スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
3and gardenの記事
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暮らし
【二十四節気】白露は秋の訪れ。彩り豊かなキクの庭花と重陽の節句
二十四節気 白露(はくろ) 9月8日頃 白、黄、オレンジ、紫、ピンク…。 種類が豊富で、多彩な花色を楽しめるキク(菊)は、ガーデンを彩る秋の主役花の一つ。開花期間が長く花もちもよいので、お墓参りや仏花としても欠かせない、暮らしによく登場する花です。それだけに、普段お部屋に飾る花としてはちょっと使いづらい、という方も多いかもしれません。でも、品種の豊富なキクは、実は和風にも洋風にも合わせやすい花なのです。 暮らしを彩るキクの花 ガーデンによく登場するのは、大菊と呼ばれる古典的なキクよりも、たくさんの花をつけるポットマムや小菊など。小さな紫の花を咲かせるノコンギクは、清楚で控えめな美しさ。丸く花弁がまとまるピンポンマムは、小菊や輪菊とはまた違う、可愛らしく華やかな雰囲気の花を咲かせます。花つきがよく、種類も多いキクは、ヨーロッパではとても人気の高いガーデンフラワーです。 栽培も簡単なキクは、自分で育てれば気兼ねなくたっぷり切り取って飾れるのもうれしいところ。耐寒性もあり、あまり手をかけなくてもきちんと花を咲かせてくれる、初心者にもおすすめの花です。 キク栽培に向く土壌は、水はけのよい肥沃な土です。バラと並んで肥料食いといわれるほど肥料が必要ですので、生育期間中は時々追肥をしましょう。 また、背が伸びてきたら切り戻しをすると、草丈が低く抑えられ、分枝して花数も増えます。たくさんの花をつけるので、風通しをよくするためにも花殻摘みや剪定も忘れずに。 花つきのよいポットマムなどは、うまく咲かせると株全体が花で覆われたようなこんもりとした株姿を楽しむことができます。 菊酒を味わおう 日本の国花ともいわれるキクは、私たちにとって最も身近な花の一つ。日本には350種以上の野菊があり、秋になると庭はもちろん、野原や道端など、いろいろな場所で見ることができます。 また、キクの楽しみは観賞するだけではありません。食用のキクは、見た目の美しさはもちろん、シャキシャキとした食感と香りが人気。9月9日の重陽の節句は菊の節句とも呼ばれ、不老長寿を願って、キクに降りる朝露で体を拭く「被せ綿」や、キクの花弁を浮かべた「菊酒」などの風習が伝わっています。このように、古くから親しまれてきたキクは、日本の暮らしに欠かせない花として、さまざまな形で愛されています。 菊酒の作り方 食用菊の花を花首から摘み取り、洗って水気をしっかり切る。 熱湯をかけて乾かした保存容器に菊花を入れ、焼酎を注ぐ。 1カ月ほど置いて焼酎に色が移ったら、菊花を取り出して出来上がり。 キクの花弁を浮かべて飲みます。手軽に短時間漬け込んだものでもいいし、日本酒に菊の花弁を浮かべるだけでも、ほんのりキクが香るお酒を楽しむことができますよ。
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宿根草・多年草
世界一のガーデンショーでベスト1に輝いた夢の花「ハイブリッド・ジギタリス」
丈夫で育てやすい宿根草「ハイブリッド・ジギタリス」 世界一のガーデンショー、英国のチェルシー・フラワー・ショーのプランツ・アワードでベスト1に輝いた「ハイブリッド・ジギタリス(スーパージギタリス)」。2012年の受賞以来、日本での販売が期待されていた花が近年、国内で入手できるようなっています。「ハイブリッド・ジギタリス」はガーデンの定番花、ジギタリスにイソフィレクシスの属間交配で生まれた新しい花で、見た目のインパクトに加え、生育特性に素晴らしい要素をいくつも持ち合わせた夢のような花です。 魅力その①夏の暑さに強い! これまでのジギタリスは暑さに弱く、日本では夏越しが難しいため一年草や二年草として扱われていましたが、ハイブリッド種は植えっぱなしで何年も楽しむことができます。 魅力その②分枝して次々に花を咲かせる! 普通のジギタリスは主軸となる太い茎を根元から2〜3本立ち上がらせ、それぞれに花を咲かせます。