スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。「ガーデンストーリー」書籍第1弾12刷り重版好評『植物と暮らす12カ月の楽しみ方』、書籍第2弾4刷り重版『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(2冊ともに発行/KADOKAWA)発売中!
3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。「ガーデンストーリー」書籍第1弾12刷り重版好評『植物と暮らす12カ月の楽しみ方』、書籍第2弾4刷り重版『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(2冊ともに発行/KADOKAWA)発売中!
3and gardenの記事
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寄せ植え・花壇

コツがいっぱい! 美しい寄せ植えの作り方
花が徒長し始めたら、次のシーズン用に植え替えを 早春に植え込んだ、ビオラとアネモネの寄せ植えです。花はまだ咲いていますが、徒長して寄せ植えの形が崩れかけています。夏に向けて寄せ植えの植え替え時期です。 土の入れ替えのコツ ガーデンフォークを使って、根が張っている植物を起こしていきます。根に土がたくさん付いているので、フォークで根をたたいて土を落とします。その際、土の中に残った根も取り除きます。この根を取り除く作業で土もほぐれ、空気が入ってふわっとします。 ここで大事なのは、引き抜いた植物をすぐに捨てずに、様子を確認してみることです。葉っぱがこんもり繁っているにもかかわらず、根がない、または極端に少ない場合は、土の中にコガネムシの幼虫がいる可能性があります。もし幼虫を発見した場合は取り除き、土を全量、またはできる限り入れ替えます。そして、土の中に殺虫剤のオルトランDXを適量すき込みます。土を入れ替えできない場合は、ていねいに幼虫を取り除き、オルトランDXをすき込みます。 全て抜き終わったら、少し土を入れ替え、元肥と有機肥料を適量まき、その後よくすき込みます。 さらに、新しい土を全体の1/5程度入れます。新しい土を加えると、失われた肥料分が補給されるのでしょう、よく育ちます。 植物はジグザグに置くとナチュラルに メインになる苗を仮置きします。同じ植物が直線上に並ばないように、調整しながらジグザグに置いていきます。写真はロベリアとベロニカ。今回、植え込む植物は、以下の通りです。夏に向けて涼しげな雰囲気になるよう、ブルー系の花を揃えました。植え込んだ直後から植物が馴染んで見えるように、結構たくさんの苗を使います。 <使った苗> ロベリア×4 ベロニカ×4 オンファロデス×3 ラベンダー×4 タマシャジン×2 サルビア×4 オダマキ×6 バコパ×5 ロベリアとベロニカの隙間に、1つ目のつなぎの植物となるラベンダー、タマシャジンを置いていきます。ここでも直線上に並ばないように注意します。「つなぎの植物」というのは、ちょうどバラのブーケにカスミソウが入って、なんとなくブーケがふんわりとまとまるようなイメージです。メインとなるクッキリ・ハッキリとした色形の植物の間に、チラチラとした小花を入れることによって、間が自然につながって、全体に調和が生まれるのです。さらに、2つ目のつなぎとなる植物、オンファロデス(草丈の高い白い花)を隙間に入れていきます。この段階では仮置きなので、狭くて苦しそうな場所は、隣同士の苗を動かして調整し、並べていきます。 位置が決まったら、植えていきます。苗の株元を持って、優しくポットから抜きます。よほど根が回っていない限り、根はほぐさなくてOK。苗を隙間に入れる時は、周りの植物を傷つけないように、手の甲で隣の苗をそっと押さえながら植え付けます。 さらに、隙間にオダマキを植え込むと、もっと自然な感じになります。 手前にも隙間があるので、やさしいピンク色のバコパを植えます。花がら(しぼんだ花)がたくさんあると見苦しいので、花がらがある場合は取り除いてから植え付けます。最後に隙間に土を入れていきます。私は自作のペットボトルの土入れを使っています。細くて土がたっぷり入るので便利です。作り方は、以下の記事でご紹介しています。 ●『美しい庭をつくる人が愛用する便利な庭道具』 こんな感じで植え付けは終了です。この後は、水まきです。植え付け直後の水まきには、ちょっとしたコツがあります。 寄せ植えの植え付け直後の水やりのコツ まず、ホースで水やりをする場合、はす口をつけますが、いきなり植物にホースの水をかけてはいけません。というのも、ホース内に残っていた水が日光で温められて、意外なほど熱いお湯に変わっていることがあるからです。ですから、しばらく水を出しっ放しにして、手で触って冷たくなっているのを確かめます。次に水がやわらかく当たるよう調整します。あまり水の勢いが強いと、表面の土に穴があいてしまい、植物の根が露出してしまいます。苗と土が密着するように株元に水をまいていきます。 さらに少し高いところから、苗についた土を洗い流していきます。植え込み作業中は注意していても、植物の葉っぱなどに土がついてしまっています。特にペチュニアなど、葉が毛羽立っている植物は土がつきやすいので、優しい雨のように上からシャワーをかけて、洗い流します。植物に近づけすぎないことが大事です。 活力剤をあげて完成! 最後に、メネデールやリキダスなどの活力剤をジョウロでまき、完了です。活力剤は植え込んだばかりの根の生育を助ける働きがあります。 生育するとお互いの植物が絡み合い、さらに馴染んでナチュラルな雰囲気になります。 この横長の鉢は待合室の窓のすぐ側に置いてあり、室内からも花がよく見えます。ですから、手前から見ても、後ろから見ても綺麗な眺めになるよう植え込んでいます。植え込み後の管理は、基本的に水やりと花がら摘み。水やりの際、ときどき液肥を混ぜてやると花のもちがよくなります。 華麗なる寄せ植えの四季 同じ鉢を使った過去の季節違いの花の様子です。冬/ビオラ、ストック、アリッサム、ネメシア、カルーナなど。 早春/ビオラ、フォックスリータイム、オレガノ、チューリップなど。 初夏/ミニバラ、クレマチス、スーパーチュニア、ユーフォルビア‘ダイヤモンドフロスト’、クレオメ、ゼラニウムなど。 真夏/スーパーチュニア、ビンカ、セダム。 秋/コスモス、スカビオサ、サルビア、タイムなど。 寄せ植えは、庭がなくても一鉢の中で、こんなふうに季節の彩りを豊かに楽しむことができます。ぜひチャレンジしてみてくださいね。
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ガーデン&ショップ

イングリッシュガーデン旅案内【英国】イギリスガーデン界の巨匠、故クリストファー・ロイドの自邸「グレート・ディクスター・ハウス&ガーデンズ」前編
英国ガーデン界のカリスマガーデナー クリストファー・ロイドは、常に変化を求め続けたガーデナーでした。1957年、当時の主流だった宿根草花壇に対して、ミックスボーダー(混植花壇)を提案した著書、“The Mixed Border in the Modern Garden”を皮切りに、彼は、このグレート・ディクスターを実験の場として新しいガーデニングに挑戦し続け、そこで得た自らの経験と考えを、ガーデン誌や新聞の園芸欄と著書で伝えました。大胆な色使いを提唱した“Color for Adventurous Gardeners”、現在もブームとなっているメドウ(野原)・ガーデニングについて、いち早く解説した“Meadows”など、クリストファーはいつも新しい視点を人々に与える存在でした。 2006年、クリストファーは84歳で惜しまれつつ世を去りましたが、彼が愛し、精力を注いだ庭と屋敷は、グレート・ディクスター・チャリタブル・トラストという公益財団に受け継がれました。そして、クリストファーの後継者であり、1993年からヘッドガーデナーを務めるファーガス・ギャレットを中心とするガーデナーたちによって、生前のままに管理、運営されています。 ファーガスにとってクリストファーは、素晴らしき老教授、父、祖父のような存在であり、また、親友でした。一方、老齢のクリストファーにとってファーガスは、体力的に難しいことを代わりにしてくれる頼れる相棒であり、また、新しいアイデアや刺激を与えてくれる存在でした。 「変化こそ、グレートディクスター流ガーデニングの神髄」と、ファーガスはクリストファーのチャレンジ精神を受け継ぎ、また、それを後世に伝えるべく、さまざまな園芸教育プログラムに力を注いでいます。屋敷には、世界レベルの技量修得を目指す研修生が住み込んで、庭仕事に励みます。 さあ、イギリスでも先端を行く、独創性あふれるガーデンを散策しましょう。どんな驚きが待っているでしょうか。 庭散策はメドウガーデンから 敷地に足を踏み入れると、まず広がっているのがメドウガーデンです。白や黄色の素朴な花が、低い位置で風に揺れています。向こうの景色は、ユニークな形に刈りこまれた、壁のようなセイヨウイチイの生け垣に隠されて見えません。どんな庭が待っているのだろうと期待が高まります。 メドウの小道をまっすぐ進むと、雑誌で目にした覚えのある、古い屋敷が迎えてくれました。大小の鉢植えが多数集められて、彩り豊かにエントランスを囲みます。 アルケミラモリスやカンパニュラ、ギボウシ、グラス、コニファーなどが植わっている、エントランスの鉢植え。どの鉢も株姿がこんもりきれいに整い、手入れが行き届いていることが分かります。 ラッチェンスの手で改修された屋敷 クリストファーの父、ナサニエル・ロイドは富裕層の出で、自らも印刷業で成功を収めました。1910年、彼は若くして隠居生活に入るため、15世紀半ばに建てられた「マナー・オブ・ディクスター」を購入し、のちに名建築家として名を残すエドウィン・ラッチェンスに、屋敷の改修と増築、そして、庭の設計を依頼します。ナサニエルは、昔ながらの手仕事を再評価するアーツ・アンド・クラフツ運動に共鳴しており、古い屋敷をできるだけ伝統的な形で修復することを望みました。現在ある屋敷の姿は、もともと建っていた木骨造の屋敷に、別の場所から解体して運んだ2つの古い家を組み合わせたものとなっています。 この歴史的な建物は、内部を見学することもできます(写真撮影は禁止)。庭散策を終えてから中に入ってみると、1階のグレート・ホールという部屋は天井が高く広々としていて、大きなステンドグラスから光がたっぷり注いでいました。エントランス部分の外観にあるような太い木の骨組みが、室内からも見られます。2階には暖炉を備えた広い一間があって、書棚にクリストファーの蔵書と思われる植物図鑑などがずらりと並んでいました。家の中には、アンティーク家具を好んだ父、ナサニエルが集めた、中世の英国、フランス、イタリアの家具が置いてあります。 父ナサニエルと母デイジー ナサニエルが地所を購入した際、ここには庭と呼べるものはなく、屋敷の増改築と並行して、2年がかりで庭づくりが行われました。ラッチェンスが設計した庭の構造物がつくられ、専門家によって計画された植栽が行われて、庭も完成。1912年に一家は暮らし始めます。ナサニエルは、その後、古い建築について学びを深め、自分でもサンクン・ガーデンを設計しています。 一方、母・デイジーは草花が大好きで、のちに庭の植栽計画を担当するようになりました。