イギリスのプディングの美味しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと活動する、イギリス菓子研究家、パティシエ。ル・コルドン・ブルー横浜校にて菓子ディプロムを取得。英国コッツウォルズのスリーウェイズ・ハウス・ホテルにてイギリス伝統菓子作りの腕を磨く。
〈The Pudding Party Tomoとイギリス菓子作り〉 https://youtube.com/channel/UCV1hGcG5t0SELBBiuJ1GqBA
The Pudding Party Tomo -イギリス菓子研究家/パティシエ-

イギリスのプディングの美味しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと活動する、イギリス菓子研究家、パティシエ。ル・コルドン・ブルー横浜校にて菓子ディプロムを取得。英国コッツウォルズのスリーウェイズ・ハウス・ホテルにてイギリス伝統菓子作りの腕を磨く。
〈The Pudding Party Tomoとイギリス菓子作り〉 https://youtube.com/channel/UCV1hGcG5t0SELBBiuJ1GqBA
The Pudding Party Tomo -イギリス菓子研究家/パティシエ-の記事
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レシピ・料理
英国ティータイムの主役! 基本生地で作る素朴な「ジャムタルト」レシピ
イギリスのお茶菓子の定番「ジャムタルト」 イギリスのお茶菓子の定番中の定番といえば「ジャムタルト」(イギリスの発音ではジャムターツ(Jam tarts))。ジャムタルトと紅茶があれば、そこはもうイギリスのお家のティータイム! ティールームなどで出てくるというよりは、お家で作る素朴なお菓子です。日本で例えれば、緑茶と共に出てくるお煎餅といったところでしょうか。 ジャムタルトとは何か? というと、ご想像のとおりジャムが入ったタルトです。私はパティシエなので、ジャムだけでは素朴すぎて、スパイスやナッツなど色々足したくなってしまいますが、このジャムタルトは、絶対にこの素朴さがいい! というお菓子です。ちなみに、我が家の子供たちの感想は「美味しいけど……まあまあだね」という微妙な反応でしたが。 なんともシンプルなお菓子ですが、何種類かジャムを使えばカラフルになり、パッとテーブルが華やかになるのも人気の秘密ではないでしょうか。 ジャムを使ったイギリスのお菓子たち シンプルなスポンジ生地でジャムを挟んだビクトリアスポンジ。 以前ご紹介したクイーン・オブ・プディングやバタフライカップケーキ、ビクトリアスポンジもそうですし、ロールケーキのスポンジ生地にジャムを巻いたスイスロールというお菓子も定番で、あげれば切りがありません。イギリスの気候的に、短い夏の間に収穫したフルーツをジャムにして保存しておくのが、昔から習慣としてあるからでしょうか。 今回ご紹介する「ジャムタルト」はタルト生地の余りを使って作ることもできる手軽なお菓子なので、お子様と一緒に作るのも楽しいでしょう。イギリスでは学校で作ったりもするそうですよ。 ショートクラスト ペイストリーのタルト生地。 ちなみに、今回ご紹介するタルト生地は“ショートクラスト ペイストリー”といって、イギリスのお菓子の基本となるタルト生地です。粉の量に対して油分が1/2というのが基本。そこに少量の水を入れてまとめるだけの生地で、砂糖も入っていないので、お菓子だけではなく、キッシュやミートパイなど、お料理にも使われます。油分はバターのほかに、ラードやマーガリンなどが使われることもあります。それによって食感も違ってくるので、シンプルですが奥が深い生地です。この生地は砂糖入りや卵入りなどバリエーションもあって、そういったものは“リッチ ショートクラスト ペイストリー”と呼ばれます。 エピファニーに食べるお菓子 フランスの「ガレット・デ・ロワ」Jerome.Romme/Shutterstock.com 1月6日のエピファニー(Epiphany=キリスト教の祝日で、イエス・キリストの顕現を記念する日)の時にはジャムタルトの形を変えただけの、その名も「エピファニータルト」という菓子があります。他の国でもエピファニーというと定番のお菓子がありますが、日本でも有名なものとしてはフランスの「ガレット・デ・ロワ」があります。ガレット・デ・ロワは最近ではよく売られているので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。イギリスのエピファニータルトはパティスリーで売るような凝ったお菓子ではないので、なかなか知る機会がないかもしれません。 このエピファニータルトは大きな型で作ります。表面には余っているタルト生地を細長く切り、それを並べて、星型を作り、13個に区切ります。その区切られた一つ一つに、それぞれ違う種類のジャムを入れて、カラフルなタルトを作ります。カットされた部分で違う味が楽しめるというお得なタルト! 我が家には13種類もジャムがないので、5種類使って作りました。ただジャムの色が似ていて、あまり見分けがつかなくなってしまったけれど、1切れで味の変化が楽しめる贅沢な菓子。 イギリスのジャムタルトが絶滅の危機? イギリスではこのジャムタルト、大きなバットで作って学校の給食で出されたりするそう。イギリス人にとっては、とにかく懐かしの味! といったお菓子なのではないでしょうか。 でも先日読んだイギリスの記事によると、ジャムタルトやビクトリアスポンジなど、イギリスの昔ながらのお菓子はどんどんなくなってきていて、遠くない将来全く見られなくなるかもしれないというのです。その記事のコメント欄には「いやいやいや、そんなはずはない!」と反論のメッセージもありましたが、昔ながらのお菓子はやっぱり少なくなってきてしまっているのかと寂しく思います。 私は、イギリスから離れた地に住んでいても、こういった昔ながらの伝統的なイギリス菓子を作り続けます! だから私が生きている限り、昔懐かしいイギリス菓子がなくなることはないですね。 ジャムタルトの作り方のポイント このジャムタルト、シンプルですがとっても難しいポイントがあります。 それはジャムを入れすぎないこと! だけど、欲張りで大雑把な私は、毎回入れすぎてしまって、いつも何個か溢れてしまいます。溢れると型から外れなくなってしまうので要注意です。でもつい沢山入れたくなってしまいますよね? ジャムの種類によっても、火が入ると流れやすいものもあるので、何回か作ってみるとコツが掴めるようになります。今回作った経験では、ボンヌママンのいちごジャムはとても溢れやすかったです。 絶対に溢れさせたくない方は、今回使った直径約7cmよりも一回り大きなサイズの型で生地を抜けば、もう少しだけ深いタルトになるので、ジャムがこぼれるのを軽減できます。 それでは作っていきましょう! ジャムタルトの作り方 材料 直径7cmのマフィン型約24個分 薄力粉……200g 塩……少々 無塩バター……100g 水……大さじ4〜6 ジャム……お好みのもの適量今回はイチゴ、ブルーベリー、柚子マーマレード使用 作り方 1. 薄力粉、塩、バターをボウルに入れ、両手をすり合わせて全体がサラサラの状態にする(この作業はフードプロセッサーを使ってもよい)。 2. 水を入れ、ナイフなどで切るように混ぜる。まずは大さじ4を入れてみて、まとまらなかったら大さじ1ずつ足すとよい。気温や湿度によって入れる量は変わる。 3. 全体をひとまとめにしたら、ラップで包んで冷蔵庫で最低30分休ませる。 4. オーブンを180℃に予熱する。休ませた生地を2〜3mmの厚さに伸ばして、直径約7cmの型で抜く。 5. 生地をマフィン型に入れたらジャムを小さじ1杯分くらいずつ入れていく。 6. 180℃のオーブンで約20分焼く。 7. 焼けたら冷まして出来上がり。 サンドイッチやスコーンを用意してアフタヌーンティーにしても。 ティータイムのお供に気軽に作ってもらえたら嬉しい「ジャムタルト」。私は朝ごはんに食べてしまったのはここだけの秘密です。サイズ的に、小腹が空いた時にパッと食べられる気軽さも魅力! イギリスの定番の生地をマスターするには、とてもよいお菓子です。ぜひチャレンジしてみてください。
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レシピ・料理
お家の採れたて果実や野菜を使って、お庭で食べたい! もっちもちの「イギリス流〈パンケーキ〉のレシピ」
