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冬の庭でも活躍する技アリ素材、和を感じるカラーリーフ常緑樹 10選
庭づくり、植物選びに“マンネリ”しているあなたへ。分類の垣根を取り去った植物セレクトで話題の、ボタニカルショップのオーナー&園芸家の太田敦雄さんがお届けする連載「ACID NATURE 乙庭 Style」。今回ピックアップする植物は、和風イメージの強い樹種のカラーリーフ品種。これを洋風で現代的な植栽に組み込むとイメージの逆転で新感覚に映えます。その使い方とバリエーションをご紹介。庭の面白さや植物の可能性のアンテナを刺激します。
目次
冬の庭でも活躍する技アリ素材
ちょっと和風なカラーリーフ常緑樹
落葉樹や宿根草が冬枯れし、花も少ない寂しい庭。そこに緑を提供してくれる常緑樹は、ガーデナーの強い味方ですよね。今回は、そんな常緑樹の中でもツツジやツバキなど、ちょっと和風イメージな樹種のカラーリーフ品種をご紹介します。
ツツジやツバキと聞くと、昭和の日本家屋の庭を真っ先に連想する方も多いかもしれませんね。
しかし、これらの品種は、ちょっと和風で古臭い印象がある分、アガベやユッカなどを使った洋風で現代的な植栽に組み込むと、イメージの逆転で新感覚ですよ。庭友達との差別化アイテムとして、ぜひ活用してみてください。
Select1
赤葉ツツジ(=ロドデンドロン cv.)
正式な品種名は不明ながら、赤黒い葉色がウィンターガーデンでも活躍する、とても素敵な常緑ツツジです。
晩秋~冬の寒冷期には特に葉色の黒みが増し、路側帯の植え込みで刈り込まれているツツジのイメージとは一線を画すクールな素材。春に芽吹く新芽は真っ赤で、旧枝の黒葉との対比が美しく、黒葉品種の枝先に赤い花が咲いたような雰囲気になります。
初夏~秋まではダークな銅葉色となり、通年カラーリーフプランツとして楽しめます。通常のツツジ同様、日本の気候にも合い、とても育てやすい品種です。あえて和風やイングリッシュガーデン風なボキャブラリーからハズして、色味の異なるカラーリーフやドライガーデン素材などと独創的に組み合わせると面白いです。
樹高1m程度に育つ品種ですが、成木になっても花は咲きにくいようです。成熟株になり気候などの条件が揃うと、濃赤ピンク色の、いかにも「ツツジ」という感じの花を咲かせます。カラーリーフプランツと思って育てていた植物が、たまに開花することで、「これ、ツツジだったんだ!」と、逆に新鮮な驚きを与えてくれます。ノスタルジーと新しさを併せ持った素材ですよ。
【DATA】
■ ツツジ科
■ 学 名:Rhododendron cv.
■ 主な花期:春
■ 樹 高:1m
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向~半日陰
Select2
ツバキ(=カメリア) ‘錦葉黒椿’
赤黒地の花弁に黒みの脈模様が入る妖艶な花が魅惑的なクロツバキの斑入り品種です。
派手目の黄外斑が入る葉色を通年楽しめます。この派手目な葉色はダークな赤黒みの花とコントラストよく、花後に芽吹く新葉も照りのある飴褐色がかり、美しいです。
ツバキは日本人にはとても馴染み深い素材なので、凡庸に陥らぬよう、使い方にひと工夫加えたいところ。あえて洋風なカラーリーフやオーナメンタルプランツとアグレッシブに組み合わせると、独創的な植栽になりますよ。世界に向けて発信したい、日本伝統園芸が生み出した逸品ですね。
【DATA】
■ ツバキ科
■ 学 名:Camellia ‘Nishikiba Kurotsubaki’
■ 主な花期:早春
■ 樹 高:2m
■ 耐寒性:中
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向~半日陰
Select3
ジャノメマツ(=ピヌス オクルス‘ドラコニス’)
日本の伝統園芸でも珍重されていた、アカマツの斑入り品種です。
松葉の中ほどに明るいクリーム色の斑が入り、枝先のほうから見ると「蛇の目模様」のように見え、通常のマツとは違った、装飾的で不思議な植栽効果が得られます。マツ特有のワイルドな樹皮や樹形も雰囲気よく、アガベやオージープランツなどと合わせても相性のよい木です。
【DATA】
■ マツ科
■ 学 名:Pinus densiflora ‘Oculus-draconis’
■ 主な花期:春
■ 樹 高:4~5m
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向
Select4
斑入りビワ(=エリオボトリア ジャポニカ‘バリエガータ’)
起毛質感で表面が凸凹した大きな葉に大胆不規則にクリーム色の外斑が入る、果樹としてもお馴染みのビワの美しい品種です。