一方、ハイブリッド種は主軸の途中からも何本かに枝分かれし、その先に2番花、3番花と次々に咲かせるため、花の期間がとても長いのが特徴です。 魅力その③常緑! 植物は種子をつけるとともに本体が枯れていくライフサイクルを持っていますが、ハイブリッド種は種子ができないので、ずっと枯れずに緑のままです。ただし、熱帯地域の植物との交配種なので、寒さの厳しい地域では掘り上げたほうがよいかもしれません。 ここでご紹介している写真は、ハイブリッド・ジギタリスをいち早く庭で育てている鳥取県の面谷ひとみさんが手入れをする庭です。「バラに合わせてたくさんのジギタリスを植えています。従来のジギタリスも好きで何株も植えていますが、ハイブリッド・ジギタリスはより丈夫で、花の期間も長いので驚いています。春先の花がいったん終わった後にも新葉がどんどん出てきて繰り返し、繰り返し、花を咲かせてくれます」(面谷さん)。 Credit 写真&文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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暮らし
バードバスを庭に置いて野鳥観察をしよう! 楽しみ方&アイデア
バードバスの水をきれいにしましょう 水浴びは羽についた埃や寄生虫を落とすためと考えられており、季節に関係なく冬も行います。バシャバシャと羽ばたかせ、意外と水がなくなりやすいので、定期的に点検していつもきれいな水を入れてあげましょう。特に夏場は水をこまめに入れ替えることはボウフラ対策にもなります。 バードバスには、色々な生き物が集まります 地域によっては、バードバスには小鳥だけでなくリスやキツネなどいろいろな動物がやってきます。チョウも集まることがあります。清らかな水は生き物すべてにとって貴重なオアシスです。 小鳥たちのためには、天敵のネコの手の届きにくい位置にするために、台座などを用いて地上から少し高めに設置してあげるとよいでしょう。 バードバスは、ガーデンのフォーカルポイントにも バードバスは庭のフォーカルポイントとしても活躍してくれるガーデンアイテムとしてもおすすめです。少し背の高くなる花を周りに植栽すると、庭に素敵なワンシーンが生まれますよ。左はシェードガーデンの中のバードバス。日影で暗くなりがちなので、明るい色を選んでいます。バードバスの背景に咲いているピンクの花はペルシカリア・ビストルタ‘スパーバ’。 右は日当たりのよい場所。落ち着いた色合いのバードバスが花色を際立たせます。手前に咲くのはジギタリスで、奥の紫色の花はゲラニウム。 Photo/ 1)photoiconix/ 2)Elena Rizzo/ 3)Svetlana Larina/Tom Gowanlock/ 4)V J Matthew/Tony Craddock/ Shutterstock.com
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レシピ・料理
【二十四節気】冬至は柚子湯! ユズ・ピール、柚子茶など冬のユズ活用法
二十四節気 冬至 12月22日頃 冬のユズ活用 柚子湯の科学的効能 冬至に柚子湯に入る習慣は、冬を元気に過ごすための先人たちの知恵です。古代より柚子湯には、その香りや薬効で身体を清めるという禊(みそぎ)の意味があるとされてきましたが、実際、その効能は科学的にも証明されています。 何も入れない普通のお湯と柚子湯を比較したところ、入浴後の血管拡張に4倍の差が認められ、深部体温にも0.6℃の差が生じました。そして、その理由がユズの精油成分にあることもわかっています。ユズにはリモネンという血管拡張効果のある成分が含まれ、これがお湯に溶け出すことで、何も入れないさら湯より身体が温まるというわけです。精油は皮に多く含まれているため、柚子湯は皮のみでOK。成分が溶け出しやすいよう、お湯をため始める時からお風呂に入れておくのがポイントです。 自家製ユズを食卓に 柚子湯にはお風呂の他に、「柚子茶」の意味もあります。柚子茶とは砂糖で煮詰めた柚子シロップをお湯で薄めた飲み物。ユズの爽やかで優しい香りが蒸気とともに立ち上り、冷えた身体を温めてくれます。また、柚子なますや大根の柚子味噌かけなどの和食や、ユズ・ピールといったお菓子など、食卓でも大いに活躍してくれます。