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蜜源植物とは? ガーデンで人気の種類&ハチミツの香りと味わいの違いもご紹介

蜜源植物とは? ガーデンで人気の種類&ハチミツの香りと味わいの違いもご紹介

Minko Peev/Shutterstock.com

ミツバチが花の蜜を求めて訪れる植物を「蜜源植物」と呼び、その種類は日本だけでも500〜600種類もあるといわれています。たくさんの種類がある蜜源植物の中でも代表的なものをピックアップし、植物によって異なるハチミツの香りや味わいなどの特徴をご紹介。自宅で栽培しやすい、ガーデンプランツとしても人気のある蜜源植物も併せてご紹介します。

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蜜源植物とは

ハチミツ
Davizro Photography/Shutterstock.com

蜜源植物とは、ミツバチが蜜を採取する花が咲く植物のことです。世界には約4,000種類の蜜源植物があり、日本には500〜600種類があるとされています。

ハチミツは植物の蜜からできているため、蜜源植物はハチミツを作り出す上で欠かせない存在です。ミツバチは蜜源植物から蜜を採取し、胃にためて巣に持ち帰ります。蜜を巣の中のミツバチに渡して、糖度の薄い蜜を翅であおぎ、水分を蒸発させて糖度を80%程度まで上げるとハチミツになります。

ミツバチは花の蜜を集めてハチミツを作るだけでなく、ほかの植物に飛来して花粉を運ぶ役割も担っています。他の昆虫とは異なり、ミツバチはほぼすべての植物に飛来し、人間が食べる作物の多くはミツバチが花粉を運ぶことで受粉し、収穫できるようになります。

現在、気候変動や環境汚染など複合的な要因によるミツバチの減少が大きな社会問題になっています。ミツバチの減少は生態系を毀損し、農作物の生産にも影響を与えると考えられています。ミツバチの生育をサポートするためには、ミツバチが蜜や花粉を得ることができる蜜源植物を増やすことも大切です。

ミツバチが好む花の特徴

蜜源植物
LIUCHUNG/Shutterstock.com

ミツバチが好む花の種類には、樹木の花、群生する草花、ハーブ類、キク科、マメ科、シソ科、柑橘類の花があります。樹木の花は一時期にまとまって咲くため、ミツバチは移動せずに効率よく蜜を集めることができます。草花の中では、レンゲや菜の花、ヒマワリ、クローバーなどの群生する草花にミツバチが集まりやすいです。シソ科のバジル、ローズマリー、ミント、シソなどは香りが強く、小さい花が密集して咲くため、ミツバチが好んで集まります。

単花蜜と百花蜜

ハチミツ
New Africa/Shutterstock.com

単花蜜とは、ミツバチが単一種類の花から集めた蜜で作られたハチミツです。蜜を集める働きバチの中には偵察の役割をするハチがいて、蜜の集められる花を見つけると巣に帰り、仲間のハチに蜜源となる花がある方向や距離を8の字ダンスと呼ばれる手段で伝えます。ハチは一つの蜜源にたどり着くと、その花の蜜を取り終えて巣に戻るまで他の花に行かない「訪花の一足性」という習性があり、この習性が単花蜜が作られる原因の一つとなっています。

一方、百花蜜はさまざまな花から採取したハチミツで、花の種類が限定できないため、味や風味、香りは採取された地域によって異なります。また、同じ花から採れる蜜でも、時期やその年の天候によって味わいが違うものになります。西洋ミツバチは一種類の花から蜜を集める性質がありますが、花の蜜が少ない場合や開花が遅れている場合は他の花からも蜜を集めます。日本ミツバチはその地域特有のさまざまな野草の花から蜜を集めてハチミツを作り、日本ミツバチによって作られた百花蜜は希少価値が高いです。

主要な蜜源植物10種

蜜源植物はハチミツを作るうえで欠かせないもので、非常に多くの種類があります。まずは、代表的な蜜源植物と、それから採れるハチミツについて種類ごとに紹介します。

ナタネ(菜の花)

菜の花
Leonid Ikan/Shutterstock.com

ナタネはナタネ油が採れる植物としても知られており、菜の花やアブラナとも呼ばれています。温暖な地域に生息する植物で、花は黄色です。4〜5月に採蜜されます。ナタネから採れるハチミツは淡い黄色で、なめらかな香りと菜種油を思わせるコクのある味わいが特徴です。結晶は細かくクリーミーです。

