スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。「ガーデンストーリー」書籍第1弾12刷り重版好評『植物と暮らす12カ月の楽しみ方』、書籍第2弾4刷り重版『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(2冊ともに発行/KADOKAWA)発売中!
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スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。「ガーデンストーリー」書籍第1弾12刷り重版好評『植物と暮らす12カ月の楽しみ方』、書籍第2弾4刷り重版『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(2冊ともに発行/KADOKAWA)発売中!
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ガーデン&ショップ

イングリッシュガーデン旅案内【英国】「グレイブタイ・マナー」〈前編〉イギリスのガーデニングを変えたウィリアム・ロビンソンの庭
歴史的価値を持つガーデン 16世紀後半のエリザベス朝時代に建てられたグレイブタイ・マナーは、ロンドンから南に50kmほど、ウェストサセックス州イースト・グリンステッドの近くにあります。19世紀、ヴィクトリア朝時代のガーデナーで園芸著述家のウィリアム・ロビンソン(William Robinson 1838–1935)が所有し、暮らしたことで、イギリス園芸史に残る文化遺産となりました。 現在、グレイブタイ・マナーは、美しい庭と田園風景の中でくつろぐことのできる、高級カントリーサイドホテル、そして、ミシュランガイドの一つ星を獲得したレストランとして知られています。屋敷の周りに広がる35エーカー(約14万㎡)のガーデンは、宿泊かレストランのゲストのみ見学ができます。現在見られる庭は近年の修復作業によって生まれたものですが、そこにはロビンソンの精神が息づいています。 「ワイルドガーデナー」ウィリアム・ロビンソン ウィリアム・ロビンソンは1838年、ジャガイモ飢饉の貧しさにあえぐアイルランドに生まれました。幼い頃から庭師見習いとして働き、23歳でロンドンに移ると、リージェンツ・パークの植物園で経験を積みます。 彼がロンドンで働き始めた19世紀中頃、ヴィクトリア朝中期のイギリスは、産業革命による豊かさの絶頂にありました。当時の園芸は、最新技術で建てられたガラスの温室で、プラントハンターが集めてきた熱帯の植物を育てたり、外来種の一年草を使って整形式花壇を作ったりするのが主流でした。非常にお金のかかった、贅沢な園芸が人気だったのです。 ロビンソンは次第に、そのような人為的で、自然を支配するような栽培や植栽の在り方に疑問を持ち、森や草原などの自然の美を生かした庭づくりを考えるようになります。 1866年、彼は29歳で有名なリンネ協会の特別会員に選ばれ、その後、雑誌や新聞に園芸記事を寄稿する著述家として仕事を始め、独立します。そして、1870年、代表作となる “The Wild Garden” を発表し、イギリスの森の外れや草原に、寒さに耐えられる野生種の外来種を植えて帰化させ、外来種と在来種を合わせた「自然で」手のかからない景色をつくることを提言しました。花々で幾何学模様を描く整形式庭園がもてはやされていた当時、その流れに真っ向から対抗する新しい庭づくりを示したのです。ロビンソンはその後も植物の最新情報を書き加え、改訂を繰り返しました。大反響を呼んだこの本は、今も読み継がれる、園芸本のベストセラーとなっています。 同時代を生きた友 ガートルード・ジーキル ロビンソンは翌年から、園芸週刊誌 “The Garden” を編集者として立ち上げ、ワイルドガーデンの考え方を一層広めていきます。週刊誌の寄稿者には、友人の女性ガーデンデザイナー、ガートルード・ジーキル(Gertrude Jekyll 1843-1932)もいました。 ジーキルは、昔ながらのコテージガーデンのスタイルを、鮮やかな色彩の植栽に発展させて、富裕層のガーデンシーンに大きな変化をもたらした人物です。2人はコテージガーデン風の自然な植栽というデザインの信条を分かち合い、長年にわたって友人関係を続けました。1883年にロビンソンが発表した著書 “The English Flower Garden” には、ジーキルによる寄稿記事が含まれていますし、また、このグレイブタイ・マナーの庭づくりにもジーキルが協力したといわれます。 早春の森のスノードロップに始まり、公園や草原に咲き広がるクロッカスやラッパズイセン、木立の中のブルーベル、そして、メドウの花々。イギリス各地で季節の移ろいを告げる、英国人にお馴染みの「自然な」花景色は、ロビンソンのワイルドガーデンの考え方から生まれたものといえます。ロビンソンは、宿根草を使った植栽スタイルやミックスボーダー(混植花壇)を広め、高山植物を使ったロックガーデンも提案しています。一方のジーキルは、さまざまな花が色彩豊かに咲く、ナチュラルな植栽スタイルを生み出しました。現在あるイングリッシュガーデンの姿は、ロビンソンとジーキルの2人によって、大きく形作られたと考えられています。 ガートルード・ジーキルについてはこちらの記事もご覧ください。 ●ジーキル女史のデザインがよみがえった「マナーハウス、アプトン・グレイ村」 ●現在のイングリッシュガーデンのイメージを作った庭「ヘスタークーム」【世界のガーデンを探る19】 理想の景色を求めた実験の日々 文筆業の成功で財を成したロビンソンは、1884年にグレイブタイ・マナーの屋敷と庭園、そして、周辺の土地を購入し、翌年から庭をつくり始めます。そして、亡くなるまでの約50年間をここで暮らし、自らの考えを実践する場として、理想とする景色を求めてガーデニングの実験を続けました。新しい外来植物がイギリスのどんな環境に合うのか、どんな植物同士を合わせるとよいのか、彼は実験の結果を著書や園芸誌で伝え続けました。 ロビンソンは周辺の牧草地や雑木林を徐々に買い増し、最終的には1,000エーカー(約4㎢)の土地を所有しました。森を守ることは人間にとって大切なことと考え、北米やインド、中国を原産とする、さまざまな広葉樹や針葉樹を植えて、新たに森をつくっています。そして、その森のはずれや、森の中の空き地、メドウ(牧草地)や湖の周りには、自らの考え通りに、耐寒性のある外来種の球根花や植物を植えて帰化させ、在来種とともに、自然で美しい景色をつくることを試みました。 ハシバミやクリの雑木林では、日本の白いシュウメイギクをはじめ、ユリ、ハアザミ、パンパスグラスを大きな茂みに育て、その下に、ブルーベルやシクラメンのカーペットをつくりました。屋敷近くの湖の周りに、イベリア半島原産の小型のスイセンを10万球も植えたり、北米原産のシロバナマンサクや、ナツツバキ、ヌマミズキなど、姿の美しい樹木や灌木を森に加えたりもしました。 ロビンソンは、剪定ばさみやホースといった新しい園芸用品も一般に広めました。70歳の頃、彼は怪我で背中を傷め車いすの生活になりますが、車いすを押してもらいながら庭を見て回ったといいます。現代のガーデニングに多大な影響を与えたロビンソンは、1935年に96歳でその生涯を閉じました。 美しさを取り戻した現在の庭 ロビンソンには後継者がいなかったため、全ての財産は営林に役立ててほしいと、国の林業委員会(フォレストリー・コミッション)に遺贈されました。屋敷や土地の管理のために慈善団体が設立されますが、しかし、その後まもなくして第二次世界大戦が始まり、屋敷はカナダ軍の駐留のため接収されます。この時、兵士が花壇を野菜作りのために掘り起こしてしまったので、ロビンソンの残したものは残念ながら、すべて失われてしまいました。 現在、ロビンソンの残した広大な森や牧草地は、ウィリアム・ロビンソン・グレイブタイ・チャリティという慈善団体によって管理されています。敷地の中心にある屋敷と屋敷周りの35エーカーのガーデンは、1958年にピーター・ハーバートに貸し出されて、ホテルとレストランの経営が始められました。ハーバートは2004年に引退するまでの約50年間で、グレイブタイ・マナーを、美しい田舎で最高級のサービスを受けられるカントリーサイドホテルの先駆けとして成功させましたが、彼の引退によってグレイブタイは衰退してしまいます。 しかし、2010年、現オーナーのホスキング夫妻に経営が移ったことで、大規模な改修も行われて、この場所はかつての輝きを取り戻しました。現在のヘッドガーデナー、トム・カワードは、名園グレート・ディクスターで腕を磨いた人物。「ロビンソンにも満足してもらえるような」ダイナミックで実験的なガーデニングを行い、庭をますます美しい姿に変えています。 *『グレイブタイ・マナー』後編で、ガーデン散策の様子をお伝えします。
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野菜

ビギナー向け! この夏にミニトマトを自分の手で育ててみよう!