薄くてもっちりのイギリス流 日本でも今や定番のパンケーキ。みなさんもお家で作ることがありますでしょうか? 色々なレシピがありますよね。日本のパンケーキはフワフワが定番です。卵を黄身と白身に分けてメレンゲにして作ったり、チーズを入れて作ったりするレシピもありますよね。 さて、イギリスのパンケーキは一味違います。 まず、フワフワではありません。日本でいうクレープの生地のような感じで、薄く焼き上げます。ただ、日本のクレープよりは少し分厚く、もっちりしている感じかなと思います。 その生地にグラニュー糖とレモン汁をかけて、くるくる巻いて食べるのが定番です。この食べ方、私たち日本人は、パンケーキといえばバターにメープルシロップ、と思っている人が大半なので、結構衝撃的ですよね。でも、このレモン汁と砂糖だけというのがシンプルに美味しくて、私は好きです。 キリスト教由来の〈パンケーキ・デー〉 レモン&シュガーの甘酸っぱさがたまらない。レモンは自家採取のものを使いました。 イギリスには〈パンケーキ・デー〉というものがあります。 パンケーキ・デーは〈ざんげの火曜日 (Shrove Tuesday)〉とも呼ばれるキリスト教の宗教的な意味合いを持つ日で、イースター(復活祭)に合わせて、毎年、日にちが変わります。復活祭前に40日間の断食期間があるのですが、それが始まる前に卵や牛乳を使い切ろうと、パンケーキが焼かれたのが始まりと言われています。現在では実際に断食する人がいるのか分かりませんが、その日にパンケーキを食べるという伝統が残っています。 さらに、今では〈パンケーキ・レース〉なるものもあります。パンケーキの入ったフライパンを片手に、そのパンケーキを決められた回数、ひっくり返しながら走って競うレースです。面白いですよね。私も出てみたかった! ちなみに2025年のパンケーキ・デーは3月4日でした。 パンケーキ・デーの苦労話 イチゴと食べても美味しい! 自家採取なら特別な一皿に。 じつは、このパンケーキには苦い思い出があります。 私がイギリスで働いていたホテルでも、パンケーキ・デーにはパンケーキを振る舞っていたのですが、私はそのパンケーキを焼く役目を与えられました。しかし、それまでそんなに薄いパンケーキを焼いたことがなかった私……。 火加減も焼き方も全然分からず、千切れちゃったり、焦がしちゃったり、フライパンにくっついちゃったり……散々な結果に! 大量に焼かなければいけないのに、どうすればいいのか……。困り果てたその時、ちょうどフランスから研修生として来ていた女の子が、苦戦している私に手を貸してくれました。 さすがクレープの国のフランス人! 「朝ごはんに作らないの!?」と、私ができないことに驚きながら、手際よく、綺麗にパパッと作ってくれました。あの時は本当に助かりました……! 彼女によると、フランス人は日常的にクレープを焼くようです。もちろん、人によるだろうけれど。 私には、そんな苦い思い出のあるパンケーキ・デーです。 チーズとマッシュルーム、玉ねぎのソテーをパンケーキで包んで。 イギリスでは、パンケーキ・デー以外でも、パンケーキをデザートや料理に使っていました。チョコレートムースを包んだココア味のパンケーキや、チーズとマッシュルームのソテーをパンケーキで包んだ前菜などもありました。 翌年のパンケーキ・デーには、そのフランス人の子はいなかったのですが、彼女が作るところをたくさん見て、教えてもらっていたし、焼く機会もあったので、私も上手になっていました。練習あるのみ! でも、日本には薄焼き卵などの料理があるから、料理上手なみなさんなら簡単に焼けるかもしれません。その頃の私はお菓子しか作らず、料理が全くできなかったので、イギリスでの修行生活、大変な思い出はまだまだいっぱいあります。 帰国してからも、時々イギリススタイルの薄いパンケーキを焼きます。その度に、やっぱり美味しいなあと思うのです。そんなイギリススタイルのパンケーキを皆さまにもぜひ作っていただきたく、ご紹介します。 イギリス流パンケーキの作り方 材料 (底の直径18cmのフライパン 約10枚) 薄力粉……100g塩……ひとつまみ卵……2個牛乳……280mlバター……適量グラニュー糖……適量レモン……好きなだけ 作り方 薄力粉と塩をボウルにふるう。 2. 卵を割り入れ、泡だて器で混ぜる。 3. 牛乳を少しずつ入れ、泡だて器でよく混ぜる。混ぜたらラップをして、冷蔵庫で最低30分休ませる。 4. ダマが気になる場合は、一度漉す。 5. フライパンを温め、バターを溶かす。溶けたら生地を薄焼き卵の要領で焼いていく。表面が乾いたらひっくり返す。裏側はサッとで大丈夫。 焼き上がり。 グラニュー糖を好きなだけふりかけ、レモンをギュッと絞ってレモン汁をかけたら、クルクル巻いて完成! グラニュー糖はたっぷりがおすすめですよ! ぜひ作ってみてくださいね!
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レシピ・料理
バレンタインにイギリスの温かいデザートはいかが?〈チョコレートセルフソーシングプディング〉
作り立てを楽しむ「おうちおやつ」 今回ご紹介するチョコレートセルフソーシングプディング。 イギリスには名前だけでは想像できないお菓子がたくさんあります。ファッジ、ジャムローリーポーリー、スティッキートフィープディング……。こんな名前を聞いてワクワクするのは、私だけでしょうか? 私の一番好きなイギリス菓子、スティッキートフィープディング。見た目は地味ですが、と〜っても美味しい! 今回ご紹介するチョコレートセルフソーシングプディングも、その一つでしょう。チョコレートのお菓子ということはわかりますね。イギリスではデザート全般のことをプディングと言うので、チョコレートのデザート。そして、セルフソーシングというのは、ひとりでにソースができる、という意味です。フランス菓子の、フォンダンショコラのいとこのような感じと思っていただければよいでしょうか。 レモンの香りが爽やかなレモンセルフソーシングプディング。 以前の記事で、レモン風味のセルフソーシングプディングをご紹介しました。その時も、作り方が面白いと思われたかもしれませんが、今回はまた、その時ともちょっと違います。 途中で「どうしてこんなこと思いついたの?!」「これで本当に大丈夫?!」と思ってしまう、理科の実験のような工程があります。イギリスには、そんな不思議な作り方のプディングが他にもあるのですが、もしかしたら、昔々、誰かが間違えて作ったものがたまたまとっても美味しかった、ということで残ったレシピなのかもしれませんね。 じつは、私がこのお菓子を知ったのは、イギリスのホテルで働いていた時ではなく、日本に帰国してからのことです。現地で買い集めたイギリス菓子の本に作り方があって、なんだ、これは⁉︎ と興味を持ち、それから何度も作りました。作ってみて分かったのは、このお菓子は作り立てが一番美味しいということ。大勢のお客様がいらっしゃるホテルやティールーム、パブなどでは、タイミングよくサーブするのが難しい一品です。家庭で手作りしてこそ、その美味しさを存分に味わえる。そういったお菓子のレシピがイギリスにはたくさんあるのですが、私はそれがイギリス菓子の大きな魅力だと思っています。 代表的なフィッシュ&チップス。モルトビネガーをたっぷりかけて食べると最高に美味しい! 写真を見ているたけでヨダレが……。 パブといえば、イギリスの田舎に行くとパブのご飯もとっても美味しいので、機会があればぜひお試しください。パブ飯といえばフィッシュ&チップスが有名でおすすめですが、パブの中には、ちょっと凝ったコース料理を出すガストロパブなどもあります。勉強がてら、私もよく行きました。 生地の下にはチョコソースがたっぷり! さて、チョコレートセルフソーシングプディングの作り方に話を戻しますと、なんと、容器に入ったケーキ生地の上に、液状のココアをジャバジャバとかけて焼く、というもの。表面はバシャバシャの液体だけど大丈夫? と、不安になりますが、焼くと、あら不思議! ココア液が生地の下にいき、うまい具合にチョコレートのソースに変身しているという訳です。 焼き立てはソースが結構ありますが、時間が経つにつれて生地にどんどん吸収されてしまうので、やはり、作り立てをすぐ、みんなで食べるのがおすすめです! 全部食べられなければ、冷蔵庫で保管しましょう。その場合はソースが少なくなりますが、それでも十分美味しく、レンジで温めて、バニラアイスクリームを添えれば最高。作り立ては断然アイスクリームがおすすめですが、翌日なら生クリームをそのままかけて食べるのも美味しいです。 それでは、作っていきましょう。 チョコレートセルフソーシングプディングの作り方 材料(容量1,000mlの耐熱容器1個分) 〈ケーキ〉 チョコレート……50g 無塩バター……50g 牛乳……75ml 卵……2つ 薄力粉……125g ココア……25g きび砂糖……70g 塩……ひとつまみ ベーキングパウダー……小さじ1 〈ソース〉 水……300ml ココア……15g マスカバド糖……100g (他の砂糖でも代用可) 作り方 1.チョコレートを刻む。オーブンを180℃に予熱する。 2.小鍋でバターを溶かし、ボウルに入れる(レンジで様子を見ながら溶かしてもよい)。 3.バターに、溶いた卵と牛乳を入れて混ぜる。 4.薄力粉、ココア、砂糖、塩、ベーキングパウダーをふるい入れ、混ぜる。 5.刻んだチョコレートを入れ、ゴムベラでさっくり混ぜる。 6.バター(分量外)を塗った型に生地を流し入れる。 7.ソースを作る。分量の水を沸かし、ココア、砂糖を入れて混ぜる。 8.7のソースを6の生地の上に流し入れ、予熱したオーブンで約30分焼く。 9.焼き上がり! ケーキの縁からグツグツと沸いたソースが見えています。 今回は仕上げに粉糖(分量外)を振りましたが、ココアを振っても美味しいです。もちろん、そのままでもOK。 あ〜、パイ皿からこのまま直接食べてしまいたい! いちごを添えるのはオプションですが、酸味がアクセントになって美味しいですよ! 寒い冬の季節にぴったりのプディング、ぜひ作ってみてください。