市販されているユズの多くは「ホンユズ」といわれる種類で、実を付けるまでに時間がかかります。一方、別種の「ハナユズ」は一才柚子(イッサイユズ)と呼ばれ、実は小さいものの1年目から果実が楽しめる種類です。いずれも耐寒性があり育てやすく、庭に植えると代々、家が繁栄する縁起樹ともいわれていますから、庭やベランダで、1本育ててみてはいかがでしょう。 ユズを育ててみよう ユズ・ピールを作ろう 砂糖で煮詰めるユズ・ピールは保存性がよく、そのままでももちろん、ケーキやクッキーなどのお菓子作りの素材としても重宝します。ホットチョコレートにもオススメです。 ユズ・ピールの作り方 【材料】ユズの皮、砂糖(皮の30%)、グラニュー糖少々 1/4に切ったユズの皮を一晩水に浸けて、苦味を抜きます。 皮の内側のふやけた白い部分をスプーンで取り除きます。 2回ほど鍋で沸騰させて茹でこぼします。 皮を鍋に戻し、砂糖を加えて中火で焦がさないよう煮詰めます。 細切りにして天板に並べ、乾燥させるために100度のオーブンで20分ほど加熱します。 冷やしてからグラニュー糖をまぶせば完成。
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暮らし
【二十四節気】スノードロップやクロッカスなど、立春に咲く早春の花々
二十四節気 立春 2月4日頃 春を告げる早春の花々 Leka Sergeeva/shutterstock.com 暦の上では春の始まりにあたる2月初旬は、一年でも最も寒さが厳しい時期。2026年の立春は、2月4日(水)です。そんな中でも、控えめに咲く小さな花を見つけると、確かに春は近づいていることを実感できます。春先に花をつける植物を総称して、Spring Ephemeral(春の妖精)と呼ぶこともあります。このような早春に咲く花には球根花が多いのが特徴。前年の間に栄養を蓄えているので、まだ光の弱い早春に真っ先に咲くことができます。 球根花の中でも、一番に咲くのがスノードロップ。まだ地面が雪に覆われている頃から、雪の欠片のような純白の花をうつむきがちに咲かせます。その清楚な美しさと相まって、ヨーロッパでは春を告げる花として広く愛されてきました。伝統や言い伝えも豊富にあり、聖母マリアの花として純潔の象徴ともされています。スノードロップに少し遅れてクロッカスもつぼみを開きます。太陽に向かって開く紫や白、黄色など、色とりどりの花弁が、早春の澄んだ光を跳ね返し、見ているだけでも明るい気持ちに。少しずつ昼が長くなり、これらの花々に続いてスノーフレークやムスカリがつぼみを膨らませ始めると、春はもうすぐそこ。日増しに空気は温かさを増し、色とりどりの花々が競い咲く季節がやってきます。 早春の小さなブーケ 球根からの楽しみ方 肥料をさほど必要とせず、秋の間に植え付けておけば早春に花を咲かせてくれる球根花は、ガーデニング初心者にも育てやすい花です。白く広がる根の様子を眺められる水栽培に挑戦できるのも、球根ならではの楽しみです。地面を押し分けて顔を出す緑の小さな芽も、また愛らしいものです。花後も葉を残し、植えたままにしておけば、翌年咲くエネルギーが蓄えられて毎年花を咲かせてくれます。夏の間は休眠しますが、プランターで育てる場合は、乾燥しすぎないように、時々水やりするといいでしょう。 春を告げる花々が咲いたら、小さなブーケを作って家の中に飾ってみませんか。輝くような小花たちが、お部屋の一角に春の気配を連れてきてくれます。花の色数を抑えて作るとすっきりと爽やかな印象にまとまります。早春の花たちは小ぶりなので、テーブルの上や窓辺など、ちょこんと置いてそばでぜひ眺めてください。
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ライフスタイル
【二十四節気】小満が見頃のピーク! バラの選び方とバラ園巡り
