植物を育てていると、好むと好まざるとにかかわらずお付き合いの始まる相手が、虫。今回は人から怖がられることの多いハチをご紹介。ハチは植物の受粉にとって欠かせない存在です。彼らの生活を知ってみると、意外と親近感のわく可愛い昆虫です。

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庭仕事をしていると、ブ~ンという羽音があちこちで響きます。花から花へ、せわしなく蜜を集めるミツバチやマルハナバチたちです。ハチというと反射的にコワいと感じる人も多いかもしれませんが、庭では最も身近な昆虫。彼女たち(働きバチは全員メスです)は基本的にこちらには興味がなく、かなり至近距離にいても刺されることはほとんどありません。ミツバチたちは30~40日ほどの生涯のうちで、太平洋を横断するほどの距離を飛び、ティースプーン1杯分の蜜を集めるといわれています。そんなわけで、みんな自分の仕事に夢中ですから、人間などに構っちゃいられません。

この蜜を集める働きバチは、歳をとったお姉様方。ミツバチの仕事は生まれてから次第に変化し、羽化したばかりの頃は巣の中の仕事を受け持ち、歳をとると巣の外へ出て働くようになります。羽化後すぐは巣の中の掃除担当。3日ほど経つと女王が食べるローヤルゼリーを分泌し始め、女王や幼虫たちの世話係になります。ローヤルゼリーをつくることができるのは1週間ほどで、その後は巣を形成するミツロウを分泌し、巣の建築担当者となります。それから巣を外敵から守る守衛係になり、最後に花の蜜を集める外勤になります。これらはすべて女子の仕事。ミツバチの社会は女系家族で、9割がメスで、オスは1割しかいません。

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では、その1割のメンズたちは一体何をしているのかといえば、これといって何もせず。メスからエサをもらうか、蜜房(食料庫)へ蜜を吸いに行ってみたりするほかは、毛づくろいなどをしています。忙しなく働くメスたちの仕事や子育てを手伝うでもなく、ただブラブラするオス。英語では雄バチはdroneと呼びますが、これには雄バチのほかに、怠け者・いそうろう・ごくつぶし、といった意味もあり、散々な言われようです。ある時期になると巣を出て交尾のために女王を追いかけ回すというのが唯一、彼らの仕事。種の保存に関わる重要な役割を果たしていますが、普段働いていないだけに、メスからはかなり疎まれています。交尾の時期が過ぎ、冬が近づくとメスはオスにごはんをあげなくなってしまいます。それどころか、もう用なしとばかりに(というか実際にそうなのでしょう)メスたちはオスを巣から追い出そうとします。力尽くで巣から押し出すメスと、必死に巣にしがみつくオス。翌朝、巣の周りに力尽きたオスが散らばる様子は哀れの一言です。

種の保存の法則は非常に合理的であり、それがゆえに人の目には時に残酷で冷淡に見えます。昆虫や植物など自然界の生き物は自らの命や種をつないでいくうえで無駄なことをしません。一方、人はといえば、人間界にもごくつぶしもヒモもいますが、しかしいくらなんでも、これまで一緒に暮らしてきた人をいきなり力尽くで寒空に下に放り出したりはしません。これは「情」や「愛情」というものなのでしょうが、種の保存の観点からすれば無駄なことなのかもしれません。ミツバチたちを見ていると、不合理や無駄の中にこそ、人が人である理由があるのかもしれないと思えてきます。

庭に来るハチは、ミツバチやマルハナバチのほかに、クマンバチ、アシナガバチ、ジバチ、スズメバチなどいろいろな種類がいます。どのハチも基本的にはミツバチと同じで向こうから人間に近づいてくることはないものの、水道のそばや軒下など、人がよく出入りするような場所に巣をつくってしまうことがあるので注意が必要です。ベリー類など低木の茂みの中にもしばしば巣をつくっていることがあるので、素手で不用意に茂みの中へ手を突っ込まないようにしたいものです。また、黒いものをめがけて刺す習性があるので、庭仕事をする時は黒っぽい衣類は避けましょう。

もしもハチに刺されたら、よく洗い流します。ミツバチの場合は、一度刺すと針はハチの身体からちぎれて死んでしまいます。刺された箇所にハチの針が刺さっていることがあるので、抜いてから洗い流して冷やします。スズメバチやアシナガバチはミツバチと違い、何度も刺すことのできる針を持っています。刺されたらまずはその場から静かに離れましょう。一度に何度もハチに刺されると、アナフィラキシーショックを起こすことがあります。胸が苦しい、頭痛、吐き気がするなどの症状が現れる場合にはすぐに病院へ。刺された後は腫れと強烈な痛み、かゆみが起こるので、虫さされの薬を塗ってひたすら保冷剤などで冷やします。

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ハチは庭や自然界の中では、植物の花粉を媒介する重要な働きをしています。ハチたちの働きがなければ、イチゴやリンゴなどの果実は実りません。また、スズメバチは畑の作物を食い荒らすイモムシを捕獲してくれます。ミツバチたちはハチミツやミツロウといった恵みも与えてくれます。むやみやたらと怖がらず、一定の距離を保って正しくつき合えば、ブーンという羽音は庭仕事のBGMとして楽しい限りです。

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