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レシピ・料理
11月中に作ってじっくり熟成! イギリス伝統のクリスマスプディングを楽しもう
みんな大好きクリスマス ドアにはもちろん、クリスマスリース。 クリスマスは一年の中で、私が一番好きなイベントです。イギリスでは、家の中を飾り付け、家族で集まり、たくさんのご馳走を作っていただきます。ちょうど、日本で迎えるお正月と似たものがあります。クリスマスのご馳走の定番はローストターキー! 七面鳥の丸焼きです。嫌いな人もいますが、私は大好き。見た目は鶏と似ていますがだいぶ大きく、鶏肉よりややサッパリした風味です。日本だとなかなか手に入れるのは難しいですが、東京の外国人御用達のスーパーやインターネットなどで手に入れられますので、気になる方はぜひ試してみてください。 クリスマスの定番デザート 美味しさの詰まったクリスマスプディング。 さて、イギリスのクリスマスのデザートというと、ポーチドペアーの回『クリスマスにぴったりの上品デザート、ポーチドペアー』でもご紹介しましたが、ドライフルーツたっぷりの、どっしりとしたクリスマスプディング、もしくは、クリスマスケーキが定番です。どちらもお酒の香る、どっしりと重いフルーツケーキ。とっても美味しいのですが、イギリスでも最近ではこういった重いケーキの人気はなくなってきているとも聞かれ、軽めのフルーツケーキやチョコレートケーキなど、ヘルシーなもののほうが喜ばれるようです。見た目が華やかなトライフル『イギリス生まれの真夏のスイーツ「サマートライフル」』も、クリスマスのデザートとして人気です。 マジパンに包まれたクリスマスケーキ。marilyn barbone/Shutterstock.com こちらの、白いマジパンで全体を包まれているケーキが、イギリスの伝統的なクリスマスケーキです。ところで、クリスマスプディングとクリスマスケーキは何が違うのか。簡単にいうと、プディングにはドライフルーツの他にリンゴを入れて、蒸して作り、1カ月ほど熟成させます。一方のケーキは、マジパンとドライフルーツがたっぷりのケーキを焼いて、それをマジパンとアイシングでデコレーションします。こちらも、できれば数カ月前から作って、熟成させていくケーキです。 クリスマスプディングに使うリンゴは、加熱調理に向くクッキングアップル〈ブラムリーアップル〉が定番です。イギリスでよく使われるこの青いリンゴは、〈イブズ・プディング〉『秋のリンゴを楽しむイブズ・プディング』の回でもご紹介しましたね。 サクサクのタルトが美味しいミンスパイ(右)。 それからもう一つ、イギリスのクリスマスに欠かせないお菓子があります。それは、ミンスパイ。クリスマスプディングと同様の材料で作られる、〈ミンスミート〉という熟成させたドライフルーツのお酒漬けを、小さなタルトに詰めて焼いたもの、それがミンスパイです。 我が家ではクリスマスイブに、子ども達が寝る前に、サンタクロースのためのお菓子を準備します。ミンスパイにショートブレッド、ジンジャーブレッドクッキーをお皿に乗せ、紅茶かミルクを添えて、置いておくのです。サンタさんがあのお腹になるわけが、分かりますね! ステアアップサンデーの伝統 クリスマスプディングは人気のクリスマスモチーフ(中央)。 私が初めて、スチームして作るクリスマスプディングのことを知ったのは、イギリスのホテルで働くようになってからのことでした。写真のマグカップに描かれているプディングは丸い形をしていますが、これは、昔は生地を布に包んで、茹で蒸していたから。今は〈プディングベイスン〉という型を使うので、上が平らな形が一般的です。 クリスマスプディングは家庭で作る場合、〈ステアアップサンデー(Stir up Sunday、混ぜる日曜日)〉に家族揃って作るのが伝統です。12月25日から遡って4週間前の日曜日からがアドベント期間になるのですが、その1週間前の日曜日がステアアップサンデーになります。 私の働いていたホテルではクリスマスプディングを11月から作り始めて熟成させていましたが、私はいつも、クリスマスプディングは11月中には作っておく! と頭に入れています。ステアアップサンデーの日にちを割り出すのはややこしいですし、夫がアメリカ人なので、この時期はサンクスギビング(感謝祭)のために七面鳥も焼かなくてはならず、少々忙しいからです。 でも、クリスマスプディングを12月に入ってから作ったこともあるので、それはそれで大丈夫です。ちなみに、クリスマスが終わったらすぐに次の年のプディングを作って、1年熟成させる人もいるそうですよ! では、そのステアアップサンデーに家族揃ってどうするのか? もちろんクリスマスプディングを作るのですが、すべての材料をボウルに入れたら、一人ひとり、願い事をしながら、ぐるぐる、ぐるぐると混ぜます。 昔は、指輪や指貫、ボタンや6ペンス銀貨を中に入れて、食べた時に出てきたもので来年の運勢を占ったりもしていたそうです。英国の児童書のクマのパディントンでも、パディントンが銀貨を飲んでしまった! とみんなが大騒ぎをしたクリスマスのエピソードがありました。結局、飲み込んでなかったのですけれどね。 気長にゆっくり蒸すプディング スチームするのがクリスマスプディングの特徴。 さて、クリスマスプディングはたくさんの材料が必要ですが、作り方は至って簡単です。どっさりと大量のドライフルーツに、オレンジピール、ブラムリーアップル、砂糖、パン粉、卵、ブランデーやラムなどのお酒、そして、スパイスに、スエット(牛脂)。それらをボウルに入れて混ぜるだけです。 材料も家庭によってそれぞれで、バリエーションがあります。お酒はブランデーだけなのか、ビールも入れるのか。ニンジンは、アーモンドは、ドライイチジクはどうするか、などなど。私は、アーモンドとイチジクを入れると、美味しくなる気がします。 ただ、型の大きさによりますが、それを3〜10時間蒸します。10時間⁉︎ びっくりですよね。今回のレシピでは、蒸す時間は3時間ですが、私が働いていたホテルで作っていたプディングはとても大きかったので、やはり合計10時間ほどは蒸していたと思います。11月に作って熟成させたら、食べる当日に、もう一度蒸します。 私のプディングベイスン。ホーロー、プラスチック、陶器、大きさもさまざま。 また、材料のスエット(牛脂)ですが、イギリスでは、細かくサラサラの状態のものが箱に入って売られていますが、あいにく日本では販売されていません。生の牛脂をその状態にするのも難しいし……ということで、今回はバターをチーズおろし器で削って代用する方法で作ります。冷凍したバターを削るという方法がよくありますが、冷凍したバターを削るのはかなり大変なので、私は今回、キンキンに冷やしたバターを使っています。それでも全く問題なく美味しくできるので、大丈夫です。 最後に、食べるときはブランデーバターかブランデーソースをかけていただきます。私は、ホテルで出していたのがブランデーソースだったので、いつもブランデーソースを作ります。これまで仕事場でも、帰国してから家で作るときも、いつも目分量で作っていたのですが(それがイギリス流!)今回、ソースのレシピを初めて作りました。目分量でも大丈夫、皆さんもそのくらいの大らかな気持ちで作っていただければと思います。 早めに作って熟成させるなど、手間は少しかかりますが、食べてみると本当に美味しいので、ぜひ作ってイギリスを感じていただきたいです! 我が家の娘たちも大好きで、このサイズがあっという間になくなってしまうほどです。日本のデパートで売られている煌びやかなクリスマスケーキに比べたら、何これ⁉︎ という見た目ですが、ずっしりとした重さの中に、美味しさも、ぎゅぎゅっと詰まっています。あ〜、香りだけでも伝わればいいのにな! 町のギフトショップもクリスマス一色。可愛い! クリスマスプディングの作り方 【材料】 (600ml入るボウル一つ分。プディングベイスンがなければ、耐熱性のボウルで代用可) 無塩バター・・・・・・30g (最初に計量して、すぐに冷凍庫に入れておく) 薄力粉・・・・・・30g パン粉・・・・・・30g ミックススパイス・・・・・・小さじ1/3(*詳細は下記参照) ナツメグ・・・・・・小さじ1/3 シナモン・・・・・・小さじ1/3 マスカバド糖・・・・・・70g(なければキビ糖でも大丈夫ですが、マスカバド糖のほうがコクが出るのでオススメ) サルタナ・・・・・・50g レーズン・・・・・・25g カランツ・・・・・・50g(サルタナ、レーズン、カランツは、製菓食材店で売っています。