いま、世界中のガーデンで注目を集めている植物がオーナメンタルグラス。季節とともに移ろう姿が、野趣と装飾性を兼ね備えたガーデニング素材として脚光を浴びています。ここでは、分類の垣根を取り去った植物セレクトで話題のボタニカルショップ「ACID NATURE 乙庭」のオーナーで園芸家の太田敦雄さんが、秋にさらに魅力を増す、美しいオーナメンタルグラスをセレクト! 今回は、草丈1mを超え、ダイナミックに植栽を演出する大型種をご紹介します。

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秋から初冬まで変化を楽しめるオーナメンタルグラス (大型種編)

2回シリーズで、秋の穂から初冬のドライ枯れ姿まで季節変化を楽しめるオーナメンタルグラスを紹介しています。前回の小・中型種編に続き、今回は草丈1mを超え、よりダイナミックに植栽を演出する大型種をご紹介します。

オーナメンタルグラス
Nancy Bauer/Shutterstock.com

大型のグラスの穂はとても存在感があり、植栽の背景においても、フォーカルポイントや季節の見どころとして大いに活躍します。

日本の秋の風景を象徴するススキも、世界的に見れば、ヨーロッパの先駆的なガーデンでも秋庭の主役として燦然と植栽されています。

オーナメンタルグラス
Bildagentur Zoonar GmbH/Shutterstock.com

グラス類は、日本では「野の雑草」というイメージが強いかもしれませんが、種類をよく選び季節の宿根草に織りまぜて上手に植栽すると、見事な存在感や視覚的効果を発揮してくれます。

オーナメンタルグラス
J Need/Shutterstock.com

四季折々、それぞれの風情が楽しめるオーナメンタルグラス。本記事では秋~初冬の季節感に絞って、その時期の庭の見どころとなる大型種をセレクトして紹介します。2020年時点では、まだ日本国内での流通が少ない品種も紹介していますが、オーナメンタルグラス類は、世界的に見ても宿根草植栽の大きな流れの一つであり、これからのスタンダードになっていくと思いますので、いち早く取り上げました。

冬枯れが進み、見どころが少なくなりがちな晩秋~初冬の庭の植栽ヒントになれば幸いです。

前回記事『秋から初冬まで変化を楽しめるオーナメンタルグラス (小・中型種編)』 もぜひ併せてお読みください。

植栽のポイント!
秋に穂が出る大型グラスは刈り込み時期で仕上がりに差が出る

ヨーロッパの有名なガーデンなどでは、大型のオーナメンタルグラスの穂と宿根草の秋花が見事なバランスで植栽されている事例が見られます。

秋の宿根草ボーダーガーデン
秋の宿根草ボーダーガーデン。Nancy J. Ondra/Shutterstock.com

しかし、ヨーロッパよりも降水量が多く夏が高温多湿な日本で栽培する場合、秋の穂を観賞する大型のグラス類は、梅雨から夏にかけて勢いよく茂りすぎて、秋の見頃の頃に株のバランスが過大になってしまったり、花茎や葉が伸びすぎて倒れたりして観賞価値を損ねることが多く起こりますので、管理にちょっとしたコツが必要になります。

オーナメンタルグラスとベンチ
Jahina_Photography/Shutterstock.com

冬季落葉性のオーナメンタルグラスは、冬の終わり(関東平野部なら2月下旬~3月前半頃)に冬枯れした地上部を株元まで短く刈り詰める作業を行うと、枯葉の整理と同時に芽吹きの勢いが促進され、フレッシュな新葉で春庭を彩ることができます。

オーナメンタルグラスの切り戻し
bubutu/Shutterstock.com

この早春の一斉刈り詰め作業はヨーロッパにおけるニューナチュラリスティックプランティングの宿根草植栽現場でもとてもよく行われ、いまや一般の園芸家にも普及しつつある手法です。

