【快適な園芸】作業をしながら手肌をスペシャルケア! 手荒れ知らずの簡単テクニック

Bogdan Sonjachnyj/Shutterstock.com
植え替えや植え付けなど、庭仕事で土に水分が奪われて、手肌が荒れやすい冬の乾燥シーズン。でもこの方法なら、手肌が荒れずに園芸作業や家事ができてしまうという、一石二鳥のアイデア、アップデート版をご紹介します。分類の垣根を取り去った植物セレクトで話題のボタニカルショップのオーナーで園芸家の太田敦雄さんが提案する手肌のスペシャルケア。土いじりの時間を「手荒れタイム」から「手肌ケアタイム」にポジティブチェンジする手法です。
目次
「園芸作業に手荒れは付きもの?」…ではありません。
以前にも本連載「ACID NATURE 乙庭Style」で、手作りハンドクリームとゴム手袋をうまく活用して園芸作業の時間を、精油の香りを楽しみながら手肌のスペシャルケアもできてしまうひとときに転換する提案をしました。

●手荒れする園芸作業を極上の手肌ケアタイムに! ハンドクリーム活用法
今回はその考え方を踏襲しつつ、より汎用性があり、手作りの手間を省いて市販品でもできるアップデート版をご紹介します。
園芸・ガーデニング作業というと、真っ先に「土いじり」のイメージが思い浮かびますよね。植物を植えて育てていくことは、とても気分のよいことです。
しかし、素手や軍手などで土に直接触れて作業をしていると、特に冬の乾燥した季節などは、土に手肌の水分が奪われることでよけい乾燥して、荒れやシミシワなど手肌の加齢も進んでしまいますよね。

手肌が荒れたり老けたりするだけでなく、指先がひび割れたりささくれたり、爪の間に土が入ってしまったりして、なんだかネガティブな気分になったり、園芸に対してのみならず、生活全般のモチベーションが下がったりしませんか?
特に冬から春先にかけての時期は、私をはじめ乙庭スタッフ一同、宿根草の植え替えや株分けなど土に触れる作業が他の季節にも増して多くなり、大忙しの毎日となります。
今回ご紹介する手肌ケアは、私自身が2023年現在実践している、過去記事でご紹介した方法よりお手軽で効果的だなと思っているメソッド。 乙庭でも実践している、土いじり作業時間を「手荒れタイム」から「手肌ケアタイム」にポジティブチェンジする手法です。

老若男女問わず、園芸や家事など日々の暮らしを、自分らしく楽しく健やかに過ごすヒントやお悩み解決の糸口となれば幸いです。
今回は「白色ワセリン」を使う方法
以前の記事では、手作りのミツロウハンドクリームを使う方法をご紹介しましたが、今回はハンドクリームを手作りする手間も省いて、より汎用性が高く簡便にするために、ドラッグストアなどでも比較的安価で手に入る白色ワセリンを使用する方法をご紹介します。

ワセリンは、石油から精製された保湿剤です。石油原料とはいえ、天然成分である石油を高純度に精製することで、肌に刺激の強い不純物はほとんど取り除かれています。
中でも白色ワセリンは精製度が高く、肌への刺激が少なくほぼ無臭。デリケートな赤ちゃんや大人の肌、リップケアなど幅広く使えます。

ワセリンは肌表面に油性の薄い膜を作り、水分が蒸発するのを防ぎます。そのため、ひび、あかぎれ、荒れなどから皮膚を保護するための処方薬としても用いられます。安心度高く使用できる肌の保湿剤といえるでしょう。
※ワセリンの使用による副作用やアレルギーの心配はほとんどないといわれていますが、特に敏感肌の方やアトピー性皮膚炎の方が使用するとかぶれなどの症状が出る場合がありますので、心配な方は医療機関で相談の上、ご使用ください。
ただ、ワセリンは肌の表面にとどまり、水分が蒸発しないようにフタをする効果はあるものの、皮膚内部には浸透しません。また、ワセリン自体には肌へのケアや、肌を潤すための有効成分は含まれていないので、積極的なハンドケアとしてアプローチする方法を考える必要があります。