サルタナは少し酸味があって甘味がレーズンよりやや少なめ。カランツは粒が小さくて酸味が強く、味が濃い。揃わなければレーズンだけでも) オレンジピール・・・・・・50g ドライアプリコット・・・・・・15g ドライイチジク・・・・・・15g アーモンド・・・・・・10g ブラムリーアップル(もしくは、紅玉など酸味のあるリンゴ。皮を剥いて)・・・・・・約150g オレンジの皮・・・・・・オレンジ1/2個分 ブランデー・・・・・・25ml 卵・・・・・・1個 オレンジジュース・・・・・・オレンジ1/2個分 【ミックススパイスについて】 英国で売られている一般的な製菓用ミックススパイス(Mixed Spice)は、日本では入手が困難。手に入るものの中では、米国製の「パンプキンパイ・スパイス」がいちばん近いように思います。ミックススパイスは、文字通りスパイスを混ぜて、自分で作ることもできます。おすすめの配合は次の通りですが、好きなようにアレンジしても結構です。 〈お手製ミックススパイス〉 シナモン、コリアンダー……各大さじ1 ジンジャー、クローブ……各小さじ1 キャラウェイシード、ナツメグ……各小さじ1/2 【クリスマスプディングの作り方】 1. パン粉をサラサラの状態になるまでフードプロセッサーにかける(イギリスのパン粉は粉のようなものなのです)。 2. アプリコットとイチジク、リンゴをレーズンと同じくらいの大きさに刻む。アーモンドは細かく刻む。 3. ボウルにドライフルーツ類、リンゴ、アーモンドを入れる。 4. パン粉、薄力粉、砂糖、スパイス類を入れ、木べらで混ぜる。 5. チーズおろし器でキンキンに冷やしたバターを削る。チーズおろし器も冷やしておくとさらによし! 6. オレンジの皮を削り入れ、木べらで混ぜる。 7. ブランデー、卵、オレンジジュースを入れ、木べらで混ぜる。 8. 混ぜたらラップをして、冷蔵庫で一晩休ませる。 9. 翌朝、もう1度混ぜて、バターを塗った型に入れる。 10. オーブンペーパーを被せ、紐でしばる。もしくはアルミホイルでカバーしてもよい。 11. 鍋の底に耐熱の皿などを置き、鍋底がプディングに直接当たらないようにしてプディングを入れる。お湯はプディングの型の半分くらいまでくるようにし、3時間蒸す。 火加減は弱めの中火で、お湯がユラユラするくらい。グツグツ煮立たせるとプディング型が倒れることもあるので、倒れないくらいの火加減にします。また、火が弱すぎると蒸す時間が長くなります。 12. 鍋は蓋をする(今回は蓋が閉まらなかったので、アルミホイルを蓋代わりに利用)。蒸す時間が長いので、時々、お湯の量をチェックするのを忘れずに。お湯が減っていたら足すこと。 13. これが3時間蒸したもの。熱いので取り出す時に注意! 真ん中がグチュグチュしていなかったら大丈夫。冷めたら表面をオーブンペーパーで覆い、アルミホイルなどで蓋をして、クリスマスまで冷蔵庫で保管する。 ここからはクリスマス当日の作業です! プディングは作った時と同じ要領で、食べる時刻の2時間前から蒸します。そして、食べる直前にブランデーソースを作ります。 ブランデーソースの作り方 【材料】 無塩バター・・・・・・50g 薄力粉・・・・・・50g 牛乳・・・・・・500ml 砂糖・・・・・・50g ブランデー・・・・・・適量 バターを鍋に入れ火にかけ溶かす。 2. バターが溶けたら、小麦粉をふるい入れ、泡立て器でよく混ぜながら粉気がなくなるまでしっかりと弱火で火を入れる。ここでしっかり火を入れておかないと、粉っぽく仕上がってしまうので注意。 3. 火が入ったら、牛乳、砂糖を入れ、混ぜる。 4. ブランデーを好きなだけ入れる(私の好みは大さじ2くらい)。 5. とろみが出てくるまでしっかり混ぜながら火にかける。この時、常に弱火を保つ。 ホワイトソースを作る要領で、とろみが出たら完成。 アルコールが大丈夫な人はここでブランデーを入れれば、ほろ酔いソースの完成です。冷たくなるとブリンブリンに固まるので、サーブするときは温め直します。 寒いクリスマスに熱々のプディングとソースは本当に特別です。 ちなみに、伝統的なサーブの仕方はさらに特別。プディングをサーブするときにブランデーをかけて、火をつけるのです。プディングが青い炎に包まれ、さらに幻想的で特別なものとなるでしょう!
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レシピ・料理
英国の定番パンケーキ「クランペット」 アツアツをミルクティーと一緒に
大事なのは表面の穴 イギリス菓子といえば、今では誰でも知っているスコーン! が定番ですが、今回ご紹介するクランペットも、イギリスでは朝食やお茶の時間に大人気です。どんなものかというと、パンとパンケーキの間、とでも言いましょうか。もちっとしたパンケーキのような感じです。 クランペットはイギリスのティールームでも定番のメニューですし、スーパーでも購入できます。イーストで発酵させて、さらにベーキングパウダーを入れた生地を、型を使ってフライパンで焼くのですが、型を使うのでパンケーキより分厚く、表面に蜂の巣のように穴がたくさんあいているのが特徴です。材料や作り方はとてもシンプルですが、シンプルなものほど上手に作るのは難しいもの。でも大丈夫! 今回、分かりにくいポイントをしっかりとお教えします。 ちなみに、似たような見た目のイングリッシュマフィンとは全くの別物です。クランペットは少しドロドロしたゆるい生地をフライパンで焼きますが、イングリッシュマフィンはパン生地を丸めてセルクルに入れてオーブンで焼きます。 私がクランペットを知ったのは、まだイギリスで働く前のこと。イギリスのお菓子に興味を持って買った、イギリス菓子を紹介した本の中にクランペットがありました。その本にあったお菓子は、当時は知らないものばかりでしたが、材料と作り方を見れば、なんとなく味や食感が想像できます。ですが、クランペットはちょっと想像できないものでした。普通のパンと何が違うのだろう? イギリスへ語学留学した際、最初はホストファミリーと住んでいて、食事はすべて用意されていたのですが、途中からイギリス人から部屋を借りるスタイルに変更。食事はついていないので、好きなものをスーパーで買ってきていました。ある日、クランペットが目に入り、ふと、留学前に読んだ本のことを思い出しました。そうだ、これを食べてみたかったんだ! すぐに買って、家で食べてみました。トーストして、バターをたっぷりと塗って。 一口食べてみて、おおげさでなく感動しました! 表面はカリッと、中はもちっとした生地。表面にある無数の穴から、溶けたバターが染み込んで、噛むたびにジュワジュワっと溢れ出すバター。 一瞬でクランペットの虜となりました。 食べ方の好みは人それぞれ ゴールデンシロップは輸入食材店などで購入できます。 いつからそうするようになったのか、覚えていないのですが、私はバターとゴールデンシロップ(イギリスの糖蜜)をかけて食べるのが好きです。イギリスでも、クランペットをどうやって食べるかにはいろいろ好みがあるよう。たっぷりのバターだけの人。バターと蜂蜜の人。ジャムをつける人。レモンカードをつける人。あとはクリームチーズを塗って、サーモンをのせたり、ポーチドエッグをのせたりして、オープンサンドのようにして食べる人もいるようです。 寒い日に、トーストしたクランペットとミルクティーがあれば幸せな気分になれます。寒いのは苦手な私ですが、クランペットとミルクティーのティータイムを想像すると、これからだんだんと寒くなるのが待ち遠しくなります。 サーモンやサラダをのせれば軽食に。 クランペットは焼くときに、セルクルという丸い型を使うのですが、なければツナの缶などの蓋を両側取ると代わりになります! 私はセルクルを持っていなかった時は、トマトの缶の蓋を取って使っていましたよ。でも高さのある缶は使いにくいので、ツナなどの薄い缶がおすすめです。ちゃんとした型を用意したい方は、日本では「イングリッシュマフィンリング」などの名前で売られているので、チェックしてみてください。型が一つしかないと、ちょっと時間はかかりますが、ひとつずつ焼きましょう。型がたくさんあると、フライパンに乗るだけ一気に作れるのでおすすめです。 上手に作るポイントは、 混ぜ具合! 発酵具合! 火加減! 生地の濃度! これさえ注意すれば、美味しくなるはずです。 自分で作るクランペットは何より美味しいです。表面をカリッとさせたいので、冷めたらトーストして食べる! ということも忘れないでくださいね! では、作っていきましょう。 クランペットの作り方 材料(直径9cmのセルクル 5個分) 人肌くらいの温度の水……235ml イースト……5g 砂糖……8g 準強力粉……180g(なければ、強力粉140g+薄力粉40gで代用可) 塩……5g ベーキングパウダー……5g バター適量 作り方 1.人肌くらいの温度に温めた水とイースト、砂糖をよく混ぜておく。 2.粉、塩、ベーキングパウダーをボウルにふるい入れ、混ぜておく。 3.2に1を入れ、なめらかな生地になるまでホイッパーでしっかり混ぜる。 もういいかな? と思ってから、さらに1分ほど頑張って混ぜるくらいを目安に。 4.キッチンタオルなどを3にかけ、暖かい場所で45分くらい発酵させる。 5.膨らんで表面に泡が出てきたら発酵完了! スプーンですくってみて、ドロドロと濃度のある生地が流れ落ちるくらいが目安です。もしも、生地が流れ落ちず、ポタポタと落ちるくらい濃度がある場合、表面に穴がうまくできないので、水を少しだけ加えてスプーンで混ぜて調整します。 6.フライパンにバターを溶かし、内側にバターを塗ったセルクルをしっかり温める。熱すぎると焦げるが、温まっていないとうまく表面に穴ができないので、弱火でしっかり温める。温まったらスプーンで型の半分くらいまで生地を入れて弱火で焼く。 7.表面が固まってきたら、セルクルを外し、ひっくり返す。 火傷にご注意! トングなどを使うといいです。横着な私は何度も火傷しました。 8.ひっくり返した面にも焼き色がつくまで焼く。 9.完成! バターもゴールデンシロップもたっぷりとかけて、生地に染み込ませるのが美味しく食べるポイントです! お皿に盛るときは、穴のあいた面を上にするとよく染みますよ。 ぜひ作ってみてくださいね。
