秋色ガーデンを彩るオーナメンタルグラスと、その使い方
気候の穏やかな秋は、ガーデニングにもぴったりなシーズン。そんなオータムガーデンを彩る素材の一つが、風に涼やかになびくグラス類です。ここでは、おすすめのグラス類と草花を、ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんがご紹介します。また、記事末尾のコラムでは、エルフリーデさんが見かけた、「あ、危ない!」というガーデンシーンでの要注意ポイントも解説します。
目次
夏から秋のガーデンへ
ムシムシした暑い夏がようやく終わり、夕方の涼しい空気が心地よく感じられる季節になってきました。これからやってくる台風シーズンも大禍なく終わり、過ごしやすくカラッとした秋が早くやってくるといいですね。
ガーデンやベランダ、バルコニーなどの夏グッズは、そろそろお休みの時期。ガレージや収納スペース、バックヤードなど、雨風が当たらない場所に収納を。壊れた植木鉢やコンテナ、しおれた植物や枯れた花なども整理し、不要なものは処分しましょう。
夏に活躍してくれた緑のカーテンも、次第にしおれてきている頃ですね。もうなくても大丈夫。陽射しを遮るオーニングも、先日掃除して片付けてしまいました。我が家では今年、オーニングを2つ使ってみたのですが、結果はいまひとつ。バルコニーでは組み立てが難しく、ハシゴと手伝ってくれる人が必要でしたし、雨風が強い日にはバタバタとはためく音がちょっと気になりました。また、シェードの色は明るい茶色とクリーム色の幅広ストライプで、ちょっと私の夏のイメージからは暗すぎたところも難点です。
私のイメージする夏色は、赤や黄色、青、そして緑という、パラソルのような明るい色。そういえば、兄弟と一緒に両親の結婚記念日のプレゼントとして、丈夫な素材と木材で作られたオーダーメイドのパラソルを贈ることにしたのも夏のことでした。直径1.8mくらいで、木の骨を贅沢に使ったしっかりした構造のパラソルは、一人では支えられないほど重量があったので、折りたたむためのウィンチもついていました。家の前の一番いい場所を選んで穴を掘り、鉄パイプを埋め込んでしっかり固定できる定位置も作りました。
このパラソルが出ている間は、我が家の夏シーズン。前庭に居心地のよい空気感をプラスしてくれる明るいベージュ色のパラソルは、両親の大きくて古いカントリーハウスにはぴったりの相性でした。長年の間に、このパラソルの陰で過ごした思い出をたくさん作ることができました。
このように、少しばかり高額な買い物が、時にとてもいい結果をもたらしてくれることがあります。例えば木製のしっかりしたつくりのエクステリアをよく吟味して取り入れれば、長い間使うことができますし、ガーデンの雰囲気づくりにも一役買ってくれます。
秋の寄せ植え
さて、気候のいい秋はガーデニングシーズン。秋の楽しい植え付けに向けて、大きなコンテナやウィンドウボックス、もしくは鉢植えの花をコーナーの一角に準備して、明るくガーデンを彩りましょう。
先日、大きな鉢に入った斑入りのススキと紫花のクフェア・ヒッソピフォリアの寄せ植えを、一目惚れして買ってしまいました。すでにクフェアが大きく育っていて、優し気な小さな可愛い花が、細く伸びたススキの葉と好対照。ススキはちょうど白っぽい花穂を出し始めたところです。購入後、黄色い壁の前に置いたところ、素敵なフォーカルポイントになりました。夕方玄関の明かりが灯ると、シルエットが壁に映し出され、シンプルながらも美しい光景を演出してくれます。私の頭の中では、満月が明るく輝き、小さなウサギが餅つきをしているのが見えるよう。どちらも手入れが簡単な植物ですが、鉢植えなので日々の水やりが必要です。1日くらいなら忘れても大丈夫ですが、水不足になると、葉が通常の半分ほどに細くなってしまいます。
以前暮らしていたドイツのガーデンでは、トライアルガーデンに大きな塊となるススキを植えていました。ボーダー花壇に構造美を与えてくれるススキは、晩夏の宿根草シーズンのハイライト。ほかの宿根草は、優しげながらしっかりしたこれらグラス類のおかげで、風から身を守ることができます。
