものは“リッチ ショートクラスト ペイストリー”と呼ばれます。
エピファニーに食べるお菓子

1月6日のエピファニー(Epiphany=キリスト教の祝日で、イエス・キリストの顕現を記念する日)の時にはジャムタルトの形を変えただけの、その名も「エピファニータルト」という菓子があります。他の国でもエピファニーというと定番のお菓子がありますが、日本でも有名なものとしてはフランスの「ガレット・デ・ロワ」があります。ガレット・デ・ロワは最近ではよく売られているので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。イギリスのエピファニータルトはパティスリーで売るような凝ったお菓子ではないので、なかなか知る機会がないかもしれません。

このエピファニータルトは大きな型で作ります。表面には余っているタルト生地を細長く切り、それを並べて、星型を作り、13個に区切ります。その区切られた一つ一つに、それぞれ違う種類のジャムを入れて、カラフルなタルトを作ります。カットされた部分で違う味が楽しめるというお得なタルト!

イギリスのジャムタルトが絶滅の危機?
イギリスではこのジャムタルト、大きなバットで作って学校の給食で出されたりするそう。イギリス人にとっては、とにかく懐かしの味! といったお菓子なのではないでしょうか。
でも先日読んだイギリスの記事によると、ジャムタルトやビクトリアスポンジなど、イギリスの昔ながらのお菓子はどんどんなくなってきていて、遠くない将来全く見られなくなるかもしれないというのです。その記事のコメント欄には「いやいやいや、そんなはずはない!」と反論のメッセージもありましたが、昔ながらのお菓子はやっぱり少なくなってきてしまっているのかと寂しく思います。
私は、イギリスから離れた地に住んでいても、こういった昔ながらの伝統的なイギリス菓子を作り続けます! だから私が生きている限り、昔懐かしいイギリス菓子がなくなることはないですね。
ジャムタルトの作り方のポイント

このジャムタルト、シンプルですがとっても難しいポイントがあります。
それはジャムを入れすぎないこと! だけど、欲張りで大雑把な私は、毎回入れすぎてしまって、いつも何個か溢れてしまいます。溢れると型から外れなくなってしまうので要注意です。でもつい沢山入れたくなってしまいますよね?
ジャムの種類によっても、火が入ると流れやすいものもあるので、何回か作ってみるとコツが掴めるようになります。今回作った経験では、ボンヌママンのいちごジャムはとても溢れやすかったです。
絶対に溢れさせたくない方は、今回使った直径約7cmよりも一回り大きなサイズの型で生地を抜けば、もう少しだけ深いタルトになるので、ジャムがこぼれるのを軽減できます。
それでは作っていきましょう!
ジャムタルトの作り方

材料 直径7cmのマフィン型約24個分
- 薄力粉……200g
- 塩……少々
- 無塩バター……100g
- 水……大さじ4〜6
- ジャム……お好みのもの適量
今回はイチゴ、ブルーベリー、柚子マーマレード使用
作り方


1. 薄力粉、塩、バターをボウルに入れ、両手をすり合わせて全体がサラサラの状態にする(この作業はフードプロセッサーを使ってもよい)。

2. 水を入れ、ナイフなどで切るように混ぜる。まずは大さじ4を入れてみて、まとまらなかったら大さじ1ずつ足すとよい。気温や湿度によって入れる量は変わる。


3. 全体をひとまとめにしたら、ラップで包んで冷蔵庫で最低30分休ませる。

4. オーブンを180℃に予熱する。休ませた生地を2〜3mmの厚さに伸ばして、直径約7cmの型で抜く。



5. 生地をマフィン型に入れたらジャムを小さじ1杯分くらいずつ入れていく。
6. 180℃のオーブンで約20分焼く。


7. 焼けたら冷まして出来上がり。


ティータイムのお供に気軽に作ってもらえたら嬉しい「ジャムタルト」。私は朝ごはんに食べてしまったのはここだけの秘密です。サイズ的に、小腹が空いた時にパッと食べられる気軽さも魅力!
イギリスの定番の生地をマスターするには、とてもよいお菓子です。ぜひチャレンジしてみてください。
Credit
写真&文 / The Pudding Party Tomo - イギリス菓子研究家/パティシエ -

イギリスのプディングの美味しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと活動する、イギリス菓子研究家、パティシエ。ル・コルドン・ブルー横浜校にて菓子ディプロムを取得。英国コッツウォルズのスリーウェイズ・ハウス・ホテルにてイギリス伝統菓子作りの腕を磨く。
〈The Pudding Party Tomoとイギリス菓子作り〉 https://youtube.com/channel/UCV1hGcG5t0SELBBiuJ1GqBA
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