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レシピ・料理
イギリス生まれの真夏のスイーツ「サマートライフル」
トライフルは「つまらないもの」? 夏のイギリス菓子といえば、サマープディングとトライフル! サマープディングは以前ご紹介しましたが、トライフルってどんなもの? と思われる方も多いと思います。英語でトライフルとは「つまらないもの」という意味。ありあわせのものを重ねただけ、ということなのかなと思いますが、これがとっても美味しい! 一般にトライフルとは、ガラスの器の中にフルーツ、スポンジ、カスタード、そして、泡立てた生クリームを重ねたもので、冷やしていただきます。バリエーションがいろいろあって、スポンジをシェリー酒に浸して大人用に作ることもあれば、子ども用にはフルーツジュースで代用することも。スポンジの上からゼリーを流して、冷やし固める場合もあります。 トライフルは私にとって、思い出深いデザートです。以前、パブロヴァの回でお伝えした、語学留学中のアルバイト先で出会った日本好きのイギリス人夫妻。私が和食を作る代わりにパブロヴァの作り方を教えてもらったのですが、その後も何回か自宅に招いていただき、一緒にイギリス菓子を作りました。トライフルもその1つで、バーズ社のトライフルキットを使って作りました。 バーズ社のカスタードパウダー。イギリス人はこのパウダーを使ったカスタードが大好き。Philip Kinsey/Shutterstock.com バーズ社について、詳しくはブレッド&バタープディングの回で書いていますが、インスタントのカスタードパウダーで有名な会社です。トライフルはカスタードが欠かせないお菓子なので、キットが作られたのでしょう。キットは現在も販売されていますが、私が使ったものには、カスタードパウダーのほかに、フィンガービスケット、ゼリーの素、ホイップクリームの素、飾り用チョコスプレーが入っていました。 私にとって初めてのトライフルがフィンガービスケットにゼリー入りだったので、私はいつもフィンガービスケット&ゼリー入りで作ります。ですが、イギリス人の中にはゼリー入りが嫌いな人もいます。シンプルに、スポンジにフルーツ、カスタード、生クリームという組み合わせも美味しく、私はどちらも好きです。 私が働いていたイギリス、コッツウォルズのホテルでも、夏になるとトライフルを作りましたが、そのときもフィンガービスケット&ゼリー、バーズ社のカスタードパウダーを使って作りました。このフィンガービスケット、ゼリー液の中に浸すと、液をどんどん吸って、最終的にはゼリーの中でなんだかグレープフルーツのような見かけに変身するのが不思議です。ビスケットと言われなければ、これは何のフルーツだろう? と思うくらい、元の姿が分からなくなります。その変化も面白くて、私は好きです。 女王に捧げるプディング 優勝レシピのトライフル。下からレモンスイスロール、カスタード、オレンジゼリー、上にのっているのがアマレッティ。Traceyaphotos2/Shutterstock.com 2022年、イギリスでは、今は亡きエリザベス女王の即位70年を記念する行事「プラチナジュビリー」が行われました。お祝いのイベントがいくつも催されましたが「女王に捧げるプディング(イギリスでデザートの意味)」を決めるコンテストも行われました。5,000通のレシピの中から選ばれ、優勝したのはトライフル。それは、レモンスイスロールとアマレッティのトライフルでした。 スイスロールというのはロールケーキのことで、レモンカード(レモンバター)を巻いたロールケーキに、オレンジのゼリー、カスタード、アマレッティ(アーモンドの軽いビスケット)などを重ねた、豪華なトライフルです。 このレシピは、エリザベス女王とフィリップ殿下の結婚式で振る舞われた、レモンポセットとアマレッティをモチーフに作られたそうです。結婚式の思い出を絡めたレシピとは、なんて素敵! オーブンを使わず、手軽にできて美味しい最高のイギリスの家庭菓子、トライフル。基本の形に加えて、チョコレート入りだったり、マンゴーなどのフルーツを使ったり、バリエーションは本当にいろいろあります。 私としては、酸味のあるフルーツを使うのがおすすめ。写真は小さな器に盛ったルバーブのトライフルで、ゼリーは使わず、ルバーブのコンポートにスポンジ、カスタード、生クリームを合わせたものです。フルーツはいろいろなものに代えられますよ。 トライフルは、じつはイギリスでは季節にかかわらず人気です。今回ご紹介するように大きなボウルで作れば華やかなので、家族や友人が集まるクリスマスなどにもぴったりです。 今回はゼリー入りのレシピ。10人分くらいの、大きな器で作るパーティー用です。普段のデザート用には量が多いので、レシピを半量(5人分くらい)にして、小さなカップなどに1人分ずつ作ってもよいでしょう。1人分の器に盛るのも、とっても可愛いです。 サマートライフルの作り方 材料(4Lの器1個分) 〈ゼリー〉 フィンガービスケット 適量 板ゼラチン 16g 白ワイン 500ml 水 240ml グラニュー糖 265g 冷凍ベリー 350g(今回はラズベリーとブルーベリーを合わせて) 〈カスタード〉 牛乳 500ml バニラビーンズ 1/2本 卵黄 6個 グラニュー糖 130g 薄力粉 25g コーンスターチ 25g 生クリーム 200ml 〈生クリーム〉 生クリーム 400ml グラニュー糖 大さじ2 〈オプション〉 アーモンドスライス(ロースト) 適量 作り方 1.板ゼラチンを氷水につけて戻す。 *粉ゼラチンの場合は表示に従って使用してください。 2.白ワイン、水、グラニュー糖を鍋に入れ、火にかけてグラニュー糖を溶かす。 アルコールが苦手な方は、アルコールが飛ぶまで沸騰させ続けます。3分くらいでアルコールは抜けます。それでも心配な場合は、リンゴジュースなどで作ってもよいでしょう。 3.ゼラチンの水気を切って鍋に入れ、溶かす。よく溶けたら、濾しながらボウルに注ぐ。 4.ボウルの底を氷水に当て、冷凍ベリーを入れて、一気に冷ます。 5.ガラスの器の底にフィンガービスケットを敷き詰める。 6.その上に冷めたゼリー液を流し、冷蔵庫で冷やし固める。最低でも1時間は冷やす。 7.カスタードを作る。バニラビーンズを半分に切り、サヤからビーンズをナイフで出し、サヤと一緒に鍋に牛乳と共に入れ、火にかける。 8.卵黄とグラニュー糖をボウルに入れ、白っぽくなるまでホイッパーでよく混ぜる。 9.薄力粉とコーンスターチをふるい入れ、よく混ぜる。 10. 沸騰した7の牛乳を少しずつボウルに入れながら、ホイッパーでよく混ぜる。 牛乳は少しずつ加えます。一気に熱い牛乳を入れると卵に火が入ってしまうので注意。 11.10を漉しながら7の鍋に戻す。 12.11を強火にかける。焦げやすいので常にホイッパーで混ぜる。 だんだん重くなってきて、もったりしてきます。沸騰して気泡が湧き出てくるようになったら、ゆっくりと混ぜましょう。重くもったりしていたのが少しサラサラと軽くなり、ボコボコと沸騰してきたら完成。 13. すぐにラップを敷いたボウルやバットに入れ、表面にもラップをする。 上からも、下からも、保冷剤などで冷やします。 14.冷ましている間にボウルの底を氷水に当て、生クリームを泡立てる。 15. 冷めたカスタードをボウルに入れ、ゴムベラを使い柔らかく戻す。 16. 14の生クリームを、15のカスタードに2回に分けて混ぜ入れる。 17. 固まったゼリーの上にカスタードを平らに流し入れ、冷蔵庫で冷やす。 18. 生クリームと砂糖をしっかり泡立て、ここで上にカスタードの上に重ねる。 アーモンドをのせる場合は、散らして完成! 大きなスプーンで取り分けたら、パーティースタートです! さっぱりしていますが、食べすぎ注意です。 ぜひ作ってみてくださいね!