クリストファーは6人兄弟の末っ子に生まれ、この素晴らしい庭で幼い頃から植物に親しんで育ちましたが、兄弟の中でガーデニングに興味を持ったのは彼だけでした。クリストファーは名門ラグビー校で学び、ケンブリッジ大学のキングス・カレッジに進んで現代言語を学びますが、第二次世界大戦の兵役の後、ワイ・カレッジで装飾園芸の学位を取得して、園芸の道に進むことを決めます。そして、グレート・ディクスターに戻り、母から庭を任されて、本格的にガーデニングに取り組むようになりました。 クリストファーは、花壇や小道、テラスなどのレイアウト、及び建物や生け垣などの構造物といった、ラッチェンスによるガーデンデザインに満足していました。彼はその素晴らしい枠組みの中で、父や母が愛でた要素を残しつつ、新しいガーデニングを追求したのです。 では、屋敷を中心に広がる、いくつものエリアに分かれた庭を、順に巡っていきましょう。 トピアリーが楽しいピーコックガーデン 屋敷の北東側に広がるのは、セイヨウイチイの生け垣です。この変化をつけたユーモラスな形の生け垣は、次に続く空間を3つのエリアに区切っています。屋敷を背にして、砂利敷きの道から一歩右のエリアに入ると…… 鳥をかたどったトピアリーがいくつも立つ「ピーコックガーデン(クジャクの庭)」です。花色が抑えられていて、若いグリーンが引き立つ庭景色。トピアリーは、アーツ・アンド・クラフツ様式の庭によく見られる要素で、クリストファーの父ナサニエルも気に入っていました。これらはもともと、キジやブラックバードなど、さまざまな鳥をかたどったものでしたが、今ではすべてを「ピーコック」と呼んでいるそう。長い年月が経つうちに、どれがどの鳥だか分からなくなってしまったのでしょうか、面白いですね。鳥のトピアリーは全部で18体ありますが、庭ができた当時は、トピアリー好きのナサニエルが、もっとたくさん配置していたのだそうです。 ピーコックガーデンの中央には、石張りのテラスのような空間があります。先ほどの植物が密集する空間とは一転して、ここは距離を保って植え込みを眺められる空間。メリハリのあるガーデンデザインが感じられます。この場所からは、クジャクのトピアリーが林立するユーモラスな風景が楽しめました。 草花の生い茂るハイガーデンとオーチャードガーデン 続いて、セイヨウイチイの生け垣の間を抜けて、「ハイガーデン」と呼ばれる隣のエリアに入ると、色彩がガラリと変わります。訪問した2019年の6月中旬は、赤やピンクのオリエンタルポピーがたくさんの花を咲かせていました。中央の奥には、ピンク色のクレマチスのオベリスクが見えます。 花が植わっているエリアと生け垣の間の、人ひとりがやっと通れる小道をたどって奥へと進みます。生い茂る植物が迫ってくるような、エネルギーを感じる体験は初めて! 植物が群れ咲くとはこういうことかと、実感しました。 次のエリアに入ると、人の背丈を越すほど高く伸びるグラスやバーバスカム、デルフィニウム、ゲラニウム、サルビアなど、日本のナチュラルガーデンでもよく見かける、あらゆる宿根草が育っていました。一見、無秩序に植わっているようですが、隣り合う植物が調和し合い、競い合って育っているよう。既存のデザインの方程式に捉われない、新しさを感じました。この後、1週間、2週間と時間が経つと、きっとまったく違う印象を受けるのでしょう。また来てみたいと思わせる魅力がありました。 さらに進むと、「オーチャードガーデン」につながります。アクセントとなるヘメロカリスの黄色い花に、フェンネルのふわふわ茂る葉、紫のアリウムなど、ここでも、視界に入る植物がすべて異なる種類。他の庭では見られない植栽術に驚かされます。 コントラストで魅せるミックスボーダー グレート・ディクスターの花壇は、すべてミックスボーダー(混植花壇)です。クリストファーは、植物はお互いに助け合うことができると、樹木、灌木、つる性植物、耐寒性および非耐寒性の多年草、一年草、二年草のすべてを組み合わせて、植栽に用いました。彼は、調和よりもコントラスト、形や色の対比で魅せる草花のタペストリーをつくろうとしました。そして、特別決まったカラースキーム(色彩計画)というものも持たずに、どんな花の色をも効果的に組み合わせようと苦心していました。 また、グレート・ディクスターは、ハイ・メンテナンス、つまり、手のかかる庭として知られています。「努力があってこそ見返りも大きい」というのが、クリストファーの持論で、手のかからないグラウンドカバーの植物には興味がありませんでした。この庭でもし、グラウンドカバーが植えられていたとしたら、それはその植物のことが好きだからであって、手を抜くためではなかったそう。この精神はファーガスたちにも受け継がれ、「視覚的にインパクトがあり、かつ、親しみやすさのある植栽」を実現するために、ガーデナーたちは常に忙しく働いています。一年草を使うことも多く、花壇に植わる植物は絶えず変化していくそうです。 ユニークな高さの異なるセイヨウイチイの生け垣で区切られている、ピーコックガーデン、ハイガーデン、オーチャードガーデンの3つの庭。大きな面積が植物で埋め尽くされていたり、生け垣に沿って細い小道があったりと、ここにしかないオリジナリティーあふれるデザインをたくさん見ることができました。この道はどこにつながっているのか、一度歩いただけでは把握できない、迷路のような面白さもありました。 メドウの広がる果樹園へ オーチャードガーデンの、両側を花々に彩られた小道を先へと進みます。生け垣のトンネルの先には、どんな景色が待っているのでしょうか。 トンネルを抜けて階段を降り、振り返ってみると、巨大な生け垣の緑が目に飛び込んできました。すべては1912年以降につくられたものといいますが、この庭の歴史を感じます。 小道のさらに先には、またトピアリーのトンネルがあって、開けた場所に続いているようです。バラの優しい花色を眺めながら先に進んで、トンネルを抜けると…… 一面のメドウ(野原)! 広がるメドウは、借景となる遠くの風景につながっています。心地よい、穏やかな風が吹いています。 クリストファーの母デイジーは、このようなメドウのガーデンスタイルが好きで、庭ができて間もない頃からメドウを育てていました。クリストファーにとってメドウは、子どもの頃から親しんだもの。きっと彼の原風景だったのでしょう。メドウに咲く花はほとんどが自生種で、土壌が貧しければ貧しいほど、花々のタペストリーは豊かになるそうです。土壌が肥沃だと、カウパセリやイラクサなどの粗野な植物が占領してしまうのだとか。 デイジーは、野生種のラッパズイセンやスネークヘッド・フリチラリアを、種子から育てて増やしていました。風になびく美しい草原は、手つかずの自然の景色のように見えますが、人の手で計画し、手入れしているからこそ生まれる風景です。 メドウの芝草を刈り込んで作られた小道は、リンゴ、洋ナシ、プラム、サンザシ、クラブアップルなどの果樹が散りばめられたオーチャード(果樹園)のエリアに続いています。 メドウの景色を動画に収めました。風のそよぎや鳥のさえずりをお楽しみください。 *続きは、「グレート・ディクスター・ハウス&ガーデンズ」後編で。
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イベント・ニュース

今こそ暮らしを変えよう!「Stay Home」により海外で人気急上昇のガーデニング
昨年の同じ時期と比べてガーデン関連商品は8倍の注文 アメリカ、イギリス、ドイツ、オーストラリアなど、エクステリアメーカー、タカショーの、海外の販売子会社・営業所6拠点の製造・販売・流通を取りまとめる海外事業戦略室、室長の内海良平さんは、新型コロナウイルスの影響で市場が大きく変わっているといいます。 「ニューヨークのようにロックダウン(都市封鎖)された場所では、ガーデンセンターも営業ができず、弊社の拠点があるペンシルベニアもロックダウンされたために3月20日から営業所を閉鎖し、スタッフは自宅勤務となりました。ですが、物流はストップしていないので、ネット通販による注文については倉庫から発送され、ガーデニング商品をお客様にお届けすることはできています」。 「欧米では、多くの人が仕事に行けず家にいる時間ができたことから、まずは掃除や片づけをし、さらに次の作業としてガーデニングに目を向ける人が確実に増えていると、商品の売れ行きから分かります。オーストラリアでは、ガーデニング関連商品の1日の注文件数が4倍になりました。また、イギリスでは野菜やハーブを育てる大型コンテナのベジトラグシリーズが、昨年の同じ時期と比べて8倍もの注文をいただいていると報告を受けています」と内海さん。 海外でのガーデニング商品の売れ行き 「海外でガーデンセンターの営業が停止された地域では、スーパーで苗を買うことができるケースもあり、よく売れていると聞きます。 スーパーに行くのは1日1回と限定されていたり、入店の人数制限があったりし、人と人との距離を2m保ちながら列をつくって買い物をしなければいけません。そんな状況からか、買い物の回数を減らしたいと考える人や、いずれ野菜が入手困難になるかもしれないという事態に備える人が、自宅で野菜を育てようとして、タネも売れ切れるほどだとイギリスの仕事仲間に聞きました。だから、畑や広い敷地がなくても野菜を育てやすい商品である、ベジトラグシリーズが売れているのでしょう」。 ベジトラグ以外にもこの数カ月で、オベリスクやトレリスなどの支柱類や鉢底にプラスチックの補強がついたウッドバレルプランター(上写真)、ハンギングバスケットなども特に売れ行きがいいといいます。 「自宅待機やガーデンセンターの休業によってネット通販での注文も殺到しています。しかし、これまで通りすぐに発送ができていないのが現状です。これは、出荷業務をする人の健康維持を考えて、通常より人員を減らす体制をとっているため、注文のスピードに出荷が追いつかないという業務の混乱を避けるために、受注を一旦止めるケースがあるからです。 一方、ガーデンセンターの営業ができている地域では、事前に注文してから、車で店に向かい、ドライブスルーで商品をピックアップし、クレジット精算ができるシステムに移行したガーデンセンターもあります。このように、海外では自宅待機(Stay Home)や人との距離を保つ(Social Distance)という制限を満たしながらも、人々が欲しいものを早く手に入れるための効率のよい方法が生まれています。 ちなみに、一部のガーデンセンターでは、いつ発令されるか分からないロックダウンに備えて在庫を持たないようにする場合と、生鮮食品を扱うコストコのようなスーパーでは逆に仕入れを増やすなど、店の形態によって状況判断に違いがあります」と内海さん。 日々の暮らしを見直す時間 海外の人たちが、この状況下でガーデニングに目を向けることについて、内海さんは次のように語ります。「“Back to Basics”、ガーデニングをすることは、原点回帰なのかもしれないとイギリスの仕事仲間と話しました。それは、外に出て日光浴をしたり、土を耕して汗を流して野菜を育てたり、季節がめぐることを花や緑から身近に感じながら家族と一緒に過ごすこと。リラックスができる状況に身を置いて、心の安定を維持するために、多くの人がガーデニングを始めているのかもしれませんね」。 日本でもこの数カ月で通信販売による苗の注文や、庭のつくり替え、メンテナンスなどの注文も増えてきています。自宅で過ごす時間の一つに、ガーデニングを選んでいる今の海外を参考に、これから多くの時間を過ごすことになる自宅の暮らしをアップデートしてみませんか? 気候がよくなるこれからの季節、家の補修や塗装などのメンテナンスや掃除からスタートし、外で過ごせるようなテーブルセットを庭やベランダに用意して外空間を充実させたり、窓から見える景色を花や植物で変えたりして、ガーデニングで楽しい暮らしをクリエイトしましょう! 併せて読みたい ・ガーデニングとは? 楽しく成功させるためのアイデアと基本情報をご紹介 ・初心者でも上手にできる家庭菜園! 始め方は? おすすめの野菜は? ・植えっぱなしで毎年花咲く「宿根草(多年草)」おすすめの種類と育て方