黄色の塊となるソリダゴ
オータムガーデンの主役級の組み合わせとなるのは、さまざまなサイズの黄色のルドベキアと黄色や赤銅色のヘレニウム、そして色の塊を作ってくれるソリダゴなど。ソリダゴの多くは、同種に属するセイタカアワダチソウやオオアワダチソウほどの侵略性はありません。この2種は重点対策外来種に指定されているので、間違っても植えないようにご注意を。どの品種を選び、どこに植えるかということは、ガーデニングにおいては常に大切なポイントです。環境に悪影響があるものや、重点対策外来種などに指定されているものは、当然植えてはいけません。ほかにもアレルギー、侵略性、トゲ、毒性のある種などなど…気を付けなければならない点はたくさんあります。
残念ながら、日本ではソリダゴのイメージはあまりよくないようです。少なくとも私がほかのガーデナーと話すときは、そんな印象を抱きます。セイタカアワダチソウのイメージが強すぎるのかもしれませんね。
別の難点として、ソリダゴは花粉症の人には症状を引き起こす原因になるといわれています。私の夫も花粉に敏感で、ソリダゴが大嫌い! 私が借りている市民農園でも時々セイタカアワダチソウなどが出現することがありますが、花が咲く前に退治する時は夫がいつも以上に心強い助っ人になってくれます。
そういうわけで、現実には植えられませんが、私の中でソリダゴは、ドイツの宿根草のトライアルガーデンでの楽しい思い出と結びついています。重点対策外来種に指定されているものはもちろん栽培してはいけませんが、ほかの品種にはチャンスをあげてみませんか? ソリダゴの仲間は、ミツバチなど虫たちにとっても嬉しい植物です。晩秋まで咲く宿根草を育てれば、餌場になって、蜜集めとさまざまな生き物が暮らす場を作る手伝いができます。ソリダゴに集まって忙しく動き回る虫たちを見るのは素晴らしいものです。本当の「屋外劇場」ですね。
アスターの秋色ガーデン
ほかに秋におすすめなのは、ユウゼンギクやネバリノギクなどといった宿根アスター。赤やピンク、青、紫、白など幅広い花色があり、草丈や開花期も種類によってさまざまです。開花期が長く遅くまで咲き、しばしばバルコニーやガーデンで使われる人気の花です。ススキと組み合わせても素敵ですよ。カットフラワーとしてもおすすめで、大きくて豪華なフラワーアレンジメントを作ったり、オアシスを使ってフラワーバスケットにしても。もし元気よく飛び回る虫たちが嫌いでないなら、アスターもまたミツバチなど虫を呼んでくれる花です。
種類豊富なアスターは、異なる種類の花を組み合わせることで、より長く楽しむこともできます。おすすめの品種や組み合わせについては、地元のガーデンセンターの店員さんにアドバイスを求めるのもいいですね。通販で販売している会社も、カタログなどに詳細な情報を掲載していますが、実際にガーデンショップなどを訪れて、庭にぴったりの植物を見つくろうのも楽しいものですよ。ちょうどいい色形のものを探せますし、植物選びをしながら、ほかのガーデナーと話もできます。ガーデニングの際は、知識豊かで信頼できるお店やガーデンを知っていると心強いものです。
つい数日前に、ガーデンセンターやガーデンショップでどのように商品陳列を行うべきか、という記事を読みました。その主眼は、植物を選ぶときの楽しい気分を、場所や買った品物、販売スタッフと結びつけるというもの。自分の経験に照らしてみても思わず納得。植物の値段というより、どんな場所で選んだかが重要なのです。ですから、信頼できるお店でじっくり時間をかけて選びましょう。楽しい気分と元気な植物と一緒に家に帰れますよ。
色鮮やかな紅チガヤ
ススキ以外にもご紹介したいオーナメンタルグラスがあります。それは、次第に鮮やかな赤色へと移ろい、とても丈夫で育てやすい紅チガヤ‘レッドバロン’。ドイツではほとんどのガーデンセンターで入手できる、コンパクトサイズのグラスです。英名は「Blady grass」「Satintail」「Spear grass」「Sword grass」など。ドイツでは、その赤色から「日本の血の草」という意味の「Japanisches Blutgras」という名前で知られています。