ハチミツの主成分はブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)で、ブドウ糖の割合が高いほど結晶化しやすくなります。ナタネハチミツは他のハチミツよりもブドウ糖の割合が高いため、固まりやすいという特徴があります。

レンゲ

レンゲ
Bennie/Shutterstock.com

マメ科の植物であるレンゲは、紫色の小花を咲かせ、4〜5月中頃に採蜜されます。しかし、日本では外来の害虫であるアルファルファタコゾウムシの影響を受けて、栽培面積は30年前と比べて30%にまで減少しています。

レンゲハチミツは日本で販売されているハチミツの中で最もポピュラーで、「ハチミツの王様」とも呼ばれています。その味わいは濃厚でまろやかであり、ほんのりとした酸味とフローラルな香りが特徴です。国産のハチミツの中でも最も癖がなく、食べやすいとされています。

サクラ

サクラ
Serghei Starus/Shutterstock.com

山桜は日本を代表する樹木で、4〜5月に採蜜されます。単花蜜として採蜜する場合、山桜が蜜源になることが多いです。山桜のハチミツは華やかさがありながらも桜の葉の青さが感じられ、上品な甘さが特徴です。しかし、山桜が多く自生していないと採蜜できないため、山桜のハチミツは希少価値が高いです。

アカシア

アカシア
Victoria Kondysenko/Shutterstock.com

アカシアはマメ科の植物で、ハリエンジュやニセアカシアとも呼ばれます。房状の花が垂れ下がって咲くのが特徴です。蜜源植物の中でもアカシアは人気が高く、「ハチミツの女王」と呼ばれています。アカシアのハチミツはさっぱりとした味わいで、日本人に特に人気があります。癖があまりないため、ドレッシングやパンなどさまざまな料理に合わせやすいです。

ミカン

ミカン
barmalini/Shutterstock.com

ミカンの花は5月初旬から5月中旬にかけて採蜜されます。白く透き通った薄い黄色の花からは、甘酸っぱい香りのハチミツが採れます。このハチミツは柑橘特有のさわやかな風味とキレのあるコクが特徴で、さっぱりとした飽きのこない味わいが楽しめます。そのため、ハチミツが苦手な人にもおすすめです。果糖だけでなくブドウ糖も多く含まれているため冬季には結晶化しやすいです。

ソバ

ソバ
Nnattalli/Shutterstock.com

ソバの花は6月下旬から8月後半にかけて採蜜され、白やピンクの花を咲かせます。採蜜の時期によって夏ソバと秋ソバに分けられ、秋ソバは特に蜜源として利用されます。ソバハチミツは茶褐色をしており、黒砂糖に似た深いコクがあり、ハチミツの中でも色が濃いです。

このハチミツには花粉由来のフラボノイドが含まれており、カルシウム、鉄、ビタミン、ミネラルなど身体によい成分が多く含まれています。特に鉄分は他のハチミツと比べて5倍も多く含まれており、脳卒中や動脈硬化に効果があるといわれるルチンも含まれています。また、ハチミツには殺菌作用がありますが、中でもソバのハチミツはその殺菌力が高いことで知られています。

クローバー

クローバー
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マメ科シャジクソウ属の植物であるクローバーは、和名はシロツメクサ。6月から7月下旬にかけて採蜜されます。酪農が盛んな北海道では、家畜の餌としてクローバーが栽培されているため、クローバーのハチミツを採取することができます。クローバーのハチミツは結晶化するときめが細かくクリーミーです。

クローバーのハチミツは世界的にも人気があり、親しまれています。クセがなく優しい甘みと上品な味わいが特徴で、どんな飲み物や食べ物にも合わせやすく、特に紅茶との相性が良いです。

リンゴ

リンゴ
marilyn barbone/Shutterstock.com

リンゴはバラ科リンゴ属の落葉高木で、小アジアやコーカサスを原産としています。6月上旬から6月中旬にかけて採蜜されるこの樹木は、ミツバチの受粉を必要とする代表的な植物です。

リンゴのハチミツは癖がなく、後味にリンゴの皮の渋みが感じられ、リンゴ畑にいるようなフルーティーな味わいが特徴です。特にリンゴの産地である東北地方などで採取される、貴重なハチミツとされています。

シナノキ

リンデン
ganjalex/Shutterstock.com

菩提樹はリンデンとも呼ばれ、リラックス効果のあるハーブとしてアロマテラピーやハーブティーに利用されます。7月中旬から8月上旬にかけて採蜜され、日本では東北以北地方でのみ採取されています。ヨーロッパでは特に人気が高いこのハチミツはやや強めの黄色で、ハーブの香りが持続する個性的な味わいが特徴です。

