新感覚なドライガーデン素材! ベスコルネリアをご存じですか?【乙庭Styleの植物5】
新感覚なドライガーデン素材! ベスコルネリア
今回は、アガベやユッカなどとも相性がよく、かつ花や葉も美しく植栽に深みを添えてくれる、まだ日本ではあまり知られていない植物、ベスコルネリアをご紹介します。
近年、ローメンテナンスでワイルドなカッコよさから、アガベやユッカなど、メキシコ~アメリカ南部にかけての乾燥地を原産とするオーナメンタルプランツを取り入れたドライガーデニングを楽しむ方も増えてきていますよね。
ダイナミックで硬質のロゼット姿は、地に咲いた花のようでもあり、大胆で彫刻的な美しさもあり、細々した要素が多くなりがちな植栽の中で、コサージュのようにぼってりとした装飾性で視線を集めてくれます。
上写真は、乙庭がデザインした歯科クリニックのドライな中庭の植栽例です。インパクトある植物を点々と配置し、荒涼とした景観と、一つひとつの植物のフォルムを美術品のように眺めることができるように設計しました。ここでは、アメリカーナとストリクタという2種類の個性の異なるアガベと、アガベとは雰囲気の異なるロゼットもののレアプランツのプヤとマンガべを組み合わせ、植物のキャラがカブらないように慎重に品種を選んでいます。
アガベやユッカは、単体でもカッコよく決まる、ある意味便利な素材なのですが、その一方で、よく似た種も多く、似たもの同士のコレクション庭になってしまうことも。しかし、ロゼットばかりでは差がつきにくく、ボキャブラリーの少ない植栽になります。いろいろアガベを集めてはみたものの、いざ植えるとなると、なかなかオリジナリティーが出せずに苦労している方も多いのではないでしょうか。
似たようなアガベとユッカを列植すると、植栽というよりは「コレクション」という趣になってしまいます。Photo/Gelia/Shutterstock.com
そこで、アガベ・ユッカから、もう少し植栽のバリーションやボキャブラリーを広げる素材としてのベスコルネリアの提案です。
Photo/Peter Turner Photography/Shutterstock.com
ベスコルネリアは、原生地域がアガベやユッカなどと重なり、独特の葉だけでなく、花も楽しめることから、静的で年間の変化が乏しくなりがちなドライガーデンに季節感を添えてくれます。日本ではやや手に入りにくい植物ですが、それだけに他の人とはカブりにくく、独自の植栽表現に役立ちますよ。
棘がなく安全に植栽できる新感覚ドライガーデン素材、ベスコルネリア
ベスコルネリアは、アガベと同じキジカクシ科の植物で、中米からメキシコにかけて、いくつかの原種が生息している属です。アガベのように、地面に巨大な花が咲いたような多肉質のロゼット葉を展開しますが、アガベよりも葉質が柔らかくしなやかで、葉縁や葉先に棘もないので安全に植栽できます。
葉の雰囲気は、熱帯性で棘なしのアガベ・アッテヌアタ種(Agave attenuata)にも似た雰囲気があり、パウダリーな灰水色~灰白緑色、薄くしなやかな多肉質感です。有棘種のいかついアガベとはまた異なるオーナメンタルな観賞価値がありますね。
上写真はアガベ・アッテヌアタの参考画像。アッテヌアタ種は熱帯性で耐寒性が弱く、日本ではごくごく温暖な場所でないと屋外栽培は難しいです。
その点、ベスコルネリアは耐寒性があり、棘もないので、ドライガーデンに興味があるけれど、アガベやユッカの葉の鋭いトゲを危険視している方にもオススメです。
壮麗な開花も見モノ! 咲いても枯れないので安心
そして、ベスコルネリアのもう一つの魅力は、春にダイナミックな花茎を伸ばして咲かせる壮麗な花! 以下にご紹介する3種は、コーラルレッド~濃赤紫色の花茎がとても妖艶で、日々ぐんぐんと花茎を伸ばしてダイナミックに開花していく様は、季節の注目・話題の的になります。