二十四節気 小満 5月21日頃 バラの選び方とバラ園巡り 3タイプのバラの樹形 「開花株」が商品として店頭に並ぶ5月は、花に顔を近づけ、香りや色合いを自分で確かめながら選べるチャンスです。「一目惚れ」という運命的な選び方も決して間違いではありませんが、バラと長く良好な関係を築くためには、ご自身の好みに加え、適した「樹形」を選ぶことがポイントです。店頭に並んでいる姿は流通に合わせたサイズなので、ずっとそのままの形ではありません。健康に育てるためにはその年の秋に地植えにしたり、鉢を植え替えたりする必要がありますが、そうすることでバラは本来の樹形に近づきます。バラの樹形には大きく分け、次の3つのタイプがあります。 樹形による選び方 つる樹形 枝が2m以上に伸び、誘引することで形状はさまざまに変えることが可能です。 <生かし方> 壁やアーチ、フェンスなどの構造物に枝を誘引することで、地面のスペースはわずかでも、空間を立体的に使って華やかな風景を作ることが可能です。例えば窓の周りをバラの花でうめつくしたりすることもできます。 ブッシュ樹形 こんもりとした茂みのように育ち、支柱などの支えがなくても自立できる樹形。タテ方向に枝を伸ばすものと、横方向に枝を伸ばすものがあります。 <生かし方> ふんわりした花の茂みは、花壇のポイントに。小さな庭や鉢植えにはコンパクトな品種を選びましょう。 シュラブ樹形 半自立する樹形。ブッシュ樹形よりも枝がしなやかで1〜2mと長く伸びますが、つる樹形ほどは伸びません。 <生かし方> バルコニーガーデンなど、スペースが限られた場所でのつるバラ的扱いに重宝します。オベリスクや小型のアーチなどに仕立てることができます。 バラ園を巡ってみましょう どのような品種がどのように使われているか、実際にバラ園やガーデンへ見に行って見ましょう。カタログや本では分からない本来の樹形を確認することができます。 観察のポイントは、まず品種名の確認。そして、サイズ感や枝の伸び具合、花の付き方(房咲きや、花が上向きか枝垂れるかなど)、トゲの様子(新枝と古枝でトゲの数が異なるものがあります)などをメモにとっておくと便利です。 また、花の様子だけでなく、どのような仕掛けがあるのか、構造物や誘引具も見ておくと、自宅の庭で仕立てる場合に便利です。しばしばバラ園では育て方や仕立て方の講習会を行っていますので、お近くにバラ園がある場合には、そうした会に参加するのもオススメです。プロの知恵やアイデアをもらいつつ、同じ花好きのお友達もできますよ。
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一年草
カラーリーフ「葉牡丹(ハボタン)」は冬の寄せ植えの大切なワンポイント、特徴的な5種類をご紹介!
冬に美しい葉を保つハボタン 冬の間も美味しそうな葉を保ち、花壇や寄せ植えに活躍するハボタン。耐寒性が強く、品種のバリエーションも豊かで、選ぶのも楽しいカラーリーフです。夏にタネを播いて育てられたポット苗は、秋から園芸店などに並び始めます。見た目から予想される通り、ハボタンはキャベツやケールの近縁種で、江戸時代に食用として渡来した後、日本では観賞用として品種改良が進みました。以前は直径30㎝ほどもある大株が人気でしたが、その後も改良が進み、直径5㎝前後と使いやすい小型の株も登場しています。気温が下がり始める10月頃から一段と色が鮮やかになるハボタン。薹(とう)が立ち、菜の花に似た黄花が咲くまで長く楽しめます。 さまざまな種類を持つハボタンをご紹介 丸葉系/江戸時代から育てられてきた種類。整った葉の重なりは、まるで花のよう。中心から外に向けて色が変わるものや、全体が緑や赤など単色のものも。 ちりめん系/葉の縁に細かな縮れがある種類。草姿にボリュームがあり、面白い表情が楽しめます。細かな縁取りは、泡をまとったようにも見えます。 サンゴ系/葉に深い切れ込みが入り、軽やかな雰囲気。白系の葉はレースのよう。花が咲く時期が遅いので、比較的長く楽しめます。 高性系/軸が伸び、葉が広がる位置が高くなります。上手に使うと、平坦になりがちな花壇にリズミカルな動きをプラスすることができます。 矮性・ミニ系/テーブルサイズの寄せ植えなど、小ぶりな寄せ植えに取り入れやすい小型種。ピンク、グリーン、白、シルバー、黒など色幅も増えています。 ハボタンは、肥料が効きすぎても、また足りなくても葉の色が悪くなります。一緒に植えている草花のためにも、ときどき液肥などをやりましょう。それ以外は特に手がかからない、冬に扱いやすいハボタン。春に比べて植物が少なくなる季節ですが、ハボタンを上手に組み合わせてオリジナルの寄せ植えづくりにチャレンジしてください。 Photo/ 1)mahey/ 2)Sann von Mai/ 3)MaxShutter/ 4)APHITHANA/ 5)ddok /6)Sann von Mai /Shutterstock.com