トチノキ(トチ)

トチ
BestPhotoStudio/Shutterstock.com

トチノキは山の中に多く自生する自然木で、トチノキ科に属します。栃木県の県の木にも指定されており、東北地方で多く生産されています。採蜜時期は6月上旬から中旬で、白と赤の花を咲かせます。大きな花の群れがツリー型に細かい花を咲かせ、その実は食用になります。

トチノキのハチミツは自然を感じさせるワイルドな味わいが特徴で、フローラルな香りとこってりしたコクがあり、濃厚で柔らかい甘さが楽しめます。コーヒー、ヨーグルト、紅茶、チーズやパンによく合います。

蜜源植物にもなるガーデンプランツ8種

主要な種類に続いて、ガーデンプランツとしても人気があり、自宅の庭でも育てやすいミツバチやチョウが好む花を8種ご紹介します。

モナルダ

モナルダ
Tatyana Mut/Shutterstock.com

モナルダはシソ科の宿根草。ベルガモットやタイマツバナとも呼ばれ、香りがあるのでハーブとして扱われます。6〜9月に赤やピンク、紫、白などの鮮やかな花を咲かせ、夏のガーデンを彩ってくれます。

ラベンダー

トゥルー・ラベンダー
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ラベンダーはシソ科の低木。その香りと愛らしい紫の花から、ハーブの中でも人気が高い種類です。開花期は4〜7月。高温多湿に弱いので、温暖な地域では暑さに強い種類を選ぶとよいでしょう。

カラミンサ

カラミンサ
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カラミンサはシソ科の宿根草で、淡いピンクや白、淡い紫の小さな花を咲かせます。ミントのような爽やかな香りがあり、開花期間は5月中旬〜11月上旬と、非常に長く楽しめます。カラミンサによく似たキャットミント(ネペタ)もよくミツバチが訪れるハーブです。

ブッドレア

ブッドレア
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ブッドレアはゴマノハグサ科の低木で、和名はフサフジウツギで、チョウが集まることから、英名ではバタフライブッシュと呼ばれます。成長が早く、開花期は7〜10月。花色は藤色のほか、白や紫などで、円錐形の花穂を長く伸ばし、甘い香りがあります。

アガスターシェ(アニスヒソップ)

アガスターシェ
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アガスターシェはシソ科の宿根草。アニスヒソップとも呼ばれ、葉に香りがあることからハーブとしても扱われます。開花期は5〜10月で、小さな花を穂状にたくさん咲かせます。黄金葉や銅葉の品種は、カラーリーフとしても人気があります。

エキナセア

エキナセア
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エキナセアはキク科の宿根草で、別名ムラサキバレンギク。花の中心部が盛り上がり、その周囲に放射状に広がる花弁は満開になると垂れ下がるのが特徴です。開花期が6〜9月と長く、耐暑性があり、園芸品種も非常に豊富でカラーバリエーションもあることから、人気の高いガーデンプランツです。種類によってはハーブとしても利用されます。

ヤグルマギク

ヤグルマギク
Marina Demidiuk/Shutterstock.com

ヤグルマギクはキク科の一年草。もともとヨーロッパでは麦畑の雑草として扱われていたことから、英名ではコーンフラワーと呼ばれます。開花期は4〜5月で、花茎を立ち上げた頂部に青や紫、ピンク、白、黒赤、複色などの花を咲かせます。こぼれ種でもよく増える丈夫な性質です。

キュウリ

キュウリの花
jekin/Shutterstock.com

花を楽しむ植物だけでなく、夏の家庭菜園で人気の高いキュウリやカボチャ、ズッキーニ、ゴーヤなどのウリ科の野菜もミツバチがよく訪れます。これらの野菜は、ミツバチなどの花粉媒介者によって受粉するため、家庭菜園の収穫量をアップさせるためにもミツバチは欠かせない存在です。

蜜源植物の種類によって味わいや香りが異なるハチミツ

ハチミツの種類
kobeza/Shuttertstock.com

ミツバチが蜜を集めに来る蜜源植物は日本だけでも500〜600種類ほどあり、今回は中でも代表的な植物をご紹介しました。自宅の庭でも蜜源植物となる花を育てることで、ミツバチの生育をサポートすることにもつながります。また、蜜源植物が異なるハチミツは味わいや香りなども異なります。ぜひ、さまざまなハチミツを食べ比べて、好みの味や香りのものを探してみてはいかがでしょうか?

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