ビギナーでも大変育てやすいヤグルマギクのことをご存じでしょうか。ガーデニングの素材としてはもちろん、切り花やドライフラワーとしても利用できます。花色もブルーやピンク、白、紫、黒赤など色幅が広く、選ぶ楽しみもある花です。この記事では、そんなヤグルマギクにスポットを当て、プロフィールや種類、育て方など、多岐にわたってご紹介していきます。

Print Friendly, PDF & Email

ヤグルマギクとは

白いヤグルマギクの花
ADELART/Shutterstock.com

ヤグルマギクは、キク科ヤグルマギク属の一年草。原産地は地中海沿岸で、寒さには強いほうですが、日本の高温多湿の気候を苦手としています。ヤグルマギクの草丈は30〜100cmほどで、ガーデニングでは花壇の中段〜後段に向く素材です。

ヤグルマギクのライフサイクルは、以下の通りです(暖地基準)。秋にタネを播いて育苗し、晩秋に定植して冬越しさせます。翌春の生育期に入ると、ぐんぐん生育して茎葉を広げ、4〜5月に開花。夏の暑さは乗り切れずに枯死してしまうので、比較的ライフサイクルの短い植物といえます。栽培は容易で、こぼれダネで増えるほど強健なので、ビギナーにも育てやすい草花の一つです。

ヤグルマギクは元々ヨーロッパで麦畑などに現れる雑草として、「コーンフラワー」と呼ばれてきました。雑草とはいえ、花が美しいので園芸用に品種改良されて観賞用として愛されるようになり、今ではドイツやエストニアなどの国花となっています。日本へは明治の中頃に伝えられました。徐々に普及し、ガーデニングの素材としても、切り花としても流通しています。

名前の由来

ヤグルマギク
Zabed Alam/Shutterstock.com

ヤグルマギクは、鯉のぼりを立てる柱の頂部によくあしらわれ、風によってクルクル回る「矢車」からつけられた名前です。これは、花弁の先端に切れ込みが入る小さな花を中央から放射状に咲かせる花姿からイメージして名づけられたものです。

前述の通り、西洋では「コーンフラワー」と呼ばれており、小麦畑に出没して繁茂し、収穫量を少なくしてしまう雑草としてこの名前がつけられました。

ヤグルマギクの学名はCentaurea Cyanas(セントーレア・サイアナス)。Centaureaはギリシャ神話に登場する半人半馬のケンタウルス、Cyanasは青色という意味です。これは、ケンタウロス族のケイローンが負傷した際に、ヤグルマギクを使って傷を治癒したことにちなんでいます。ちなみに、近年は学名からセントーレアと呼ばれることも多くなっています。

どんな花を咲かせる?

ヤグルマギクの花
Scisetti Alfio/Shutterstock.com

ヤグルマギクの開花期は4〜5月で、花茎を立ち上げた頂部に直径4〜5cmの花を咲かせます。実際は、一つひとつの小さな花が中心から外に向かって放射状に咲いて一輪に見えるもので、これを「頭花」といいます。中心には花弁の目立たない小さな花があり、多数のおしべをつけるのが特徴です。

花色には、青、紫、ピンク、白、黒赤、複色などがあり、品種によって色幅にバリエーションがあります。また、楚々とした一重咲きと、豪華な咲き姿の八重咲きとがあります。

ヤグルマギクの花言葉

ピンクのヤグルマギク
Vitalii M/Shutterstock.com

ヤグルマギクの花言葉は、「繊細」「優美」「教育」「信頼」など。

「繊細」「優美」は、薄い花弁を何枚も重ねる花姿をイメージしたもの。一方、ドイツでは「希望をあきらめない」という花言葉があります。ナポレオンがプロシア(現ドイツ)に侵攻した際、王妃が王子たちとともに麦畑に逃げ込みました。不安そうにしている王子たちにヤグルマギクを摘んで冠を作り、王族としての覚悟や誇りある振る舞いを諭し、希望をあきらめないことを伝えたという逸話によるものです。このことから、「教育」や「信頼」という花言葉が生まれました。また、「独身生活」という花言葉もあります。これはイギリスの独身男性はヤグルマギクを胸にさす習慣があり、「婚活中」であることをさりげなく示すものだったことにちなむものです。

ヤグルマギクの品種

黒いヤグルマギクの花
Edita Medeina/Shutterstock.com

シルバーがかった葉色を持ち、シックな黒赤の花を咲かせる‘ブラックボール’は、人気の高い品種です。また、‘ファイヤーワークス’は、ややコンパクトにまとまり、カラフルな花色が魅力。‘フロステッドクイーン’は、放射状に咲く白い小花の中央がピンクまたはブルーになり、大変目を引きます。

様々な用途がある!