ビワは収穫できる大きさに育つまでやや年数がかかりますが、本種は初夏に熟する実にも斑が入ります。少し耐寒性が弱い傾向がありますが、関東平野部ではおおむね問題なく越冬します。ビワは日本の温暖地にも自生し、古くから食用果樹として親しまれてきました。冬の間に開花・着果するので、その時期に花や幼果が傷まないように育て収穫を期待する観点からいうと、より温暖地向きの素材といえます。一枚一枚の葉が大きいので存在感があり、個性の強い植物と合わせても引けを取らず、シンボリックに映えます。
基本種のビワのように巨大に育ってしまうこともなく、家庭用の庭木としても素敵でしょう。
【DATA】
■ バラ科
■ 学 名:Eriobotrya japonica ‘Variegata’
■ 主な花期:晩秋~冬
■ 樹 高:3m
■ 耐寒性:中
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向
Select5
タイサンボク(=マグノリア・グランディフローラ)‘リトルジェム’
旧家の大庭園や公園などで多く見られる高木、タイサンボクの比較的コンパクトにおさまる矮性品種。
昔ながらの庭木のイメージと、トロピカルな観葉植物のゴムノキを連想させる、ぼってりと厚い深緑の照り葉のおしゃれ感とのギャップが新感覚です。
金褐色のフェルト質感の葉裏と、葉表の照り深緑色とのコントラストもカッコよく、ふっくらとした白クリーム色の大輪花も美しい、見どころの多い樹木です。自然樹形で美しく、程よい大きさにおさまるので、剪定もあまり必要がなくて育てやすいです。和風の落ち着いた雰囲気にももちろん合いますが、個性的な植物を集めたデザイン性の高い植栽にするとより刺激的でしょう。丸みのある美しい葉は、アガベ・ユッカなど、尖った硬い質感の植物とも相性がよく、夏場はカンナなどの熱帯素材と大胆に合わせても素敵です。
ヒメタイサンボクの美しい斑入り品種、‘マッティメイスミス’ Magnolia virginiana var. australis ‘Mattie Mae Smith’も、コンパクトな樹形で葉色も美しくオススメです。
【DATA】
■ モクレン科
■ 学 名:Magnolia grandiflora ‘Little Gem’
■ 主な花期:初夏~夏
■ 樹 高:4m
■ 耐寒性:中
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向
Select6
斑入りキョウチクトウ(=ネリウム‘バリエガツム’)
夏の花木としてもおなじみのキョウチクトウの黄斑品種です。
真夏に元気に咲くトロピカル感満点の濃いピンク花はもちろんのこと、ちょっとコーデックス(塊根)植物を感じさせる雰囲気や、観葉植物のように派手で美しい斑入り葉が、「あえてイマ」、カッコいい常緑樹です。
キョウチクトウはインド~地中海沿岸といった温暖地域原産の植物で、プルメリアやアデニウムといった熱帯地域の花を連想させるトロピカルな雰囲気が好まれ、昭和期に多く普及し庭植えされました。暑さや乾燥、大気汚染にも強いことから、幹線道路沿いの緑化などにも用いられ、次第に「ありふれた存在」になってしまった樹木の一つです。
しかし、もう少し引いた視点で俯瞰してみると、アデニウムやパキポディウムといったキョウチクトウ科のコーデックス(塊根)植物の人気が高まり、もてはやされている2015年以降の空気感において、まさに本家のキョウチクトウを植えない手はないですよね。「ダサカッコよさ」が痛快な品種です。
アガベやユッカ、オージープランツなど、イマドキのおしゃれプランツと作為満点で組み合わせてみてはいかがでしょうか。耐寒性が万全でない以外は性質も強く、とても育てやすいです。
【DATA】
■ キョウチクトウ科
■ 学 名:Nerium oleander ‘Variegatum’
■ 主な花期:夏
■ 樹 高:4m
■ 耐寒性:普通(-7℃程度)
■ 耐暑性:強
■ 日 照:半日陰
Select7
ベニバナトキワマンサク(=ロロペタルム) ‘七彩’
銅葉タイプの種が生け垣植栽にしばしば用いられる常緑樹、ベニバナトキワマンサクの、とても珍しい葉芸を持った魅惑品種です。
本種 ‘七彩’ は、埼玉県の樹木園で作出された珍しい品種です。濃銅葉ベースで枝先に向けて紫~ピンクみの葉色へと移ろい、枝先部分の葉には大胆にスプラッシュ状の白散り斑が入ります。普段、生け垣に使ってしまうようなありふれた樹種で多彩な美しさを表現できる、イメージギャップの妙味があります。
冬場の寒気に当たると葉が黒紫みを増し、白斑の部分がショッキングピンクみとなり、ある意味「ワルカッコいい」雰囲気にもなります。異彩を放つパロット咲きのチューリップの背景などにしても面白いですよ。
【DATA】
■ マンサク科
■ 学 名:Loropetalum chinense ‘Shichisai’
■ 主な花期:春
■ 樹 高:2m
■ 耐寒性:中
■ 耐暑性:強
■ 日 照 :日向
Select8
ナリヒラヒイラギナンテン(=マホニア・コンフューサ) ‘黄雲’
和風の造園素材としてしばしば用いられるナリヒラヒイラギナンテンの、珍しい黄金葉品種です。
細長い常緑黄金葉が美しく、見慣れた感がありつつも新感覚な技アリ素材です。日本の樹木園で作出された、ぜひ日本から世界のガーデナーに発信したい品種ですね 。