しかし降水量の多い日本では、年1回のみの早春刈り込みだけだと、グラス類の多くは秋までに大きく茂り過ぎて野原のようになりがちです。そのため、晩夏以降に穂が出るグラスに関しては、雨が多くなる梅雨時にもう一度短く刈り戻してあげるとよいでしょう。成長期なのですぐに新葉が出てリフレッシュできるのに加え、大きさもリセットでき、倒れたりせずにちょうどよいサイズ感で秋の穂を楽しむことができます。

オーナメンタルグラスの植栽
撮影/mosquito garden

上写真は、以前の記事でもご紹介した鳥取県のいなばやさんのお庭の植栽例。放任だと背が高くなりすぎて秋の穂が倒れやすいペニセタム ‘トールテイルズ’ の穂がシャンとして、絶好の見せ場になっていますね。

もし、梅雨時の刈り込みに伴い、一瞬でも「刈り込みたて」な感じになるのを避けたい場合は、時期を少しずらして、株の後ろ半分・前半分と分けて刈り込むようにすると、より違和感なく植栽を調整管理することができます。

グラスガーデン
ススキなどの大型種の穂も成長期の刈り込みをすることで比較的コンパクトな高さに。Jorge Salcedo/Shutterstock.com

梅雨時にも刈り込みを行うこの手法は、晩夏~秋に穂が上がるパニカムやススキなどの大型グラス、初夏~秋まで繰り返し穂が上がり、真夏の生育がとても旺盛なタイプのペニセタムなどに有効です。

カラマグロスティス‘カールフォースター’ など、乾燥した枯れ穂を残して長く観賞するタイプの初夏一季咲きグラスについては、梅雨時に刈り込んでしまうとそれ以降は秋まで葉だけの状態となってしまうので注意しましょう。

カラマグロスティス‘カールフォースター’

上写真は乙庭がデザインした植栽の6月の様子ですが、この例だとカラマグロスティス‘カールフォースター’ (写真中央の立穂)は刈り込みをせず、繰り返し咲き性のペニセタム ‘トールテイルズ’(写真後方の尾状穂)のみを刈り込みします。

では、秋~初冬の庭のフォーカルポイントにぜひ使ってみたい大型のオーナメンタルグラスを、乙庭セレクトで紹介します。

セレクト1
カラマグロスティス・アクティフローラ ‘カールフォースター’

現代の宿根草植栽をリードするオランダ人植栽家ピート・アウドルフ(Piet Oudolf)さんも、署名のように自身がデザインする植栽に必ずといってよいほど使用する、垂直性の高い長い針状の穂が「これぞオーナメンタル!」な造形美を発揮するグラスです。

カラマグロスティス・アクティフローラ ‘カールフォースター’
カラマグロスティス・アクティフローラ ‘カールフォースター’。InfoFlowersPlants/Shutterstock.com

本種 ‘カールフォースター’ は、関東地方だと5月下旬頃、つまり晩春~初夏に穂が出ます。開花期の穂はフワッと広がった様子で展開します。その後、徐々にベージュ色に枯れ進みながら細長い針状の姿に乾いていきます。

カラマグロスティス・アクティフローラ ‘カールフォースター’

そして秋には、ピート・アウドルフさんの植栽の、秋の名シーンで見られるような幾何学性の高いベージュの縦線の造形美が生み出されます。

カラマグロスティス・アクティフローラ ‘カールフォースター’
Kathryn Roach/Shutterstock.com

初夏から晩秋までの長い期間、穂の変容を観賞できる素晴らしい品種です。

【DATA】
■ イネ科
■ 学 名:Calamagrostis acutiflora ‘Karl Foerster’
■ 主な花期:晩春~初夏(枯れて乾いた穂を秋まで観賞する)
■ 草 丈:1.2~1.5m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