トマトとミニトマトについて トマトは、ナス科ナス属の果菜類で、原産地は南米アンデスの高地。3〜4月にタネを播き、5月〜6月上旬頃に苗を植え付けて、6月下旬〜9月中旬に収穫、その後は枯死する一年草です。トマトの種まきには加温設備が必要なので、家庭菜園でトマトの栽培を楽しむ場合は、4月下旬頃から出回り始める苗を購入して、植え付けから始めるのが一般的。草丈は、放任すれば人の背丈を越えてぐんぐん伸びます。 トマトは、サイズによって大玉トマト、中玉トマト、ミニトマトに分類されています。今回スポットを当てるミニトマトは、果実の重みが20〜30gくらいで、栽培しやすく収穫量が多いのが特徴です。 トマトは、南米アンデス地方で古代から食用されていましたが、ヨーロッパを経て日本に伝えられたのは、江戸時代。最初は真っ赤な色や青臭い味が好まれず、「赤茄子」と呼ばれて観賞用として栽培されていたようです。一般に食べられるようになったのは明治後期以降で、日本人の嗜好に合った品種が開発された昭和以降から急速に普及しました。 今日では、人気の夏野菜として需要が高いことから品種改良が進み、糖度の高いトマトや料理に向くトマト、黄色やオレンジのトマトなど、さまざまな種類が出回っています。 トマトとミニトマトに適した環境 南米のペルーやエクアドル近辺が原産地のトマトは、標高3,000m級の高原地帯がふるさと。比較的雨の少ない地域で、日当たりがよく、昼夜の温度差が大きい環境を好みます。したがって、日本の高温多湿の気候、それも夜に気温が下がらず熱帯夜が続く夏が、トマトにとっては過酷な環境なんです! そのせいか「トマトの栽培は難しい」と、家庭菜園の世界ではささやかれがち。そこで、ビギナーさんにおすすめなのが、ミニトマトにターゲットを絞ることです。ミニトマトなら収穫量も豊富なうえに、摘芯や摘果、雨除けなどの栽培テクニックにあまりこだわらず、放任してもよく実ってくれますよ! マンションでもミニトマトは栽培できる! ミニトマトの育て方 ここからは、ビギナーさんに向けて「ミニトマトの鉢栽培」にターゲットを絞った、育て方の実践編です。準備するものから、鉢への植え付け、日頃の管理など、ビギナーさんでもすぐに取りかかれるように、詳しく解説していきます。 準備するもの 【大鉢】 10号鉢(直径約30㎝)に1株を目安に、大型の鉢を用意します。ミニトマト自体は小さく、購入時の苗もまだ小さいので、ビギナーの方なら「小さい鉢でもいいかな」とイメージしがちでしょう。しかし、すぐにミニトマトはぐんぐん茎葉を伸ばして、人の背丈ほどにまで成長します。ベランダやテラスなどでの鉢栽培では、たっぷり土が入る大鉢を用意するのが成功の秘訣です。 【鉢底ネットと鉢底石】 鉢底ネットは、鉢穴から土が流れ出すのを防ぐとともに、病害虫の侵入も防ぎます。 鉢底石は、水はけをよくするために鉢底に敷きます。 【培養土】 市販の果菜類用の培養土を使うと便利です。トマトに向いている培養土か、必ずパッケージの記載を確認してから購入しましょう。なぜなら野菜によっては、土壌酸度の適正値が異なるためです。トマトに適した配合の土を選んでください。 【ミニトマトの苗】 ヒョロヒョロと間延びしておらず、節間がしまってがっちりとした、勢いのある苗を選びましょう。値段は高めになりますが、接木苗(野生の台木に品種を接木している苗)を選ぶと、病気に強いので、より管理が楽になります。 【支柱とひも】 ミニトマトは人の背丈ほどにまで成長し、たくさんの実をつけるので、倒伏を防ぐために支柱とひもは必須アイテムです。長さ約2mの支柱を3本用意し、誘引するためのひもも準備しておきましょう。ひもの代わりに園芸用のビニタイを購入しておくと、より使いやすくて便利です。 植え付け 大鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、底が隠れる程度に鉢底石を入れます。 市販の果菜類用の培養土を入れます。鉢縁から2〜3cm下くらいまでを目安に、水やりの際に水があふれ出さないよう、ウォータースペースを取っておきましょう。 鉢の中央に、苗の大きさに合わせた植え穴をあけます。ポットからトマト苗を取り出して、根鉢を崩さないように植え付けましょう。根元に土を寄せて、ぐらつかないようにしっかり押さえておきます。 鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと水やりをします。 3本の支柱を鉢縁に立て、奥まで深く差し込みます。差し込みが浅いと倒れやすくなるので注意。3本の支柱の上部をまとめ、ひもでとめて固定します。 トマトの苗の主枝を支柱に誘引し、ひも、またはビニタイでとめて固定します。 日々の手入れ 【置き場所】 日当たりがよく、風通しのよい場所で育成します。ベランダやテラスなど、コンクリート状のフロアで管理する場合は、床からの熱を遮断するために、脚をかませておくか、ウッドパネルなどを敷いて対策しましょう。実がつき始めたら、雨が当たらない軒先やベランダなどへ移動するとベター。 【水やり】 表土が乾いたら、株全体にかけずに株元の土を狙って鉢底から水が流れ出すまでたっぷりと与えます。一番花が果実をつける頃までは、水やりを控えめに管理しましょう。梅雨明け後、真夏の高温期は乾燥しやすいので、朝夕2回の水やりを行いましょう。真昼に与えると、すぐに太陽熱によって温度が上がり、お湯のように熱くなってトマトが弱るので、涼しい時間帯に与えることがポイントです。 【誘引】 茎葉が順調に伸びてきたら、随時支柱に茎を誘引して、ひも、またはビニタイでとめて、倒伏を防ぎます。ひもをかける位置は、花の下ではなく、葉の下を目安に。主枝が折れないように、無理せずに螺旋状にとめていきます。 【肥料】 一番果が膨らみ始めたら、大さじ3杯くらいの化成肥料(N-P-K=8-8-8)を表土にまいて、土になじませます。以降は2〜3週間に1度を目安に、追肥しましょう。あまり肥料を多く与えすぎると、茎葉ばかりが茂って実がつかない「つるボケ」の状態になってしまいます。株の状態を見て、与えすぎには注意しましょう。 【仕立て方】 脇芽が葉のつけ根から出てきたら、茂りすぎて日当たりが悪くなるため摘み取ります。脇芽が出たらすべて取り、主枝の1本のみを残す、1本仕立てにしましょう。ミニトマトは樹勢が強いため、主枝と第1果房のすぐ下の脇芽を伸ばして、2本仕立てにしてもかまいません。草丈が支柱の高さを越えて、持て余すようようになったら、主枝の先端を切り取って、それ以上伸びないようにします。 【一番花を実らせる】 トマトは、一番花に確実に実をつけさせることがポイント。一番花に実がつかないと、茎葉ばかりが茂る「つるボケ」の状態になってしまうからです。しかし、一番花が咲く頃は気温も低く、天候が悪いと虫が活動しなくて受粉できないこともあります。そこで、「トマトトーン」などのホルモン剤を吹きつけて、確実に実らせるのがおすすめ。すると、樹勢が安定して第2花房以降も安定して結実します。 ちなみに大玉トマトの場合は、1花房に6個以上の実がついた時は、4〜5個のみ残して他は摘果し、一つひとつの果実を充実させる必要がありますが、ミニトマトは摘果の必要はありません。 【害虫の予防】 トマトの生育期は、病害虫が発生しやすい時期です。早期に発見して捕殺しましょう。適応の薬剤を散布して防除すると万全ですが、「せっかくの家庭栽培だから薬剤を使いたくない」という場合には、木酢液やニームなど、自然由来の害虫除けけを利用するのも一案です。 【雨除け】 トマトの果実は、雨に当たると実が割れてしまったり、病気にかかりやすくなったりします。果実がつき始めたら、軒下やベランダなど、日当たりがよく雨の当たらない場所へ移動しましょう。そのような場所がない場合は、支柱とビニールがセットになった被覆資材のキットを設置すると便利です。 【収穫】 実が赤くなって熟した順に、朝のうちに収穫していきます。ミニトマトは約3カ月間、収穫を楽しめます。 害虫の対処方法 トマトの大敵は、オオタバコガやタバコガ。青い実のヘタ近くに4〜5mmの丸い穴があき、周りに糞がついていたら、オオタバコガやタバコガの幼虫がいることを疑いましょう。茎の中に入って食害し、茎の先端のほうが枯れ込んでくることもあります。幼虫は緑色をしたイモムシで、大きくなると4〜5cmにもなって、旺盛に活動するので注意。異変があった時は株周りをじっくり観察し、見つけ次第捕殺しましょう。