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トロピカルな植物から懐かしい素材、ナチュラルな宿根草など、分類の垣根を取り去った植物セレクトで話題の、ボタニカルショップのオーナー&園芸家の太田敦雄さんがお届けする連載「ACID NATURE 乙庭 Style」。庭づくり、植物選びに“マンネリ”しているあなたへ、庭の面白さや植物の可能性など、アンテナを刺激する新たな世界観をお伝えします。

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ようこそACIDな庭の世界へ

はじめまして。園芸家の太田敦雄です。独自セレクトのボタニカルショップ ACID NATURE 乙庭 (アシッドネイチャー おつにわ 以下、乙庭) を拠点に、植栽デザインや執筆などを通して、植物や庭の面白さ・可能性をお伝えしています。ひとことで乙庭を説明すると、「独創的な植栽をする異色の園芸店」といったところでしょうか。

乙庭の活動は、植物の生産販売、デザイン、文章や写真での表現活動など多岐に渡ります。それらをオールインワンで手がける園芸家は少ないようで、その複雑でよく分からないところが乙庭特有の持ち味なのかもしれません。そこで本連載「ACID NATURE 乙庭 Style」では、乙庭を少しずつ解き明かしていきたいと思います。

上2枚/2018年4〜6月に埼玉県滑川町「国営武蔵丘陵森林公園」都市緑化植物園で公開された乙庭作の展示植栽「火の鳥」。火山岩を敷き詰めた庭に、炙り焦がしたグラス類や火焔や鳥を連想させる植物を配し、破壊と復活・再生のストーリーを表現。

ここでは、乙庭好みの植物の紹介や組み合わせ方、手がけた植栽プロジェクトなどを書き綴っていく予定です。記事が増えるにつれ、植物や庭や建築などが複雑に絡み合った“乙庭のスタイル”が浮かび上がってくることでしょう。今後記事がストックされた暁には、サイト内のタグ「ACID NATURE  乙庭」「太田敦雄」で全テーマを呼び出すことができます。

乙庭の植栽デザインデビュー作、生物建築舎設計「天神山のアトリエ」(2010年竣工)にて、建築家、藤野高志氏と模型を囲んで最新プロジェクトの検討中。土の床に直植えされたレモンユーカリやオリーブが大きく育ち、木陰にいるようなオフィス空間。

「ACID NATURE  乙庭」の「ACID」は、本来「酸性の」という意味の単語ですが、クラブミュージックの世界では「刺激的な」という意味で使われます。本連載を通して、「きれい」「かわいい」だけではない、刺激的な園芸をお伝えしていきたいと思います。記事が増えるにつれ、新しい発想による植物世界に引き込まれていくことでしょう。

「新しいバランス」を追求する乙庭の植栽

乙庭の植栽は、トロピカルな植物や昭和の庭っぽい懐かし素材、ナチュラルな宿根草など、分類の垣根をいったん取り去って再構成し、新たな世界観をつくり出します。例えるなら、クラブDJがいろんなジャンルの楽曲をミックスして時空間を演出していくような手法です。

原産地も、流行った時代背景も違う植物たちを、危うさギリギリで調和させる「新しいバランス」を追求しています。いわゆる「自然風な植栽」とは真逆の発想ですね。

観る者をピリピリさせる、無国籍で混沌とした植栽。とても自然には見えない植栽でありながら、実はその場の環境に合っていて、新しい植生が成り立っている。そんな、植物の個性と人間の知的感性が紡ぎ出す「刺激的で皮肉な自然」をテーマに植栽に向き合っています。

ボタニカルショップ「ACID NATURE 乙庭」

乙庭の活動拠点となっている、刺激的な庭づくりに“効く”植物苗を販売している店舗です(※2018年7月現在、業務拡充のため実店舗販売はお休み中。WEBショップのみで販売)。

夏は日本有数の酷暑、冬は強い寒風が吹く群馬県高崎市。コンクリート打ちっ放しの店舗建物を囲むアスファルトの敷地上に見本ガーデンが“置かれて”います。舗装敷地のため、全て鉢植えで構成されたコンテナ植栽。夏冬の厳しい場所での寄せ鉢栽培を通して、植物の耐暑・耐寒性を検証したり、コンテナガーデニングの可能性を日々模索しています。