セレクト2
ムーレンベルギア・リンドハイメリ

晩夏~秋にかけて直立性の尖った感じのあるクリームホワイト色の細長い立ち穂を展開する、アメリカ・テキサス州から北メキシコ周辺原産のオーナメンタルグラスです。

ムーレンベルギア・リンドハイメリ
ムーレンベルギア・リンドハイメリ。MaryAnne Campbell/Shutterstock.com

青みがかった、とても細い常緑葉を半球状に茂らせる草姿がオーナメンタルで、高さ1.5m近くにもなる立ち穂の壮麗さも相まって、アーキテクチュラル(建築的)な雰囲気があります。

ムーレンベルギア・リンドハイメリ
撮影/mosquito garden

前出のカラマグロスティス ‘カールフォースター’よりはフワッとした空気感のある穂です。ナチュラルな雰囲気で落葉性の宿根草とよく似合うカラマグロスティス ‘カールフォースター’ に対し、本種ムーレンベルギア・リンドハイメリはアガベやユッカなどと原生地域が重なり、ちょっと硬質な幾何学性を表現してくれる半球状の草姿もあって、乾燥地的なオーナメンタル植栽にも違和感なく似合います。

ムーレンベルギア・カピラリス
(参考)ムーレンベルギア・カピラリス(Muhlenbergia capillaris)。Inna Reznik/Shutterstock.com

同じムーレンベルギア属のカピラリス種とも異なる個性と観賞価値をもっていて面白い素材ですね。

常緑性なので、ドライになった枯れ穂と共にウィンターガーデンの緑の彩りにもなりますが、長く栽培していると枯れ葉がまざって美観が悪くなってくるので、春先か梅雨時のタイミングで短く刈り戻してあげると、株を更新できて新鮮な葉姿を保てます。

【DATA】
■ イネ科
■ 学 名:Muhlenbergia lindheimeri
■ 主な花期:晩夏~秋
■ 草 丈:1.2〜1.5m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

セレクト3
モリニア・カエルレア ‘トランスペアレント’

細く垂直性のある花茎の幾何学的な美しさと透明感のある穂のエアリー感、そして開花から初冬の枯れ姿までの色彩変化も楽しめる、ダイナミックで魅惑的なオーナメンタルグラスです。
2020年現在、日本国内ではとても流通が少ないレアな品種です。

モリニア・カエルレア ‘トランスペアレント’
モリニア・カエルレア ‘トランスペアレント’。Sirle Kabanen/Shutterstock.com

モリニア・カエルレアは、ヨーロッパから西アジア、北アフリカにかけて分布するイネ科の植物です。本種モリニア・カエルレア ‘トランスペアレント’ は、モリニア・カエルレアの亜種、アルンディナセアを源流とする洗練された園芸品種です。

モリニア・カエルレア ‘トランスペアレント’
Sirle Kabanen/Shutterstock.com

晩夏から秋にかけて、高さ1.5m近くにもなる細くしっかりした花茎を伸ばし、その先に霞のような透明感のある花穂を壮麗に咲かせます。

花穂は咲き初めの緑から紫褐色に変化し、秋には全草が美しい黄橙色に黄葉した後、ベージュ色に冬枯れしていきます。初冬まで細針状の花茎が残るので、観賞期間が長く変化を楽しめます。

モリニア・カエルレア ‘トランスペアレント’
David_Maddock/Shutterstock.com

モリニア・カエルレアは和名だと「ヌマガヤ」。その名が示すように、乾燥した土よりはやや湿った土壌を好みます。原産地より降水量の多い日本では通常の庭植えで育てやすい種といえるでしょう。

【DATA】
■ イネ科
■ 学 名:Molinia caerulea ssp. arundinacea ‘Transparent’
■ 主な花期:晩夏~秋
■ 草 丈:80cm程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

セレクト4
ペニセタム・マクロウルム

陽光を乱反射させて輝くクリームベージュ色の立ち穂を夏~秋にかけて繰り返し咲かせる、アフリカ原産のオーナメンタルグラスです。

ペニセタム・マクロウルム
ペニセタム・マクロウルム(写真内右側)。

ペニセタムの仲間は、毛足の長い尾状のフワフワしたテクスチャーの穂のものが多いですが、本種マクロウルムは花茎がしっかりしていて、高さ1.5mにもなるダイナミックな立ち性の尾状穂が、宿根草植栽に織り交ぜても絶好のフォーカルポイントになります。