被害にあった果実は摘み取って処分します。薬剤で駆除しようとしても、果実や茎の内部に入り込んでいるとあまり効果がないので、6月頃のまだ小さいうちに発見して対処することが大切です。 ミニトマト栽培の注意点 トマトの中でも比較的育てやすいミニトマトは、ぜひビギナーさんにチャレンジしていただきたい野菜の一つです。しかし、じつのところビギナーさんにハマってほしくない「ミニトマト栽培の罠」があります。これからご紹介する栽培の注意点について、知っているのと知らないのとでは大違い。健やかに育てて、収穫の喜びを味わいましょう。 プランターの深さが足りない 4月下旬頃から花苗店やホームセンターに出回り始めるミニトマトの苗は、まだ大変幼い状態です。トマトが生育している姿を見たことがないビギナーさんは「これより1〜2回り大きな鉢を準備すればいいのかな」とイメージしがちでしょう。でも、それが失敗の原因に。ミニトマトであっても、草丈は人の背丈以上になるんです。その地上部を支えるためには、十分に根が張れる土の量が必要になります。少なくとも深さ30cmはある10号以上の鉢や、大型プランターを準備して植え付けましょう。背丈が大きくなるのはもちろん、茎葉を大きく広げて株幅も40〜60cmになるので、ベランダやテラスなどで育てる場合は、置き場所を確保できるかも検討しておいたほうがよさそうです。とにかく、実際に育て始めてから「こんなに大きくなるの!?」とビックリしないように、サイズ感をイメージしておいてくださいね。 水を与えすぎている トマトの原産地は、南米アンデス地方の高原地帯です。年間を通して日照量が多く、比較的雨の少ない気候の下で生育してきたトマトは、乾燥した気候には大変強い性質をもっています。したがって、トマトの栽培では、適切な水の管理がポイントに。水を与えすぎると、根腐れを起こしたり、甘みが落ちたりするほか、実が水分を含みすぎて膨張し、割れてしまう原因にもなってしまいます。 トマトの栽培に限らずですが、毎日の習慣として水やりをするのはNGです。動物のように毎日決まった時間に食事を欲しがるのとは違い、植物は土の状態に合わせて水やりをする必要があります。晴れた日もあれば、雨の続く日もあり、毎日土が乾くわけではないのです。常にジメジメした状態が続くと健康に育たなくなってしまうので、土の状態を見て、乾いていたら、鉢底から流れ出すまでたっぷりと与えることがポイント。また、トマトの茎葉がだらんと下がっていたら、水を欲しがっている証拠です。ただちに水やりをしましょう。植物が発するメッセージが分かるようになると、愛情もより増していきますよ! 脇芽かきをしていない トマトを栽培していると、主枝とは別に葉の茎の根元から、脇芽が出てきます。この脇芽が出たら、小さいうちに摘み取っておくことが大切なポイントです。脇芽を放置しておくと、茎葉の量が増えて日当たりや風通しが悪くなるうえに、茎葉が多くなるだけ養分が分散されて、実つきが悪くなってしまうのです。脇芽は収穫まで頻繁につくので、こまめにチェックしましょう。 脇芽を見つけたら、晴れた日の午前中に手で摘み取ります。これは、ウイルス病が入らないように傷口を早く乾燥させるためで、同じくウイルスの伝染を防ぐためにも、剪定バサミよりは手で摘み取るのがおすすめです。 大玉トマトにも挑戦してみよう! この記事では、ミニトマトの栽培について、さまざまな角度から解説してきました。ビギナーさんでも、きっとたくさんのミニトマトを収穫できるはずです。この成功体験は、次のステップに進むきっかけとなることでしょう。栽培難度は上がりますが、次は中玉トマトや大玉トマトなど、食べ応えのあるトマトの栽培にきっとチャレンジしたくなるはず。いずれも基本的な栽培方法は同じですから、さまざまなトマトを育てて、味比べを楽しんではいかがでしょう。 Halfpoint/shutterstock.com ミニトマト・トマト栽培についてよくある質問 ミニトマトが成らなくなってきました。このままにしておけば、来年も収穫できますか? 秋が近づくと、夏の間元気に実ってくれていたミニトマトもそろそろ終わりになる時期に。ミニトマトは日本では一年草なので、そのままにしておいても残念ながら翌年は芽を出しません。株が弱り、収穫できなくなってきたら根から抜いて片付けます。ミニトマトを片付けるとスペースがあくので、冬に楽しむ秋植えの野菜や花を植えるのもよいですね。あまり広い場所が取れない家庭菜園では、効率よくスペースを使うためにも、終わってしまった株は抜いて、土を休ませてやりましょう。枯れた株がないので、見た目もすっきりしますよ。 鉢植えのミニトマトがたくさんできたのですが、皮がかたくて生ではあまり美味しくありません。何か良いレシピはありませんか? 野菜の中でもミニトマトは育てやすく人気です。品種もたくさん出ており、色とりどりのミニトマトがガーデニングで楽しめるようになりました。丹精込めて育てたのだから美味しくいただきたいですよね。皮が固いトマトは、湯むきして使う方法もありますが、お湯を沸かすのが面倒な時はそのまま冷凍します。凍ったトマトを水で洗えばスルっと皮がむけ、そのままサラダに添えれば、ひんやり新しい食感が楽しめます。また練乳をかけると、お子さんにも人気のデザートに。たくさん収穫できた時は、セミドライトマトにするのもオススメです。ミニトマトを半分に切り、切り口を上にして塩をかけ並べます。そのまま天日干しするか、130℃のオーブンで1時間程焼成。トマトの水分が飛んでしぼんでいたら完成です。そのまま食べても濃厚な旨味が楽しめますが、パスタの具材としてやオリーブオイルに漬けて調味料として、色々な料理で楽しみことができます。庭の収穫を存分に楽しんでください! 今年、初めてトマトを育てましたが、たくさん実が割れてしまいました。どうしてですか? キッチンガーデンでの最大の醍醐味は、やはり収穫です。せっかくなら、健康で生き生きとした野菜を収穫したいですよね。しかし、トマトのひび割れは、農家の方でも起こってしまう症状。この実が割れることを「裂果(れっか)」といいます。乾燥している時に、大雨などが降り、一気に水分を吸い上げたトマト。それに伴い、実もあっという間に大きく育てばいいのですが、皮はそのスピードに付いていくことができず、ひび割れが起きてしまうことがあるのです。実を甘く育てるために、水分を少なくし乾燥気味に育てる方法もありますが、極度に乾燥させすぎたりすると裂果が起きやすくなるので要注意です。予防対策は、雨除けをすること。プランター栽培の場合は、直接雨の当たらない場所で育てて、極度の乾燥や過湿を防ぐのもいいでしょう。ちなみに、裂果したトマトも、もちろん食べることができますので、ご心配なく! 家庭菜園でトマトを育てています。甘くするにはどうしたら良いでしょうか? 太陽の光をたっぷり浴び、ガーデンで育ったトマトはとても美味しいもの。そんな家庭菜園のトマトを、さらに甘く濃厚な味にするコツが水分です。水分を多く与えられたトマトは、成長が早い反面やや味が薄くなってしまう傾向にあります。トマトを育てる時には、水を控えめにしてゆっくり成長させることで味が濃く甘いトマトを楽しむことができます。完熟するまでしっかり育ててから収穫するのもポイントです。実が柔らかく、濃厚で甘いトマトを楽しめます。また、実の表面がひび割れてしまう「裂果」という現象は、水分を一気に吸収するとなりやすいので、水分を控えめに一定量与えることでこれを防ぐという効果もあります。 併せて読みたい
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家庭菜園

小さな庭で収穫たっぷり! デッキ一体型家庭菜園
