【プロが解説】芽吹きから花後まで! 暑さに強い夏咲きも「アリウム観賞リレー」20種 完全ガイド
多品種を植えて春から初秋まで楽しめるアリウムの観賞リレー!
オーナメンタルで多彩な球状の花序が春〜初夏の庭の見どころになるアリウムの仲間。本連載「乙庭Styleの植物」では、これまでも数回、植栽に映えるアリウムの魅惑種をご紹介しました。
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アリウムというと、秋植えの球根種を思い浮かべる方も多いかもしれませんね。
今回は、早咲き〜遅咲きの球根性アリウムに加え、意外と知られていない早春の芽吹きの美しさ、宿根性のアリウム園芸品種や食用種などにも着目し、見どころや開花期の異なる多品種を植えて、季節の移り変わりとともに様々なアリウムの花や花後のオーナメンタルな姿を楽しむ、開花リレーの手法を紹介します。
和名ではネギ属と呼ばれるアリウム。ネギは日本人の食卓でも馴染みの深い植物です。
そのネギの仲間の多様性や園芸的な観賞価値の幅広さを取り入れた植栽法です。
多種多様なアリウムの品種と宿根草が織りなす5月の風景。
日々景色が移り変わるようにお庭の植栽計画を考えるのはなかなか難しいことですよね。
宿根草植栽やハーブ、ドライガーデンプランツともよく似合い幅広く組み合わせを楽しめるアリウムの仲間。
来年の庭の植栽計画の参考やヒントになれば幸いです。
秋植え球根だけじゃない! 多様で観賞価値の高いアリウムの仲間
ひと言でアリウムというと、春の花壇の主役で、切り花としても多く利用されるアリウム・ギガンチウムなどの秋植え球根種を連想する方も多いかもしれません。
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しかし、じつはアリウムの仲間はとても多様で、約700種の野生種があり、野菜としても馴染み深いニンニク(Allium sativum)やニラ(Allium tuberosum)なども同じアリウム属の植物なんですよ。
意外と知られていないニンニクの花。美しいですよね。Vadym Zaitsev/Shutterstock.com
他にも、ハーブとしてよく知られるチャイブも、学名はAllium schoenoprasum。このように、身近に感じられる植物の中にもアリウムの仲間を多く見つけることができます。
花も葉もエディブルに利用されるハーブ、チャイブの花。Nicola_K_photos/Shutterstock.com
また、近年では秋植えの球根種だけでなく、夏咲きの宿根性アリウムも注目されており、性質丈夫なサマーガーデンの花ものとして利用されるようになってきました。
まずは、アリウムの仲間の多様性を理解した上で、その開花期や大きさ・草姿、花後の様子など多様な観賞価値を意識して組み合わせることで、春〜初秋まで、常に庭のどこかしらにアリウムの花やシードヘッドが庭の他の花と共演している風景を作ることができます。
アリウムのシードヘッド。Wirestock Creators/Shutterstock.com
では、以下に開花期順にアリウムの開花リレーの品種セレクト例を紹介します。
※この記事では関東平野部での開花期を基準に書いています。地域によっては開花期がずれますが、開花リレーの順番の参考になると思います。
【3月】地面が露出した庭でアリウムの美しく個性的な芽吹きを楽しむ
3月、宿根草中心のお庭では地面が多く露出していることが多いでしょう。球根類の芽吹きはそこに春の生命力を感じさせてくれます。
アリウム・カラタビエンセ 美しい灰青緑色の芽吹き。
あまり知られていませんが、球根性アリウムの中には、芽吹きの様子も個性的で目を引くものがあります。芽吹きの美しさも取り入れて植栽をするなんて、通っぽい楽しみ方じゃないですか?
アリウム ‘グローブマスター’ 芽吹きの時だけに見られるこっくり濃厚な赤みがさす葉。
アリウム ‘マイアミ’ 渦巻き状にひねれたヒトデ状のロゼットが面白い。
【4月上〜中旬】ぐんぐん伸びる春咲き種のつぼみに生命力を感じる
4月には春咲き種のアリウムのつぼみが日を追うごとに伸びてきます。まだ開花には至りませんが、日々眼に見える変化を遂げていく成長の様子は、私たちに春の生命力と喜びを感じさせてくれますね。
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【4月下旬〜5月上旬】早咲きの品種が開花
4月下旬になると、いよいよ早咲き種のアリウムの開花が始まります。
球根種では、‘パープルセンセーション’、シューベルティ、‘シルバースプリング’、‘グラディエーター’などが少しずつ開花期がずれながら開花していきます。
アリウム‘パープルセンセーション’ 色鮮やかな紫色の中型種、他の品種に先駆けて咲きます。Winkler_Photografie/Shutterstock.com
アリウム・シューベルティ 巨大で造形的な花序がひときわ目を引く原種。
アリウム ‘シルバースプリング’ 白花の花心部に乗る濃厚な赤紫みがニュアンスたっぷり。Daria Kho/Shutterstock.com
アリウム‘グラディエーター’ 比較的早咲きの壮麗大型種。Joe Kuis/Shutterstock.com
チャイブの開花期もこの時期に重なります。球根種の大きな球状の花序だけでなく植栽前景にチャイブを合わせたりすると、よりナチュラルでポタジェへの連想も広がるような演出ができます。
チャイブの花。Harry Wedzinga/Shutterstock.com
【5月中〜下旬】秋植え球根種の開花最盛期
秋植え球根性のアリウムはこの時期が開花最盛期。品種ごとに少しずつ開花期がずれながら、草姿も花色もさまざまな品種が次々と咲いて、晩春の庭をオーナメンタルに彩ります。
アリウム・ネブスキアヌム 地際でコロコロと咲く様子も可愛らしい小型種。芽吹きの灰水色の葉も美しい。
アリウム ‘グローブマスター’ ギガンチウムより低い草丈で直径20cmほどの巨大な花序を咲かせる壮麗な品種。
アリウム ‘マイアミ’ 草丈80cm程度に比較的大きく育ち、ダークな赤紫花もカッコいい。
アリウム ‘ピンクジュエル’ ソフトピンクの花色と白緑色の花心の対比が美しい。サヤが大きいシードヘッドも比較的長く残り、オーナメンタルな姿が楽しめる。
アリウム・クリストフィー メタリックな質感の星形の花が織りなす巨大な花序がオーナメンタル。フロミスやエリンジウムなどの宿根草ともよく似合う。
【6〜7月】宿根草の花々と初夏〜夏咲き品種の共演。シードヘッドも!