ペニセタム・マクロウルム
InfoFlowersPlants/Shutterstock.com

夏~秋まで繰り返し穂が上がりますが、放任しておくと秋には茂り過ぎて鬱蒼としやすいです。
梅雨頃にはかなり葉が茂った状態になるので、その時期に一度刈り戻しを行っておくと、夏以降の草姿が荒れずに適度なサイズ感で楽しむことができます。

【DATA】
■ イネ科
■ 学 名:Pennisetum macrourum
■ 主な花期:夏~秋
■ 草 丈:1.5m程度
■ 耐寒性:普通(-10℃程度)
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

セレクト5
ペニセタム・オリエンターレ ‘トールテイルズ’

長さ40cm程度にもなる白緑~オフホワイト色のしなやかな尾状穂が、陽光を乱反射させてキラキラ輝いたり、風にユラユラと揺れたりする姿がとても素敵なオーナメンタルグラスです。

ペニセタム・オリエンターレ ‘トールテイルズ’
ペニセタム・オリエンターレ ‘トールテイルズ’。

乙庭では2010年頃に輸入しましたが、その後流通が途絶え、 2020年現在、日本国内ではとても流通が少ないレアな品種です。

ペニセタム・オリエンターレ ‘トールテイルズ’

本種、ペニセタム・オリエンターレ ‘トールテイルズ’ は、中央アジア原産のオリエンターレ種の白花大型品種です。優雅にしな垂れる長い尾状穂を初夏~秋にかけての長い期間繰り返し咲かせ、ダイナミックな草姿も相まって、とても植栽映えします。

日本の気候に合い育てやすいのですが、生育が旺盛で、放任しておくと秋には葉が長くなりすぎたり、穂の重さで倒れやすいです。梅雨頃にはかなり葉が茂った状態になるので、初夏の最初の穂を楽しんだ後、梅雨頃に一度短く刈り戻しを行っておくと、夏以降の草姿が荒れずに適度なサイズ感で楽しむことができます。

【DATA】
■ イネ科
■ 学 名:Pennisetum orientale ‘Tall Tails’
■ 主な花期:初夏~秋
■ 草 丈:1.5m程度
■ 耐寒性:普通(-10℃程度)
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

セレクト6
パニカム ‘ダラスブルース’

晩夏~秋にかけての美しい霞状の穂だけでなく、春~夏に茂る水色がかったダイナミックな葉姿も涼しげで美しい、北アメリカ原産種パニカム・ビルガツム(Panicum virgatum)系統の大型水色葉品種です。

パニカム ‘ダラスブルース’
パニカム ‘ダラスブルース’。

乙庭では2008年頃から栽培しているお気に入りの品種です。2020年時点では日本国内での流通はとても少ないですが、パニカムのさまざまな品種の中でも特に個性が際立っていて、注目に値します。

パニカム ‘ダラスブルース’

本種 ‘ダラスブルース’ は、草丈1.8m程度にも育ちます。水色がかった立ち性の葉姿も野趣と美しさ兼ね備え、晩春~夏庭の見どころになります。カンナやユーパトリウムなど、夏に大きく育つ宿根草にもまったく引けを取らず、植栽の後方に配置すると効果抜群です。

パニカム ‘ダラスブルース’

壮大な穂をカットして花材として利用してもとてもオーナメンタルです。

晩春から現れるグレイッシュピンクがかった穂も、ツブツブした粒子が宙を舞っているようで、遠目に見ると霞のような雰囲気。重厚なテクスチャーの大型宿根草と組み合わせると、ダイナミックな中にも軽さの表現ができます。秋に向けてブラウンみを増して乾燥していく枯れ姿もオーナメンタルです。