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イギリスで大人気! 「バノフィーパイ」誕生の秘密と作り方
バナナとトフィーの甘い出合い 〈バノフィー(Banoffee)〉とは、〈バナナ(banana)〉と〈トフィー(toffee)〉を合わせた造語です。トフィーはキャラメルのようなもので、バナナとキャラメル、と聞くだけで、その美味しさが想像できるでしょう? このバノフィーパイの最大の特徴は、コンデンスミルクを缶ごとコトコト煮て作る、トフィーソース。このキャラメルのような甘いソースを、ショートクラストペイストリーというパイ生地、日本でいうところのタルト生地に流し、バナナを敷き詰めて、その上にコーヒー風味の生クリームをたっぷりのせる。そして仕上げに、生クリームの上に砕いたコーヒー豆をパラパラと振りかける。これが、バノフィーパイのオリジナルレシピです。 パイ誕生の秘密 さて、この大人気パイはどのようにして生まれたのでしょう? このパイが誕生したのは、1971年。ロンドンから南に下ったイーストサセックス州の小さな村、ジェビントン にある〈ハングリーモンク〉というレストランでのことでした。 店の新メニューを考えていた、オーナーのナイジェルさんとシェフのイアンさん。参考にしたのは、アメリカの〈コーヒートフィーパイ〉というものでした。そのパイをもとに、オレンジやリンゴなどを合わせて独自のパイを試作しますが、最終的に、これだ、と思ったのはバナナ。バナナがぴったりと合ったのです。 さて、この新しいお菓子を〈バノフィーパイ〉としてレストランのデザートに出したところ、これが大ヒット! それからというもの、イギリス中にバノフィーパイを模したものが出てきます。コーヒー風味の生クリームの代わりに普通の生クリームだったり、パイ生地が簡単にできるビスケットタイプだったり、上にかけてあるのが削ったチョコレートだったり。数々のバリエーションが生まれたのです。 元祖レシピの完璧な組み合わせ チョコレートを合わせるのも一見美味しそうですが、やはり、コーヒーのほうが、味がしまって美味しいです。バナナとトフィーの甘い組み合わせを、キリリと引き締めるコーヒー。コーヒーがとってもいい味を出しているのです。私はどちらでも作ったことがありますが、断然コーヒー派! コーヒーの風味があるとないでは大違いなので、ぜひオリジナルレシピのコーヒー風味で作っていただきたいです。 日本では聞きなれない〈トフィーソース〉の作り方は、コンデンスミルクの缶を、缶ごと鍋でコトコト約5時間茹でるというもの。日本でも昔は缶のコンデンスミルクを売っていましたが、最近ではチューブタイプのものしか見かけませんね。ですので、チューブから耐熱皿などに出して、オーブンで湯煎焼きする、というのが一番いい方法なのかなと思います。チューブごと茹でる方法もあるようですが、チューブの素材が茹でても大丈夫なものなのか少し心配なので、私は試したことがありません。 イギリスでは、バノフィーパイの人気を受けて、すでに煮詰まってトフィー状になったものの缶詰も売られています。これがあれば、すぐにバノフィーパイが作れる! 羨ましい限りです。 ちなみに、〈ハングリーモンク〉は惜しまれながらも2012年に閉店してしまいました。いつか絶対オリジナルを食べてみたい! と思っていたのに、残念です。 今回のレシピでは、パイの部分はビスケットで作る簡単タイプのものを、また、生クリームはコーヒー風味のものにしています。パイ部分で使うビスケットは、ティフィンの記事でもご紹介しましたが、マクビティの全粒粉ビスケットが私のお勧めです。 バノフィーパイの作り方 材料 底の抜けるタルト型(21cm) 全粒粉ビスケット……220g 無塩溶かしバター……120g コンデンスミルク……400g バナナ……3〜4本 生クリーム……400ml グラニュー糖……大さじ1 インスタントコーヒー……小さじ1(水にサッと溶けるタイプのもの) コーヒー豆の粉……適量 作り方 1. オーブンを200℃に予熱する。コンデンスミルクをオーブン焼き可能な容器に注ぎ入れ、アルミホイルを被せる。その容器を、ひと回り大きなトレイに置き、トレイの半分の高さまでお湯を注ぐ。予熱したオーブンで、約90分湯煎焼きする。 焼き時間が長いので、時々お湯の量を確認し、トレイの高さの半分を切っていたら、その都度足す。 焼き上がったら、冷ましておく。 2.ビスケットを袋に入れ、叩いて細かく砕く。もしくは、フードプロセッサーにかけてもよい。細かくなったら、溶かしバターと混ぜる。 3.タルト型に2のビスケットを入れ、スプーンの背やカップなどを使って平らにし、冷蔵庫で冷やしておく。 4.冷ましておいた、トフィー状態のコンデンスミルクをよく混ぜて、均一にする。 ☆オーブンで湯煎焼きすると、どうしても表面に膜のようなものができてしまいます。気になる方は濾すとよいでしょう。 5.冷やしておいたビスケット生地にトフィーを入れ、平らにする。 6.バナナをスライスして、たっぷりのせる。 7.生クリームとグラニュー糖、インスタントコーヒーをボウルに入れ、ボウルの底を氷水に当てながら、しっかりめに泡立てる。 8.6に7の生クリームをのせ、砕いたコーヒー豆をパラリと表面にかけたら完成。 コーヒー風味のパイですが、紅茶にも合うのが不思議。 一度食べたら病みつきになること、間違いなし! 子どもはもちろん、大人もハマる美味しさです。トフィーソースに時間はかかりますが、それ以外は簡単。ぜひ作ってみてくださいね。
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ニンジンの美味しさがたまらない〈キャロットケーキ〉
砂糖の代わりにニンジンを 日本でもカフェメニューで大人気のキャロットケーキ。イギリス生まれのこのお菓子、始まりは、砂糖の代わりに甘いニンジンを使って作られたプディング(蒸したスポンジケーキ)だったといいます。砂糖が手に入りにくかった第二次世界大戦中、イギリス政府が大々的に、ニンジンを使って作るお菓子を流行らせました。その一つが、このキャロットケーキだったとか。 キャロットケーキは一般にバターではなく植物油を使うので、ケーキ生地に軽さがあり、それでいて、しっとりとしています。味わい深いお菓子で、私も大好きです。 朝食用のマフィンに仕立てたキャロットケーキ。 イギリス生まれのキャロットケーキは、アメリカに渡ると、現在のようなクリームチーズフロスティングをたっぷり塗るスタイルに変化しました。フロスティングをのせるスタイルは、今や日本でもイギリスでも人気ですが、イギリスでは、昔ながらのバターに粉糖を混ぜただけのアイシングを施すスタイルもあります。アメリカ人はヘルシーなものが大好きといいますが、このフロスティングには砂糖がたっぷり。全然ヘルシーではないなと、作っているとついつい笑ってしまいます。 野菜たっぷりのケーキ 夏野菜のズッキーニ(左)とサトウニンジンとも呼ばれるパースニップ(右)。FotosDo/Jiri Hera/Shutterstock.com イギリスでは、ニンジンのほかにもズッキーニケーキやパースニップケーキなど、野菜を使ったお菓子が人気です。白いニンジンのようなパースニップは、欧州ではよく見る野菜ですが、日本では手に入りにくいもの。寒さに当てて甘味を増してから収穫するそうで、加熱調理するとホクホクして、イモ類のような甘味があります。よくポタージュスープにもされますが、甘味の中に、ニンジンと同じセリ科の植物らしい独特な香りが感じられます。 チョコをトッピングしたズッキーニたっぷりのマフィン。 一方、ズッキーニは日本でもポピュラーな存在で、我が家でもよくズッキーニケーキを作ります。ケーキの味を想像できないかもしれませんが、ズッキーニの味は全くしません! とてもしっとりとしていて美味しいです。ズッキーニ嫌いの私の子どもたちも大好きでよく食べてくれるので、夏になるとマフィン型で焼いてよく朝ごはんに出します。 ファーマーズマーケットの楽しみ 南の町ライで食べたキャロットケーキはクルミたっぷり! イギリスで暮らしていた頃は、キャロットケーキにはそんなに興味のなかった私。あの頃たくさん食べておかなかったのを、今は後悔しています! キャロットケーキはファーマーズマーケット(農家の市)でもよく見かけました。イギリスでは、よく週末などに地元の朝市としてファーマーズマーケットが開かれますが、新鮮な地場産の野菜や肉類、チーズなどの酪農品が並び、そぞろ歩くだけでも楽しいものです。私が住んでいたコッツウォルズ地方の村の朝市は、とってものんびりした雰囲気でした。たまにはバスを乗り継いで、この地方で有名な、ストラウド村のファーマーズマーケットに行くこともありました。