とはいえ、ハンドクリームもいろいろなものが市販されている中、あれこれ考えずに白色ワセリン一択にすることで、年代や性別、趣味嗜好の異なる家族みんなで使うことができたり、価格的にもお手頃という面で、かなりメリットがありますね。
では早速、白色ワセリンを用いて、土に触れる園芸作業の時間を「手肌のスペシャルケアタイム」にしてしまう方法を具体的にご紹介します。
ワセリンと手袋の二重使いで土作業が手肌のスペシャルケアタイムに
園芸で土を触ったりキッチンで水を使ったりする場合、作業が終わってから手肌保護のためにハンドクリームを塗る方が多いと思います。
ですが、それって「手肌を汚したりダメージを与えてしまった後からいたわっている」行為なんですよね。いわゆる対症療法であって、手肌が一時的にでも土や水にさらされてダメージを受けているという事実は変わりません。
そこで乙庭では、ハンドケアをした上で手袋をはめ、土に直接触れないで作業をすることで、手肌自体をダメージから遠ざけ、園芸作業の時間を「有効成分を手肌になじませるスペシャルケアタイム」にしています。

このように書くと「手袋の内側が油べっとりな感じになって不衛生なのでは?」と思われるかもしれませんね。ご安心ください。土いじりをする際、ハンドケアをした上で、使い捨ての薄手袋と作業用の厚手ゴム手袋を二重につけるのです。

そうすることで、作業中に手袋内の温度や湿度が上がって血行がよくなり、手肌もしっとりしたところに有効成分がなじみ、「園芸作業前よりも作業後のほうが手肌がキレイ」という効果が得られるんですね。
では、具体的に乙庭ではどういう風にしているか。下記の手順で準備をしてから園芸作業に取りかかります。
1.化粧水などで手を潤す。

2.(オプション)好みのロールオンアロマフレグランスを多めに塗る。

3.多めに白色ワセリンを塗る。

4.使い捨ての薄手ゴム手袋→作業用の厚手のゴム手袋の順に二重に装着。

手順が多いように見えますが、実際には1~2分程度で準備できてしまうので、やってみると面倒には感じないと思います。
では、上記の手順について、より詳しく解説します。
【手順1】化粧水などで手を潤す
前述のように、保湿の仕上げに塗る白色ワセリンは肌から水分が蒸発するのを防ぐ効果はありますが、肌に水分を与えることはできません。まずは手肌をしっとりと潤してからワセリンでフタをするイメージでケアを行うのが効果的です。

普通に水を手肌に馴染ませるだけでもよいのですが、どうせならより積極的に手肌ケアしたいと思い、私はハーバルセラピストの知見を生かして、自作のハトムギ・ユズ種子抽出の化粧水をたっぷりめに使って手肌を潤しています。
私は好きで自作のひと手間をかけていますが、もちろん化粧水はわざわざ自作でなくても、ご自身に合う市販品で大丈夫です。
ちなみに、私がハトムギとユズ種子を採用している理由を簡単に説明しますね。

ハトムギ種子の皮を剥いて乾燥させたものは生薬名で薏苡仁(ヨクイニン)と呼ばれ、ビタミンB1やアミノ酸など肌の調子を整える成分を多く含み、古代中国ではシミやソバカスの改善など美肌の目的で使用されてきました。
また、ユズの種子はアンチエイジングに有効なビタミンC・Eを含み、その抽出成分は少しとろっとしたテクスチャーで保湿効果も高いので、私はハトムギとユズ種子をウォッカに漬けた浸出液(チンキ)を作り、それを希釈して化粧水にしています。

比較的お手頃な化粧水でも、ハトムギを使用したものが多く市販されています。
【手順2(オプション)】好みのロールオンアロマフレグランスをやや多めに塗る
手間をかけたくない方は省略してもよい手順ですが、私は園芸の作業時間をより豊かなものにしたくて、化粧水で手を潤した上に、精油分を多く含み、ホホバ油やマカデミアナッツオイルなど肌ケアに有効な植物を基材に用いたロールオンアロマフレグランスを、手から手首にかけてやや多めに塗っています。