ビフォーは、雑草が繁茂していた庭 庭づくりをする前は、軽自動車2台分のスペースに雑草が繁茂していました。このままでは雑然とした雰囲気ですし、ヤブ蚊も発生してしまいます。このような雑草だらけの庭をどうにかしたいと思っている方は非常に多く、その手段としてコンクリートで覆ってしまうケースがよくあります。でもその前に、別の案を探ってみることを強くおすすめします。 庭をコンクリートで覆ってしまわないで! コンクリートで覆われた地面は、日射を受け赤外放射という熱を発します。頭上からの日射に足元からの赤外放射が加わると、外気温が30℃でも体感温度は40℃にも上がってしまいます。コンクリートで覆われた面積が広ければ広いほど、この赤外放射の熱量は増し、室内の冷房効率も著しく低下します。 一方、地面が緑で覆われている場合、その表面温度はコンクリートと比較し10℃も低くなることが環境省から発表されています。 ●庭づくりは暑さ対策にも効果絶大! 10℃も差が出る緑の実力 アフターは駐車もできて、家庭菜園も芝生もある庭に! この庭の依頼を受けたのは、造園家の阿部容子さんが在籍する「かたくり工房」。公園や病院、マンションの庭、ショーガーデンなどを手がける一方で、個人邸の庭づくりを大事にしています。 施工にあたっては、庭の手前に駐車スペースを確保し、フェンスを仕切りにして奥をガーデンにしました。駐車スペースは全体をコンクリートで覆ってしまうと、前述のように高温になりすぎるので、芝生を張ってタイヤが通る部分だけを石張りに。タイヤが通る部分は踏圧で植物が育たないので、最初から石張りにしたほうが芝生の張り替えなどの手間も省けて効率的です。 スリッパのまま行き来ができるデッキ一体型菜園 フェンスの奥が、芝生とデッキ、菜園が揃ったプライベートエリアです。デッキと菜園は一体型になっていて、地面レベルがほぼ同じ高さです。リビングからスリッパのままデッキへ出て、菜園で野菜を収穫し、そのまま室内に戻るということが可能です。施工当時、まだお子さんが小さかったことから、できるだけ菜園を生活空間に近づけて、靴を脱いだり履いたりする手間も省けるようにしました。 隣家との境には、リンゴの木とジューンベリーを植栽してあります。ジューンベリーは春の白い花、初夏の赤黒い果実、秋には美しい紅葉と、楽しみの多い果樹です。果実は生で食べても甘酸っぱく美味しくいただけますし、ジャムなどにして保存することもできます。ジューンベリーを角地に植栽し、その両サイドにリンゴをエスパリエ仕立てにしました。エスパリエ仕立てとは、枝を水平に伸ばす果樹の仕立て方の一つです。枝をそのまま自然樹形で仕立てると、その下にある菜園が日陰になってしまいますが、エスパリエ仕立てなら陰を作ることなく省スペースで果樹栽培が可能なので、小さな庭づくりにはおすすめの仕立て方です。菜園は深さがあるので、ジャガイモやダイコンなどの根菜類も育てられます。 家族がゆったり集えるオリジナル「デッキ in テーブル」 デッキは家族が庭を眺めながらゆっくり過ごせるアウトドアリビングとして活躍します。デッキチェアが2脚置けますが、テーブルセットも置くと菜園までの動線の邪魔になるので、使う時だけ引き出して使える「デッキ in テーブル」を制作しました。使用しない場合は、デッキの中にしまえる仕掛けになっています。この写真は、このデッキを制作したのは「かたくり工房」スタッフで、テーブルは4人で囲めるくらいの大きさです。また、庭へ降りる際のステップは、上り下りしやすい段差であることはもちろん、奥行きも吟味。ステップに腰を下ろしてリラックスできるよう、十分な奥行きが取られています。 防犯対策にもなるメロディーフェンス フェンスは格子状のデザインとし、庭への風通しや日照が確保できるようにしました。このフェンス、じつは音が鳴るのです。間に長さの異なる鉄筋が入っており、バチで叩くとメロディーが奏でられる楽しい仕掛けがあります。お子さんやその友人たちにも大人気です。 中央の白い大きなコンテナは、ライトが灯るライティングコンテナ。夜になると公道に面した駐車場側は明るく照らし出され、庭側は暗くなるので、プライベートエリアを守ることができます。このように、完全に壁などで覆ってしまわないほうが、防犯対策には有効です。 庭は五感刺激の宝庫 デッキを下りたエリアは芝生にしました。立水栓の周囲を玉砂利でデザインし、タイムも植栽してあります。玉砂利の上を裸足で歩くと足裏が刺激され、タイムの香りも立ち上ります。タイムは料理にも使えるハーブですし、五感への刺激は豊かな感性を養うきっかけにもなります。 立水栓の位置は意外と大事。庭の真ん中にあったほうが水まきの際にホースさばきが楽です。地植えの植物には基本的に水やりはいらないのですが、近年のような猛暑が続く場合には、菜園にも芝生にも水やりをしたほうがいいでしょう。特に、ナスは水が不足すると硬くて食べられません。葉っぱがくたっとなるような場合には、水やりが必要です。 このように、小さな庭こそプロの知恵と技術を借りましょう。最初にいいデザインをしてもらうことで、その後のガーデニングの楽しみや暮らし方が大きく違ってきます。「こんな小さなスペースをお願いしていいのかしら」「ガーデンデザイナーに依頼するなんて敷居が高い」と思われている方が少なくありませんが、そんなことはありません。気軽に相談して、充実したガーデンライフを叶えてくださいね。
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ガーデン

イングリッシュガーデン旅案内【英国】イギリスガーデン界の巨匠、故クリストファー・ロイドの自邸「グレート・ディクスター・ハウス&ガーデンズ」後編
時代を先駆けたガーデナー クリストファー・ロイドは、1950年代から生家のグレート・ディクスターを実験場にして、新しいガーデニングに挑戦し続けた園芸家でした。そして、ミックスボーダー(混植花壇)やメドウガーデンなど、自らが体験から得た新しい考え方を、英米の有名ガーデン誌や新聞、著書で伝え、プロやアマチュアのガーデナーたちに刺激を与え続けました。 グレート・ディクスターはクリストファーにとって、ガーデナー仲間との意見交流の場でもありました。彼は、園芸家ベス・チャトーなどの友人を招いて、菜園で収穫した野菜を使った手料理をふるまいつつ、園芸談議を楽しみました。英国園芸界で活躍する人々が集まるこの庭は、ガーデニングの新しい潮流が生まれる場所だったのです。 2006年、クリストファーは84歳で惜しまれつつ他界しましたが、彼が愛し、精力を注いだ庭と屋敷は、現在グレート・ディクスター・チャリタブル・トラストという公益財団に引き継がれ、その遺志を受け継ぐガーデナーたちによって、管理、運営されています。詳しくは「グレート・ディクスター・ハウス&ガーデンズ」前編でご紹介していますのでご覧ください。 さて、前編では、入り口から屋敷を中心に時計回りに庭を巡り、屋敷の南西側のメドウまでやってきました。庭巡りを続けましょう。 色彩豊かなロングボーダー メドウの縁には、屋敷へと延びる、幅広い敷石の小道と細長い花壇「ロングボーダー」があります。雑誌などでもよく紹介されている有名な花壇です。優しい色合いのメドウとは対照的に、このロングボーダーは彩り豊か。たくさんの種類の植物が小道にこぼれるように茂り、競い合って咲いています。 小道を進んでいくと、植物の種類が変わることで色彩も変化していきます。花壇の植栽は、6月中旬~8月中旬に花盛りとなるよう考えられているそう。また、クリストファーは、5月末からは土が見えないくらい植え込むべきと考え、この花壇を「綿密に織られたタペストリーのよう」にしたいと思っていました。 このロングボーダーはミックスボーダー(混植花壇)で、さまざまな植物が使われています。宿根草だけでなく、灌木や一年草、つる植物など、植物の種類にかかわらずなんでも使うのが、クリストファー流。ロングボーダーには斑入り葉の灌木や、真紅やピンクの花を咲かせたバラの茂みも所々にあって、ボリュームたっぷりです。訪れた6月中旬は、バラに加え、ポピーやルピナスの赤い花がアクセントとなって、強い印象の景色をつくっていました。 名建築家ラッチェンス設計の円形階段 ロングボーダーの端まで来て、視線の先を遮っていたマルベリーの大木の茂みを抜けると、左手に、円形のデザインが目を引く個性的な石階段がありました。その先にはメドウが広がっています。 この円形の石階段や、ロングボーダー前の敷石の小道は、20世紀の初めに活躍した名建築家、エドウィン・ラッチェンスによって設計されたものです。アールを描く石のステップの側面には、こぼれ種で広がったのか、ポツポツとエリゲロンの可愛い花が咲いていて、石階段の固い印象を和らげています。使われている石自体100年以上経っているので、趣があります。 メドウに立って、円形の石階段を正面から見てみると、上段に背景となる屋敷、中段にローダンセのピンクの花、下段に石階段と、高低差を生かした立体的なデザインであることが分かります。右側に茂るブラック・マルベリーの木は、もともとは対で両側に生えていたもので、ローダンセの花壇と同じく左右対称のデザインとなっていました。 