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分類の垣根を取り去った植物セレクトで話題のボタニカルショップのオーナーで園芸家の太田敦雄さんがお届けする連載「ACID NATURE 乙庭 Style」。庭づくり、植物選びに“マンネリ”しているあなたへ。来春のガーデンに魅力をプラスするオススメの球根植物、アリウムの種類と効果的な使い方をじっくりご紹介します。秋の植えどきにぜひ活用してください。

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春の宿根草とぜひ合わせたい魅惑の秋植え球根植物「アリウム」

秋の気配が感じられると、ガーデナーはすでに来春の準備に取りかかります。春の庭を思い描きながら、宿根草や球根のセレクトや植えつけ作業が楽しい時季ですよね。

今回は、5~6月頃に開花し、春の宿根草とよく合う乙庭オススメの球根植物「アリウム」をご紹介します。

Photo/BakerJarvis/Shutterstock.com

国内外の有名庭園やフラワーショーで見られる、大型種ギガンチウムの群植が織りなす、紫色の球状花のゴージャスな風景に感動されたことがある方も多いと思います。

それ以外にも、アリウムには多くの種があり、個性的な小型種や造形が面白い中型種などバリエーション豊富。幾何学的な花を多彩に楽しめ、春の庭に独創性を加えてくれるアイテムです。

視野を広げてみると、野菜のニンニクやニラ、ハーブのチャイブもアリウムの仲間ですし、それらの花も美しいものです。花と野菜のある、ポタジェへの連想も広がりますね。

園芸品種かと思うほど美しいニンニクの花。Photo/Jayne Newsome/Shutterstock.com

アリウム球根の買い時

いざ植え時の10月になってから秋植え球根を買おうとすると、すでにお目当ての品種が売り切れていて手に入らなかった、そんな苦い経験をされたことのある方も多いのではないでしょうか。特に、アリウムの比較的珍しい種などは、流通量が少なく、秋にはすでに売り切れていることが多いようです。秋にしか流通しない季節アイテム、買い逃して1年間おあずけとなってしまうのは避けたいですよね。

ちょっと珍しい秋植え球根の買い時は、実は真夏なんですよ。7、8月から予約販売を開始するネットショップの早期予約を利用するのが確実です。早期予約セールを行っているショップもあるので、賢く利用するとよいでしょう。

アリウムの植え方育て方、組み合わせのコツ

アリウム球根の大きさ比較。左からギガンチウム、‘グローブマスター’、3列目上から‘パープル・センセーション’、クリストフィ、‘レッド・モヒカン’、右スファエロセファロン。

上写真のように、アリウムの球根は種類によって大きさがかなり異なります。植え時は、地温が落ち着き、寒くなる前の10月から11月前半頃が適期です。植える深さは、球根の上に球根の高さの1.5倍程度の土がかかるくらいの目安でよいでしょう。アリウムは春以降、開花に向けて根量が多くなります。鉢植えの場合は、球根の下に根が十分に張れる深さを確保できる鉢を選びましょう。

水はけ、日当たりのよい場所が適します。球根植え付け後は、一般の宿根草と同様、完全に乾燥させないよう注意し、冬の寒さにも当てます。

アリウムの球根は日本の高温多湿環境に弱いものが多く、植えっぱなしだと、夏の休眠期に土中で腐ってしまうこともあります。開花後、地上部が枯れる頃合いで球根を掘り上げて保管し、また秋に植えるのが無難でしょう。

アリウムは、春の芽吹きは生命力が感じられ、葉も楽しめるのですが、開花期に近くなると地際の葉が枯れ進み、足元が寂しくなってきます。その頃に葉が綺麗に茂り開花期が揃うゲラニウムやバプティシアといった宿根草やカラーリーフプランツなどを上手に組み合わせて葉のボリューム感を補うと、豊かな植栽になりますよ。また開花期間は比較的短く、少しずつ開花期も異なるので、数種類をシーンを変えて植えておくと、開花がずれていろいろな花の組み合わせが長く楽しめます。

【DATA】
■ ネギ科
■ 主な花期:春~初夏
■ 草 丈:各種の項参照
■ 耐寒性:強い
■ 耐暑性:普通~やや弱い
■ 日 照:日向

壮麗な特大種
ギガンチウム&‘グローブマスター’

球根も大きく、まさにゴージャスな大球花を咲かせます。バラやシャクヤクと並んで5月の庭の主役を張れる、インパクトあるオーナメンタルフラワーですね。

アリウム・ギガンチウム
Allium giganteum

Photo/Nadezhda Kharitonova/Shutterstock.com

■ 草丈: 1.2m程度
アリウムといえば本種を連想する方も多い代表格。草丈が高く、構築的な美しさも表現できます。

ギガンチウムの球根は比較的高価と思われがちですが、秋の販売時は、写真のようにいくつかに分球したまとまりで1球として扱われることも多いです。数球分の価格と考えるのが妥当でしょう。