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寄せ植え・花壇

クリスマスローズと小さな花々が競演する春の可愛い庭
丈夫でこぼれ種でも増える宿根草、クリスマスローズ クリスマスローズは早春の庭に欠かせない花です。山陰ではクリスマスローズは、チューリップが咲く1カ月ほど前に開花期を迎え、およそ1カ月庭を彩ってくれる丈夫な宿根草です。この頃はクロッカスやムスカリ、原種シクラメンなどの小球根が地面をポツポツと彩り、ビオラもまだ草丈が低い時期なので、それらより草丈がやや高く、1株から何輪も咲くクリスマスローズは、春まだ浅い庭を華やかに彩ってくれる貴重な存在です。 横山園芸作出の‘ヨシノ’。 数年前から可愛いと思う花を集め出し、一重からセミダブル、ダブル、花弁の縁に糸のように色が入るピコティ、プチプチ模様のスポットまで、いつの間にか庭中にクリスマスローズが増えました。最近のお気に入りは、‘プチドール’や‘ピンクアイス’、‘氷の微笑’、英国アシュウッドナーセリーの品種などいろいろありますが、一番は、なんといっても‘ヨシノ’です。淡いピンク色に染まるふっくらとした一重の花は、可憐で素朴。希少品種で、鉢で大事に育てられることが多いようですが、私はこのあどけない少女のような雰囲気の花を庭に咲かせたくて、地植えにしています。以前、クリスマスローズ愛好家の方が庭にいらした際に、「こんな貴重な花を地植えにするなんて…」と呆れられたことがありましたが、地植えにしたところ株が太って花数が増えたので、私としては嬉しい限りです。 こぼれ種で敷石の間から咲いたクリスマスローズ。 クリスマスローズの中には、そのような希少品種がいくつもありますが、希少だからといって必ずしも特別難しい管理が必要なわけではなく、適所で育てれば丈夫に育ち、年々株が太って花数が増えるのも魅力です。また、品種によってはこぼれ種でも増え、敷石の隙間や樹木の間など、少し日陰になるようなところにいつの間にか花が咲いていることがしばしばあります。 ゲブラナガトヨのビオラ、ゲラニウム‘ビルウォーリス’とともに咲くクリスマスローズ。クリスマスローズはオオゼキナーセリーのオーレア系レッドシングル。 苗は、地元米子の園芸店「ラブリーガーデン」に厳選されたクリスマスローズがあるので、多くはそこで入手しています。また、毎年東京・池袋で開催されている「クリスマスローズの世界展」にも、飛行機に乗って花を見に行くのが恒例になりつつあります。魅力的な新品種が次々に登場するので興味は尽きませんが、私はクリスマスローズのコレクターというわけではなく、ほかの草花との競演を何よりも楽しみにしています。 クリスマスローズと似合う春の花々 春先のこの時期は、クリスマスローズより草丈が高くなるような花は少なく、原種シクラメンもビオラも、クリスマスローズの株元で咲きます。この2つの花は、クリスマスローズの花の雰囲気にぴったりです。 素朴で可愛らしい原種シクラメン 原種シクラメンは地際7〜8cmの高さで咲き、花も小さく素朴で可愛らしい雰囲気です。ガーデンシクラメンも小型のシクラメンで庭植えされますが、原種シクラメンは、もっと花が小さく控えめに咲くので、クリスマスローズをよく引き立ててくれます。夏は涼しい木陰など、場所さえ合っていれば、球根が分球してどんどん増えていってくれるのもお気に入りの点です。 原種シクラメン、ビオラと咲くダブルのピコティのクリスマスローズ。 ビオラはコンパクトな株姿をセレクト スキミア(後ろのエンジ色の花)、ビオラと咲くクリスマスローズ。 また、ビオラも地植えにするものは、ボリュームが出すぎず、キュッとコンパクトな株姿で咲く品種を選んでいます。ビオラは本当にたくさんの品種があり、色も咲き姿も魅力的なものが豊富ですが、私が庭植えにする際に重視しているのは株姿です。草丈が高くなり、株全体が花で覆われるような育ち方をするものは、庭では目立ちすぎてしまうので、寄せ植えなどに用いています。この庭では、草丈があまり高くならず、横に広がって育ち、葉の存在感があるようなビオラが似合うのですが、こればっかりは育ててみないことには分かりません。ですから私は、前年の経験を生かして同じ系統のビオラを選ぶようにしています。 赤い個性的なビオラ、植田園芸のレインボーウェーブ・アプリコットローズとともに。 楚々とした姿が魅力的な雪割草 雪割草のような山野草も、クリスマスローズとの相性抜群です。ただし、雪割草は新潟県が原産地で涼しいところを好むため、夏越しが難しく消えていってしまうものもあります。それでも、樹木の下や日陰になる場所などではいくつか残って、毎年可愛らしい花を見せてくれるので、大事に育てています。 グラウンドカバープランツのベロニカ 地面を覆うように咲く植物のことをグラウンドカバープランツと呼びますが、ベロニカも春先に咲く、そんな花の一つです。横に広がりながら、エンジ色の葉っぱに冴え渡るブルーの小花を咲かせます。上の写真のクリスマスローズは、庭づくりの最初に買って植えたもので、ベロニカと一緒に何年も咲いてくれています。日当たりのよい花壇ですが、夏はバラの木陰になり、ベロニカも土の温度上昇や乾きを防いでくれるからでしょう。 クリスマスローズの花がうつむいて咲く姿は、株元のそうした小さな花々を見守っているようにも、話しかけているようにも見え、想像がふくらんで、とても楽しいです。花が咲くと、私は一輪ずつそっと手のひらに載せるようにして、その顔をのぞきます。立って上から眺めているだけでは、ダブルやピコティといった花の内側に隠された豊かな表情が楽しめないからです。 プロが教えるクリスマスローズの寄せ植えのコツ クリスマスローズ‘パラデニア’を主役にした白花の寄せ植え。 コレクターの方が鉢植えにする理由の一つには、可愛い花の顔がよく見えるという利点があるのでしょうね。私もいくつかは鉢植えにして少し高い場所に置き、花の顔が楽しめるように鉢を並べています。また、クリスマスローズはこの時期の花の中では花径が大きめなので、寄せ植えの主役としても活躍してくれます。クリスマスローズの寄せ植えは、ガーデナーの安酸友昭さんにお願いしていますが、植え方にはちょっとしたコツがあるようです。 クリスマスローズは葉があまりない状態で、ほかの花苗より大きい鉢サイズで流通しています。ですから、鉢から抜き出した際の根鉢が大きいのと、草丈の違いから、普通に寄せ植えすると、クリスマスローズの株元にぽっかり空間ができてしまいます。そうならないように、株元部分では、苗を横に並べるのではなく、クリスマスローズの上に他の草花を置いて、隙間ができないようにします。その際、邪魔になる葉っぱがあればちぎってしまいますが、その後の生育には問題ありません。クリスマスローズは宿根草なので、花が終わった後も鉢で養生するか、地植えにしておけば、来年もまた咲いてくれます。 庭のクリスマスローズで作る華麗なブーケ クリスマスローズを植えて数年経った今年、株が充実して花数も増えたので、思い切って庭のクリスマスローズを切ってブーケを作ってみました。25本ほどの花茎の、両手にこぼれるほどのブーケができ、我ながら感動です。内心、今が盛りの花を切るのはとても勇気のいることでしたが、花瓶に活けると、さまざまなクリスマスローズの花の顔をじっくり眺めることができ、これは育てている者の特権だなぁと、なんとも贅沢な気分になりました。じつは、庭の花を素敵に飾れるように、フラワーアレンジメントのレッスンでスパイラルという花束の基本スタイルを学んだのですが、その甲斐あって、手早くきれいにまとめることができました。 庭の花のブーケを作ってみて思ったのは、あまり花を吟味して選ばなくても、適当にササッと切って束ねても、美しくまとまるということです。でも、よく考えてみれば、庭に植えるときにすでに花々が調和するように選んで植えているので、当然なのかもしれません。それに、新鮮さにかけてはピカイチ。アレンジメントという新しいテクニックを覚え、ますます庭の楽しみは広がる一方です。
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樹木

庭木にぴったりな「コニファー」! 人気品種や正しい育て方のコツは?
さまざまな魅力を持つ「コニファー」とは? Artush/Shutterstock.com コニファーとは、細い葉を密に茂らせる「針葉植物」の総称です。秋に落葉することなく、一年中瑞々しい葉を保つ常緑樹でもあります。エバーグリーンのため観賞用として人気が高いうえ、外からの目隠しや境界線となる生け垣にも使えます。クリスマスツリーにも利用できるので、庭木として1本植えておくと、毎年冬の飾り付けが楽しみになります。 コニファーは、樹種によって樹高が高くなるものもあれば、這うように広がるものもあり、グリーンの葉色もシルバー系、ブルー系、イエロー系などバラエティー豊かです。樹形も自然に円錐形にまとまるものもあれば、球形・半球形、ほうき状になるものもあります。また、樹種によっては剪定を工夫してトピアリー仕立てにできるものも。品種による性質の幅が広いので、好みのものを上手に組み合わせれば、オリジナリティーあふれるおしゃれな庭づくりに一役買ってくれます。ただし、暑さや寒さへの耐性が、樹種それぞれに異なるため、購入前によく性質を把握しておきましょう。 種類も豊富! コニファーの人気品種 一年中鮮やかなグリーンを楽しめるコニファーは、特定の植物の名称ではなく、「常緑針葉樹」の総称です。常緑針葉樹に属する樹種は数多く、さまざまな品種が出回っていますが、ここでは、特に人気の高い6種のコニファーをご紹介します。 ‘ゴールドクレスト’ Victoria Kurylo/Shutterstock.com コニファーの中でも最もポピュラーで、明るい黄緑〜淡い黄緑の葉を持つので、洋風の庭を明るく見せてくれます。‘ゴールドクレスト’は園芸品種で、樹種名はモントレーサイプレス、またはモントレーイトスギ。自然樹形で円錐形にまとまるので、冬は飾り付けをしてクリスマスツリーに利用してもいいでしょう。葉に触れると、山椒のような爽やかな香りが立ちます。生育適温は15〜25℃、最低気温は0℃以上で、コニファーの中ではあまり寒さに強くないほうです。高温多湿が苦手なため、梅雨から夏にかけては蒸れに注意し、風通しよく管理しましょう。成長が早く、原産地では樹高が20mにも達する高木で、日本で庭木として植栽しても5mにも達することがあります。あまり大きくしたくなければ、剪定でコントロールする必要があります。 エメラルドグリーン V.Lawrence/Shutterstock.com エメラルドグリーンはニオイヒバの園芸品種で、別名エメラルド、スマラグとも呼ばれています。名前の通りにエメラルドグリーンの発色が美しく、葉に光沢があるのが特徴。冬になると、やや褐色を帯びてきます。ヒノキ科らしい爽やかな香りも持っています。自然樹形で円錐形にまとまるので、冬はクリスマスツリーとして庭の主役におすすめ。