パニカム ‘ダラスブルース’の秋枯れ姿
パニカム ‘ダラスブルース’のダイナミックな秋枯れ姿(右上)。

草丈が高く穂のボリュームもあるため、放任で育てると穂が倒れやすいです。梅雨時の刈り込みを行うことで開花期に倒れるのを予防できます。

【DATA】
■ イネ科
■ 学 名:Panicum virgatum ‘Dallas Blues’
■ 主な花期:晩夏~秋
■ 草 丈:1.8m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

セレクト7
アンドロポゴン・ゲラルディ ‘ブラックホーク’

弓なりに茂るダークな銅葉もナチュラルかつデザイン性満点! そして晩夏から秋にかけて、垂直性の高い黒紫がかった花茎を伸ばして同じくダークな黒紫色のススキを小さくしたような穂を咲かせる、現在開発されているオーナメンタルグラスの品種の中でもトップクラスのカッコよさを具備した美麗品種です。最新品種過ぎて写真資料も少ないのですが、いち早くご紹介します。

アンドロポゴン・ゲラルディ ‘ブラックホーク’
アンドロポゴン・ゲラルディ ‘ブラックホーク’。

本種 ‘ブラックホーク’ は世界的に見ても新しい品種で、乙庭でも2020年時点で、店頭で試験栽培している株しかありません。まだ日本国内では流通していませんが、導入されたら一気に人気に火がつきそうな注目の品種です。

上写真は乙庭で栽培し始めた頃の様子です。黒みを感じさせる濃厚な銅葉で、これだけでもリーフプランツとしてのポテンシャルが感じられますね。

基本種のアンドロポゴン・ゲラルディは、アメリカ中部、「グレートプレインズ」と呼ばれるやや乾燥した草原地帯を原産とする植物です。

アンドロポゴン・ゲラルディ ‘ブラックホーク’
Nancy J. Ondra/Shutterstock.com

上写真は基本種のアンドロポゴン・ゲラルディの穂の様子です。ススキの穂を小さくして上向きにしたようなオーナメンタルな穂です。株元にフサっと茂るしなやかなグラス葉と垂直性の高い花茎とのバランスもよく、高さを出しつつも草姿がスマートで美しいグラスです。

本種 ‘ブラックホーク’は、葉だけでなく花茎や穂にいたるまで全草が黒紫褐色がかり、文句の付けようがないほどカッコいい品種です。日本国内での発売を心待ちにしましょう。

【DATA】
■ イネ科
■ 学 名:Andropogon gerardii ‘Blackhawks’
■ 主な花期:晩夏~秋
■ 草 丈:1.2~1.5m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

セレクト8
ミスカンサス・シネンシス (=ススキ) ‘モーニングライト’

日本の野原にも自生し、日本人にとって秋の気配を最も強く感じさせてくれる植物の一つ、ススキの斑入り葉で比較的コンパクトな園芸品種です。

ミスカンサス・シネンシス ‘モーニングライト’
ミスカンサス・シネンシス ‘モーニングライト’。InfoFlowersPlants/Shutterstock.com

ススキというと、日本人にとってはごく当たり前に目にする野の草という印象が強い植物かもしれませんね。しかし、ホウキを逆さにしたようなススキの穂のオーナメンタルさは海外のガーデンデザイナーの注目の的であり、欧米の著名な宿根草ガーデンでは、秋の庭の見どころとして自慢げにススキが植栽されている例がしばしば見られます。

ミスカンサスとセダム
ミスカンサスとセダムを組み合わせた海外での秋の植栽例。Bildagentur Zoonar GmbH/Shutterstock.com

ススキは、日本の気候によく合いすぎて、庭植えしたりすると根が張って巨大化し手に負えなくなることも多いのですが、本種 ‘モーニングライト’は、その中でも「糸ススキ」と呼ばれるスマートな細葉の系統で、縁に白覆輪が入って春~秋もリーフプランツとして楽しめ、穂が出た時の草丈も1.2m程度に収まる比較的コンパクトな品種です。