地場産のオーガニック野菜やチーズ、卵といった食品のほかに、陶器や衣料も売られ、なかなかの賑わいでした。ロンドンでも、多くのファーマーズマーケットが開催されていますが、こちらはさすが、都会の朝市! とっても活気があって人も多く、ロンドンならではの洗練された雰囲気も楽しいものです。 ファーマーズマーケットの雰囲気にぴったりのキャロットケーキですが、イギリスではお店で買うより、家庭で作ることのほうが多いでしょう。イギリス菓子はもともと家で簡単に作れるものが多いのですが、本当に、ごく普通にみんな自宅で作ります。キャロットケーキはその代表格。誰でも簡単に、美味しく作れるのも、このお菓子の魅力です。では、作ってみましょう! キャロットケーキの作り方 材料(直径20cmのケーキ型) 薄力粉……120g ミックススパイス……大さじ1/2(シナモンだけでもよい)*下記参照 ベーキングパウダー……小さじ1 クルミ……50g レーズン……50g サラダ油……100ml マスコバド糖……120g(きび砂糖でもよい) 卵……2個 ニンジン……120g 〈フロスティングの材料〉 クリームチーズ……200g(室温に戻す) 無塩バター……50g(室温に戻す) 粉糖……80g *ミックススパイスについて 英国で売られている一般的な製菓用ミックススパイス(Mixed Spice)は、日本では入手が困難。手に入るものの中では、米国製の「パンプキンパイ・スパイス」がいちばん近いように思います。ミックススパイスは、文字通りスパイスを混ぜて、自分で作ることもできます。おすすめの配合は次のとおりですが、好きなようにアレンジしても結構です。 〈お手製ミックススパイス〉 シナモン、コリアンダー……各大さじ1 ジンジャー、クローブ……各小さじ1 キャラウェイシード、ナツメグ……各小さじ1/2 作り方 1.オーブンを180℃に予熱し、型にオーブンペーパーをセットしておく。 2.薄力粉、ミックススパイス、ベーキングパウダーをボウルにふるい入れ、そこに刻んだクルミとレーズンを加えて、軽く混ぜておく。 3.別のボウルにサラダ油とマスコバド糖を入れ、木べらでよく混ぜる。 4.卵を割り入れ、しっかりと混ぜる。 5.混ざったら、2の粉類を入れてさっくりと混ぜる。 6.ニンジンをチーズグレーター(なければ普通のおろし金)ですりおろして加え、さっくり混ぜる。 *ニンジンの水分が出てしまうと、水っぽくなり、生地がべたっとしてしまいます。ニンジンをすりおろして、もし水気が出てしまった場合は、水気を切ってから使用するとよいでしょう。 7.できた生地を型に流し入れ、180℃のオーブンで約40分焼く。 焼き上がったら、冷ましておく。 8.フロスティングを作っていく。クリームチーズとバターは同じくらいの柔らかさになっているのがベスト。 ボウルにクリームチーズとバターを入れ、スパチュラでしっかりと混ぜていく。 9.粉糖をふるい入れ、よく混ぜれば完成。 10.ケーキが冷めたら半分にスライスする。 11.カットした下半分の表面に、全体の半量のフロスティングを塗る。 12.上半分を重ね、その上にもフロスティングを塗る。 13. お好みでシナモンをふりかけて、完成! 密閉容器に入れて冷蔵庫で1日置くと、味わい深くなるのでおすすめです。我が家では待ちきれず、できた瞬間から食べてしまいますが、 翌日や翌々日まで残っているときは、そのほうが美味しいと、いつも思います。翌日でも美味しいし、翌々日はもっと美味しいお菓子です! ぜひ作ってみてくださいね。
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バレンタインに! 手軽に手作り〈チョコレートファッジ〉
ハリポタにも登場する定番おやつ ファッジはイギリスでは定番の、なくてはならないお菓子です。見かけはキャラメルのようですが、歯にくっつく感じはなく、口の中でスッと溶けます。キャラメルが苦手な私も好きな、紅茶やコーヒーと一緒に出されると、ついつい、あと一つ! と、手が止まらなくなるイギリス菓子です。 バニラ味の伝統的なファッジ。 伝統的なファッジはキャラメルのようなバニラ味のものですが、今はチョコレート味や、マシュマロ入り、ナッツ入り、リキュール入りなど、いろいろなバリエーションがあります。ファッジは〈ハリー・ポッター〉のお話にも出てきますし、日本の人気テレビ番組でも紹介されているので、ご存じの方もいらっしゃるでしょう。私がかつてイギリス、コッツウォルズで働いていたホテルでは、このお菓子はデザートの後、コーヒーや紅茶と共に食事の最後に出すものでした。甘いデザートの後の、甘いファッジ…。イギリス人の甘いもの好きにはいつも驚かされます。 ちょっと寄り道 語学学校時代の思い出 イギリスのミントチョコ〈アフター・エイト〉。Only_NewPhoto/Shutterstock.com ファッジのように食後に出すお菓子といえば、私が語学留学時代にアルバイトをしていた中国人経営の和食レストランでは、〈アフター・エイト〉という、ミントクリームを挟んだ薄いチョコレートを出していました。イギリスでは有名なお菓子で、日本人はこの爽快なミントクリームに好き嫌いがあるかもしれませんが、私は大好き。日本でも手に入るので、ミント好きな方はぜひ試してみてください。 ちなみに、このアルバイトは語学の実地体験の場として本当によかったと思います。語学学校では先生たちは分かりやすい英語を話してくれるので、なかなか一般の人が話す、生の英語に触れることはありません。一方、このレストランに来るのは現地のイギリス人ばかり。生きた英語、特に若者の話す英語は、早口でスラングが混じって分かりづらいものでしたが、あー、そんな言い回しもするのね……と、自分で使いこなすまではいかなくても、学ぶことができました。予約など、顧客からの電話に出なくてはならないこともあり、最初は本当にドキドキしましたが、鍛えられて度胸がつきました。また、店では、日本語を教えてほしいというビジネスマンや、家に招いてイギリス菓子を教えてくれる方など、日本好きな方たちとの出会いもあり、貴重な体験をしました。 フランスのパティスリーに美しく並ぶお菓子。 わずかながらも収入を得ると、心の余裕もできました。どんどん減っていく貯金額に恐怖を感じて、節約に徹していた日々から脱し、そのお金でさらにティールーム巡りをしたり、イギリス国内やフランス、イタリアを旅したり。語学学校で出会ったフランス人の友達とはフランスへ、イタリア人の友達とはイタリアへ。出逢いに恵まれた、かけがえのない旅の思い出です。 イタリアのお菓子屋さんはおおらかで親しみやすい雰囲気。 どこを旅しても、お菓子屋さんばかり訪ねていました。店もお菓子も、その国によって個性があって、面白いなと思いました。フランス菓子はやはり美しい! それに比べてイタリアはおおらかな印象です。 苦戦したファッジ作り さて、ファッジに話を戻しましょう。これがまた、コッツウォルズのホテルでパティシエとして働いた際に、特に苦戦したお菓子の一つでした。見たことも、食べたことも、もちろん、作ったこともないお菓子。それを、とてつもなく大きな寸胴で大量に作らなくてはならない。なのに……以前の記事でもお話ししましたが、レシピは適当! ファッジ作りの手順は、生クリーム、砂糖、バター、バニラを寸胴に入れて火にかけ、鍋から目を離さずに、煮詰め具合の色とテクスチャー(質感)を確認しつつ、ちょうどよいタイミングになったら、目分量で粉糖を振り入れながら混ぜていく、というもの。レシピはあるようでなく、とにかく自分の感覚で作るのです。お客様に出すものなので、失敗は許されません。大量の材料を無駄にできないというプレッシャーもあって、最初は本当に気の重いミッションでした。仕上がりが固すぎたり、柔らかすぎたり……。もちろん、何度も何度も作るうちに、慣れて感覚を掴むことができましたが、失敗して落ち込むことも度々ありました。というわけで、ファッジは私にとって、思い出深いお菓子の一つです。 今回ご紹介するチョコレート入りのファッジは、伝統的なバニラ味のものより、ずっと簡単に作ることができます。チョコレート自体の固まる性質を利用したレシピで、バニラ味の場合のように煮詰めなくていいので、失敗が少ないと思います。ただ、チョコレートは高温になりすぎないよう注意。チョコレートが焦げるとボソボソになってしまうので、溶かすときは慎重に、ゆっくり弱火で。そこだけは注意が必要です。 それでは、作っていきましょう! チョコレートファッジの作り方 材料(18x18cmの型) 練乳……240gチョコレート……280gバター……40g塩……ひとつまみバニラエッセンス……少々 *チョコレートは高級なものを使えばもちろん美味しくなりますが、普通のチョコレートのほうが、こういったイギリス菓子には合う気がします。ミルクかビターかは、お好みでお選びください。甘いのがお好きな方はミルクで。ミルクのほうが、若干柔らかめに仕上がります。 作り方 1.練乳とチョコレートを鍋に入れて、弱火にかける。 とにかく弱火でゆっくりと。チョコレートを高温にしないように。チョコレートが溶けたらすぐに火から下ろす。 2.1の鍋にバターと塩、バニラエッセンスを入れ、しっかり混ぜる。 しっかり混ぜると、下写真のようなツヤが出る。 3. 型にオーブンペーパーを敷き、2を流し、平らに整える。 大体きれいにならす程度でよく、そのまま固める。冷蔵庫に入れるなら1時間、常温なら4時間以上おく。 仕上がりはこんな感じ。 4.好きな大きさにカットする。 常温で1週間ほど保存が可能。冷蔵庫に入れて保存してもよいが、食べるときは口どけをよくするため、常温に戻しておくのがおすすめ。 ラッピングは、生チョコの空箱に入れたり…… 袋に入れてシールで飾ったり。ポップにしてもかわいい! ただ混ぜて冷やし固めるだけで、美味しくなる魔法のファッジ。 ぜひ作ってみてください。
