酸味と甘みが絶妙でバターのようにクリーミーな「レモンカード」。イギリス伝統のスプレッドで、じつはジャムよりも短時間で簡単に作ることができます。パンやスコーン、スイーツに合わせるソースとしても優秀で、メレンゲパイなどにも使われています。今回は自家製レモンカードを作り、カルダモン香る美味しくて可愛いレアチーズケーキのレシピを神奈川県葉山で植物を身近に暮らしながらアンティークバイヤーとして活動中のルーシー恩田さんに教えていただきます。
レモンカードとは

イギリス好きにはお馴染みの「レモンカード」。アフタヌーンティーのスコーンのお供に欠かせない甘酸っぱい、あの子。イギリス伝統のスプレッドです。レモンカードはバターのようにクリーミーで、酸味と甘みがクセになるジャムみたいなもの。レモン味のカスタードソースと思ってもらえば想像しやすいかもしれません。ちなみにカードは「curd (凝固する)」という意味です。

レモンカードはとってもシンプル! 「卵」「バター」「砂糖」「レモン」4つの材料さえあれば、裸一貫! 鍋一つで、あっと言う間に完成する魅力的なスプレッド。近年は日本でも見かけることが増えました。
1800年代にイギリスで誕生したと言われているレモンカード。当時のレシピは、レモン果汁でクリームを分離させた「レモンチーズ」のようなものだったとか。それが時を経て現在のような「レモンカード」に進化したようです。イギリスのレシピ本などを見ていると「Lemon Butter (レモンバター)」と表記されているものもありますが、それもレモンカードと同じモノ。

レモンは庭木としても優秀。常緑で花が長く咲き、実が収穫できる嬉しいこと尽くしの木。私の住む神奈川県でも、庭でよく見かける木です。秋から春先にかけては、レモンの収穫シーズン。自家製レモンがお手元にある方にも、レモンカード作りはおすすめです。
レモンにはカルダモンを

レモンと相性のよいスパイス、私のおすすめは断トツ! でカルダモン。カルダモンはインド南西部を原産とする熱帯地方で栽培されているショウガ科の多年草です。中国やインドでは3000年以上も前から香辛料や医療品として使用されてきた、古い歴史を持つスパイス。媚薬としても使われていたんだとか! キャー♡ 確かに、カルダモンの香りはフルーティーで温かみがあり、甘酸っぱく、スモーキーだけれど清涼感がある、とびきりセクシーな香り。

漢方では、小荳蒄(しょうずく)と呼ばれ重宝されています。お腹の調子を整えたり、咳や痰をおさえる効果、口臭予防、リラックス効果などがあります。
香気を保つために果皮をつけたまま販売されていますが、食用に使用する時は皮を剥き、中にある黒っぽい、ツブツブした果実を使用します。

私のレシピにも頻繁に登場するカルダモン。キャロットケーキやチャイ、カレーにも欠かせないスパイスです。カルダモンの香りはレモンやユーカリを彷彿とさせるような、清涼感のある上品な香りなので、レモンに合わせることで相乗効果。レモンの酸味に奥深い香りが生まれます。
スパイス本来の香りを楽しむ「乳鉢」

カルダモンはチーズとの相性も抜群。今回はクリームチーズにカルダモンをたっぷり使用します。可能であれば、ホールのカルダモンを乳鉢ですり潰してみてください。粉砕することによって、スパイスやハーブに含まれる「香り」成分がブッシャーっと勢いよく飛び出してきます。フレッシュで力強く、想像を絶する香りに酔いしれることでしょう。本当よ、騙されたと思って試してみて♡ 百聞は一見に如かずなりです。市販のパウダーとは全く違う香りに驚くはず。

乳鉢にはさまざまな素材の選択肢があります。陶器や木材、ガラスやステンレスなどなど。私のおすすめは大理石のもの。香りが移らずお手入れも簡単、そしてキッチンに出しっ放しでも可愛いというチャームポイントも。お値段も3,000円くらいからとお手頃です。

「レモンカード」は家庭的でとても簡単

以前はレモンカードって崇高な食べ物だと思っていました。だって近所のスーパーでは見かけないし、オシャレな名前だし。でもじつは家にある材料、たった4つで簡単に作れるイギリスの「家庭の味」でした。湯煎で作るレシピが多いですが、手間も洗い物も減らしたい、自称「簡略家」な私は鍋で作ります。火力に注意さえすれば大丈夫。万が一うまくいかなくても、失敗は成功のもと。私たち人類は失敗から学ぶことができる素晴らしい生き物。まぁ気楽にやりましょう。
■ 材料