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ガーデン&ショップ
イングリッシュガーデン旅案内【英国】バートン・ハウス・ガーデン
バートン・ハウスは16世紀から伝わる古い地所で、長い歴史の中で、多くの人の手に渡ってきました。18世紀に建てられた屋敷を囲む、広さ3エーカー(約1万2,000㎡)の現在の庭は、前オーナーのペース夫妻によって、1983年からつくられたものです。夫妻は、その頃寂れた状態にあった屋敷と庭を修復するとともに、優れたガーデナーたちの助けを得ながら、新しい庭をつくり上げていきました。庭は見事に成熟し、2006年には、HAA(歴史的家屋協会)の栄えあるガーデン・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。 さあ、ロートアイアン製の門扉をくぐって、庭散策を始めましょう。 庭への入り口となるのは、16世紀にはちみつ色のコッツウォルズ・ストーンを使って建てられた、古い石造りの納屋です。ティールームのあるこの納屋を通り抜けて、重厚な扉の外に出ると、目の前に広がるのは、青々としたきれいな芝生。思わず、「わぁ!」と歓声を上げてしまいます。大樹の木陰には、思い思いにくつろぐ人々の姿が見えます。のんびり庭で過ごすには、今日はじつに快適なお天気です。 ふかふかと感触のよい芝を踏みながら、石階段の向こうに進みます。 まず、私たちを出迎えるのは、トピアリー・ウォーク(Topiary Walk)です。その名の通り、渦巻き形やまん丸、台形、円錐など、さまざまな形に整えられた、たくさんのトピアリーが、広場をぐるりと囲んでいます。 芝や、トピアリーを形作るツゲやイチイ、そして、遠くで高く伸びる木々。さまざまな色合いの緑と青い空が清々しい空間です。 幅の広い、白い砂利の小径がまっすぐに伸びて、その両脇に、白い花を咲かせる植物がこんもりと植わります。足元の白い砂利がよい引き立て役となって、白い花をより美しく見せています。写真では見えませんが、小径の中央には長方形の池があって、フォーカルポイントの役割を果たしています。 ロートアイアン製の門扉の外には牧草地が広がっていて、奥行きのある景色です。 ロートアイアンの扉を見ると、鍵がしっかりとかかっていました。小さな鍵には繊細な装飾が施されていて、細部まで妥協しないという、庭づくりへのこだわりが感じられます。時々、風の音に混じって、牛の鳴き声が聞こえてきます。ゆっくり座って遠くの景色を眺めていたいところですが、限られた時間でガーデンのすべてを見なくては! 名残惜しい気持ちを抑えて、先に進みましょう。 屋敷の窓からきっと一番よく見えるであろう、芝生の大空間、メイン・ローン(Main Lawn)に入ると、花壇に見慣れないものを見つけました。これからぐんぐんと育っていく植物が乱れないようにする、支柱のようです。初夏は、植物ごとに工夫された、さまざまなタイプのサポートが添えられる時期。こういった発見は、庭づくりの参考になりますね。 メイン・ローンを挟んで、屋敷の反対側にある、18世紀のレイズド・ウォーク(18th century raised walk)に来ました。芝生より数段高くなった、ボーダー花壇のある石造りの小径で、ここからお屋敷を眺める景色は、じつに絵になります。 花壇にはブッシュローズやポピー、ゲラニウム、ペンステモンなど見慣れた宿根草が多種類混植されていて、とってもカラフル。隣の丘から吹いてきた風に植物が揺れる姿も美しく、ここも見応えのあるコーナーでした。 花壇に植わる植物の種類と組み合わせは、レイズド・ウォークの大きな見どころですが、18世紀につくられたという構造物も必見です。花壇を囲む石材や、小径のペイビングのデザイン、コーナーのアクセントとなる柱の丸い飾り。どれも興味深いもので、味わいのある石材の表情に、時の流れを感じます。そして、つる植物がびっしり絡みついて骨組みが隠れてしまった、ベンチのあるガゼボも、すごい存在感! 