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【秋植えチューリップ】春の庭で芸術的な異彩を放つ「パロット咲きのチューリップ」7選
まだ残暑厳しいタイミングですが、秋植え球根のセレクトに役立つ“先取り情報”をプロがお届け! 秋植え球根の植えどきは、全国各地から紅葉のニュースが聞こえてくる頃ですが、人気品種は早期予約&購入するのが吉。春の庭で芸術的な異彩を放つ「パロット咲きのチューリップ」のイチオシ7種を、ボタニカルショップのオーナーで園芸家の太田敦雄さんがセレクト。その魅力とともにご紹介します。
目次
春の庭で芸術的な異彩を放つパロット咲きのチューリップ
今回は芸術的・個性的な春の庭の演出にとても活躍するパロット咲きチューリップの魅力や品種についてご紹介します。
チューリップは春の庭を象徴する花。毎年咲かせて楽しんでいる方も多いことでしょう。しかし、個性的な庭づくりをしたいと思った場合、じつは、チューリップのように誰もが知っている、あるいは誰もが植えるような花ほど、他人とカブりやすく、効果的に魅せるのが難しいんですよね。
花弁がグチャグチャッとよじれたり裂けたりしたパロット咲きのチューリップは、良くも悪くも「美しさと醜さの境界」にあるような花。
私自身、最初にパロット咲きのチューリップに美を見いだし世に送り出した人は、園芸史に残る大変な先見性とセンスを持ったイノベーターだと思います。
パロット咲きのチューリップは、誰もが無条件に好む整ったキレイさではなく、「植える者、観る者の美的センスを問い直す」ような、観賞するにあたり少しだけハードルが高いところに、アート観賞にも似たオトナな園芸の醍醐味があります。
とても変わった花なので、庭の中でも少ない本数でよく目立ちます。来訪者の話題の的にもなりやすく、そして他の園芸家ともカブりにくい。
そんな、ちょっと異端な魅力を持ったパロット咲きのチューリップを春の庭の個性的な味付けに取り入れてみてはいかがでしょうか。
過去の記事で、少ない本数で個性的に魅せるチューリップの活用法についても書いています。こちらも参考にお読みください。
『少ない本数でも効果的に魅せるチューリップ。セレクトとコーディネートのコツ〜前編〜』
『少ない本数でも効果的に魅せるチューリップ。セレクトとコーディネートのコツ〜後編〜』
パロット咲きチューリップの買い時は秋ではなく真夏です
チューリップは秋植え球根の代表格ですが、パロット咲きの品種はどちらかというと万人受けするわけではないやや通好みな品種なので、取り扱っている園芸店も流通量も限られています。
実際、植え時の秋になって探してみると、欲しい品種はすでに売り切れてしまっていることもよくあります。秋に買えないと翌年までおあずけになってしまうので、それは避けたいところ。
お目当ての品種を買い逃さないためには、夏場から始まっているネットショップでの早期予約で早め早めに押さえておくのがおすすめです。早期予約特典で通常価格よりも安く購入できるショップなどもありますので、有効に活用してみてください。
つぼみから開花までのグロテスクな変化も見モノ!
整形花のチューリップは卵のような整った形のつぼみからキレイに咲いていくところまで、予定調和的に抜け目なく美しいですが、パロット咲きのチューリップは、なんだか病的によじれやねじれが入ったつぼみから、グチャッと絵の具をしぼり出したように色が溢れ出しながら咲き進んでいく開花の挙動も目が離せないポイントです。
チューリップの観賞価値において「グロテスク」という観点ってあまりないですよね。パロット咲き品種は、つぼみの形状から開花、そして散っていくところまで、整形花のチューリップにはないドロドロしたグロテスクな頽廃美が漂っていて、これは本当に稀有な魅力だと思います。
開花が始まると、1日の間でも刻々と様子が変わり見飽きません。一般に植物の動きはゆっくりなので、短時間の変化というものがあまり気にならないものですが、パロット咲きチューリップの開花挙動は「生物の営み」を目で感じられるようなダイナミックな変化を伴うので、なかなか面白いですよ。
では続いて、個性的・芸術的・頽廃的な魅力満点のパロット咲きチューリップのおすすめ品種をACID NATURE 乙庭 厳選セレクトで7種ご紹介します。
セレクト1
チューリップ ‘ブラックパロット’ (Tulipa ‘Black Parrot’)
神秘的な黒紫褐色みの花色に加え、花弁外縁が裂け込んだりよじれたりしたパロット咲きの乱れた頽廃的花容も相まって、園芸家を惹きつけて止まない不動の人気品種です。
園芸植物の中でも稀有なダークファンタジーを感じさせる品種で、独創的・芸術的な植栽演出にとても活躍します。
セレクト2
チューリップ ‘アプリコットパロット’ (Tulipa ‘Apricot Parrot’)
クリーム色・アプリコット色・ピンク、そして外弁の白緑色が、パロット咲きの乱れた花形によってパレット上の絵の具のように入り交じり、えもいわれぬ頽廃的・絵画的な美観を発揮する魅惑品種です。
アプリコット~ピンク系の多色のパロット咲き品種で、クリーム・アプリコット~ピンクといった優美な色の絵の具をパレット上でグチャッと混ぜたような、複雑でどれ一つとして同じ色形のものがない唯一無二の花が、アートを観賞するような楽しみを与えてくれます。
セレクト3
チューリップ ‘パロットキング’ (Tulipa ‘Parrot King’)