日本の気候に合い、寒さや暑さに強く、生命力が強いので育てやすいコニファーの一つです。葉が密集して茂るので、目隠し用の生け垣としても利用できます。成長のスピードは速すぎず、遅すぎず、刈り込みにも耐えます。樹高は1.5〜3mに達するので、樹高を抑えたい時には定期的な剪定によって、スマートな樹形を維持しましょう。 ‘エレガンテシマ’ ‘エレガンテシマ’はコノテガシワの園芸品種として流通しているコニファーです。葉は全体に明るいグリーンで、新芽の時期になると葉先は黄色みがかかったグリーンに。気温が低くなると、やや褐色を帯びてきます。自然樹形は広円錐形で、葉は密に茂り、刈り込みにも耐えるので、生け垣にも利用可能です。成長スピードは速いほうで、枝が伸びすぎると樹形が乱れたり、芯が複数立ったりするので、定期的な剪定によって美しい樹形を保ちましょう。寒さが苦手で、庭に地植えできるのは東北南部以南の地域まで。また、高温多湿が苦手なため、梅雨から夏にかけては蒸れに注意し、風通しよく管理しましょう。最終樹高は8mにも達するので、大きくしたくない場合は剪定でコントロールします。 ‘ヨーロッパゴールド’ ニオイヒバの園芸品種として流通している‘ヨーロッパゴールド’。葉は黄色みを帯びた明るいグリーンで、触れると爽やかな香りが漂います。日向〜半日陰で生育しますが、日当たりのよい場所で育てたほうが、葉の発色がよくなるようです。新芽が出る頃は黄色みの強いグリーン、夏は濃いグリーン、冬はやや褐色がかるなど、季節によって表情が変わります。寒さに強く、高冷地でも地植えで育てられます。生育スピードは遅いほうで樹形が乱れにくいため、メンテナンスが楽なのも美点で、ビギナーにおすすめです。樹高は5mにも達しますが、芯を抑えて剪定すると、樹高を保つことができます。刈り込みに強く、目隠し用の生け垣として利用することも可能です。 ‘ブルーアロー’ ClaudiaMMImages/Shutterstock.com ‘ブルーアロー’は、ヒノキ科のジュニペルスの園芸品種です。青みが強いグリーンで、クールな表情を見せるコニファーです。自然樹形は、ほうき状の円錐形で、スマートな雰囲気を持っています。寒さには強い一方で、暑さにはやや弱い性質があり、蒸れに注意して風通しよく管理することがポイントです。生育スピードは速いほうで年間に20〜30㎝ほど枝が伸び、樹形が乱れたり、芯が複数本立ったりするので、定期的に剪定する必要があります。刈り込みにも耐え、目隠し用の生け垣に利用できるほか、円柱形に仕立てることも可能。原産地での最終樹形は約30mですが、日本で育てると5mくらいに達します。あまり大きくしたくない場合は、剪定によってコントロールしましょう。 ‘レッドスター’ ‘レッドスター’はヒノキ科のヌマヒノキの園芸品種で、「パープルフェザー」の別名でも流通しているようです。生育期の春から秋にかけて、葉は明るいグリーンですが、霜に当たると赤紫を帯びてくるので、季節によって葉色の変化を楽しめます。葉の先端をよく見ると、星のような形をしているのも特徴的です。生育スピードは遅いほうであまり大きくなりすぎないため、剪定のメンテナンスを抑えられるのも長所。葉を密に茂らせ、刈り込みにも耐えるため、目隠し用の生け垣にも向いています。日向〜半日陰で育ち、強い寒さにはやや弱く、生育適地は東北南部まで。高温多湿の環境も苦手で、蒸れると内部から枯れ込んでくるので、風通しよく管理しましょう。 コニファーを育てるポイント Viacheslav Lopatin/Shutterstock.com コニファーは常緑針葉樹の総称のため、多様な樹種が属し、自生地によって性質に差はありますが、育てるうえで注意すべきことはある程度共通しています。ここでは、コニファーを健やかに育てるための、5つのポイントをご紹介します。 【ポイント1】生育環境を整える Maria Evseyeva/Shutterstock.com コニファーのほとんどの樹種は、日当たりのよい場所を好みます。なかには半日陰の環境に耐えるものもありますが、特に黄色や青色などの葉色が美しい樹種では、発色をよくするには十分な日照が必要です。また、樹種に応じた土壌に整えることも大切。ニオイヒバの仲間やジュニペルスの仲間は、植え付けてしっかりと根付いた後は、割と乾燥にも耐えますが、レイランドサイプレスの仲間などは、極度の乾燥を嫌うものもあります。そして、コニファーは自生地の範囲が広いため、樹種によっては暑さに弱いもの、寒さに弱いものもあります。そのため耐寒性や耐暑性に配慮し、地域の気候に合う苗を購入し、適した環境で育てることも大切。コニファーは環境に適さないと枯れやすいため、十分な配慮が必要です。 【ポイント2】苗を選ぶ Olga Rolenko/Shutterstock.com コニファーは常緑針葉樹のため、一般家庭ではタネから育てるには困難な植物です。コニファーを育てる場合は、園芸店やホームセンターなどで苗を購入することからスタートします。同じ樹種の鉢苗がたくさん並んでいる場合は、その中からできるだけよい苗を選びましょう。じつは苗の良し悪しが、その後の成長に大きく関わるケースもあるからです。葉の一部が変色しているもの、触ってみると葉がポロポロと取れてしまうもの、枝がヒョロヒョロと伸びているもの、葉と葉の間がスカスカになっているものなどは避けて、枝が太く、株元がしっかりと充実しており、葉が瑞々しく勢いのあるものを選びましょう。お店のスタッフに選んでもらうのも得策です。 【ポイント3】土作りをする Oleg Kopyov/Shutterstock.com コニファーを鉢植えにして栽培をスタートする場合は、病害虫の発生を防ぐためにも、以前に植物を育てていた古い土を使い回しせずに、新しい培養土を用意しましょう。花苗店やホームセンターで販売されている、コニファー用や庭木用、観葉植物用などにブレンドされた培養土を利用すると、大変便利です。買い置きがあれば、新しい赤玉土や腐葉土などをブレンドして、自身でコニファー用の配合土を作ってもかまいません。地植えにする場合は、まず苗木よりも1〜2回り大きな穴をスコップで掘りましょう。掘り出した土に腐葉土や堆肥をよく混ぜ込んで植え穴に戻し、肥沃な土壌にします。水はけの悪い土壌であれば、腐葉土を多めにすき込んでおきましょう。 【ポイント4】植え付け・植え替えをする Radovan1/Shutterstock.com コニファーを鉢植えにする場合は、苗木よりも1〜2回り大きな鉢を用意しましょう。鉢底の穴に鉢底網を敷き、水はけをよくするために軽石を2〜3段分入れ込みます。その上に培養土を入れ、ポットから抜いた苗木を仮置きして高さの調整を。ウォータースペースを2〜3cm残して土を入れ込み、植え付けます。鉢の奥まで土が行き渡るように、割り箸などを使ってしっかりと詰め込んでいくとよいでしょう。植え付け後、1〜2年して鉢が窮屈になったら植え替えをします。 地植えにする場合は、植え穴を掘って土作りをしたところに植え付けます。水はけの悪い場所では、土を周囲よりもやや高めに盛って植えるとよいでしょう。複数本植える場合は、成長後の樹高を考慮して、木と木の間は十分な間隔を取っておくことが大切です。 【ポイント5】水・肥料を与える anastasiia agafonova/Shutterstock.com 鉢植え、地植えともに、植え付けた後はたっぷりと水やりします。しっかり根付いて枝葉を伸ばすようになるまでは、適湿を保って乾燥させないようにしましょう。根付いた後、鉢植えでは、表土が乾いたら鉢底から水が流れ出すまでたっぷりと水やりします。地植えの場合は、ほとんど不要ですが、夏の乾燥期など極端に雨が少ない時に、葉に元気がないようであれば水やりをして補いましょう。コニファーの中には湿気を嫌うものも少なくないので、水やりのしすぎに注意し、適湿を保つことが大切です。肥料は、鉢植えの場合は3月と6月に追肥します。緩効性化成肥料を用いると手軽です。庭植えの場合は、3月に油かすなどを含んだ有機肥料を与えるとよいでしょう。 コニファーを美しく元気に! 剪定方法 photowind/Shutterstock.com 「コニファーは自然に樹形が整い、剪定が不要でローメンテナンス」とイメージされがちです。しかし、じつのところは定期的に剪定をして、樹形をキープすることは欠かせない作業です。ここでは、コニファーの上手な剪定の仕方をご紹介します。 剪定方法 Ann Stryzhekin/Shutterstock.com コニファーは、生育スピードが速くて樹高が高くなりやすい樹種や、複数の芯を出して樹形が乱れやすい樹種があり、それぞれの特性に応じた剪定が必要です。ほとんどのコニファーは深い刈り込みに弱く、葉がない部分まで切る強剪定にすると枯れ込みやすいので、注意しましょう。最もポピュラーな円錐形のコニファーを剪定する場合、まず内側で枯れ込んでいる葉を手でしごいて落とします。次に、勢いよく長く伸びた徒長枝、下に向かって伸びる下り枝、地際から勢いよく伸びるひこばえなどは元から切り取りましょう。元から切ると樹形を崩す原因になりそうな徒長枝は、バランスのよい部分で切ります。最後に現状より1〜2回り小さい円錐形をイメージして、円錐のアウトラインからはみ出している、全体の枝を切って形を整えましょう。枝の切り方や剪定時期などによっては枯らしてしまうこともあるので、専門業者に依頼するのも一つの方法です。 剪定に適した時期 IVL/Shutterstock.com コニファーは、広葉樹に比べて萌芽性が劣る性質があります。葉がない部分の深い位置まで剪定すると、芽吹かずにそのまま枯れてしまうことが多いので、強剪定をしないためにも、1年に1度は整枝剪定をして、樹形をキープすることが大切です。コニファーの剪定の適期は、3〜4月と覚えておきましょう。これは、剪定した後に、新芽が芽吹きやすい時期だからです。コニファーは暑さに弱い性質の樹種が多く、真夏に剪定すると弱る恐れがあるため、蒸れそうだからといって軽々に剪定するのは避けましょう。一方で、寒さに弱いコニファーは、冬に剪定すると寒さに耐えられずに傷んでしまうこともあります。コニファーの剪定は、必ず適期に行いましょう。 コニファーをうまく育てて一年中緑を楽しもう! Viacheslav Lopatin/Shutterstock.com 円錐形に自然樹形がまとまるコニファーは、常緑針葉樹なので、一年中目に鮮やかなグリーンの葉を観賞できます。洋風の邸宅にマッチする樹姿も魅力で、庭におしゃれな雰囲気を醸し出してくれます。また、樹種を選べば、目隠し用や生け垣として仕立てることもできる優れものでもあります。冬にはオーナメントやリボン、イルミネーションを飾って、クリスマスツリーとして活用できるのも嬉しいところ。ここでご紹介した育て方のポイントや剪定方法を参考に、コニファーのある暮らしを楽しみましょう。 参考文献:上条祐一郎『切るナビ! 庭木の剪定がわかる本』NHK出版 (2017年第17刷)
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育て方

株分けとは? 植物を増やして元気にする栽培テクニック