ラッチェンスは、ガーデンデザイナーのガートルード・ジーキル女史とともにつくり上げたヘスタークーム・ガーデンズでも、似たような円形の石階段を設計しています。庭のアクセントとなる素敵なデザインですね。 花に飾られた石階段を、上ったり、降りたり。次のエリアに向かう過程も、とても楽しめました。 円形の石階段からメドウの中へと、放射状に3本の小道が伸びています。右手の小道を先に進むと、濃い緑の壁に囲まれたエリアがありました。中に入ってみると…… 異国情緒たっぷりのエキゾチックガーデン 他のエリアとはがらりと印象が変わって、緑一色の世界。背丈を超えるほど成長したバショウや木生シダなどが、自由に葉を広げて、面白いコントラストを見せています。ここはエキゾチックガーデンと呼ばれるエリア。もともとは整形式のローズガーデンとして設計された場所ですが、連作障害でバラが育たなくなったため、クリストファーが大改造を行いました。バラからの大胆な方向転換。きっと雰囲気が一新したことでしょうね。 小道の先を隠すように葉が垂れて、ジャングルのような雰囲気です。葉を楽しむための植物の多くは、イギリスの寒さに耐えられるものが選ばれています。6月の段階では緑一色の景色ですが、晩夏から秋にかけて、この庭にはダリアやカンナ、こぼれ種で増えるサンジャクバーベナの花が咲いて、とてもカラフルになるそう。その頃の景色も、ぜひ見てみたいものですね。 楽しみいっぱいのナーセリー さて、エキゾチックガーデンを出て敷地の奥へと進むと、花苗やテラコッタポットなどが並ぶナーセリー&ショップにたどり着きました。このナーセリーは1954年に、クリストファーが、自分が好きな植物を売るという形で始めたもの。特に、彼が大好きだったクレマチスは多くの品種が取り揃えられていて、今でもクレマチス専門店として知られています。 ナーセリー&ショップのエリアには建物が2つあって、小さいほうでは特製ブレンドの土の量り売りや、グレート・ディクスターのマークの付いたタネ袋などが売られていました。大きいほうでは、書籍やハサミ、オリジナルバッグや誘引紐など、心惹かれる商品がたくさん。店先には、アンティークのジョウロやダックスフントを模したジョウロなど、ユニークなグッズもありました(クリストファーはダックスフンドが大好きで、ずっと飼っていました。庭園では今もその子孫が飼われています)。 ガーデンの中で見かけた低い木柵も、山積みになって売られていました。これはガーデンハードルという、英国の庭で伝統的に柵やゲートとして使われているもの。グレート・ディクスターでは築500年の納屋を使って、伝統的な木工品づくりも行っています。古くからある近くの森からヨーロッパグリやクリ、オークなどの木材を切り出して、柵のほかにもスツールやベンチ、はしごなどを作成します。これは、森を守ると同時に、木工品づくりの伝統技術を伝えていくためでもあります。 ショップ付近では、草屋根のロッジア(イタリア式の、片側に壁のない屋根付き柱廊)が飲食スペースとして使われていて、用意されたテーブルや椅子で休憩する人の姿がありました。 苗コーナーも広く、たくさんの品種が並んでいます。奥に見える濃い緑の壁からバショウの葉が伸び出ているエリアが、先にご紹介したエキゾチックガーデンです。 トピアリーとメドウ ナーセリー&ショップのエリアを出ると、目の前に、再びメドウが広がっていました。草むらの中に、セイヨウイチイのトピアリーがリズミカルに配置され、広いスペースにアクセントをつけています。トピアリーは、アーツ&クラフツスタイルの庭で欠かせない要素ですが、日本庭園で見る松の刈り込みのようでもあって、親しみを持てました。クリストファーの父、ナサニエルはトピアリーが大好きで、昔は庭園内にもっとたくさんのトピアリーが立っていたそうです。クリストファーは「トピアリーは存在感があって、長い影をつくる時など、植わっているというより、住んでいるように見える」という言葉を残しています。確かに、ずんぐりむっくりの森の妖精のようにも見えますね。 一方、母のデイジーは、メドウが大好きでした。このトピアリー・ローンと呼ばれる庭は、クリストファーの両親が好きだったものがどちらもある場所です。 メドウとはもともと牧草地のことですが、イングリッシュガーデンでは、草原に小さな花々が咲く風景が、メドウ、もしくは、メドウガーデンとして、ガーデンデザインの中に取り入れられており、広い敷地を持つガーデンには、たいていメドウを思わせるエリアがあります。数あるメドウの中でも、ここグレート・ディクスターの庭は格別です。クリストファーの母は、この庭ができた1910年代からメドウをつくっていたので、彼は幼い頃からメドウに親しんできました。クリストファーは園芸家となってからも、美しいメドウガーデンづくりに試行錯誤し、精通していたので、メドウづくりの第一人者と目されていました。彼は2004年に刊行した著書“Meadows”で、その知識を伝えています。 グレート・ディクスターのメドウは多様性に富むもので、ヨーロッパの野生種のランも育っています。メドウはまた、チョウやガ、昆虫など野生生物の棲む場所としても重要なものになっています。 素朴な花が、まるで自然に咲き広がっているように見えますが、このような景色は、じつはとてもテクニックを必要とするもので、人の手が入ることによってはじめて実現するといわれます。植物同士がバランスよく一緒に成長するように、また、意図しない植物の侵入を避けたり、特定の植物が繁茂しすぎないようにしたり、種まきから成長過程を調整することも、メドウガーデンづくりのテクニックとか。 だからこそ、この景色は毎年必ずしも同じになるとは限りません。またいつか訪れるチャンスがあるかしらと心の片隅で思いながら、そよぐ風や野鳥の声に耳を澄ませて、そこにいる時間を楽しみました。 メドウに囲まれた小道を、建物のある方向へ進むと、屋根につるバラが絡むロッジアが見えてきました。その左横を進んで、次のブルーガーデンに入ります。 よく手入れされた芝生の中に、敷石の小道がまっすぐに通っています。建物に沿って、緑が生き生きと茂っていました。この小道や階段、レンガ造りのアーチも、ラッチェンスの設計です。 屋根に迫るほど大きな果樹のエスパリエがありました。リンゴの木でしょうか、石の壁にぴったり沿って、枝がきれいに誘引されています。こんなに大きなエスパリエを見たのは初めて! 次のエリアへ行く前に振り返ると、階段脇の一角に、いろんな種類のギボウシがバランスよく配置されていました。鉢植えのギボウシがたっぷり日差しを受けて、生き生きと葉を広げています。 次のエリアは、四方を壁にぐるりと囲まれたウォールガーデンです。 中は広い敷石のテラスになっていて、その周りを地植えの木々や鉢植えの植物が囲んでいます。中央付近は、小石を無数に敷き詰めたペイビングとなっていて、クリストファーの愛犬、2匹のダックスフンドがモチーフとなった模様が浮き上がっていました。テラスのペイビングの細かさから、相当のエネルギーが注がれた場所なんだなぁと実感します。 ウォールガーデンの一角は、カンパニュラやゲラニウム、フラックスなど、青系の花々の鉢植えが飾られて、爽やかな印象でした。 さて、庭巡りの最後を飾るのは、サンクン・ガーデンです。サンクン・ガーデン(もしくは、サンク・ガーデン)とは沈床式庭園のこと。イギリスのガーデンデザインでよく取り入れられる手法ですが、庭の中央の「床」が、周囲より一段、もしくは数段低く「沈んで」いて、そこに噴水が設けられたり、花壇が作られたりします。この庭の場合は、中央に八角形の池が作られていて、睡蓮が咲いていました。 もともとこの場所にはクロッケー用の芝生がありましたが、クリストファーの父ナサニエルが、1921年にこのように設計し直しました。ナサニエルは、建築や庭の設計にとても興味を持っていた人で、地域の古い建築に関した本を著してもいます。テラスの周りには芝生が広がっていますが、第一次世界大戦中はその芝生を掘り起こして、野菜を作っていたそうです。 池の水面に映る空の雲や植物のシルエットは、一幅の絵のよう。ベンチに座って、静かな時間を楽しみました。 グレート・ディクスターの広大な庭のメンテナンスには何人ものガーデナーが関わって、こぼれ種から発芽した芽の抜き取りや植え直しなど、とても繊細に行われています。一年で一番忙しい時期は、1月から2月にかけて。グレート・ディクスターは「英国で最も手のかかる庭」として知られますが、植えっぱなしでも育つ宿根草でさえ、よりよい状態を求めて、毎年植え替えるのだそうです。ここではガーデナー教育にも力が注がれていて、屋敷には研修生が住み込んで庭作業に励んでいます。ここを卒業したガーデナーは、他のガーデンで実力のある人材として活躍しているそうです。 かつて、庭づくりの巨匠として、イギリスのガーデニングに影響を与え続けたクリストファー・ロイド。新しいガーデニングに挑もうとするその精神は、ヘッド・ガーデナーのファーガス・ギャレットをはじめとするガーデナーたちに引き継がれています。クリストファーが愛し、築き上げたグレート・ディクスターは、今も新しい景色を生み出し、進化し続けるガーデンとして、多くの人々に驚きと感動を与えています。 *「グレート・ディクスター・ハウス&ガーデンズ」前編もどうぞご覧ください。