初夏〜夏は、他の宿根草の開花も多種多様に。アキレアやモナルダなど色とりどりの宿根草の花の中に、こっくりとした色合いの初夏先のアリウムがオーナメンタルなリズムを加えます。
アリウム・スファエロセファロン 「丹頂」という和名でも知られ、生け花などでもよく用いられる原種。初夏の宿根草植栽によく似合い、リズムを加えてくれます。
アリウム ‘レッドモヒカン’ 多くのアリウムが咲き終わった後、関東では6月中〜下旬にタイミングよく咲いてくれます。Bildagentur Zoonar GmbH/Shutterstock.com
6月下旬頃までは、5月に咲いた‘ピンクジュエル’、‘マイアミ’などのドライベージュのシードヘッドも宿根草とオーナメンタルに共演します。
咲いている花々と、枯れて造形的なシルエットが際立つシードヘッド。生物と静物との対比がドラマティックでもあります。
そして、7月には大人の背丈以上の高さでアリウム‘サマードラマー’が開花します。
アリウム‘サマードラマー’ Alex Manders/Shutterstock.com
アリウム‘サマードラマー’は、秋植え球根種のアリウムの中ではもっとも遅咲きの品種。ルドベキア・マキシマやフェンネルなど、草丈の高い宿根草にも引けを取らないシンボリックな存在感で、絶好のフォーカルポイントになります。シードヘッドも長く残りますよ。
【8〜9月】暑さにも強い夏咲きの宿根性アリウムが開花
秋植え球根ではない宿根性のアリウムの中には、真夏〜初秋にかけて開花する品種も近年普及してきました。草丈は比較的小ぶりで宿根草植栽の前面を彩るのによいでしょう。
アリウム・ヌタンス 夏咲きの宿根性アリウムの中でも比較的大きく育ち、存在感があります。Robert Buchel/Shutterstock.com
アリウム ‘ミレニアム’ 性質丈夫でよく咲く名品種。草丈は低いので植栽前面に。Gabriela Beres/Shutterstock.com
近年日本でも紹介されているこれらの夏咲き性宿根種は、暑さや乾燥にも強く、日本の夏の気候にも耐え、花が少なくなりがちな夏の花壇でも活躍します。
また、野菜としてお馴染みのニラも晩夏の頃から咲き始めます。
ニラの花。Tom Meaker/Shutterstock.com
ニラの花は、そのままアリウムらしい花序の白花で爽やかでもあり、宿根草植栽にちょっとしたポタジェの雰囲気を加える素材としても面白いですよ。
ニラは葉も花もエディブルなので、ニラの花をお料理の彩りに添えてみるのも、園芸家らしいお洒落な活用法ですよね。
秋植えのアリウムの球根は早めの予約注文が吉!
これまでの秋植え球根に関する記事でも力説してきましたが、ちょっと珍しい秋植え球根の買い時は、じつは真夏なんですよ。7、8月から予約販売を開始するネットショップの早期予約するのが確実です。早期予約セールを行っているショップもあるので賢く利用しましょう。
実際に園芸店の店頭に球根が入荷してくるのは10月ですが、秋の植え付け時になってからいざ秋植え球根を購入しようとすると、素敵な品種の多くがすでに予約完売していて、手に入らないことがとても多いです。欲しい品種を確実にゲットするためには、秋植え球根はネットショップでの7〜9月の早期予約をぜひ賢く活用してくださいね。
特に、アリウムの比較的珍しい種などは流通量が少なく、人気品種は秋を待たずに予約完売していることが多いです。一年の一時期しか流通しない季節アイテム、買い逃して1年間おあずけとなってしまうのは避けたいですよね。
宿根草植栽で長く開花リレーを楽しめる「アリウム」関連記事も併せてチェックを
秋植え球根のアリウムは、花だけでなく、芽吹きの葉の様子やドライのシードヘッドまで楽しめます。宿根性の品種や食用種なども幅広く選択肢に入れることで、長い期間、多様な観賞価値を庭に提供してくれることをお伝えしました。
ぜひ、好みに合った品種を複数組み合わせて、自分らしい・楽しいガーデニングに役立ててください。
アリウムに関して詳しく品種解説した以下記事も参考に。
「変化は世界の法則であり、美はその姿を借りて現れる」
(ヴィクトル・ユーゴー 作家 1802 - 1885)