株分けとは? 株分けをする2つの目的 定植から3年経ち、大きく成長したルバーブの株。横幅が1mほどになって畑を占領するので、株分けして小さくすることにしました。 株分けとは、大きく成長した宿根草の株をいくつかに分ける作業です。株分けの目的は2つあります。一つは植物を増やすこと。大きくなった株は3株、5株、10株と分けられるため、一カ所から庭のあちこちへ広げたり、友達にあげたりすることができます。もう一つの目的は、株の更新。株が大きくなりすぎると、密生して風通しが悪くなったり、成長が悪くなったりする場合があります。そんな時、株分けをすると一株が小さくなり、間がすいて再び生育がよくなります。 株分けの方法 では実際の株分けのやり方を見ていきましょう。素材は宿根草のルバーブ。茎を収穫してジャムなどにするタデ科の植物です。栽培をはじめてから3年ほど経ち、大株に育ったので株分けすることにしました。株分けの適期は春と秋ですが、今回は春のルバーブを株分けします。根っこを傷めないようにルバーブの周囲の土にぐるりとシャベルを入れた後、株元を持ってそっと掘り上げます。新芽と根っこのつながりを確認しながら切り分け、移動したいところに定植すれば完了です。誰かにあげるときは、鉢に植えるとよいでしょう。 ルバーブの根は下にまっすぐ伸びる直根性。周囲を深く耕して、根を傷つけないようにそっと掘り上げます。 一株に新芽(or 花芽)が一つはついているようにし、さらに根っことのつながりを見極めながら消毒した刃物やナイフで切り分けます。 一株を4つに切り分けました。一つを元の場所へ戻して植え付けて、たっぷり水やりを。一つは植木鉢に植え付けて、以前から欲しいと言っていた友人にあげます。残りは庭の別の場所へ。こうして、株分けで増えた株は、庭仲間にお裾分けができたり、株が耐えてしまわないように予備の株を育てることができたり。何よりも株が2倍に増えるのですから、花が2倍に増えたり、野菜類ならば、収穫量が増えたりと株分けは、いいことがいっぱい。 株分けができる植物とは? イチゴの株分け。photowind/Shutterstock.com 主に、地中に根塊をもち、地際から葉や枝を伸ばしている植物なら株分けができます。株分けができる主な植物は以下です。 【樹木】シャクナゲ、アジサイ、ブルーベリー、クチナシ、コデマリ、ユキヤナギなど 【草花】クリスマスローズ、アガパンサス、カンナ、アイビー、プリムラ、ラナンキュラス、カラー、ギボウシ、シャクヤク、シンビジウムやカトレアなどのラン類など 【野菜類】ルバーブ、イチゴ、アスパラガス、アヤメ、シバザクラ、オダマキ、ノギクなど 【観葉植物】ポトス、アジアンタム、ストレリチア、シダ類、スパティフィラムなど Sarycheva Olesia/Shutterstock.com なお、チューリップやムスカリ、スイセン、ユリ(百合)などの球根植物も植えっぱなしにしておくと、球根が増えて一見株が増えているように見えます。これは、親株となる球根の脇に1つ、2つと新しい球根ができていて、手で分けることができますが、これは「分球(ぶんきゅう)」と呼びます。 株分けのコツを覚えて、お得に増やしてガーデニングライフを充実させましょう。
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ガーデン

【三重県】しだれ梅の絶景名所「鈴鹿の森庭園」見頃やライトアップ情報を紹介
200本のしだれ梅の名木が春を告げる 三重県津市にある、赤塚植物園グループが運営するこの「鈴鹿の森庭園」は、山々に囲まれた敷地面積2万㎡の敷地に、約200本の「しだれ梅」の名木が集められ、2026年は、2月21日~3月下旬に「しだれ梅まつり」を開催。開花時期に合わせて期間限定で一般公開されます。 園内を桃色に染めるのは、八重咲き品種の「呉服枝垂(くれはしだれ)」が中心です。これらの木々は、日本全国から集められた名木ばかりで、その数は約200本。中には、高さ6mもの大木もあり、ここでしか見られない景色が楽しめます。 一般的な実梅や立ち性の花梅は、中国や日本の古い文献に登場し、「令和」の出典となった万葉集にも多くの梅の歌が残されています。 その一方で「しだれ梅」の歴史は比較的新しく、江戸時代後半になって文献に登場するようになり、種類は約42ほどが確認できます。 鈴鹿の森庭園のしだれ梅「呉服」の中でも、ひときわ存在感を放つのは“天の龍”や“地の龍”です。これらは樹齢100年以上と推定され、現在品種が確認されている中で、日本最古のものではないかといわれています。 じつは、これら「鈴鹿の森庭園」に植わるしだれ梅の名木の中には、かつて全国の個人邸などで育てられていたものもあります。しだれ梅は、たくさんの大輪の花が美しく艶やかに枝垂れる姿から、時代を問わず多くの人々に愛されている一方で、美しい形に整えるのが難しく、病気などで被害を受けてしまうこともあります。開園にあたっては、こうした日本が誇る貴重な財産であるしだれ梅を守り、その伝統的な匠の技を後世に伝えたいという想いで、関係者が所有者のもとを何度も訪れ、数年かかってようやく譲っていただいたものもあるといいます。こうした努力が実って日本中から名木が集まり、鈴鹿の森庭園が誕生しました。 日本の匠の技と歴史が受け継がれた多くの名木が、早春にいち早く桃色の大輪の花を枝いっぱいに咲かせる「枝垂れる姿」は圧巻です。 純白から桃色まで多彩な品種を愛でる また、鈴鹿の森庭園には「呉服枝垂」以外にも、多くの見どころがあります。 濃紅色の代表的な立ち性の花梅「鹿児島紅」や、梅干し・梅酒で人気の「白加賀」、1本の木に紅白の花が咲く「思いのまま」。その他にも「八重緑萼(やえりょくがく)しだれ」や「藤牡丹しだれ」、「酔心梅」など、さまざまな梅を楽しむことができます。 しだれ梅を引き立たせるように植えられている植物たちも魅力的で、白とピンクの玄海ツツジと美しい梅の花の共演は、来園者の目を楽しませてくれます。 足元に目を向けると、うつむきかげんに可憐な花を咲かせるクリスマスローズの姿も。ここでは、赤塚植物園オリジナルの品種も植えられ、早春ならではの花々のコラボレーションも見どころです。 夜空に浮かび上がるしだれ梅のライトアップ 開花期間中は、日暮れから20時半まで夜間ライトアップも行われ、立ち並ぶしだれ梅が夜の闇に浮かび上がり、日中とは全く違う幻想的な風景に変わります。光に輝く梅は、ここでしか見られない美しさ。きっと息をのむ、忘れられないひとときになることでしょう。 梅の花を十分に楽しんだら、帰りの出口には売店がありますので、梅散策のお土産はいかがですか? 店内では植物園に植えられていたクリスマスローズなどの苗や、地元の名産品、梅を使ったお菓子、草もちなどが販売されています。ぜひ、梅の季節を堪能してください。 Information 【イベント情報】 鈴鹿の森庭園「しだれ梅まつり」 2月21日~3月下旬 見頃:3月上旬 営業時間:9:00~16:00(ライトアップ期間中は20:30まで時間延長) 期間中無休 入園料金:一般:700円~2,00円(開花状況により変動します)小学生:半額 未就学児:無料 開花状況等はWebページにて:https://www.akatsuka.gr.jp/group/suzuka/ 【施設名】 鈴鹿の森庭園(すずかのもりていえん) 所在地:〒519-0315 三重県鈴鹿市山本町151-2TEL:059-371-1777(開花期間中のみみ) アクセス:東名阪自動車道 鈴鹿ICより約3km(車で約5分) 新名神 鈴鹿PAスマートICより約3km(車で約5分)
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ガーデン&ショップ

イングリッシュガーデン旅案内【英国】英ガーデン誌も注目! ガーデン好き夫妻がつくり上げた珠玉の庭「タウン・プレイス」
見事な庭をチャリティーで一般公開 今回の訪問先は、イギリス、ウェスト・サセックス州にある個人邸の「タウン・プレイス」。英国のガーデン誌も注目の庭ということで、期待が膨らみます。 入り口に到着すると、オーナーのマクグラス夫妻が出迎えてくれました。まずは、ご主人のアンソニーさんと奥様のマギーさんに、庭全体が見渡せる母屋前のテラスでご挨拶。母屋を背に立つと、遠くまで広々と芝生が広がっています。 マクグラス夫妻は1990年に、タウン・プレイスの敷地と母屋を購入しました。庭は以前から残されていた部分も多少ありますが、構造物も植栽も、ほとんどが夫妻によって新たにつくられたものです。2人はこの素晴らしい庭を、ナショナル・ガーデンズ・スキーム(NGS)や地元の慈善団体によるガーデン・オープンデーで一般公開し、募金活動に協力しています。 夫妻それぞれにクリエイティブ 幼い頃からガーデニングに親しんできたというマクグラス夫妻ですが、奥様のマギーさんはタウン・プレイスの庭づくりに着手する前に、英国王立園芸協会(RHS)や有名ガーデンデザイナーの講義を受けて、植栽やガーデンデザインについてしっかりと学んだそうです。花壇で見られる、豊かな色彩の複雑な植栽は、マギーさんの手によるものです。一方、ご主人のアンソニーさんは、独創的なトピアリーや生け垣を生み出していて、夫妻がそれぞれに創造性を発揮しています。 そんなお話を伺っていると、ガーデンカートを押すガーデナーさんが横を通り過ぎました。 「彼は、この庭を手伝ってくれていて、歳は79歳。週に3日来てくれるよ」というのですから驚きです! その他に、週に1度、女性も手伝いに来ているとのこと。約3エーカー(約1.2ヘクタール)という広いこの庭を、オーナー夫妻と合わせて4名で維持しているというので、さらに驚きました。 「シークレットガーデンがあるから、見つけてね。行ってらっしゃい!」というオーナーの言葉で、ガーデン散策がスタート。まずは、母屋の脇にバラが咲いているエリアがあるようなので、向かってみましょう。 優美なサンクン・ローズガーデン 現れたのは、心ときめくバラの回廊! つるバラの絡まるパーゴラが額縁となって、満開のバラの景色を切り取っています。このサンクン・ローズガーデン(Sunken Rose Garden)は、1920年代につくられたものを夫妻が引き継いだそうですが、バラはすべて、主にデビッド・オースチン社のイングリッシュローズに植え替えられました。パーゴラには、‘アルベルティ―ヌ’や‘チャップリンズ・ピンク’、‘アメリカン・ピラー’などのつるバラが隙間なく誘引されていて、見事です。 無数のバラが、低い緑の生け垣に縁取られて咲いています。バラは12種、150株も植わっているそう。「サンクン(沈んだ)」という通り、バラが咲く場所は、回廊より一段下がっていて、そのせいか、芳しいバラの香りが留まっているように感じます。母屋の壁にもつるバラが咲いていて、小窓を縁取っています。 何てロマンチックな演出でしょう! 庭を訪れた2019年の6月中旬は、バラがちょうど咲き始めたばかりでしたが、きっと咲きたてのバラの香りが、この窓から室内に流れ込むのでしょうね。 いつまでも見ていたい景色でしたが、他のエリアを見逃してしまうので、隣のコーナーへ向かいます。 庭にチェス盤? 小道を進むと、奥の緑を背景に、彫像が並び、ラベンダーの紫やハーブ類の茂みが彩りをプラスしている、独創的な風景が見えてきました。中央には、なにやらチェスのコマらしきものが。 建物前のテラスが、赤と白の石板を使ったチェス盤になっていました! 膝丈ほどの大きなチェスのコマが並んでいて、どうやら、本当にゲームができそうです。屋外でチェスが楽しめるガーデン! 何てユーモアのある場所なのでしょう。 果樹園と緑の彫像 チェス盤の庭から南に向かうと、果樹園があって、リンゴの実が少し膨らんでいました。下草がきれいに刈り取られ、落ち葉一枚見当たらなくて、本当によく手入れが行き届いています。