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寄せ植え・花壇

コツがいっぱい! 美しい寄せ植えの作り方
花が徒長し始めたら、次のシーズン用に植え替えを 早春に植え込んだ、ビオラとアネモネの寄せ植えです。花はまだ咲いていますが、徒長して寄せ植えの形が崩れかけています。夏に向けて寄せ植えの植え替え時期です。 土の入れ替えのコツ ガーデンフォークを使って、根が張っている植物を起こしていきます。根に土がたくさん付いているので、フォークで根をたたいて土を落とします。その際、土の中に残った根も取り除きます。この根を取り除く作業で土もほぐれ、空気が入ってふわっとします。 ここで大事なのは、引き抜いた植物をすぐに捨てずに、様子を確認してみることです。葉っぱがこんもり繁っているにもかかわらず、根がない、または極端に少ない場合は、土の中にコガネムシの幼虫がいる可能性があります。もし幼虫を発見した場合は取り除き、土を全量、またはできる限り入れ替えます。そして、土の中に殺虫剤のオルトランDXを適量すき込みます。土を入れ替えできない場合は、ていねいに幼虫を取り除き、オルトランDXをすき込みます。 全て抜き終わったら、少し土を入れ替え、元肥と有機肥料を適量まき、その後よくすき込みます。 さらに、新しい土を全体の1/5程度入れます。新しい土を加えると、失われた肥料分が補給されるのでしょう、よく育ちます。 植物はジグザグに置くとナチュラルに メインになる苗を仮置きします。同じ植物が直線上に並ばないように、調整しながらジグザグに置いていきます。写真はロベリアとベロニカ。今回、植え込む植物は、以下の通りです。夏に向けて涼しげな雰囲気になるよう、ブルー系の花を揃えました。植え込んだ直後から植物が馴染んで見えるように、結構たくさんの苗を使います。 <使った苗> ロベリア×4 ベロニカ×4 オンファロデス×3 ラベンダー×4 タマシャジン×2 サルビア×4 オダマキ×6 バコパ×5 ロベリアとベロニカの隙間に、1つ目のつなぎの植物となるラベンダー、タマシャジンを置いていきます。ここでも直線上に並ばないように注意します。「つなぎの植物」というのは、ちょうどバラのブーケにカスミソウが入って、なんとなくブーケがふんわりとまとまるようなイメージです。メインとなるクッキリ・ハッキリとした色形の植物の間に、チラチラとした小花を入れることによって、間が自然につながって、全体に調和が生まれるのです。さらに、2つ目のつなぎとなる植物、オンファロデス(草丈の高い白い花)を隙間に入れていきます。この段階では仮置きなので、狭くて苦しそうな場所は、隣同士の苗を動かして調整し、並べていきます。 位置が決まったら、植えていきます。苗の株元を持って、優しくポットから抜きます。よほど根が回っていない限り、根はほぐさなくてOK。苗を隙間に入れる時は、周りの植物を傷つけないように、手の甲で隣の苗をそっと押さえながら植え付けます。 さらに、隙間にオダマキを植え込むと、もっと自然な感じになります。 手前にも隙間があるので、やさしいピンク色のバコパを植えます。花がら(しぼんだ花)がたくさんあると見苦しいので、花がらがある場合は取り除いてから植え付けます。最後に隙間に土を入れていきます。私は自作のペットボトルの土入れを使っています。細くて土がたっぷり入るので便利です。作り方は、以下の記事でご紹介しています。 ●『美しい庭をつくる人が愛用する便利な庭道具』 こんな感じで植え付けは終了です。この後は、水まきです。植え付け直後の水まきには、ちょっとしたコツがあります。 寄せ植えの植え付け直後の水やりのコツ まず、ホースで水やりをする場合、はす口をつけますが、いきなり植物にホースの水をかけてはいけません。というのも、ホース内に残っていた水が日光で温められて、意外なほど熱いお湯に変わっていることがあるからです。ですから、しばらく水を出しっ放しにして、手で触って冷たくなっているのを確かめます。次に水がやわらかく当たるよう調整します。あまり水の勢いが強いと、表面の土に穴があいてしまい、植物の根が露出してしまいます。苗と土が密着するように株元に水をまいていきます。 さらに少し高いところから、苗についた土を洗い流していきます。植え込み作業中は注意していても、植物の葉っぱなどに土がついてしまっています。特にペチュニアなど、葉が毛羽立っている植物は土がつきやすいので、優しい雨のように上からシャワーをかけて、洗い流します。植物に近づけすぎないことが大事です。 活力剤をあげて完成! 最後に、メネデールやリキダスなどの活力剤をジョウロでまき、完了です。活力剤は植え込んだばかりの根の生育を助ける働きがあります。 生育するとお互いの植物が絡み合い、さらに馴染んでナチュラルな雰囲気になります。 この横長の鉢は待合室の窓のすぐ側に置いてあり、室内からも花がよく見えます。ですから、手前から見ても、後ろから見ても綺麗な眺めになるよう植え込んでいます。植え込み後の管理は、基本的に水やりと花がら摘み。水やりの際、ときどき液肥を混ぜてやると花のもちがよくなります。 華麗なる寄せ植えの四季 同じ鉢を使った過去の季節違いの花の様子です。冬/ビオラ、ストック、アリッサム、ネメシア、カルーナなど。 早春/ビオラ、フォックスリータイム、オレガノ、チューリップなど。 初夏/ミニバラ、クレマチス、スーパーチュニア、ユーフォルビア‘ダイヤモンドフロスト’、クレオメ、ゼラニウムなど。 真夏/スーパーチュニア、ビンカ、セダム。 秋/コスモス、スカビオサ、サルビア、タイムなど。 寄せ植えは、庭がなくても一鉢の中で、こんなふうに季節の彩りを豊かに楽しむことができます。ぜひチャレンジしてみてくださいね。
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ガーデン&ショップ

イングリッシュガーデン旅案内【英国】イギリスガーデン界の巨匠、故クリストファー・ロイドの自邸「グレート・ディクスター・ハウス&ガーデンズ」前編
英国ガーデン界のカリスマガーデナー クリストファー・ロイドは、常に変化を求め続けたガーデナーでした。1957年、当時の主流だった宿根草花壇に対して、ミックスボーダー(混植花壇)を提案した著書、“The Mixed Border in the Modern Garden”を皮切りに、彼は、このグレート・ディクスターを実験の場として新しいガーデニングに挑戦し続け、そこで得た自らの経験と考えを、ガーデン誌や新聞の園芸欄と著書で伝えました。大胆な色使いを提唱した“Color for Adventurous Gardeners”、現在もブームとなっているメドウ(野原)・ガーデニングについて、いち早く解説した“Meadows”など、クリストファーはいつも新しい視点を人々に与える存在でした。 2006年、クリストファーは84歳で惜しまれつつ世を去りましたが、彼が愛し、精力を注いだ庭と屋敷は、グレート・ディクスター・チャリタブル・トラストという公益財団に受け継がれました。そして、クリストファーの後継者であり、1993年からヘッドガーデナーを務めるファーガス・ギャレットを中心とするガーデナーたちによって、生前のままに管理、運営されています。 ファーガスにとってクリストファーは、素晴らしき老教授、父、祖父のような存在であり、また、親友でした。一方、老齢のクリストファーにとってファーガスは、体力的に難しいことを代わりにしてくれる頼れる相棒であり、また、新しいアイデアや刺激を与えてくれる存在でした。 