ヤグルマギクのドライ
Kaichankava Larysa/Shutterstock.com

ヤグルマギクはドライフラワーに加工しやすい草花です。たくさん咲いたら風通しのよい場所に吊り下げておくと、簡単にドライフラワーを作ることができます。退色も少なく、リースやスワッグづくり、アレンジメントなどに長く利用できますよ!

また、ヤグルマギクは古代エジプト時代から魔除けや薬用として利用されてきた歴史があります。収れん作用や消炎作用に優れ、咳止めに効くとして用いられてきました。

現在でもハーブの一つとして利用されており、ハーブティー用に販売されています。香りや味は弱いので、紅茶とブレンドして飲まれることが多いようです。

ヤグルマギクの育て方

ここまで、ヤグルマギクのプロフィールや魅力、花言葉や名前の由来、品種など、多岐にわたってご紹介してきました。そろそろヤグルマギクに親近感が芽生えてきたのではないでしょうか。ここからは、ガーデニングの実践編としてヤグルマギクの育て方にスポットを当て、詳しく解説していきます。

栽培環境

ヤグルマギク
Marina Demidiuk/Shutterstock.com

ヤグルマギクは日当たりがよく、風通しのよい場所を好みます。日当たりが悪い場所では、花つきが悪くなったり、ヒョロヒョロとか弱い茎葉が茂って草姿が間のびしたりします。

寒さには比較的強いほうで、暖地なら地植えして越冬できますが、寒風が吹きつけない場所が望ましいでしょう。日当たりのよい室内の暖かい場所で越冬させるよりは、ある程度寒さにあわせたほうが丈夫な株になり、越年して春を迎えてからの生育が旺盛になります。寒さが厳しい地域では、春まで待ってからタネを播くか、苗を植え付けるほうが無難です。

ヤグルマギクは夏の高温多湿の気候には弱いので暖地では夏越しできず、夏前にライフサイクルを終えて枯死してしまいます。ただし、寒冷地では越年して毎年開花することもあるようです。また、品種によっても耐暑性に差があります。

ヤグルマギクは、酸性に傾いた土壌を嫌う性質があるので、苦土石灰をまいて土壌改良しておくとよいでしょう。

土づくり

土づくり
Monkey Business Images/Shutterstock.com

【庭植え】

植え付ける1〜2週間前に、酸性土壌を改善するために苦土石灰をまき、さらに腐葉土や堆肥などの有機質資材を植え場所に投入し、よく耕してふかふかの土をつくっておきましょう。土に土壌改良資材や肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。

【鉢植え】

草花の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。

植え付け

秋に種まきして育苗した場合、植え付けの適期は温暖地で10〜11月頃です。フラワーショップで苗を購入してスタートする場合は、春先まで苗が出回っているので、入手次第植え付けます。

【庭植え】

土づくりをしておいた場所に、根を傷めないようにポットから苗を出し、植え付けます。複数の苗を植え付ける場合は、約30cmの間隔を取っておきましょう。植え付けた後に、たっぷりと水やりします。

【鉢植え】

鉢の大きさは、入手した苗の2回りほど大きい鉢を準備します。鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。ヤグルマギクの苗を鉢に仮置きして高さを決めてから、根を傷めないように苗をポットから出して植え付けます。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として、大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。

水やり

水やり
Zoom Team/Shutterstock.com

株が蒸れるのを防ぐために、茎葉株全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。

【地植え】

根づいた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、水やりをして補います。

【鉢植え】

日頃の水やりを忘れずに管理しますが、多湿を嫌う性質なので、水の与えすぎに注意します。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。