春にはラッパズイセンが咲くそうで、その景色もきっと素晴らしいのでしょう。 さらに奥へ進むと、緑の塊がポコポコと、オブジェのように並ぶエリアに到着しました。サーカス(The Circus)と名付けられた庭です。やや盛り上がった地面の芝が丸く切り取られて、その中にグラス類が茂り、丸みを帯びた大きなトピアリーが立っています。これらは、ヘンリー・ムーアの彫像作品にインスピレーションを得て作られたという、セイヨウイチイの「彫像トピアリー」。ご主人のアンソニーさんの手によるものです。これまで見たことのない景色に、庭主さんのユーモアを感じました。 麗しきイングリッシュローズ・ガーデン そのお隣のエリアは、もう一つのバラの園、イングリッシュローズ・ガーデン(English Rose Garden)です。65種、450株というシュラブローズが、一斉に咲き誇っていて、嬉しくなります。ほとんどがデビッド・オースチン社のイングリッシュローズだそう。六角屋根のサマーハウスの中には、これまでの庭の変化を教えてくれる写真が展示されていました。日差しが強い時間帯だったので、涼しい室内で写真を眺めながらクールダウンができました。 ベンチの後ろのパーゴラには、‘フォールスタッフ’、‘マダム・バラフライ’、‘オフィーリア’といったバラが伝います。このガーデンも高い生け垣に囲まれていて、バラの香りが滞留するつくりになっています。 赤や白、ローズピンクに、オレンジがかったピンク。さまざまな色合いのバラに、時々顔を近づけては香りを確かめたりして、数多のバラを観賞する贅沢な時間を過ごしました。 低い生け垣に仕切られた、まっすぐな小道を辿って行くと、その先に、隣のエリアへと続くバラのアーチが見えてきました。 このタウン・プレイスのガーデンは、動線がとてもはっきりしています。一つのエリアから、気がつくと隣のエリアにうまく導かれていて、次の空間に入った瞬間に、がらりとデザインが変わる。その鮮やかな場面転換に、思わず心を躍らせていることに気がつきました。 ピンクのバラが伝うアーチの向こうに、優しいカラーのグラデーションが続くボーダーが覗きます。 紫花のロングボーダー アーチをくぐると、最初に目にした母屋前に広がる芝生を、反対側から眺める場所に出ました。左手には、宿根草のロングボーダー(長い花壇)が続きます。その長さはなんと45m! 奥様のマギーさんが担当する、緻密な植栽の花壇です。 向こうの景色を隠すほど高く壁を作っている生け垣は、以前からあったもので、夫妻は「タペストリー・ヘッジ」と呼んでいます。2つの樹木が混ざって、タペストリーのように模様を描いている、珍しい生け垣です。明るい緑の濃淡が、手前に植わる花々とよく調和していました。 ボーダーの中央付近は、生け垣がくりぬかれています。中を覗いてみると、先ほど見た果樹園のエリアに続いていました。 広い芝生の一辺に沿って伸びる、宿根草のロングボーダーです。テーマカラーである、紫とブルーの花のグループが繰り返し植えられて、リズミカルな景色をつくっています。訪れた6月中旬は、ゲラニウム、サルビア、キャットミントが主役のようでした。クナウティアや、白花のアンテミス、ジャイアント・スカビオサ、カルドンなども植わっているようですが、これから季節が進むとどんな風に変わっていくのでしょうか。 花壇沿いに歩いて、最初にオーナー夫妻とご挨拶した母屋の前に戻ってきました。母屋の前にはバードフィーダーが備えてあって、鳥たちが集まっています。野鳥とも仲良くしながら庭を維持しているんだなぁと、微笑ましく感じました。 これまで見てきたのは西のエリアで、庭散策はまだ半分。とっても広いけれど、どこも素敵な空間ばかりです。さあ、ここからは東のエリアを見ていきましょう。 静けさ漂う小さな水辺 母屋を背に立つと、芝生の左のほうに、小さな噴水のある池の景色が広がっています。ここは、すり鉢状に窪んだ、小さな谷(The dell)のエリア。池は窪んだところにあるので、上のほうから池を眺めながら、その周りに茂る木々や宿根草の彩りを一望することができます。奥に見える銅葉の樹木が引き締め役となって、緑を際立たせています。 池の周りを、さまざまな植物が囲みます。この場所は、かつては大きな池だったそうですが、夫妻の手によって、このような趣のある小さな池の庭に変身しました。 緑の回廊からハーブガーデンへ その隣にもまだまだガーデンがあるようです。この花壇は、ロングボーダーと芝生を挟んで向かい合うショートボーダー(短い花壇)。ブルーとイエローの色調ということですが、黄色の花はまだ咲いていない様子です。花壇の間の、左右に円錐形のトピアリーの鉢が飾られた通路を進んでみます。 雰囲気が変わって、紫の花が白っぽい石壁を覆い隠すように咲く景色が現れました。花によって、石の硬い印象が和らげられていて、素敵です。そして、リンゴの木が誘引された緑の回廊を行くと…… つるバラが絡むアイアンのガゼボを中心にした、ハーブガーデン(Herb Garden)がありました。芝生の道がふかふかとして気持ちいい! ここの花壇は生け垣などの縁どりがないつくりで、花茎が枝垂れていたり、風に揺れていたりして、とてもおおらかでリラックスした雰囲気。コテージガーデン・スタイルのナチュラルな庭です。ガゼボのバラは、白花の‘マダム・アルフレッド・キャリエール’。満開の姿はどんなに素晴らしいでしょう。 ハーブガーデンのナチュラルな植栽の中で、小径の脇にある古木の枝ぶりが引き立ちます。花壇には霞のように葉を広げるフェンネルなどのハーブのほか、コテージガーデンでよく見られる花々が咲いています。 そのほかにも、アストランチアやセリンセ、ゲラニウムなど、日本でも馴染みのある植物が上手に使われていて、親しみが湧きました。 驚きの緑の構造物 さて、ハーブガーデンの南側に出てみると、またまた新たな展開! 現代アートのようなシンプルな空間が広がっています。空に浮かぶ雲までもが景色の一部なんだなぁ、と気づかせてくれる眺めです。 天に向かってまっすぐ伸びるのは、‘スカイロケット’という名のジュニパー。そして、その背後にあるシデで作られた緑の壁は、この写真ではよく分からないかもしれませんが、じつはロマネスク様式の教会を模しています。右手の手前に飛び出したところは、教会に付属する「回廊」部分。ご主人のアンソニーさんは、架空の、しかも廃墟となった教会をイメージして、それを生け垣で作り上げてしまったという訳なのです。その情熱と行動力には脱帽しかありません。 続いて、敷地の南側に行ってみると、生け垣に区切られたポタジェがありました。 スイートピーのアーチや葉物野菜の畑、アスパラガスやアーティチョークが自由に葉を広げている場所など、野菜や切り花を育てている所までも、見た目にこだわってデザインされているのが伝わってきます。先ほどの緑の構造物に加え、トピアリーとポタジェもご主人の担当。ご夫婦揃って、素晴らしい美的センスをお持ちのようです。 スイートピーとサヤインゲンのアーチ。 アーティチョークとアスパラガスの緑を背景にしたベンチコーナー。2つの植物だけで、こんなにスタイリッシュな空間が演出できるなんて。 ポタジェの隣は、真ん丸の緑のボールが宙に浮かんでいるような、緑一色のエリア。瞑想するのによさそうな空間ですね。真ん丸なボールは、シデを刈り込んだトピアリーで、背後の生け垣はヨーロッパブナで作られています。 花壇や複雑な植栽は奥様、トピアリーやハーブガーデン、ポタジェはご主人と、2人で分担しながらも、アイデアを分け合って、デザインや手入れを行ってきたそうです。所々に、ちょっとユニークなエリアもあったりして、庭が本当に好きなんだなぁ、と感じるポイントがいくつもありました。 プライベートガーデンとは思えない広さと、手入れがよく行き届いた、気持ちのよいガーデンで、とても贅沢な時間を過ごしました。 そうそう。シークレットガーデンはどこにあったでしょう? 私も無事見つけることができました! が…、扉の向こうは、訪れた人だけが見られる特別な場所。ここでは秘密にしておきますね。
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イングリッシュガーデン旅案内【英国】ウィリアム・モリスが愛したケルムスコット・マナー
「モダンデザインの父」ウィリアム・モリス ツグミがイチゴをついばむ「イチゴ泥棒(Strawberry Thief)」や、2匹のウサギが描かれた「ブラザーラビット(Brother Rabbit)」。壁紙やテキスタイルに描かれるモリスのデザインは、それらが生まれてから100年以上経った今も、人々を、とりわけ、植物好きやガーデニング好きの人々を惹きつけます。 ウィリアム・モリス(1834-1896)は、アートデザインを手掛けたほか、詩や小説を書いたり、思想家としても活動したりと、多岐にわたる活躍を見せた人でした。彼の生きたヴィクトリア朝のイギリスは、産業革命によって経済が発展し、人々の暮らしが大きく変化した時代でした。工場での大量生産が主流となっていく中で、モリスは、画家のエドワード・バーン=ジョーンズや建築家のフィリップ・ウェッブらと共に、中世の美しい手仕事に再度光を当てる、アーツ・アンド・クラフツ運動を推進しました。モリスのパターンデザインや思想は後世にも大きく影響を与え、それゆえ、モリスは「モダンデザインの父」と称されています。 モリスの「地上の楽園」 ケルムスコット・マナーは、忙しく活動するモリスがロンドンの喧騒を離れて過ごした、田舎の別荘でした。1871年、モリスはオックスフォードに程近い、コッツウォルズ地方のケルムスコット村を初めて訪れ、マナーハウスとガーデンを見て喜びます。特に、高い塀に囲まれ、生け垣で仕切られた庭は、モリスが理想としていた「囲われて外界から隔てられた」庭、そのものでした。 モリスはケルムスコットを「地上の楽園」と呼んで、すぐに、ビジネスパートナーだったダンテ・ガブリエル・ロセッティと共に地所の賃貸借契約を結びます。そして、その後の四半世紀を、ロンドンに行き来しながら、この別荘で過ごしました。コッツウォルズ地方の美しい田園風景や、古くから建つ石造りの建物、近くを流れるテムズ川上流での釣り遊び、緑の木々や、庭に咲く素朴な花々。モリスはこの地の暮らしから、創作のインスピレーションをたくさん得たのでした。 さて、モリスのデザインが大好きな私にとって、彼が過ごしたこの場所を訪れることは、聖地巡礼のような期待感がありました。優れた作品が生み出された、モリスが愛したという環境はどんなものだったのか。彼は何を見て、どんな風に季節を感じていたのか。そのエッセンスを追体験できたら……。そんな想いを胸に、まずは屋敷を囲む庭を見ていくことにしました。 昔の姿を保つフロントガーデン 屋敷の東側には、フロントガーデンが広がります。建物の入り口に向かう小道の両脇には、スタンダード仕立てのバラが左右対称、等間隔に植えられ、小道を優雅に彩っています。訪れた6月中旬は、ちょうど‘エグランティーヌ’や‘コテージローズ’、‘ガートルード・ジーキル’といった、パウダーピンクやローズピンクのバラが咲き始めていました。花に近づいてみると、素晴らしい香り! 1892年にモリスがケルムスコット・プレスから出版した、自身の小説『ユートピアだより(原題:“News from Nowhere”)』の口絵には、このフロントガーデンの庭景色が描かれています。現在の庭は、こういった資料をもとに修復されたもので、バラなどは植え替えられているそうですが、口絵に描かれた100年前と変わらない庭景色が目の前に広がっていることに、驚きを感じます。 