アリウム ‘グローブマスター’
Allium ‘Globemaster’

Photo/InfoFlowersPlants/Shutterstock.com

■ 草丈:70㎝程度
ギガンチウムより草丈が低く、より大きな花序となるため、花の存在感がより際立つ品種。

アリウム ‘グローブマスター’の球根。

アリウムらしい紫花の中型種
‘パープル・センセーション

大きくなりすぎず、ギガンチウムよりもやわらかい雰囲気があり、宿根草ともよく合う。アリウムらしいオーナメンタルさとナチュラルな雰囲気を兼ね備えた品種です。

アリウム‘パープル・センセーション’
Allium aflatuense ‘Purple Sensation’

Photo/Winkler_Photografie/Shutterstock.com

■ 草丈:60㎝程度

アリウム‘パープル・センセーション’の球根。

オーナメンタルなずんぐり中型種2種

草丈に対し、とても大きな放射球状の花がオーナメンタルで目を引く、個性的なシューベルティとクリストフィの2種。花後に残る花がらも造形的なので、庭で花を楽しんでから花茎を収穫し、ドライフラワーとしても楽しめます。

アリウム・シューベルティ
Allium schubertii

■ 草丈: 50㎝程度
直径40㎝近くにもなる、打ち上げ花火のような花序が見事。単体でも幾何学的な造形が素晴らしいので、まとめて植えるよりも1球ずつ点々と散らして植えると効果的。

アリウム・クリストフィ
Allium christophii

■ 草丈: 40㎝程度
メタリックな紫色の星型花が幻想的でオーナメンタルな効果を発揮する美麗種。

Photo/cristo95/Shutterstock.com

降水量の少ないヨーロッパのガーデンでは、枯れてドライになった本種の花茎を刈り取らず長く残して、秋冬のガーデンでもオーナメンタルに楽しめますが、日本では地際が腐って倒れてしまうため、花がらを楽しめるのは梅雨頃まで。

シューベルティとクリストフィの2種とも球根は上写真くらいの大きさ。

幾何学的、個性的な細長中型種3種

‘フォーロック’、‘レッドモヒカン’、スファエロセファロンの3種は、花茎が細長くヒョロッと立ち上がるタイプの中型種です。大型種のようなカッチリした造形美ではなく、繊細な花茎と風に揺れる個性的なオーナメンタル花が植栽にスパイスのように効きます。

アリウム ‘フォーロック’
Allium ‘Forelock’

Photo/dubreu vasilica/Shutterstock.com

■ 草丈:1.2m程度
渋いボルドーの花色も、花序の上半分が上に飛び出すように咲く様子も風変わりで目を引く品種。

アリウム ‘レッドモヒカン’
Allium ‘Red Mohican’

Photo/Bildagentur Zoonar GmbH/Shutterstock.com

■ 草丈:45㎝程度
前出の ‘フォーロック’同様、花序の上部が上に飛び出して咲く花容が新感覚なえんじ花の品種。

‘レッドモヒカン’の球根。 ‘フォーロック’も球根は上写真くらいの形と大きさ。

アリウム・スファエロセファロン
Allium sphaerocephalon

Photo/Mark Bridger/Shutterstock.com
Photo/Tatiana Belova/Shutterstock.com

■ 草丈:50㎝程度
「丹頂」の和名でも知られ、花序の上部からえんじ色の花が咲き進んでいく、花色の移ろいが美しい原種。細い花茎に咲くワレモコウを大きくしたようなえんじ色の球花は、ナチュラルな宿根草植栽に幾何学的なリズムを加えてくれます。生け花の世界でも、幾何学的な空間性を演出するのに、しばしば用いられます。

スファエロセファロンの球根。本種は日本の気候環境でも植えっ放しで夏越し可能です。宿根草扱いでオーナメンタルグラスなどと合わせても面白いでしょう。

Photo/guentermanaus/Shutterstock.com

リーフも美しいずんぐり小型種2種

ネブスキアヌムとカラタビエンセは、花茎を伸ばさずに、地際でコロンとしたまん丸の花序を咲かせる、可愛らしくも神秘的な西~中央アジア原産の2種。深い灰水色の葉も美しく、開花までの期間もリーフプランツとして楽しめます。

アリウム・ネブスキアヌム
Allium nevskianum

■ 草丈:15~20㎝程度
淡いえんじの花色も珍しく、渋いながらもとても目を引くレア種。

アリウム・カラタビエンセ
Allium karataviense

■ 草丈:15~20㎝程度
淡桃色が可愛らしく、ネブスキアヌムよりも葉幅が広く、よりずんぐりした姿の美麗種。

カラタビエンセの芽吹き。上記2種とも、他にあまり類を見ない深い灰水色の葉色で、芽吹きの瞬間からとても美しく目を引きます。

「人生は短き春にして人は花なり」

(サミュエル・ジョンソン 詩人・文献学者 1709 – 1784)

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