手袋の中で温度や湿度が上がるため、精油や植物油の成分も手肌によく浸透して乾燥しがちな手肌への皮脂分泌を補えますし、作業しながら心地よい香りに癒やされることで精神的にも楽しく、安らげます。
私はアロマセラピーインストラクターでもあるので、自作の自分好みのブレンドオイルを使用していますが、スキンケアやネイルケアも考えて肌によい植物を用いたロールオンアロマフレグランスもいろいろ市販されていますので、もし興味がありましたらお試しください。

肌ケアに効果的な精油や植物油については過去記事でも詳しく解説していますが、紫外線に当たりやすい園芸家の手肌ダメージケアを考えるならば、ラベンダー、フランキンセンス、サンダルウッド、ゼラニウムといった肌荒れケアや美白効果が期待できる精油を選び、希釈基材も肌のアンチエイジングや保護・保湿に有効な植物油のマカデミアナッツオイル、ホホバオイルなどを使うのがおすすめです。
【手順3】 多めに白色ワセリンを塗る
手肌を潤して肌によい油分も与えたところで、水分の蒸発を防ぐフタの役割を果たす白色ワセリンを、ややべっとりするくらい多めに塗ります。

ハンドクリーム的な使用の際、ワセリンはべとつかない程度に薄く塗るのが通常の使用法なのですが、上から手袋をして作業する場合は、少し多めに塗ったほうが手袋との摩擦も抑制でき、手肌の水分がより強力に閉じ込められて、作業後の手肌しっとり感が増すように感じます。

上写真は、乙庭勤務歴の長い30代後半の男性スタッフの手です。毎日植え替えや植栽を手伝ってもらっていますが、普段からハンドケアと手袋の併用で手肌を保護しているので、園芸や農業従事者の男性の手としては、とてもキレイですよね。
【手順4】 使い捨ての薄手ゴム手袋→作業用の厚手ゴム手袋の順に二重に装着
そして、最後に手袋をして作業開始です。厚手のゴム手袋1枚だと手袋の内側がハンドクリームでべっとりしたり、作業用の手袋の中には土が入ってしまうことも多いので、内側にもう1枚、薄手の使い捨ての手袋を使うと便利です。

乙庭では、上写真のような使い捨ての薄手塩ビ製手袋を使っています。食品加工や介護の現場で使用されるものですが、最近では家事用としてもホームセンターなどで販売しています。

そして、手にフィットする丈夫なゴム手袋。これは園芸作業のド定番ですよね。
ワセリンを塗った手に使い捨て薄手ゴム手袋→厚手ゴム手袋の順に二重でつけて完了!
間に薄手ゴム手袋をしていないと、厚手ゴム手袋の内側にハンドクリームがべっとりついてしまい、裏返して洗う手間が増えたり、結局手袋を洗うときに土や水に触れるハメになってしまいます。

この下準備をしてから園芸作業に取り掛かると、土いじり作業に熱が入るほど血行がよくなり、手袋内の温度や湿度も上がって化粧水や精油・植物油の成分がとてもよく手肌になじみます。
作業前より作業後のほうが、格段に手肌のコンディションがよくなりますよ。園芸と手肌ケアを両立しつつ好循環を生み出せますね。

乙庭でも毎日、全スタッフが多くの時間、土に触れています。普通に素手で作業し続けていると手肌がガッサガサになったり、ひび割れたりするのは必定です。

しかし、園芸はツラい作業であってはいけないと私は常日頃から思っているので、スタッフにも土が直接手につかないよう、ゴム手袋の着用を勧めています。ゴム手袋をつけるだけでも、手があまり汚れないので、作業後の手洗いも楽に済みます。
土のついた手を石鹸でゴシゴシ手洗いすると、さらなる水分が奪われて手肌が乾燥しますし、冬の屋外で冷たい水で手を洗ったり、屋内に土汚れが入るのも防げていいことずくめといえるでしょう。

そこにプラスして、ハトムギ化粧水やアロマフレグランス、ワセリンを有効活用することで、手肌にとってはマイナスイメージだった日々の土いじり作業をしながら、「普段なかなかできないようなスペシャルスキンケア」を同時に行えるようになります。園芸作業のモチベーションアップにもつながりますよね。