このような特殊な環境だからこそ見えてくる植物の可能性を、見逃さずに生かしていくことも、私の仕事の一つとなっています。

今後の記事では、「乙庭視点で選ぶ植物紹介」をはじめ、「現在進行中! 新オフィス建築プロジェクト」や「乙庭が手がけた植栽プロジェクト」、「乙庭視点で読み解く、素敵なガーデン、植栽スポット訪問記」、「園芸家・建築家との対談」などを熱くご紹介していきたいと思います。どうぞお見逃しなく。

「ACID NATURE 乙庭」の歴史 超まとめ

ちょっと駆け足ですが、園芸家・太田敦雄と乙庭のこれまでの歩みをダイジェストでご紹介します。

  • 1996年〜 たまたま書店で手に取った洋書『derek jerman’s garden』の植栽表現に感銘を受け、一気にガーデニングにハマる。大学で建築を学ぶため、東京から群馬に帰省。実家の庭で試行錯誤を繰り返した園芸初心者時代。
  • 2008年〜 アマチュア園芸家時代。庭付きの集合住宅に引っ越したのを機に、そこでの趣味の植栽を綴ったブログ「ACID NATURE 乙庭」を開始。その庭が編集者や建築家の目にとまり、雑誌掲載や建築家とのコラボワークを通して次第に注目を集める。

    アマチュア園芸家時代の庭。カンナやサトイモなど、懐かしい雰囲気のある植物を、品種を選んで大胆に植栽に織り込んでいる。
  • 2010〜11年 植栽デザインデビュー作となる建築、「天神山のアトリエ」「萩塚の長屋」(ともに藤野高志/生物建築舎 設計)竣工。建築と植栽を一体的にとらえた計画案で多数メディアに掲載。

    「天神山のアトリエ」(藤野高志/生物建築舎 設計)2012年6月撮影。
  • 2011年〜 前出「萩塚の長屋」(群馬県高崎市)に拠点を移し起業。ボタニカルショップ「ACID NATURE 乙庭」開店。独特の植物セレクトや個性的なガーデンデザインなど幅広く活動。
  • 2018年 著書「刺激的・ガーデンプランツブック」(エフジー武蔵)発刊。

    ガーデニングの魅力にのめり込むきっかけとなった一冊『derek jerman’s garden』と、それから20年を経て出版された自著『刺激的・ガーデンプランツブック』。

時には不思議な出会いもあって、一素人園芸家であった私が、今、こうして園芸の世界で表現できる場にたどり着きました。これからも、みなさんと一緒に新しい園芸スタイルをつくっていきたいと思います。

「『混ざり合っているものほど強い』そう思うんです」
(熊谷登喜夫 ファッションデザイナー 1947 ―1987)

Credit


写真&文/太田敦雄
「ACID NATURE 乙庭」代表。園芸研究家、植栽デザイナー。立教大学経済学科、および前橋工科大学建築学科卒。趣味で楽しんでいた自庭の植栽や、現代建築とコラボレートした植栽デザインなどが注目され、2011年にWEBデザイナー松島哲雄と「ACID NATURE 乙庭」を設立。著書『刺激的・ガーデンプランツブック』(エフジー武蔵)ほか、掲載・執筆書多数。
「6つの小さな離れの家」(建築設計:武田清明建築設計事務所)の建築・植栽計画が評価され、日本ガーデンセラピー協会 「第1回ガーデンセラピーコンテスト・プロ部門」大賞受賞(2020)。
ガーデンセラピーコーディネーター1級取得者。(公社) 日本アロマ環境協会 アロマテラピーインストラクター、アロマブレンドデザイナー。日本メディカルハーブ協会 シニアハーバルセラピスト。
庭や植物から始まる、自分らしく心身ともに健康で充実したライフスタイルの提案にも活動の幅を広げている。レア植物や新発見のある植物紹介で定評あるオンラインショップも人気。

「ACID NATURE 乙庭」オンラインショップ http://garden0220.ocnk.net
「ACID NATURE 乙庭」WEBサイト http://garden0220.jp

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