肥料

肥料
Vitalii Stock/Shutterstock.com

【庭植え】

あまり多肥を好まないため、植え付け時に十分な土づくりをしていれば、肥料は不要です。逆に与えすぎると徒長して倒れやすくなり、病害虫も発生しやすくなります。

【鉢植え】

晩秋〜冬に植え付けた場合は、生育が盛んになる少し前の3月上旬頃に、緩効性化成肥料を施すとよいでしょう。春に植え付けた場合は、元肥を施してあれば十分です。ただし、生育が悪いようなら速効性のある液肥を与えて様子を見ましょう。

花がら摘み

ヤグルマギク
Tohuwabohu1976/Shutterstock.com

開花期間が長いので、終わった花があれば早めに花茎の元から切り取りましょう。株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながります。また、いつまでも終わった花を残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして長く咲き続けてくれます。

病害虫

アブラムシ
muroPhotographer/Shutterstock.com

【病気】

ヤグルマギクは、うどんこ病や立ち枯れ病が発生しやすい傾向にあります。

うどん粉病は、多湿で風通しが悪い環境で発生しやすくなります。葉の表面が白く粉を吹いたような状態になり、放任するとどんどん広がるので注意。対処せずにそのままにしておくと光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。発症したら病気の葉を摘み取って処分し、適用の殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。

立ち枯れ病は土壌から感染しやすく、連作障害によって発生しやすい病気です。根や地際の茎から発症しやすく、黄色く枯れ込んできて、放置すると茎葉全体が茶色く変色し、やがて立ち枯れてしまいます。連作を避ければ回避できるので、前年にキク科の植物を植えていない場所で育てるようにしましょう。

【害虫】

ヤグルマギクに発生しやすい害虫は、アブラムシやヨトウムシなどです。

アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついてしまうほどに。植物の茎葉について吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目にも不愉快なので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒剤を利用するのがおすすめです。

ヨトウムシは蛾の幼虫で、夜に活動して葉を食い荒らします。食欲旺盛で、一晩のうちに丸裸にされてしまうことも。葉の裏に卵が産み付けられるので、孵化直後の幼齢のうちに退治するのがポイントです。または植え付け時に、土に混ぜ込んで防除するタイプの殺虫粒剤を土壌に混ぜ込んでおくと発生を防ぐことができます。

増やし方

ヤグルマギクは一年草として扱われているので、増やし方は種まき一択です。

ヤグルマギクは容易に種まきして栽培でき、しかも「採りまき」ができます。「採りまき」とは、花が終わった後に花がらを摘まずにそのままにしておき、タネを作らせて採取し、翌シーズン用に種まきすることです。タネを採取したら密閉袋に入れて保存しておき、適期に種まきすれば、毎年開花を楽しめるので大変コストパフォーマンスが高い草花だといえますね。

ヤグルマギクの発芽適温は15〜20℃です。種まきの適期は、温暖な地域では9月下旬〜10月頃。寒い地域では、4〜5月頃にタネを播いて、6月下旬〜8月頃に開花させるとよいでしょう。

ヤグルマギクは種まき用のセルトレイを準備し、市販の草花用の培養土を入れて、タネを1〜2粒ずつ播きます。タネが隠れる程度に土をかぶせ、たっぷりと水やりをしましょう。発芽までは新聞紙などをかぶせておき、乾燥させないようにしておきます。発芽したら日当たり、風通しのよい場所に置き、多湿にならないように水の管理をしましょう。本葉が2〜3枚ついたら、トレイから抜いて鉢上げします。黒ポットに草花用の培養土を入れて、苗を周りの土ごと抜き取って植え付けましょう。根を傷めないように、丁寧に取り扱うことがポイントです。日当たりのよい場所に置き、多湿にならないように、表土が乾いたら水やりして育成します。1週間〜10日に1度を目安に、液肥を与えて生育を促しましょう。本葉が8枚くらいまで出揃ったら、植えたい場所に定植します。

ヤグルマギクの花を楽しもう!

ヤグルマギク
frantcuzova svetlana/Shutterstock.com

この記事では、ヤグルマギクの魅力や育て方など、幅広くご紹介してきました。主役にも脇役にもなるヤグルマギクは、春の花壇で大活躍する草花です。次から次に花を咲かせるので、切り花やドライフラワーなどに利用するのもおすすめ。利用の幅が広いヤグルマギクを、ぜひ育ててみてはいかがでしょうか。
会員募集

Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

Print Friendly, PDF & Email