釣り鐘状に垂れ下がってたくさん咲く花も、花茎のコーラルから花先の淡黄緑へと花色がグラデーションで移ろい、とても美しいです。
他にはあまり類を見ない独特の花で、レア感もあり、植栽の中で浮きすぎることなく目立ちます。
アガベも数十年に一度、3~4mにもなる壮大な花茎を伸ばして開花しますが、開花した株は子株を残して枯死してしまいます。
Photo/Pawel Skokowski/Shutterstock.com
上写真は、数十年に一度しか見られない、アガベの開花風景です。ぐんぐんと日々建築物のようにそそり立っていく花茎の様子や壮大な開花シーンは、まさに「イベント」ですが、それと引き換えに大きく育った個体が枯れてしまうという一抹の寂しさも孕んでいます。
その点、ベスコルネリアは、開花しても枯れることはないので、アガベのような巨大スケールの開花イベントを、安心して楽しむことができますね。
手間もかからず、栽培が容易なのも魅力
熱帯的な雰囲気で、寒さに弱そうに見えますが、耐寒・耐暑性もあり性質は丈夫です。栽培が容易で、幅広くいろいろな植物と組み合わせられるのも魅力のポイントです。
上写真は大型種のベスコルネリア・セプテントリオナリス x デコステリアナと、オーストラリア原産のバンクシア・ロブル、アロエ・ストリアツラを組み合わせた乙庭の店頭植栽です。乙庭のある群馬県高崎市は、夏は40℃越え、冬はー5℃以下になり積雪もありますが、この組み合わせで、毎年問題なく夏冬を越しています。乾燥にも強く、とても育てやすいです。水はけのよい日向に植えるとよいでしょう。
アガベなどドライガーデンプランツとだけでなく、ラベンダー、ローズマリーなどのハーブ類や、スティパなどのオーナメンタルグラスと合わせても、絶好のフォーカルポイントになります。
上写真は地中海沿岸地域原産のフロミス ・プルプレア(桃紫花)とスパルティウム・ユンケウム(黄花)の開花風景。カラッとした南欧風の組み合わせですが、背景に異彩を放つベスコルネリアの赤紫色の花茎があるだけで、世界観が一変しますね。
では、ここからは、乙庭でも栽培している3種をご紹介します。
スケール感で選ぶベスコルネリア3種
以下でご紹介するベスコルネリアは、花や葉の見た目が似ていますが、各種、大きさが異なります。求めたい効果や植え場所の広さに応じてチョイスするとよいでしょう。
ベスコルネリア・セプテントリオナリス x デコステリアナBeschorneria septentrionalis x decosteriana
乙庭のエントランス脇に象徴的に配置している、お気に入りの大型種です。2つの原種による交配種で、灰水色がかった葉も美しく、ロゼットも花茎も巨大に育ち見事。
■ 草丈:1.2m(葉)~3.5m(花茎)
ベスコルネリア・ユッコイデスBeschorneria yuccoides
Photo/Peter Turner Photography/Shutterstock.com
前出のセプテントリオナリス x デコステリアナによく似た葉色と質感の中型種。今回ご紹介している3種の中では、苗の流通もあり、比較的手に入れやすいものです。
■ 草丈:80cm(葉)~2.5m(花茎)
ベスコルネリア・セプテントリオナリスBeschorneria septentrionalis
明るい緑の葉色で、草丈もあまり高くならずコンパクトにおさまる種です。花茎も人の身長程度で扱いやすい大きさ。ショッキングな赤紫の花茎を目の高さで楽しめ、さまざまな植物と協調性よく似合います。
■ 草丈:40~50cm(葉)~1.8m(花茎)
【ベスコルネリア DATA】■ キジカクシ科■ 主な花期:春(毎年開花するわけではない)■ 耐寒性:中■ 耐暑性:強■ 日 照:日向
「流行は色褪せるけど、スタイルだけは不変」(ココ・シャネル ファッションデザイナー 1883 – 1971)
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