従来の和風なヒイラギナンテンの使い方をあえてハズして、ユッカ・ロストラータやアガベなどイマっぽい洋モノ素材と独創的に組み合わせることで、発見とサプライズをアピールすることができます。
【DATA】
■ メギ科
■ 学 名:Mahonia confusa ‘Kouun’
■ 主な花期:初夏
■ 樹 高:1m
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:日向~日陰
Select9
クチナシ(=ガーデニア) ‘黄金の華’
鮮やかな黄金葉に少し緑が入っているように見えるくらいに、面積が大きく不規則な黄斑が入る葉がとても目を引きます。強い芳香のある、バラにも似た花容の乳白色の八重咲き花もステキな八重クチナシの斑入り品種です。
クチナシは、日本の南部~中国、東南アジアにかけてを原産とする常緑樹で、日本の温暖地でもお馴染みの庭木ですよね。花は、春のバラの開花が終わった後、梅雨の頃から、バラとはまた異なる芳香を庭に漂わせてくれて、庭の香りの演出にも活躍します。
‘黄金の華’ は、派手に大きな面積で入る鮮やかな黄斑がカッコいい、バラのような花容が美しい八重クチナシの斑入り品種です。
通年美しい葉色を楽しめ、ともすると生け垣などに使われがちなクチナシの印象を覆すような使い方ができます。耐陰性もあり、温暖地ではとても育てやすい常緑樹木です。
「ジャスミン属に似た」という意味の種小名からも分かるように、ちょっと熱帯っぽい雰囲気もあり、アスパラガス・スプレンゲリや耐寒性のヤシの仲間など、いかにも洋風な植物を合わせても面白いです。オオスカシバの幼虫に葉を食害されやすいので、浸透移行性の殺虫剤を定期的に与え、常に防除しておくとよいでしょう。
【DATA】
■ アカネ科
■ 学 名:Gardenia jasminoides cv.
■ 主な花期:初夏〜夏
■ 樹 高:2m
■ 耐寒性:普通(-7℃程度)
■ 耐暑性:強
■ 日 照:半日陰
Select10
ヤツデ (=ファトシア) ‘叢雲錦’
日陰の和庭定番素材、ヤツデの、大胆で派手な黄斑が素晴らしい品種です。
ヤツデは日本原産で、古くから庭木として親しまれ、日本人にとっては見慣れた感の強い植物ですが、海外では日陰でダイナミックな葉を展開する稀有な常緑樹として人気が高く、その斑入り品種ともなると、とても珍重されています。
その中でも本種‘叢雲錦’は、海外の園芸家から垂涎の的となっている、日本の伝統園芸から世界に自慢したい名品。耐寒性は中程度で、寒冷地には不向きかもしれませんが、基本種の緑葉のヤツデが庭木で植えられている地域であれば、同じように栽培可能です。性質は丈夫ですが、強い直射日光と土壌の乾燥に弱いので注意しましょう。
トロピカルに見えるほど派手な斑入り葉を活かして、無難な和風に陥らないようにアグレッシブに組み合わせるとよいでしょう。
【DATA】
■ ウコギ科
■ 学 名:Fatsia japonica ‘Murakumo Nishiki’
■ 主な花期:秋
■ 樹 高:2m
■ 耐寒性:普通
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:半日陰~日陰
「 自分の内なるものも外なるものも、見ているものを変える必要はない。
ただ見方を変えればいいのだ。」
(タデウス・ゴラス 作家 1924 – 1997)
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Credit
写真&文 / 太田敦雄 - 「ACID NATURE 乙庭」代表 -
おおた・あつお/園芸研究家、植栽デザイナー。立教大学経済学科、および前橋工科大学建築学科卒。趣味で楽しんでいた自庭の植栽や、現代建築とコラボレートした植栽デザインなどが注目され、2011年にWEBデザイナー松島哲雄と「ACID NATURE 乙庭」を設立。著書『刺激的・ガーデンプランツブック』(エフジー武蔵)ほか、掲載・執筆書多数。
「6つの小さな離れの家」(建築設計:武田清明建築設計事務所)の建築・植栽計画が評価され、日本ガーデンセラピー協会 「第1回ガーデンセラピーコンテスト・プロ部門」大賞受賞(2020)。
NHK『趣味の園芸』講師。(一社)ジャパンガーデンデザイナーズ協会(JAG)正会員デザイナー。ガーデンセラピーコーディネーター1級取得者。(公社) 日本アロマ環境協会 アロマテラピーインストラクター、アロマブレンドデザイナー。日本メディカルハーブ協会 シニアハーバルセラピスト。
庭や植物から始まる、自分らしく心身ともに健康で充実したライフスタイルの提案にも活動の幅を広げている。レア植物や新発見のある植物紹介で定評あるオンラインショップも人気。
「太田敦雄」公式ブログ https://note.com/acid_nature_0220
プロフィール写真/田中雅也
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