「変化こそ、グレートディクスター流ガーデニングの神髄」と、ファーガスはクリストファーのチャレンジ精神を受け継ぎ、また、それを後世に伝えるべく、さまざまな園芸教育プログラムに力を注いでいます。屋敷には、世界レベルの技量修得を目指す研修生が住み込んで、庭仕事に励みます。 さあ、イギリスでも先端を行く、独創性あふれるガーデンを散策しましょう。どんな驚きが待っているでしょうか。 庭散策はメドウガーデンから 敷地に足を踏み入れると、まず広がっているのがメドウガーデンです。白や黄色の素朴な花が、低い位置で風に揺れています。向こうの景色は、ユニークな形に刈りこまれた、壁のようなセイヨウイチイの生け垣に隠されて見えません。どんな庭が待っているのだろうと期待が高まります。 メドウの小道をまっすぐ進むと、雑誌で目にした覚えのある、古い屋敷が迎えてくれました。大小の鉢植えが多数集められて、彩り豊かにエントランスを囲みます。 アルケミラモリスやカンパニュラ、ギボウシ、グラス、コニファーなどが植わっている、エントランスの鉢植え。どの鉢も株姿がこんもりきれいに整い、手入れが行き届いていることが分かります。 ラッチェンスの手で改修された屋敷 クリストファーの父、ナサニエル・ロイドは富裕層の出で、自らも印刷業で成功を収めました。1910年、彼は若くして隠居生活に入るため、15世紀半ばに建てられた「マナー・オブ・ディクスター」を購入し、のちに名建築家として名を残すエドウィン・ラッチェンスに、屋敷の改修と増築、そして、庭の設計を依頼します。ナサニエルは、昔ながらの手仕事を再評価するアーツ・アンド・クラフツ運動に共鳴しており、古い屋敷をできるだけ伝統的な形で修復することを望みました。現在ある屋敷の姿は、もともと建っていた木骨造の屋敷に、別の場所から解体して運んだ2つの古い家を組み合わせたものとなっています。 この歴史的な建物は、内部を見学することもできます(写真撮影は禁止)。庭散策を終えてから中に入ってみると、1階のグレート・ホールという部屋は天井が高く広々としていて、大きなステンドグラスから光がたっぷり注いでいました。エントランス部分の外観にあるような太い木の骨組みが、室内からも見られます。2階には暖炉を備えた広い一間があって、書棚にクリストファーの蔵書と思われる植物図鑑などがずらりと並んでいました。家の中には、アンティーク家具を好んだ父、ナサニエルが集めた、中世の英国、フランス、イタリアの家具が置いてあります。 父ナサニエルと母デイジー ナサニエルが地所を購入した際、ここには庭と呼べるものはなく、屋敷の増改築と並行して、2年がかりで庭づくりが行われました。ラッチェンスが設計した庭の構造物がつくられ、専門家によって計画された植栽が行われて、庭も完成。1912年に一家は暮らし始めます。ナサニエルは、その後、古い建築について学びを深め、自分でもサンクン・ガーデンを設計しています。 一方、母・デイジーは草花が大好きで、のちに庭の植栽計画を担当するようになりました。クリストファーは6人兄弟の末っ子に生まれ、この素晴らしい庭で幼い頃から植物に親しんで育ちましたが、兄弟の中でガーデニングに興味を持ったのは彼だけでした。クリストファーは名門ラグビー校で学び、ケンブリッジ大学のキングス・カレッジに進んで現代言語を学びますが、第二次世界大戦の兵役の後、ワイ・カレッジで装飾園芸の学位を取得して、園芸の道に進むことを決めます。そして、グレート・ディクスターに戻り、母から庭を任されて、本格的にガーデニングに取り組むようになりました。 クリストファーは、花壇や小道、テラスなどのレイアウト、及び建物や生け垣などの構造物といった、ラッチェンスによるガーデンデザインに満足していました。彼はその素晴らしい枠組みの中で、父や母が愛でた要素を残しつつ、新しいガーデニングを追求したのです。 では、屋敷を中心に広がる、いくつものエリアに分かれた庭を、順に巡っていきましょう。 トピアリーが楽しいピーコックガーデン 屋敷の北東側に広がるのは、セイヨウイチイの生け垣です。この変化をつけたユーモラスな形の生け垣は、次に続く空間を3つのエリアに区切っています。屋敷を背にして、砂利敷きの道から一歩右のエリアに入ると…… 鳥をかたどったトピアリーがいくつも立つ「ピーコックガーデン(クジャクの庭)」です。花色が抑えられていて、若いグリーンが引き立つ庭景色。トピアリーは、アーツ・アンド・クラフツ様式の庭によく見られる要素で、クリストファーの父ナサニエルも気に入っていました。これらはもともと、キジやブラックバードなど、さまざまな鳥をかたどったものでしたが、今ではすべてを「ピーコック」と呼んでいるそう。長い年月が経つうちに、どれがどの鳥だか分からなくなってしまったのでしょうか、面白いですね。鳥のトピアリーは全部で18体ありますが、庭ができた当時は、トピアリー好きのナサニエルが、もっとたくさん配置していたのだそうです。 ピーコックガーデンの中央には、石張りのテラスのような空間があります。先ほどの植物が密集する空間とは一転して、ここは距離を保って植え込みを眺められる空間。メリハリのあるガーデンデザインが感じられます。この場所からは、クジャクのトピアリーが林立するユーモラスな風景が楽しめました。 草花の生い茂るハイガーデンとオーチャードガーデン 続いて、セイヨウイチイの生け垣の間を抜けて、「ハイガーデン」と呼ばれる隣のエリアに入ると、色彩がガラリと変わります。訪問した2019年の6月中旬は、赤やピンクのオリエンタルポピーがたくさんの花を咲かせていました。中央の奥には、ピンク色のクレマチスのオベリスクが見えます。 花が植わっているエリアと生け垣の間の、人ひとりがやっと通れる小道をたどって奥へと進みます。生い茂る植物が迫ってくるような、エネルギーを感じる体験は初めて! 植物が群れ咲くとはこういうことかと、実感しました。 次のエリアに入ると、人の背丈を越すほど高く伸びるグラスやバーバスカム、デルフィニウム、ゲラニウム、サルビアなど、日本のナチュラルガーデンでもよく見かける、あらゆる宿根草が育っていました。一見、無秩序に植わっているようですが、隣り合う植物が調和し合い、競い合って育っているよう。既存のデザインの方程式に捉われない、新しさを感じました。この後、1週間、2週間と時間が経つと、きっとまったく違う印象を受けるのでしょう。また来てみたいと思わせる魅力がありました。 さらに進むと、「オーチャードガーデン」につながります。アクセントとなるヘメロカリスの黄色い花に、フェンネルのふわふわ茂る葉、紫のアリウムなど、ここでも、視界に入る植物がすべて異なる種類。他の庭では見られない植栽術に驚かされます。 コントラストで魅せるミックスボーダー グレート・ディクスターの花壇は、すべてミックスボーダー(混植花壇)です。クリストファーは、植物はお互いに助け合うことができると、樹木、灌木、つる性植物、耐寒性および非耐寒性の多年草、一年草、二年草のすべてを組み合わせて、植栽に用いました。彼は、調和よりもコントラスト、形や色の対比で魅せる草花のタペストリーをつくろうとしました。そして、特別決まったカラースキーム(色彩計画)というものも持たずに、どんな花の色をも効果的に組み合わせようと苦心していました。 また、グレート・ディクスターは、ハイ・メンテナンス、つまり、手のかかる庭として知られています。「努力があってこそ見返りも大きい」というのが、クリストファーの持論で、手のかからないグラウンドカバーの植物には興味がありませんでした。この庭でもし、グラウンドカバーが植えられていたとしたら、それはその植物のことが好きだからであって、手を抜くためではなかったそう。この精神はファーガスたちにも受け継がれ、「視覚的にインパクトがあり、かつ、親しみやすさのある植栽」を実現するために、ガーデナーたちは常に忙しく働いています。一年草を使うことも多く、花壇に植わる植物は絶えず変化していくそうです。 ユニークな高さの異なるセイヨウイチイの生け垣で区切られている、ピーコックガーデン、ハイガーデン、オーチャードガーデンの3つの庭。大きな面積が植物で埋め尽くされていたり、生け垣に沿って細い小道があったりと、ここにしかないオリジナリティーあふれるデザインをたくさん見ることができました。この道はどこにつながっているのか、一度歩いただけでは把握できない、迷路のような面白さもありました。 メドウの広がる果樹園へ オーチャードガーデンの、両側を花々に彩られた小道を先へと進みます。生け垣のトンネルの先には、どんな景色が待っているのでしょうか。 