イギリス人なら知らない人はいないという、国民的定番ケーキのビクトリアスポンジ。紅茶との相性が抜群で、イギリスのティールームでは必ず見かけるケーキです。その作り方はいたってシンプル。スコーンに加えてこのレシピをマスターすれば、素敵な英国式ティータイムが楽しめるようになりますよ。イギリス菓子研究家でパティシエのTomoさんに教えていただきます。
目次
ビクトリア女王が好んだケーキ

イギリス伝統のビクトリアスポンジは、近頃、日本でも少しずつ見かけるようになってきました。バラの庭でのアフタヌーンティーをご紹介した前回の記事でこのケーキを取り上げましたが、今回は作り方をお教えしますね。
日本ではビクトリアケーキともいわれていますが、イギリスでは、ビクトリアスポンジ、もしくは、ビクトリアサンドイッチと呼ばれます。ビクトリア、といえば、思い浮かぶのは19世紀にイギリスを治めたビクトリア女王。このケーキはその名のとおり、大英帝国の発展を支えた偉大な女王が好んだものといわれています。
その素敵な名前とは裏腹に、ビクトリアスポンジはなんともシンプルなケーキです。スポンジケーキを2枚焼いて、その2枚でラズベリージャムを挟むだけという、信じられないほどのシンプルさ。ですが、とっても人気のあるケーキで、私もおもてなしの際に何度もお出ししていますが、なぜか特に男性受けがとてもいいのですよ。

ちなみに、スポンジといっても、日本のふわふわしたショートケーキのスポンジとは別物で、生地はしっかりとしています。ビクトリアスポンジのスポンジ部分は、焼き菓子の定番であるバターケーキと同じく、バター、砂糖、卵、粉、が同量、というレシピ。作り方も、泡立て器で卵を泡立てることはせず、木べらで混ぜるだけです。イギリスのケーキにふわふわしたものはほとんどない、といってもよいでしょう。イギリスのケーキはとにかくどっしりしていて食べ応えがあり、そして、紅茶によく合うものばかりです。
日本のショートケーキは、ふわふわで口溶けのよいスポンジに、スッととろける生クリームが美味しさの魅力だと思いますが、イギリス人にしてみたらふわふわすぎて、何だこれは? と戸惑うのではないでしょうか。とはいえ、最近、イギリスでもふわふわした食パンも出てきましたし(それでも日本の軽さとは比較にならないですが)、軽い食感も人気になってきたのかもしれません。イギリスの一般的な食パンはドライで硬く、トースターでカリカリにして食べるのが美味しく、私もそのカリカリが大好きです。私の食感の好みはどうもイギリス人に近いようで、例えば、日本で人気のシフォンケーキは食べた気にならないので、あまり好みではありません。
大切な3つのルール

さて、ビクトリアスポンジを作る上で、シンプルなケーキだからこそ私が大事にしている3つのルールがあります。まずは、スポンジについて。ビクトリアスポンジはスポンジ2枚でジャムを挟むと言いましたが、このスポンジは2枚焼きます。どういうこと? と思われる方もいるかもしれません。日本では一つのケーキを焼いて半分に切ってサンドするのが一般的ですが、イギリスではサンドイッチティンという2枚セットの浅いケーキ型があって、これを使います。この型は、じつに優れもの。このセットを使って2枚同時に焼けば、ケーキをカットする手間が省けるし、焼き時間も短くできます。合理的なイギリス人らしさが表れている焼き型です。

そして、何よりサンドイッチティンの素晴らしいところは、焼けてカリッとした面が、スポンジ2枚の上下で、合わせて4面もできること。これによって、1枚の高さのあるスポンジを半分に切る場合より、食感がよりしっかりとしたものになります。というわけで、私のビクトリアスポンジ、1つ目のルールは〈スポンジを2枚焼く!〉。しっかりと焼けている食感のほうが、絶対に美味しいからです。サンドイッチティンは日本にはありませんが、普通の型を2つ用意すれば大丈夫です(今回は100円均一の店で購入したものを使用しました)。

2つ目のルールは〈ラズベリージャムだけをサンドする!〉です。バタークリームや生クリームを一緒に挟むレシピもあって人気ですし、最近ではレモンカードを挟むレシピもあるようです。要は好みの問題ですが、私はとにかく、ラズベリージャムだけ、というのがシンプルで好きです。
そして最後、3つ目のルールは〈上にかけるのはグラニュー糖!〉です。表面に粉糖をかけるレシピもあるのですが、私は断然グラニュー糖派。シンプルなケーキに、ちょっとジャリッとした食感が加わって、アクセントになります。
さあ、あとはミルクティーがあれば、幸せなティータイムが待っています。それでは、作っていきましょう。
ビクトリアスポンジの作り方

材料(直径12cmのケーキ型 2つ分)
- 無塩バター……65g
- きび砂糖……65g
- 卵……1個
- 薄力粉……65g
- ベーキングパウダー……小さじ1/2
- ラズベリージャム……適量
- グラニュー糖……適量
作り方
1.オーブンを170℃に予熱する。ケーキ型にオーブンペーパーを敷く。バターを木べらで柔らかくする。木べらがなければスパチュラを使ってもOK。

2.砂糖を加えて白っぽくなるまで混ぜる。

3.溶いた卵を少しずつ加え、その都度しっかりよく混ぜる。


4.薄力粉とベーキングパウダーをふるい入れる。

5.木べらでさっくりと混ぜる。

6.用意しておいた2つの型に均等に入れ、170℃のオーブンで20~30分焼く。

7.焼けたらそのまま冷ましておく。

8.冷めたら型から外し、1枚のスポンジの表面にジャムを塗る。


9.もう1枚のスポンジをのせ、表面にグラニュー糖を振りかける。

出来上がり!

お好きな茶器に紅茶をたっぷり入れて、ティータイム。
ぜひ皆さんも、このシンプルなレシピ、マスターしてくださいね。
Credit
写真&文 / The Pudding Party Tomo - イギリス菓子研究家/パティシエ -

イギリスのプディングの美味しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと活動する、イギリス菓子研究家、パティシエ。ル・コルドン・ブルー横浜校にて菓子ディプロムを取得。英国コッツウォルズのスリーウェイズ・ハウス・ホテルにてイギリス伝統菓子作りの腕を磨く。
〈The Pudding Party Tomoとイギリス菓子作り〉 https://youtube.com/channel/UCV1hGcG5t0SELBBiuJ1GqBA
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