中央に楕円形の池があって、その両脇に、ツゲの刈り込みが配置されています。四角い迷路のような刈り込みは、ところどころにピラミッド形のトピアリーが立っていて、直線的なデザインです。刈り込みには全く剥げたところがなく、その完璧な仕上がりは、植物でつくられていることを疑ってしまうほどです。籐かごの形をした池は、1851年のロンドン万国博覧会で展示されたもの。古い物を大切にし、そこに価値を見出す英国人気質を感じます。 少し日差しが強くなってきたので、大樹の木陰に入るとほっとします。 他のコーナーに比べて、それぞれにボリュームのある植物が、芝生の周りを縁取ります。シダやギボウシなど、緑の変化がおしゃれ。奥にはさわさわと風に揺れる、丈高い笹のような茂みがあります。 次は、屋敷の西側にあるファウンテン・ガーデン(The Fountain Garden)。シックな佇まいの噴水を囲んで、ここにもまた、形の違うツゲの刈り込みやトピアリーがありました。 屋敷を背に立つと、奥にクロッケー・ローンが見えます。芝生を縁取る植栽の優しい花色が、緑の中に明るく浮かびます。 屋敷の北側に回ると、またまた、これまで見たことのない複雑な形をしたトピアリーや刈り込みが出現しました。ここは、屋敷の正面を飾る、パーテア(The Parterre)と呼ばれる庭です。この手の込んだ庭は、屋敷に招かれた多くの客人を驚かせ、喜ばせてきたに違いありません。直線的なデザインのノット・ガーデンとは対照的に、曲線だけで構成されているのが印象的です。この難しい刈り込みを維持するために、きっと何人もの熟練ガーデナーが手入れに励んでいるのでしょう。 次々と現れる、部屋のように仕切られた、それぞれの庭。花と緑で、こんなにも幅広い変化を見せられることに驚きを感じた、充実の庭散策でした。時々出会うガーデナーたちの熱心に働く姿に、「この庭は、人の手が入って、その庭づくりの情熱が続いたことで、美しく保たれてきたのだ」と実感します。 アガパンサスとフジ、そして、終わりかけのバラに彩られた庭は、季節が移ろうにつれて、次はどんな植物を主役に据えるのでしょう。違う季節にまた訪れてみたいと、親しみがわいた庭散策でした。
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育て方
ウンベラータの不調を改善する植え替え方法と症状
観葉植物の“調子が悪い”とはどんな症状か 一年中、ハート形の葉がよく茂り、枝ぶりもスマートで人気の観葉植物フィカス・ウンベラータ。樹高1m20㎝の株を直径25㎝の陶器製の鉢に植え込んで、ベランダに面したリビングで育てていました。水は数日に一度、表土が乾いたらたっぷりやっていましたが、徐々に葉が落ちてしまったので、植え替えを試みました。鉢から掘り上げてみると、根っこがびっしり。たっぷりあげていたはずの水は根に届いていなかったようです。 根詰まりを改善する植え替えの手順 小さなクマデを使って根を崩してみると、一緒に植えてあった観葉植物のオリヅルランとアスパラガスの根がびっしり。フィカス・ウンベラータの根は木の大きさに比べて小さなものでした。根をしっかり伸ばすため、今度は直径40㎝の鉢へ植え替えます。 乾き気味の新しい培養土を全体的に水で湿らせて用土を準備。鉢底に排水用の石を敷き詰めたら、培養土を10㎝厚ほど敷き詰めてフィカス・ウンベラータの根を置き、サイドに培養土をどんどん入れていきます。 大きな鉢に植えつける 根に土がちゃんと密着するように、ときどき指で押さえながら、幹の角度を調整。下草として一緒に掘り上げてあったオリヅルランとアスパラガスも植え込みました。最後に鉢底から水が出るまで、たっぷり水をあげて植え替え作業は完了です。観葉植物の緊急事態なので、3日に一度程度、発根を促す植物活力剤「メネデール」を与えて様子をみました。 植え替え後、20日で復活の兆し 7月の上旬に植え替えて、日が当たるようにベランダに移して経過を見ていたら、それまで残っていた葉はすべて落ち、約20日で新芽が吹き出しました! 株元付近の枝は頂上部に比べて早く葉が展開。これで復活しそうです。水切れに注意して、もう少し屋外で日に当てながら様子をみることにしました。 植え替え後、約40日間で元の状態に さらに約20日で頂上部の葉も立派に茂りました。株の大きさに比べて、根が伸びるスペースが狭かったのが落葉の原因だったと思われます。それに加え、春以降は太陽が高くなるので、リビングに差し込む日差しが少なかったのもよくなかったのでしょう。今後は、日当たりと温暖な場所が好みのフィカス・ウンベラータを健やかに育てるために、春から晩夏まではなるべく外に出し、水のやりすぎにも気をつけること。改めて覚えておきましょう。ウンベラータは、4〜9月の間が植え替えの適期。ちょっと調子が悪いなと感じたら、すべての葉が落ちる前に早めの植え替えが吉です。 併せて読みたい