- 卵 2個
- バター 100g
- レモン 2個 ※果汁は約100ml、皮はすりおろして使う
- 砂糖 100g
■ 作り方
- 鍋に卵を割り入れ、グラニュー糖を加えてすべて混ざるまで、泡立て器でよーく混ぜ、レモン汁も加えてさらに混ぜる。
火にかける前に手が疲れちゃうくらい混ぜて、卵の白身と黄身、砂糖に一体感を。 - 弱火〜中火の中間ほどの火にかけ、最初から絶え間なくヘラなどで混ぜ続ける。全体にとろみがついたらサイコロ状にカットしたバターを加え、さらに混ぜる。※温度が高すぎると分離して固まるので注意。
底からしっかりと混ぜましょう。 - 全体が混ざりフツフツしたら、火からおろしてすりおろしたレモンの皮を加えて完成。冷蔵庫で冷やして召し上がれ!
※レモンの皮の白い部分は苦みがあるので、表面の黄色い部分だけ削る。

ちょっと柔らかいかしら? と感じても、バターが入っているので、冷めたら固くなりますからご安心を。冷蔵保存で約2〜3週間。冷凍すれば長期保存も可能です。レモンカードはヨーグルトに加えたり、アイスのトッピング、トーストなど幅広く楽しめます。サクサクに焼いたパイ生地に、生クリームとレモンカードを乗せればレモンパイの完成!
ルーシー流「レモンカード&カルダモンのレアチーズケーキ」

レアチーズケーキって、星の数ほどに存在するスイーツの中で、圧倒的に簡単で見栄えもよいと思いませんか? だって混ぜて冷やすだけなんだもの。それだけであんなに可愛くて美味しいモノができちゃう。今回はそんな万能レアチーズケーキにカルダモンの香りをたっぷりと加えます。そこに先ほど作ったレモンカードでお化粧しちゃう。甘酸っぱさの中にカルダモンのとことん爽快な突き抜ける衝動! あぁ、想像するだけでよだれがでちゃう!
■ 材料 ※15cmの底が外れるケーキ型を使用

生地
- クリームチーズ 200g ※室温に戻しておく
- カルダモン 5粒 (市販のカルダモンパウダーなら小さじ1程度)
- ヨーグルト 100ml
- 生クリーム 200ml
- レモン汁 小さじ2
- ゼラチン 10g ※パッケージの指示通りに戻す
- レモンカード 小さじ1程度
ボトム
- バター 50g ※室温に戻しておく
- ビスケット 70g ※今回はマリーと全粒粉クラッカーを同量
- お好みでエディブルフラワーなど
■ 作り方
- ビスケットはめん棒やフードプロセッサーなどで細かく砕き、レンジなどで溶かしたバターと混ぜ、ケーキ型の底に敷き詰める。
瓶の底などを使い、端までしっかりと潰し固める。 - カルダモンの実を割り、黒い種子を乳鉢ですり潰す。
※市販のカルダモンパウダーを使用する場合は小さじ1程度。
- ボウルに常温に戻したクリームチーズと砂糖を入れ、②を加えて滑らかになるまでよく混ぜ、ヨーグルト、生クリーム、レモン汁、ゼラチン液を順に加え、都度よく混ぜて、①の型に流し入れる。
- ③の表面にレモンカード小さじ1程度を数カ所に垂らして、串などでマーブル柄を作る。
気分は偉大なアーティスト、レアチーズのキャンパスに大胆に描きましょう。いじくりすぎると色が混ざり曖昧な色味になるのでほどほどに。 - 冷蔵庫で2時間ほど冷やして完成! お好みでエディブルフラワーを散らしてみては?

エディブルフラワーを使えば、春爛漫。ガーデンからローズマリーの花付きの枝を拝借してもいいし、ナスタチウムを使っても華やかです。砕いたピスタチオなーんてのもおしゃれね。

今回はレモンカードが誕生した頃の、1800年代のイギリスのお皿を使いました。淡いブルーが特徴的なこのお皿は、1800年代に流行った「アジアティックフェザンツ」というパターン。東洋的なキジと牡丹が描かれたオメデタイ感じのお皿です。うーん♡ かわいい。
料理は「見た目」「香り」「味」すべてがお楽しみ。今回作ったレアチーズケーキの土台はとてもシンプルなものですが、カルダモンとレモンカード、そしてエディブルフラワーを使って、春を感じるケーキにドレスアップ。春はワクワクするシーズン。料理も人生もクリエィティブに楽しまなくっちゃ♡
Credit
写真&文 / ルーシー恩田

ルーシー・おんだ/アンティークバイヤー/IFA認定アロマセラピスト/ITEC認定リフレクソロジスト。20代に訪れたタイ・チャン島でのファスティング(断食)経験から、心・体・生活環境などを全体的にとらえることにより、本来の自然治癒力を高め病気に負けない体づくりを学び啓発される。会社員としてデザインの仕事をしながら英国IFAアロマセラピストの資格を取得。退職後は更なる経験と知識の向上のためイギリスへ渡り、英国ITEC認定リフレクソロジストの資格を取得。現在は家業のイギリスアンティークの買付と販売をしながら、アロマセラピスト的な視点で自家栽培の野菜とハーブを使ったお料理教室やワークショップを開催している。
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