「老け手」なんていう言葉もあるように、手は肌年齢の差が目に見えて分かりやすい部位でもあります。また顔と違い、女性でもメイクもせず素肌がむき出しなので、「素のままでキレイ」な状態を目指したいところでしょう。

素手で土に触ることにこだわる本格派の園芸家の方もたくさんいらっしゃいますし、確かにそれも一理あると思います。しかし、一般の方の趣味の範囲でいうなら、素手で行う土いじり作業は、日々の暮らしや年齢の重ね方として、エイジングの加速防止や衛生・健康の観点からも「避けてもよいこと」であるように思うのです。
メディカルハーブ・精油を使用する際の注意事項
本記事には、メディカルハーブの知見を用いた手作りのチンキや、精油を用いたアロマセラピーの手法による自作ロールオンアロマフレグランスなどが登場します。
メディカルハーブや精油は、人類が長い年月の間、健康増進や美容に使用してきた歴史もあり、比較的安全性の高いものです。しかし、それらに含まれるフィトケミカルは、元来、植物が強い紫外線や病害虫から身を守って自然界を生き抜くために進化の過程で身につけた防具や武器のようなものであるとも言い換えられます。

植物由来だから安全というわけではなく、用法・用量を守ることが大切です。
下記注意事項もよく理解した上で、正しく安全に留意して利用しましょう。
【注意事項】
※メディカルハーブや精油は医薬品ではなくそれを使用する行為は医療ではありません。治療目的で使用するものではないので、体調が悪い、気になる症状がある場合は必ず医師に相談しましょう。
※ハーブは安全性が高く、作用も穏やかですが、アレルギーや飲み合わせ等によっては使用に注意が必要なもの、使用できないものもあります。各ハーブの注意事項をよく調べてから使用しましょう。
※精油原液は刺激が強いため、直接皮膚につかないように注意して作業しましょう。
※精油には引火性がありますので火気のないところで作業しましょう。
※治療中の病気がある、服用している薬があるなど健康状態に問題のある方、妊娠中の方は、決して自己判断では使用せず、必ず医師に相談の上、ハーブ・精油を利用しましょう。
※ハーブ・精油の持つ効能や作用の現れ方には体調差・個人差や製品による差があり、同じ人が同じハーブ・精油を使用しても反応が異なる場合があります。
※子供や高齢者、妊娠中の方が使用する場合は、分量を減らす等、安全に注意を払ってください。
※ハーブ・精油を用いて作ったものは自身が製造者となります。自己責任で安全に活用しましょう。

「美を見る力を保ち続ける者は決して老いることがない」
(フランツ・カフカ 小説家 1883 – 1924)
Credit
写真&文 / 太田敦雄 - 「ACID NATURE 乙庭」代表 -

おおた・あつお/園芸研究家、植栽デザイナー。立教大学経済学科、および前橋工科大学建築学科卒。趣味で楽しんでいた自庭の植栽や、現代建築とコラボレートした植栽デザインなどが注目され、2011年にWEBデザイナー松島哲雄と「ACID NATURE 乙庭」を設立。著書『刺激的・ガーデンプランツブック』(エフジー武蔵)ほか、掲載・執筆書多数。
「6つの小さな離れの家」(建築設計:武田清明建築設計事務所)の建築・植栽計画が評価され、日本ガーデンセラピー協会 「第1回ガーデンセラピーコンテスト・プロ部門」大賞受賞(2020)。
NHK『趣味の園芸』講師。(一社)ジャパンガーデンデザイナーズ協会(JAG)正会員デザイナー。ガーデンセラピーコーディネーター1級取得者。(公社) 日本アロマ環境協会 アロマテラピーインストラクター、アロマブレンドデザイナー。日本メディカルハーブ協会 シニアハーバルセラピスト。
庭や植物から始まる、自分らしく心身ともに健康で充実したライフスタイルの提案にも活動の幅を広げている。レア植物や新発見のある植物紹介で定評あるオンラインショップも人気。
「太田敦雄」公式ブログ https://note.com/acid_nature_0220
プロフィール写真/田中雅也
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