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宿根草・多年草
世界最古の化学兵器 クリスマスローズ
禁帯出 ガーデン毒草図鑑 クリスマスローズ 名称:クリスマスローズ 英名・別名:ヘレボルス、ニゲル 学名:Helleborus 科:キンポウゲ科 有毒部位:全草 特に根茎 有毒成分:サポニン、ヘレブリン、プロトアネモニンなど 紀元前595年のギリシア。デルフォイの隣保同盟とキラとの間で、聖域の権益、つまり莫大な奉納品の権利を巡り第一次神聖戦争が勃発しました。古代ギリシアでは、これ以前にも都市国家間での争いはありましたが、この戦いはある点において特筆されるべき特徴を備えています。この戦争は、最終的にキラの陥落によって幕を下ろすのですが、キラの攻略にデルフォイ人が採った戦略が、水路に毒を流すというものでした。そう、第一次神聖戦争は、初めて化学兵器が武器として使用され、文献に記録された戦いなのです。以後、人類がどのように化学兵器を進化させてきたかは皆さまもご存知のところでしょう。 さて、ここで初めて戦争史に登場する人類初の化学兵器は、ある植物から抽出された植物毒でした。この毒は、第一次神聖戦争からおよそ260年後、アレクサンダー大王に死をもたらすために利用されたともいわれています。この毒を盛った植物はヘレボルス、日本ではクリスマスローズと呼ばれ、冬の庭に欠かせないガーデナーにおなじみの宿根草です。クリスマスローズという英名からは毒性の有無は分かりませんが、学名のヘレボルスという名は、ギリシア語の殺す(helein)と食べ物(bore)から来ているといわれ、かねてよりクリスマスローズの毒性が知られていたことがうかがえます。 クリスマスローズに含まれる毒性は強心配糖体であるサポニンやヘレブリンなどで、心臓の収縮に働きかけます。また、樹液には空気に触れてプロトアネモニンに変化する成分が含まれ、皮膚につくと炎症やただれを引き起こします。クリスマスローズの毒性はさほど強いものではありませんが、口にすると口内の炎症やめまい、吐き気、腹痛、下痢などの中毒症状を引き起こし、致死量を摂取した場合は死に至ります。ただ、葉をそのまま食べた場合はすぐに違和感を感じる味なので、致死量を摂取してしまう危険性は非常に低く神経質になりすぎなくても大丈夫。草つゆが皮膚に付つくと、炎症などを引き起こすため、ガーデニングでクリスマスローズに触る時はガーデングローブなどをはめるとよいでしょう。 クリスマスローズの一種、純白の花を咲かせるニゲルには、次のような伝承が伝えられています。イエス・キリストが誕生したときに、貧しい一人の少女がお祝いに駆けつけたが、贈り物がなく嘆いていたところ、地面に零れ落ちた涙からニゲルの花が咲き、それを摘んで贈り物にしたー。この話が生まれたのも、清楚なニゲルの花が聖母マリアに捧げるのにふさわしいという思いがあったためでしょう。殺人者としての名を持ちながら、聖母マリアに捧げる花として愛される。何とも矛盾をはらんだ美しい花だとは思いませんか? クリスマスに咲くニゲルは白花種。ピンク色、クリーム色、エビ茶色など、さまざまな色があり、斑点やピコティなど模様も豊富。 併せて読みたい ・山菜・野草の種類と山菜摘みのルール、美味しくいただくアク抜きの基本&長期保存法 ・幼子の命を奪ったスズラン(鈴蘭)毒草としての非業な横顔 ・ペットのいる庭ではご注意を! 誤食に気をつけたい植物の参考書 Credit 文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。 参考文献/『邪悪な植物』エイミー・スチュワート著(山形浩生・守岡桜訳 朝日出版社刊)