ミスカンサス
Kathryn Roach/Shutterstock.com

秋に出る穂は、最初、赤紫を帯びて咲き始め、次第にホワイトベージュ色の羽毛状の種子姿へと変容していきます。

ミスカンサス・シネンシス ‘モーニングライト’
simona pavan/Shutterstock.com

春~初冬までの長期間、変化を伴いながら観賞できる素敵な品種です。ぜひ、ススキの出自である日本からも世界に向けて発信していきたい品種ですね。

【DATA】
■ イネ科
■ 学 名:Miscanthus sinensis ‘Morning Light’
■ 主な花期:秋
■ 草 丈:1.2m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

セレクト9
コルタデリア・セロアナ(=パンパスグラス)‘プミラ’

「パンパスグラス」の名で知られる南米原産のオーナメンタルグラス、コルタデリア・セロアナの矮性品種です。

パンパスグラス
コルタデリア・セロアナ ‘プミラ’。Peter Turner Photography/Shutterstock.com

パンパスグラスは、海外でも庭園の秋の風物詩としてシンボリックに植栽されたり、フサフサとした羽毛状のダイナミックな穂がフラワーアレンジメントやドライフラーなどでも多く使われる、魅力的な素材ですよね。

パンパスグラスのテーブルデコレーション
Gladius Stock/Shutterstock.com

しかし、基本種のコルタデリア・セロアナは、穂の高さが3m程度にもなり巨大な植物で、日本の温暖地の気候にもよく合い、旺盛に育ち、根も張りすぎて手に負えなくなることが多々あります。

本種 ‘プミラ’は、コルタデリア・セロアナの中でも比較的矮性の品種です。それでも草丈1.8m程度に大きく育ち、パンパスグラス特有の壮麗な穂を楽しめます。日本の一般的な庭のサイズ感からすると、基本種よりもかなり現実的なサイズ感でしょう。

パンパスグラス
zzz555zzz/Shutterstock.com

それでも何年も植えっ放しにすると株張りが大きくなり、根張りもきつくて植え替えなどが大変になります。2〜3年に一度程度、春前に掘り上げて株を割ってボリューム調整するとよいでしょう。巨大化させないためには梅雨頃の刈り戻しも有効です。

【DATA】
■ イネ科
■ 学 名:Cortaderia selloana ‘Pumila’
■ 主な花期:晩夏~秋
■ 草 丈:1.8m程度
■ 耐寒性:普通 (-5℃程度)
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

セレクト10
ミスカルム ‘パープルピープルグリーター’

春~夏は葉縁が紺紫色がかった、葉長1.5m程度のグラス葉を茂らせ、秋には高さ2.5m程度にもなる花茎を立ち上げて暗紫色のススキに似た穂を咲かせる、ダイナミックさと葉色の美しさを兼ね備えた大型のグラスです。

ミスカルム ‘パープルピープルグリーター’
ミスカルム ‘パープルピープルグリーター’。

乙庭では2010年頃から栽培しているお気に入りの品種です。上写真は乙庭店頭で大きな鉢植えにして試験栽培していた頃の秋の様子です。その複雑な葉色の片鱗が分かるかと思います。

2020年時点では日本国内での流通はほとんどありませんが、たいへん個性的かつ魅力が際立っていて、日本でのオーナメンタルグラス人気の高まりに伴い、注目が集まっていくことでしょう。

本種 ‘パープルピープルグリーター’ は、インド原産のサトウキビの仲間、サッカルム・アルンディナセルム(Saccharum arundinaceum)とススキの銅葉品種ミスカンサス・シネンシス ‘プルプラスケンス’ (Miscanthus sinensis ‘Purpurescens’)との交配品種です。

サッカルム・アルンディナセルムの穂
(参考)本種の片親、サッカルム・アルンディナセルムの穂。Doikanoy/Shutterstock.com

ススキをさらに大きくしたような、ワイルドかつダイナミックな草姿も植栽の中でよく目立つのはもちろんのこと、本種の最大の魅力は、端的に「銅葉」とは表現しがたい複雑なニュアンスを持つ葉色にあります。