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【クリスマスレシピ】サクサクふわふわの華やかケーキ〈メレンゲルーラード〉
本で見つけた気になるお菓子 メレンゲルーラードって、どんなお菓子? この名前を初めて耳にする方もいらっしゃるかもしれませんね。一言でいうと、メレンゲで作るロールケーキ。ケーキ生地の代わりにふわふわのメレンゲをシート状に焼いて、クリームとフルーツを巻き込んでロールケーキにします。 私がこのお菓子を知ったのは、まだイギリスで働く前のこと。東京にあるイギリス風のティールームで働いていたときに、当時の先輩が「この本、絶対気に入るよ」と一冊の本を貸してくれました。イギリスの田舎にあるティールームを紹介したもので、その中にこのお菓子が載っていたのです。 今でこそイギリスが大好きな私ですが、じつは当時、初めて挑んだロンドンでの語学留学がうまくいかず、敗北感を抱いていたところでした。季節が冬だったとか、理由はいろいろありますが、とにかくイギリスなんて大嫌い! と思っていたのです。それなのに、なぜかイギリス風のティールームで働くことに。イギリスに行った後だったのと、その店が私の大好きな町にあったという、単純な理由からでしたが、思えば不思議な巡り合わせでした。このティールームのおかげで今の私があると言っても過言ではありません。大嫌いと思っていたイギリスに、再び導かれることになったのですから。 集めたイギリス本の数々。今も大切にしています。 店までの毎日の通勤は、片道1時間半。電車の中で、いつも本を読んでいました。先輩に借りた本に夢中になって、次第に読むのはイギリス関連の本ばかりになりました。本に出てくるイギリスの田園風景は美しく、お菓子も素朴でとっても美味しそう! 日本では見たこともないお菓子がたくさんある。これはもう行くしかない! 本が伝える景色に魅せられ、私はそう決めました。 大都市ロンドンに行ったのが間違いだった。田舎に行けばよかったんだ! 私は再びイギリスでの語学留学を計画しました。本で紹介されているコッツウォルズ地方の数々のティールームを訪ねられるよう、コッツウォルズの中心地、チェルトナムの語学学校を調査。斡旋業者に頼んだロンドン留学の失敗に懲りて(それから節約のためにも)、自力で見知らぬ町の学校を調べ、英語もろくにできないのに入学手続きをし、学生ビザを取得しました。お金の許す限り滞在することにしたのです。 コッツウォルズでついに遭遇 花々に囲まれた、コッツウォルズらしい石造りの家。 さて、無事コッツウォルズに乗り込んだ私。語学学校の生活はとっても楽しかったのですが、この留学の一番の目的は、休日にバスを乗り継いでいろいろな村に行き、お菓子を食べることでした。夏休みなどの長い休暇には電車も使って、イギリス各地の田舎に出向きました。英語が特に好きというわけでもなく、語学力は日本の学校で培った程度。でも、乏しい英語でも頑張って話せば伝わる! という精神です。自分でもすごい行動力だと思いますが、大抵のことはなんとかなる! ティールーム巡りでは、いつもクリームティーというスコーンと紅茶のセットを注文していましたが、コッツウォルズの小さな村のティールームで、ついに見つけたのです! あの本に出てきたメレンゲルーラードを。いつか食べてみたいと思っていた、よく分からないお菓子! いつものようにクリームティーを食べた後、待望のメレンゲルーラードを注文しました。その店のものは、ヘーゼルナッツ風味のふわふわサクサクのメレンゲでチョコレートクリームをロールしてあります。ワクワクしながら一口。しかし……率直な感想は「とてつもなく甘い……!」でした。それでも、これはどうやって作るのだろう? と、興味をそそられます。メレンゲをどんな風に焼いて、ロールケーキの生地にするのだろう? その謎は解けないままでしたが、食い倒れの旅、いえいえ、語学留学を無事終えて、私は帰国の途に就きました。 コッツウォルズ、チッピング・カムデンのよく通ったティールーム。 それから1年後、ラッキーなことに、私はワーキングホリデーで再びイギリスに向かうことになりました。パティシエとして働くことになったコッツウォルズのホテルでは、イギリス伝統のお菓子を作っていましたが、その中にあったのです。あのメレンゲルーラードが! やった! ついに作り方を学べる! それまでメレンゲといえば、フワフワの卵白を泡立てたものか、焼いたらサクサクのクッキーになるものの、2種類しか知らなかった私。初めて作るメレンゲ生地に、これで焼いて大丈夫なの? と心配になりましたが、焼き上がったものは、あのティールームで食べたサクサクふわふわのメレンゲ生地そのものでした。 そのホテルでは、メレンゲ生地に無糖の生クリームとフルーツを巻き込んで、ロールケーキにしていました。ティールームで初めて食べたルーラードはちょっと甘すぎると思ったけれど、このレシピはフルーツの酸味で意外とさっぱりしています。 今でもよく作るこのお菓子。初めて食べる人は必ず感動しますので、ぜひ作ってみてくださいね! 作り方は、以前ご紹介したパブロバとよく似ています。生地がメレンゲで軽いので、たくさん食べられてしまう危険なお菓子です。ご注意くださいね。 メレンゲルーラードの作り方 材料(ロールケーキ1本分) 〈メレンゲ〉天板1枚分 卵白……4個分グラニュー糖……200gコーンスターチ……小さじ1(片栗粉で代用可)バニラエッセンス……小さじ1モルトビネガー……小さじ1(白ワインビネガーやレモン果汁で代用可) 〈トッピング〉 生クリーム……200mlイチゴなど、好みのベリー類を好きなだけ粉糖……適量 右は英国サーソン社のモルトビネガー。左はバニラエッセンス。 作り方 1.オーブンを160℃に予熱する。 2.メレンゲを作る。卵白に、分量のグラニュー糖のうち、大さじ1をまず入れて、ふんわりするまで泡立てる。 3.ふわっとしたら、残りのグラニュー糖の1/3を入れ、またツノが立つまでしっかり混ぜる。 4.3と同じように、残りのグラニュー糖を2回に分けて加え、その都度ツノが立つまでしっかり混ぜる。 5.コーンスターチ、バニラ、モルトビネガーを入れ、混ぜる。 6.混ざったら、クッキングペーパーを敷いた天板にメレンゲを流す。 天板の四隅にメレンゲを少しつけて、クッキングペーパーを貼り付けると、メレンゲを平らにしやすい。 7.スパチュラなどで平らにならす。 それほど神経質になる必要はなく、このような感じで大丈夫。大体平らになったら、160℃のオーブンで約20分焼く。 8.焼き上がり。 9.焼き上がったらすぐに、茶こしを使って、粉糖をメレンゲの表面全体にたっぷりと振りかける。 10.もう1枚のクッキングペーパー(後でこのペーパーを使ってケーキを巻く)を上にかぶせ、メレンゲ生地をひっくり返す。 底に敷いていたクッキングペーパーをゆっくりと剥がす。 11.ペーパーを剥がしたら、底面にも粉糖をたっぷりと、茶こしを使って振りかける。 メレンゲはこのまま置いておく。 12.氷水を入れたボウルにもう一つボウルを重ね、生クリームを泡立てる。 13.メレンゲ生地に(底側が上)生クリームを塗っていく。 14.好みのフルーツを並べる。 このように横1列に並べると、どこを切ってもフルーツが均等にある状態になる。 15.クッキングペーパーを使いながら、ロールケーキを作る要領でメレンゲを巻く。 16.皿に置いて、フルーツを飾り付けたら完成! ハーブの緑を添えれば、ぐっとクリスマスらしくなりますよ。今年のケーキにぜひどうぞ。