屋敷の前に立って、小道の反対側から庭の全景を見ると、奥の隅のほうにガゼボが見えます。その左手、大きなセイヨウイチイの生け垣の上には、なにやら大蛇のようなフォルムの刈り込みが。これは、ファフナーと呼ばれる、北欧神話に出てくるドラゴンを表したもので、モリスがアイスランドへの旅の中で詠んだ詩に登場する、空想上の生き物です。モリスはこのドラゴンを自ら刈り込んでいたというので、きっと、お気に入りのトピアリーだったのでしょう。トピアリーは一度、崩れてしまいましたが、ナショナル・トラストの専門家の力を借りて、再構築されました。 ガゼボの古びた屋根の様子に、長い時の流れを感じます。ちょっと歪んだラティスにも、ささやかながらバラが絡み、ガゼボ右手の茂みの地際には、紫花のゲラニウムが咲いています。植物の数を絞った、シンプルで広々とした庭は、一人の時間を心静かに楽しめる場所でした。 一度、庭の外へ出て、左手のティールーム前の芝生エリアを素通りし、その先の、モリスの時代の屋外トイレ(Three-Seater Earth Closet)に向かいます。芝生エリアの奥に見えるグッズショップに、後で必ず立ち寄らなくては! と誓いつつ、庭の見学を続けます。 カーブを描く小道の先には、三角屋根の小さな建物が。なぜか、3つの便座が横1列に並んでいる、かつての屋外トイレです。 トイレの建物の中には入れませんが、便座に座ったと仮定する位置から正面を見ると、目の前の緑が、向こうの景色を隠してくれるようになっています。なるほど、と思う、トイレ前の植栽。野イチゴが、小道を縁取るように低く茂っていて、その上に、緑や赤のスグリが実っていました。 モリス好みの草花が咲くマルベリーガーデン 屋敷の西側、旧屋外トイレの隣のエリアには、マルベリーガーデンがあります。中央に立つのは、印象的なマルベリーの古木。ごつごつとした幹は苔むしていて、風格が感じられます。マルベリーを挟んで左右に小道が2本、屋敷に向かって平行に伸びていて、歩きながら花壇の草花を眺められるようになっています。この庭も、手入れの行き届いた芝生の緑が清々しい、シンプルさの際立つデザインです。 小道の脇、低いツゲの縁取りに沿って続く花壇では、カンパニュラやゲラニウム、ポピーが、ちらほらと咲いています。モリスが好んだという、コテージガーデン風の植栽です。 モリスの娘メイ(メイは呼び名で、本名はメアリー)は、「父がペルシャのチューリップと呼んで、デザインのモチーフに何度も用いた美しい野生種のチューリップが、花壇いっぱいに咲き乱れている」と書き残しています。今も花壇にはたくさんのチューリップが植えられていて、春になると、モリスの時代さながらに咲き乱れるそうです。4月には、スネークヘッド・フリチラリアも花を咲かせ、目を引く特別な存在となります。 左側の小道では、自然なフォルムを生かして作られた木柵が、向こう側のメドウと庭とを区切っていました。これは、1921年に撮影された写真にあった木柵を再現したもの。地元で採れたセイヨウトネリコやハシバミの木が使われています。モリスは1896年に「中世の庭のように見えるよう、ジャイルズがラズベリーの枝をうまく誘引してくれた」と書き残しているため、その頃には既にこのような木柵があったと考えられています。今、ラズベリーの代わりに絡まっているのはピンクのバラ。少しいびつな木柵が、とても自然な、リラックスできる景色を生み出しています。 モリスの手紙には、バラ、タチアオイ、スカビオサ、ポピーといった、コテージガーデンでおなじみの草花や、クロッカスやスノードロップ、ビオラ、プリムローズ、チューリップといった春の花々が登場し、当時の庭にたくさんの花々があったことがうかがえます。 また、モリスの壁紙やテキスタイルのパターンデザインでは、じつに多くの植物がモチーフに使われています。バラ、チューリップ、ハニーサックル、ヒエンソウ、ラッパズイセン、アネモネ、ムギセンノウ、ギンバイカ、アイリス、ジャスミン、ポピー、オークツリー、ヤナギ、アカンサス、フリチラリア、マリゴールド、リンゴ、ブドウ、ザクロ、レモン、キク、デイジー、クロイチゴ。描かれたそれらの植物の多くは、きっとこの庭で見られるものだったのでしょう。 現在の花壇には、これらの、モリスがデザインモチーフとして用いた植物を選んで、植えてあります。また、その植栽は、深い切れ込みの入った葉の植物を使ったり、大きな花々の間を小さな花々で埋めたり、柵に灌木の枝を絡ませたりと、モリスデザインの特徴を感じさせるものになっています。 パーゴラのあるローンガーデン 屋敷の北東側にあるローンガーデン(芝生の庭)は、もともとはキッチンガーデンでしたが、今はシダやグラス類、アーティチョークの仲間やハーブ類が植えられています。素朴な印象のパーゴラは、クリの間伐材で作られたもの。パーゴラは、ブドウの木を支える伝統的な手法の一つでした。 パーゴラを覆うブドウの葉が涼しい木陰をつくり、ここにもバラが絡んでいます。あら、あんな所、こんな所にもバラが……と、いろんな場所でその姿を見つけました。モリスはバラのデザインパターンを何種類も描いていますが、彼もきっとバラを好んでいたのでしょうね。 その隣のエリアに行くと、葉を茂らせた、どっしりとした大木の周りを、ナチュラルな花々が優しく彩っています。 暮らしに寄り添う、優しい色合いの花々。100年前にも、このような花々が静かに季節を告げる、穏やかな暮らしがあったのだろうと、想像が膨らみます。 「庭を大いに楽しんでいる。ぶらぶらと、どれだけ歩いても、目障りな物は何ひとつない。すべてが美しいのだ」 モリスは、このような言葉を残しています。 屋敷内の全フロアを見学 さて、今度は屋敷の中を見ていきましょう。 この屋敷には、モリスの友人で建築家のフィリップ・ウェッブによって、特別にデザインされたしつらえがあります。また、モリスのロンドンの家にあったものも移されて、コレクションされているそうです。 屋敷はすべてのフロアを隅々まで見学することができて、そのことに感動しました。どの部屋にもモリス柄のテキスタイルが使われていて、上品なデザインの調度品が並んでいます。暮らしと芸術を一致させる、アーツ・アンド・クラフツ運動を実践するような、丁寧な暮らしをしていたのだろうなと思いました。 シノワズリの雰囲気があるノース・ホールでは、セトルと呼ばれる、背部が高く立ち上がった長椅子が目を引きます。これは、かつてモリスが暮らしたレッド・ハウス用に作られたものでしたが、ここに移されました。脇の扉には、モリスが愛用したコートが掛かっています。 長椅子の右手には、手刺繍と思われるカーテンが。この柄は、モリスの作品の中でも最も愛されている「デイジー(Daisy)」ではないかしら! モリスの妻ジェーンと娘のメイは刺繍の名手で、屋敷には彼らの手による美しい刺繍や布小物の数々が残されています。このカーテンの刺繍も彼らが施したものなのかもしれません。 こちらは、1883年作の「ケネット(Kennet)」という柄のテキスタイル。2種類の花がデザインされています。傍には、おそらく実際に使われたと思われる版木が飾ってあります。 「ケネット」のテキスタイルが美しいグリーンルーム。ケネットとは、テムズ川の支流の名前だそう。モリスはしばしば、テムズ川で釣りをして遊びましたが、その際にもきっと創作のインスピレーションを得たのでしょう。他にも、テムズ川の支流の名前を冠したデザインがあるそうです。 グリーンルームは一家の居間として使われていました。暖炉を囲んで、ゆったりと座れるパーソナルチェアが並びます。家族でくつろぐ時間には、どんな会話が交わされたのでしょうね。 脇の小部屋には、ブルー&ホワイトの絵皿コレクションがずらりと並びます。 ここに飾られているのは、ダンテ・ガブリエル・ロセッティの描いた、モリスの妻、ジェーンの絵。彼女はロセッティやラファエル前派のモデルを務めた人物で、モリスと、その仲間たちのミューズでした。 屋敷内には、モリスの友人、サー・エドワード・バーン=ジョーンズの絵画も飾られています。また、アルブレヒト・デューラーやブリューゲルといった、価値の高い美術品のコレクションも見られます。 ジェーンの寝室だったという部屋。壁紙には1887年作の「ウィロー・バウ(Willow Bough、柳の枝)」が選ばれていて、落ち着いた雰囲気を醸し出しています。 重厚なタペストリーが飾られている、タペストリールームです。この部屋は数年の間、ロセッティが寝起きし、創作を行うアトリエとして使われていました。じつは、ロセッティとジェーンは一時、特別な関係を持ち、モリスを交えた複雑な三角関係があったといわれています。ミューズを巡る、芸術家ならではの人間模様があったのでしょうか。 屋根裏部屋を探検 最上階へ続く階段は、右左の足の置き場が段違いになった、見慣れないつくりになっていました。 広々とした屋根裏部屋です。古い梁が、古風な趣を醸し出す場所だと、モリスも気に入っていました。ここは、モリスの2人の娘が過ごすための空間でしたが、その昔は、屋敷で働く農夫や羊飼いが寝起きしていたそうです。 さらに小さな階段を上がってみると… 絵に描いたような三角屋根の真下には、シンプルさを極めた部屋がありました。娘たちの寝室です。細長い空間には、幅が極端に狭いベッドが2台並べられて、モリス柄のベッドカバーがかかっています。質素で清潔感のある、ミニマリズムの暮らしのお手本のような部屋ですね。 最上階からは、敷地の外に広がるメドウや森を眺めることができます。モリスの娘たちは、朝、目覚めたら、まずこの窓から外を眺めて、野鳥の声を聴きながら、新しい一日をスタートしたのかしら、と想像しました。 ショップはモリスグッズも充実 ショップには、モリス柄を使ったオリジナルグッズがたくさん! 日本ではお目にかかれないような、可愛いデザインばかりです。中央は、モリス柄のテラコッタタイル、上は「イチゴ泥棒」をモチーフにした布製オーナメントで、ちょっとユーモラスなツグミがイチゴをくわえています。 左は、モリス柄をテラコッタにプリントしたミニバッジ。右に並ぶ、モリスやアーツ・アンド・クラフツ関連の書籍も充実しています。 モリスの死後、ケルムスコット・マナーの地所は妻ジェーンによって買い取られ、娘のメイは1939年に亡くなるまでここで暮らしました。メイは地所をオックスフォード大学に遺贈しますが、1962年、地所は大学からロンドン古物研究協会(ソサエティ・オブ・アンティクワリーズ・オブ・ロンドン)に譲られることになります。その後、協会はケルムスコット・マナーの修復作業に着手し、地所は徐々に一般公開されるようになりました。 モリスの眠る教会へ 少し足を伸ばして、モリスやジェーンが眠るセント・ジョージ教会も訪ねました。ケルムスコット・マナーから歩いて10分ほどの場所にあります。入り口に立つ樹木が、12世紀に建てられた古い教会を隠すほどに大きく育っています。 モリスとジェーンの墓は、教会を正面に見て右奥にひっそりとありました。友人のフィリップ・ウェッブがデザインしたという墓碑に、その名が刻まれています。時の流れの中で彫文字はかすれ、かろうじて読めるものになっていました。 教会の祭壇付近には、モリスのデザインした、「バード(Bird)」の柄のテキスタイルがありました。モリスが今もこの土地を守ってくれているのだろうと感じながら、祈りを捧げてきました。
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ナンテン(南天)の育て方は? 花言葉や特徴・代表的な品種をご紹介!