ミスカルム ‘パープルピープルグリーター’

春~夏は紺色みの褐色~緑色、秋の紅葉は臙脂色~アンバーのグラデーションがストライプ状に現れ、季節によって多様性に富んだ色の移ろいを見せていきます。

ミスカルム ‘パープルピープルグリーター’

冬に向けても、ピンクがかったミルクティー色と赤褐色・紫などが複雑なストライプ模様を織り成し、とても美しい紅葉を見せた後、ベージュ色の冬枯れ姿となります。

ミスカルム ‘パープルピープルグリーター’
黒紫がかった穂。若苗の穂なので小さめですが、株が充実するとススキよりも壮大な穂となります。

前出のコルタデリア同様、何年も植えっ放しにすると株張りが大きくなり、根張りもきつくて植え替えなどが大変になります。2〜3年に一度程度、春前に掘り上げて株を割ってボリューム調整するとよいでしょう。巨大化させないための梅雨頃の刈り戻しも有効です。

【DATA】
■ イネ科
■ 学 名:Miscarum ‘Purple People Greeter’
■ 主な花期:秋
■ 草 丈:2.5m程度
■ 耐寒性:普通(-5℃程度)
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

オーナメンタルグラスを大胆に・上手に取り入れているお庭事例 過去記事より

本記事の写真でも何枚か登場した、鳥取県のいなばやさんの「畑のへり」ガーデンでは、各種オーナメンタルグラス類とともにカンナなどのオーナメンタルプランツ、そして宿根草の花々が織りなす、日本の気候ならではの実験的かつカッコいい植栽が作られています。

グラスガーデン
撮影/畑のへりガーデン

欧米よりも降水量が多く、海外の有名庭園と同じようには必ずしも育たないオーナメンタルグラス。

いなばやさんのお庭をレポートした過去記事も併せてご覧いただくと、日本の庭でのグラス類の活用法について多くの示唆が得られると思います。

欧米よりも降水量が多く、海外の有名庭園と同じようには必ずしも育たないオーナメンタルグラス。 いなばやさんのお庭をレポートした過去記事も併せてご覧いただくと、日本の庭でのグラス類の活用法について多くの示唆が得られると思います。
撮影/畑のへりガーデン

飽くなき好奇心が生み出すカオス楽しい庭。鳥取県・いなばや邸 畑のへりガーデン編

オーナメンタルグラス

「これは 自然の中で見たいけど 決して見られない景色なんだ。」
(ピート・アウドルフ 植栽家 1944 –)

Credit


写真&文/太田敦雄
「ACID NATURE 乙庭」代表。園芸研究家、植栽デザイナー。立教大学経済学科、および前橋工科大学建築学科卒。趣味で楽しんでいた自庭の植栽や、現代建築とコラボレートした植栽デザインなどが注目され、2011年にWEBデザイナー松島哲雄と「ACID NATURE 乙庭」を設立。著書『刺激的・ガーデンプランツブック』(エフジー武蔵)ほか、掲載・執筆書多数。
「6つの小さな離れの家」(建築設計:武田清明建築設計事務所)の建築・植栽計画が評価され、日本ガーデンセラピー協会 「第1回ガーデンセラピーコンテスト・プロ部門」大賞受賞(2020)。
ガーデンセラピーコーディネーター1級取得者。(公社) 日本アロマ環境協会 アロマテラピーインストラクター、日本メディカルハーブ協会 ハーバルセラピスト。
庭や植物から始まる、自分らしく心身ともに健康で充実したライフスタイルの提案にも活動の幅を広げている。レア植物や新発見のある植物紹介で定評あるオンラインショップも人気。

「ACID NATURE 乙庭」オンラインショップ http://garden0220.ocnk.net
「ACID NATURE 乙庭」WEBサイト http://garden0220.jp

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