‘レッドバロン’はドイツでは草丈60cmほどにしかなりませんが、温暖な日本の地域ではもっと大きくなるでしょう。チガヤは根茎がよく伸び、繁茂しすぎて雑草化することがあるので、生育をコントロールできる鉢植えで育てるのがおすすめです。こぼれ種で広げないためには、種が飛び始める前に穂を取り除き、燃えるゴミなどで処分しましょう。堆肥に入れてしまってはダメですよ! チガヤは可燃性が高いといわれていますので、この点も注意が必要ですが、この色はとても魅力的ですね。
チガヤは繁殖力が強いので、同じように塊状に生育するパニクム・ウィルガツムもおすすめです。こちらも丈夫でよく増えるので、ポットやプランターで栽培するほうがよいでしょう。‘レッドバロン’の色彩には及びませんが、いろいろな種類があり、ドイツでは宿根草ガーデンの素晴らしい要素として活躍してくれました。
背の高いグラス類は、天然の仕切りとして、適量を使えば目隠しにもなります。風に揺れる葉を見ていると、とてもリラックスできますよ。
コラム:ガーデニングのココが気になる! Part1
ハシゴを使った高木の剪定
ドイツでは、各専門職にはそれぞれ非常に厳格な安全講習があります。見習い期間中であっても、初めからその仕事に関係する中で、何が問題で何が問題ないのかを学びます。刃物を使ったり、ハシゴに上ったりすることがあるガーデニングでも、安全に配慮することが欠かせません。しかしながら、時々ちょっと気になるガーデニング風景を目にすることもあります。このコラムでは、私が町中で出合ったドキッとするシーンから、身近なガーデニングに潜む危険性と、私の考える改善方法をご紹介したいと思います。
初めに断っておきたいのは、これはあくまでも私の視点から見たものであるということ。誰かを非難したり、こうしなければならないという訳ではなく、ガーデニング作業時の注意喚起になればと思います。
今回ご紹介したいのは、先日、靴屋に行った時に出会った冷や汗が出るようなワンシーン。駐車場が住宅街に続く細い道に面しているお店でした。といっても、私のコンパクトな車でも歩道にはみ出しそうな駐車スペースの狭さを気にしたわけではありません。この細い道に入っていくときに、70代くらいの男性が現れ、さっとハシゴを立てて3mほどもある木の剪定を始めたのです。
私の見る危険なポイントの1点目は、彼が一人で作業していること。そして細い道がさらに細くなっている状態なのに、注意を促す赤白コーンなどが置かれていないことです。角を曲がった車や自転車などがぶつかってしまう危険性があります。このような状況を避けるためには、誰かもう一人が曲がり角を見ているとよいでしょう。
さて、車を止めて鍵をかけている間に、彼は剪定バサミを片手にハシゴを上り始めました。足元を見ると、なんとビニールサンダルを履いています。
危険なポイントの2点目は、足元。ガーデン作業やハシゴを上る際には、しっかりした靴を履くことが重要です。サンダルなどでは脱げてしまう恐れがあります。
さらに怖いことが続きます! その人は片足をフェンスにのせて、腰をかがめて目的の枝に手を伸ばしました。誰もハシゴを押さえていない状態なので、重心が変わったハシゴが倒れてしまうことも考えられる、とても危ないシチュエーションです。
幸い、その人はすぐに諦めて地上に下りてきてくれたので、私もホッとして靴屋に入りました。これはほんの数分の出来事ですが、最悪の場合入院するような事態になっていたかもしれません。ただ、邪魔な枝を「一人で、安全管理を徹底せず」剪定しようとしたためだけにです。
どんな時でも、安全が最優先だということは、ぜひ心に留めておいてください。
Credit
ストーリー/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。
Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood
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