ナンテンはどんな花が咲くの? somsak nitimongkolchai/Shutterstock.com ナンテンは日本人にとって馴染み深い存在。晩秋から初冬にかけて真っ赤な美しい実を付け、めでたい縁起物としてお正月にも欠かせない花材です。また名前の音が「難を転ずる」に通じることから縁起木として珍重され、江戸時代になると火災除けとしても植えられるようになり、さらに魔除けとしても多くの家に植えられるようになったそうです。 ところで、実の印象が強いナンテンですが、どんな花が咲くのかご存じでしょうか? ナンテンは、古くから日本で親しまれ、栽培されてきた樹木ということもあり、意外にも手がかからず、育てやすい植物です。今回は、ナンテンの花や開花時期、花言葉、特徴や育て方などについてご紹介します。 お正月飾りにも欠かせないナンテンの赤い実。Kristi Blokhin/Shutterstock.com ナンテンの特徴 ナンテン(Nandina domestica)はメギ科の常緑低木で、中国や日本が原産です。自然界では3mほどにまで成長します。ナンテンという名前は漢名の「南天燭」または「南天竹」に由来し、日本では「南天」と呼ばれるようになりました。ナンテンが訛ってナビテンやナルテンなどと呼ばれることもあります。 ナンテンは、梅雨時から夏にかけて、黄色い花粉が目立つ小さな白い花を咲かせます。この花粉は昆虫により運ばれます。秋が深まるにつれて次第に紅葉する葉も美しく、冬になると、ナンテンの一番の特徴でもある真っ赤な実を付けます。 ナンテンの花言葉 Wako Megumi/shutterstock.com ナンテンは、白い花を咲かせた後に赤い実を付けるため、時の移りにつれて愛情が高まっているように見えるということから、「私の愛は増すばかり」というロマンチックな花言葉を持っています。じつはナンテンには、赤い実だけでなく、白い実の種類もあり、それぞれの花言葉は次の通り。 ・赤い実:幸せ・私の愛は増すばかり・よき家庭・白い実:深すぎる愛・機知に富む・募る愛 どちらも素敵な意味の花言葉を持っていますね。 ちなみにナンテンは、英語では「sacred bamboo」や「heavenly bamboo」などと呼ばれます。西洋ではナンテンに、どこか神聖なイメージがあったのでしょうか? ナンテンの開花時期や見頃 鮮やかに紅葉する葉も美しい。FMilano_Photography/Shutterstock.com ナンテンの開花時期は、6~7月頃。しかし、一般的にナンテンは、開花した花を楽しむというよりも、赤い実や紅葉期の葉色の変化を楽しむため、見頃は、紅葉が美しい10月頃や、実を付ける11~2月頃とされています。ナンテンの実は、生け花や切り花としてお正月飾りにもよく用いられているので、冬になると店頭でもよく見かけますね。 ナンテンの実や葉にはどのような特徴があるのか さて、私たちの暮らしにも馴染み深いナンテンですが、その実や葉の意外な効用をご存じでしょうか? ここでは、ナンテンの実は食べられるのか、葉や実にはどのような特徴があるのかなどについてご紹介します。 ナンテンの実は毒性があるため安易に口にすると危険 Danita Delmont/Shutterstock.com ナンテンの実は野鳥の好物で、鳥が食べている姿を見かけることもありますが、じつは微量ですが有毒成分が含まれており、人間が安易に実や葉を口にすると危険です。ナンテンの実の有毒成分は、アルカロイド系のドメスチンやナンテニンなど。大量に摂取すると知覚や運動神経の麻痺などを起こす可能性がありますので、口にしないよう注意しましょう。一方、ナンテンの葉の部分は、アルカロイドのナンジニンが含まれ、大脳や呼吸中枢の興奮、後に麻痺などを起こす可能性があります。 ナンテンの実は咳止めなどの薬としても ナンテンの実には咳止めの効果があります。ナンテニン(o-メチルドメスチシン)を多く含むナンテンの実は、「南天実」という名で、古来より鎮咳の生薬として知られていました。のどの調子が悪いときに、「南天のど飴」を口にしたことがある方も多いのではないでしょうか。ナンテンの実に含まれるナンテニンには以下のような効果があります。 【南天の実に含まれるナンテニンの効果】 ・気管平滑筋を拡張し、咳を鎮める・咳中枢の興奮を抑え、咳を鎮める・殺菌作用により、菌による気道の炎症を抑える・鎮痛作用により、のどの痛みを和らげる ナンテンの葉には殺菌や防腐効果がある 先述の通り、ナンテンの葉には、じつは殺菌や防腐効果があります。葉に含まれるアルカロイドのナンジニンは、有毒成分でもありますが、葉に含まれる量はごく微量のため、殺菌や腐食防止に効果があるのです。ナンテンの葉をお弁当などに入れると、彩りを添えるだけではなく、その殺菌や防腐効果を活用することができます。赤飯などの上にナンテンの葉を乗せることも多いのは、こんな理由もあったんですね。ただし、口にはしないように注意しましょう。 ナンテンの育て方 aykfree/Shutterstock.com ナンテンは日本でも古くから栽培されていたように、日本の気候風土に適した、栽培しやすい樹木です。育てる際の適切な栽培環境を選んでやれば、ほとんど手をかけなくても育ってくれます。ここでは、ナンテンの栽培に適した環境や、水やり、肥料、害虫対策など、ナンテンの育て方の基本をご紹介します。 ナンテンの栽培環境 ナンテンを栽培する際には、午前中の光が当たるような半日陰の場所を選ぶとよいでしょう。強い西日の当たる場所は嫌います。半日陰を好み、耐陰性もありますが、あまり日当たりが悪いと実付きが悪くなります。花は咲くのに実が付かないな、と思ったら、日当たりが悪くないかを今一度確認してみましょう。 土質は特に選びませんが、通気性や水はけがよく、適度な湿度を保つ土を好みます。 ナンテンの水やりや肥料 ナンテンを庭植えにした場合、基本的に水やりは必要ありません。夏場に何日も乾燥が続くようであれば水をやりましょう。鉢植えの場合は、表面の土が乾いたらたっぷりと水をやります。夏場は水切れに注意しましょう。 肥料はさほど必要としませんが、花付きや実付きをよくするためには、冬に鶏ふんなどの有機質肥料と、緩効性の化成肥料を混合したものを施すとよいでしょう。鉢植えの場合は、植え替え時にカリやリン酸を多めに含む肥料を用土に混ぜておきます。 ナンテンの病気と害虫 ナンテンは丈夫で育てやすい樹木で、病害虫の被害を心配する必要はほとんどありません。発症しやすい病気には、モザイク病、葉枯病、すす病などがあります。モザイク病は、葉が縮れてモザイク状になるもの、すす病は、カイガラムシにともなって発生します。 ナンテンにつく害虫としては、カイガラムシやハマキムシなどが一般的です。初夏から秋にかけてはカイガラムシが発生することがあります。ハマキムシは、成葉に発生するが被害は少ないので、あまり気にしなくてもよいでしょう。 ナンテンの実が付かない時は ナンテンを育てたら、やはり真っ赤な実を楽しみたいもの。ナンテンの実が付かないなと思ったら、次のような点を確認してみましょう。 ・日当たり 先述の通り、ナンテンは日当たりが悪いと実付きが悪くなることがあります。栽培している場所に光が十分に当たっているか確認してみましょう。 ・雨 ナンテンの花が咲く6~7月頃はちょうど梅雨時で、雨が多い時期に当たります。雨が直接当たる場所に植えてあると、花粉が流されるために受粉しにくくなり、実付きが悪くなることがあります。軒下など、直接雨の当たらない場所で管理するか、どうしても実付きをよくしたい場合は、雨の日はビニール袋を掛けるなどして雨避けするとよいでしょう。 ・剪定時期 受粉した花を剪定してしまった場合、当然ながら実は付きません。ナンテンの花が咲く6~7月頃から実が付く冬にかけては剪定を避け、実を楽しんだ後の2~3月頃に剪定すると、せっかくの花を落としてしまうことを避けられます。また、一度実を付けたナンテンの枝は、その後3年は実を付けないといわれるので、剪定を兼ねて実のなった枝は収穫してしまうのもいいですね。新梢にも花を付けないので、切り戻しをする際は、すべての枝を切り戻してしまわないようにするとよいでしょう。ただし、強剪定して小さくする場合は、長い枝を残さないようにして、すべての枝を同じように切り詰めます。 ・受粉木 ナンテンは1株でも実を付けますが、近くに異なる品種のナンテンを植えると、より実付きがよくなります。1本だけ育てているけれど実が付かないという方は、もう1本違う種類のナンテンを近くに植えてみるのもいいですね。また、花粉を媒介する昆虫が十分に生息していないために、受粉が行われず実が付かないこともあります。その場合は、殺虫剤の使用をやめて虫を呼ぶようにするのも一つの方法です。 ・生育状況 ナンテンの生育がよすぎると、かえって実付きが悪くなることがあります。生育は旺盛で花も咲くけれど実が付かないという人は、肥料を控えてみるとよいかもしれません。 ナンテンの植え付け方法と増やし方 さて、ナンテンを育てるには、苗を購入して栽培をスタートするのが一般的です。ナンテンの植え付け方法と増やし方についてご紹介します。 植え付け方法 ナンテンの植え付け適期は3~4月頃。通気性や水はけがよく、適度な湿度を保つ土に植え付けます。庭植えにする際には、事前に腐葉土などの有機物を土によく混ぜておくとよいでしょう。鉢植えの場合は、苗よりも一回り大きい鉢に、鉢底石、土、苗の順番に植え付けます。植え付けが完了したら、水をたっぷり与えましょう。鉢植えは、2~3年に1回の割合で植え替えをするとよいでしょう。 増やし方 ナンテンを増やしたいときには、次のような方法があります。 ・種まき:植物の増やし方として一般的な種まき。ナンテンの場合は、乾かすと発芽率が下がるため、晩秋にタネをとって皮をむき、すぐに播くとよいでしょう。 ・挿し木:挿し穂と呼ばれる枝を切り取り、それを土に根付かせて新しい株を作る挿し木。挿し木をする場合は、3月の中~下旬、または9月下旬頃に枝を取り、肥料分を含まない清潔な用土に挿して発根を待ちましょう。切り口に発根剤を塗ってもよいでしょう。 珍しい品種の場合は、接ぎ木をして増やしておくのも一つの方法です。 ナンテンの品種は? ナンテンといえば、赤い実を付けるものがイメージされますが、じつはいくつもの品種があります。主に縁起物として、園芸用の品種が長年にわたって改良されてきました。その結果、多くの種類が作られ、現在では30種類以上の南天が楽しまれています。ちなみに日本や中国を原産地とするナンテンは、1712年にケンペルによってヨーロッパにも紹介されています。欧米でもガーデン素材として利用されることもあり、野生化してしまった株が赤い実をたわわに実らせているのを目にすることもあります。 代表的なナンテンの品種 数多くあるナンテンの品種の中から、代表的なものについていくつかご紹介しましょう。 ・キンシナンテン(錦糸南天):一般的なナンテンに比べ、葉が糸のように細いのが特徴。成長が遅く樹高も低い。 白実のナンテンの花と果実。右/haris M/shutterstock.com ・シロナンテン(白南天):シロミ(白実)ナンテンとも。果実は熟しても赤くならず、また葉も紅葉しない。やや黄色を帯びた白色の品種。 ナンテンの矮性種。simona pavan/Shutterstock.com ・オタフクナンテン(お多福南天):樹高が低くグラウンドカバーに利用されることが多い。矮性のナンテンはほとんど花や実は付かないが、四季によって紅葉する葉が特徴。とても丈夫で枯れにくい。 ・イカダナンテン(筏南天):葉柄が組み合わさって、筏(いかだ)のように見える。 ・オリヅルナンテン(折鶴南天):通常の南天よりも真っ赤に紅葉する。柄が曲がったり、葉がよれたりする珍しい品種。葉が密集し、まるで折り鶴のように見えるため、折鶴南天と名付けられた。 ・フジナンテン(藤南天):黄色の実を付ける品種で、実が熟れると薄紫色になる。 縁起がよくて育てやすいナンテンは初心者にもおすすめ! Flavio Gallozzi/Shutterstock.com ナンテンは昔からある庭木で、食用にこそなりませんが、縁起がよい木といわれたり、魔除けになったりと、とても有益な植物とされてきました。また、咳止めや殺菌効果も持ち、のど飴などに利用されています。日本の気候風土にも合っているため育てやすく、ガーデニング初心者にもおすすめです。鉢植えでも栽培することができるので、一株育てていると、お正月の飾りにも使えて便利ですね。 今回ご紹介したナンテン以外にも、育てやすくて魅力的な花木はたくさんあります。これからも、ガーデニングについての情報を、ぜひ「Garden Story」でチェックしてみてくださいね。 参考:「常磐薬品 南天のど飴」https://nodoame.jp/index.htm「みんなの趣味の園芸」https://www.shuminoengei.jp『園芸Q&A 庭木・花木・果樹 346のトラブル解決法』(妻鹿加年雄・重田利夫著、家の光協会刊)





