前出のアプリコットパロットよりも派手でビビッドな朱赤~黄橙、アプリコットといった、より濃いオレンジ系のグラデーション。そこに加えて、白色や白緑色なども入り交じる多色咲きです。パロット咲きのバロックな花容と混沌とした色合いが相まって、頽廃あるいは狂乱といった、園芸の分野では新感覚な美意識を提示してくれる、たいへん興味深い品種です。
派手な系統の色みではありますが、単色咲きのような強烈すぎるインパクトではなく、多色が複雑に入り交じることによって絵画的な雰囲気を獲得しています。植栽の中でも浮きすぎることはなく程よい感じで目立ち、アートのように思わず見入ってしばし眺めてしまうような不思議な魅力があります。
白緑みのつぼみからビビッドなオレンジ系グラデーションカラーがドロドロと溢れ出してくるような、開花時の挙動もグロテスクで邪悪な予兆のようで、目を見張るものがありますよ。
セレクト4
チューリップ ‘エステラ ラインヴェルト’ (Tulipa ‘Estella Rijnveld’)
鮮やかな紅白の刷毛込み模様とパロット咲きの頽廃美が相まって、植える者の創作意欲を煽り立てる「攻め」感に溢れた品種です。
花色はグラデーションのかからないハッキリした紅白の不規則な刷毛込み模様。コントラストが強い原色の組み合わせにパロット咲きの乱れた花容との組み合わせで、とても強烈なキャラクターの花です。
美醜の境い目ギリギリ。「美とは何か」を観る者に問いかける、ある意味哲学的でもあり、パンクで危険な魅力をも感じさせますね。
セレクト5
チューリップ ‘フレーミング パロット’ (Tulipa ‘Flaming Parrot’)
黄色地の花弁中央に赤の太い縦ラインの模様が入るという、ド派手でインパクトのある花色とパロット咲きの花容の組み合わせ!
悪趣味の一歩手前くらいに装飾性盛り盛りの品種です。使い方が難しく感じられるかもしれませんが、実際植えてみると意外と悪目立ちしすぎず、かつオリジナルな主張もあり、植栽のよいアクセントになります。
セレクト6
チューリップ ‘ロココ’ (Tulipa ‘Rococo’)
白緑色のグチャグチャと歪んだつぼみから、毒々しさも感じさせるダークレッド~真っ赤な色が溢れ出す開花の様子が、不気味でもありながら耽美的ともいえるような深く濃厚な味わいを感じさせます。「好きな人にとってはたまらない」通な魅力のある品種です。
本種 ‘ロココ’ は、基本的には赤花の品種なのですが、観賞のポイントとして一番の魅力は 、ちょっと沈んだ雰囲気の白緑みの歪んだつぼみから毒々しい赤色が交じり合うように溢れ出す、開花時のドラマチックな変化の様子にあります。
赤と白緑色が複雑に交ざり合う様はかなりきわどく「醜」に近い状態になるのですが、その「ハラハラするような」不穏な気分というのは、園芸の分野では滅多に味わうことのできない稀少な感動要素です。決して単純ではない「美」というものの奥深さがありますね。
セレクト7
チューリップ ‘ブルーパロット’ ( Tulipa ‘Blue Parrot’)
ニュアンス満点のバイオレットパープルの花色がとても大人っぽく、パロット咲きの乱れた花容も相まって、春の明るい庭に少し憂いある味わいを添加してくれる、意味深な雰囲気が魅力の品種です。
大人っぽい妖艶さと優美さを兼ね備えたバイオレットパープルの花色が魅力的で、パロット咲きの花容と花弁の重なり具合などによって、単色には見えず、不規則な濃淡グラデーションのような色合いとなり、絵画的な美しさを呈します。
また、花が咲き進むにつれ、青みと灰色みが増したり色がまだらにかすれたりしながら、乱れ咲いた先に枯れゆく様。この変容も仄暗く頽廃的で、開花最盛期の魅力だけではない栄枯盛衰的なドラマチックな移ろいもあり、耽美的な楽しみのある品種といえるでしょう。
「畏れることなく醜にも邪にもぶつかって見よう。その底に何があるか。
もしその底に何もなかったら人生の可能性は否定されなければならない。」(有島武郎 作家 1878 – 1923)
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 太田敦雄 - 「ACID NATURE 乙庭」代表 -
おおた・あつお/園芸研究家、植栽デザイナー。立教大学経済学科、および前橋工科大学建築学科卒。趣味で楽しんでいた自庭の植栽や、現代建築とコラボレートした植栽デザインなどが注目され、2011年にWEBデザイナー松島哲雄と「ACID NATURE 乙庭」を設立。著書『刺激的・ガーデンプランツブック』(エフジー武蔵)ほか、掲載・執筆書多数。
「6つの小さな離れの家」(建築設計:武田清明建築設計事務所)の建築・植栽計画が評価され、日本ガーデンセラピー協会 「第1回ガーデンセラピーコンテスト・プロ部門」大賞受賞(2020)。
NHK『趣味の園芸』講師。(一社)ジャパンガーデンデザイナーズ協会(JAG)正会員デザイナー。ガーデンセラピーコーディネーター1級取得者。(公社) 日本アロマ環境協会 アロマテラピーインストラクター、アロマブレンドデザイナー。日本メディカルハーブ協会 シニアハーバルセラピスト。
庭や植物から始まる、自分らしく心身ともに健康で充実したライフスタイルの提案にも活動の幅を広げている。レア植物や新発見のある植物紹介で定評あるオンラインショップも人気。
「太田敦雄」公式ブログ https://note.com/acid_nature_0220
プロフィール写真/田中雅也
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