トンネルを抜けて階段を降り、振り返ってみると、巨大な生け垣の緑が目に飛び込んできました。すべては1912年以降につくられたものといいますが、この庭の歴史を感じます。 小道のさらに先には、またトピアリーのトンネルがあって、開けた場所に続いているようです。バラの優しい花色を眺めながら先に進んで、トンネルを抜けると…… 一面のメドウ(野原)! 広がるメドウは、借景となる遠くの風景につながっています。心地よい、穏やかな風が吹いています。 クリストファーの母デイジーは、このようなメドウのガーデンスタイルが好きで、庭ができて間もない頃からメドウを育てていました。クリストファーにとってメドウは、子どもの頃から親しんだもの。きっと彼の原風景だったのでしょう。メドウに咲く花はほとんどが自生種で、土壌が貧しければ貧しいほど、花々のタペストリーは豊かになるそうです。土壌が肥沃だと、カウパセリやイラクサなどの粗野な植物が占領してしまうのだとか。 デイジーは、野生種のラッパズイセンやスネークヘッド・フリチラリアを、種子から育てて増やしていました。風になびく美しい草原は、手つかずの自然の景色のように見えますが、人の手で計画し、手入れしているからこそ生まれる風景です。 メドウの芝草を刈り込んで作られた小道は、リンゴ、洋ナシ、プラム、サンザシ、クラブアップルなどの果樹が散りばめられたオーチャード(果樹園)のエリアに続いています。 メドウの景色を動画に収めました。風のそよぎや鳥のさえずりをお楽しみください。 *続きは、「グレート・ディクスター・ハウス&ガーデンズ」後編で。
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今こそ暮らしを変えよう!「Stay Home」により海外で人気急上昇のガーデニング
昨年の同じ時期と比べてガーデン関連商品は8倍の注文 アメリカ、イギリス、ドイツ、オーストラリアなど、エクステリアメーカー、タカショーの、海外の販売子会社・営業所6拠点の製造・販売・流通を取りまとめる海外事業戦略室、室長の内海良平さんは、新型コロナウイルスの影響で市場が大きく変わっているといいます。 「ニューヨークのようにロックダウン(都市封鎖)された場所では、ガーデンセンターも営業ができず、弊社の拠点があるペンシルベニアもロックダウンされたために3月20日から営業所を閉鎖し、スタッフは自宅勤務となりました。ですが、物流はストップしていないので、ネット通販による注文については倉庫から発送され、ガーデニング商品をお客様にお届けすることはできています」。 「欧米では、多くの人が仕事に行けず家にいる時間ができたことから、まずは掃除や片づけをし、さらに次の作業としてガーデニングに目を向ける人が確実に増えていると、商品の売れ行きから分かります。オーストラリアでは、ガーデニング関連商品の1日の注文件数が4倍になりました。また、イギリスでは野菜やハーブを育てる大型コンテナのベジトラグシリーズが、昨年の同じ時期と比べて8倍もの注文をいただいていると報告を受けています」と内海さん。 海外でのガーデニング商品の売れ行き 「海外でガーデンセンターの営業が停止された地域では、スーパーで苗を買うことができるケースもあり、よく売れていると聞きます。 スーパーに行くのは1日1回と限定されていたり、入店の人数制限があったりし、人と人との距離を2m保ちながら列をつくって買い物をしなければいけません。そんな状況からか、買い物の回数を減らしたいと考える人や、いずれ野菜が入手困難になるかもしれないという事態に備える人が、自宅で野菜を育てようとして、タネも売れ切れるほどだとイギリスの仕事仲間に聞きました。だから、畑や広い敷地がなくても野菜を育てやすい商品である、ベジトラグシリーズが売れているのでしょう」。 ベジトラグ以外にもこの数カ月で、オベリスクやトレリスなどの支柱類や鉢底にプラスチックの補強がついたウッドバレルプランター(上写真)、ハンギングバスケットなども特に売れ行きがいいといいます。 「自宅待機やガーデンセンターの休業によってネット通販での注文も殺到しています。しかし、これまで通りすぐに発送ができていないのが現状です。これは、出荷業務をする人の健康維持を考えて、通常より人員を減らす体制をとっているため、注文のスピードに出荷が追いつかないという業務の混乱を避けるために、受注を一旦止めるケースがあるからです。 一方、ガーデンセンターの営業ができている地域では、事前に注文してから、車で店に向かい、ドライブスルーで商品をピックアップし、クレジット精算ができるシステムに移行したガーデンセンターもあります。このように、海外では自宅待機(Stay Home)や人との距離を保つ(Social Distance)という制限を満たしながらも、人々が欲しいものを早く手に入れるための効率のよい方法が生まれています。 ちなみに、一部のガーデンセンターでは、いつ発令されるか分からないロックダウンに備えて在庫を持たないようにする場合と、生鮮食品を扱うコストコのようなスーパーでは逆に仕入れを増やすなど、店の形態によって状況判断に違いがあります」と内海さん。 日々の暮らしを見直す時間 海外の人たちが、この状況下でガーデニングに目を向けることについて、内海さんは次のように語ります。「“Back to Basics”、ガーデニングをすることは、原点回帰なのかもしれないとイギリスの仕事仲間と話しました。それは、外に出て日光浴をしたり、土を耕して汗を流して野菜を育てたり、季節がめぐることを花や緑から身近に感じながら家族と一緒に過ごすこと。リラックスができる状況に身を置いて、心の安定を維持するために、多くの人がガーデニングを始めているのかもしれませんね」。 日本でもこの数カ月で通信販売による苗の注文や、庭のつくり替え、メンテナンスなどの注文も増えてきています。自宅で過ごす時間の一つに、ガーデニングを選んでいる今の海外を参考に、これから多くの時間を過ごすことになる自宅の暮らしをアップデートしてみませんか? 気候がよくなるこれからの季節、家の補修や塗装などのメンテナンスや掃除からスタートし、外で過ごせるようなテーブルセットを庭やベランダに用意して外空間を充実させたり、窓から見える景色を花や植物で変えたりして、ガーデニングで楽しい暮らしをクリエイトしましょう! 併せて読みたい ・ガーデニングとは? 楽しく成功させるためのアイデアと基本情報をご紹介 ・初心者でも上手にできる家庭菜園! 始め方は? おすすめの野菜は? ・植えっぱなしで毎年花咲く「宿根草(多年草)」おすすめの種類と育て方
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寄せ植え・花壇

クリスマスローズと小さな花々が競演する春の可愛い庭
丈夫でこぼれ種でも増える宿根草、クリスマスローズ クリスマスローズは早春の庭に欠かせない花です。山陰ではクリスマスローズは、チューリップが咲く1カ月ほど前に開花期を迎え、およそ1カ月庭を彩ってくれる丈夫な宿根草です。この頃はクロッカスやムスカリ、原種シクラメンなどの小球根が地面をポツポツと彩り、ビオラもまだ草丈が低い時期なので、それらより草丈がやや高く、1株から何輪も咲くクリスマスローズは、春まだ浅い庭を華やかに彩ってくれる貴重な存在です。 横山園芸作出の‘ヨシノ’。 数年前から可愛いと思う花を集め出し、一重からセミダブル、ダブル、花弁の縁に糸のように色が入るピコティ、プチプチ模様のスポットまで、いつの間にか庭中にクリスマスローズが増えました。最近のお気に入りは、‘プチドール’や‘ピンクアイス’、‘氷の微笑’、英国アシュウッドナーセリーの品種などいろいろありますが、一番は、なんといっても‘ヨシノ’です。淡いピンク色に染まるふっくらとした一重の花は、可憐で素朴。希少品種で、鉢で大事に育てられることが多いようですが、私はこのあどけない少女のような雰囲気の花を庭に咲かせたくて、地植えにしています。以前、クリスマスローズ愛好家の方が庭にいらした際に、「こんな貴重な花を地植えにするなんて…」と呆れられたことがありましたが、地植えにしたところ株が太って花数が増えたので、私としては嬉しい限りです。 こぼれ種で敷石の間から咲いたクリスマスローズ。 クリスマスローズの中には、そのような希少品種がいくつもありますが、希少だからといって必ずしも特別難しい管理が必要なわけではなく、適所で育てれば丈夫に育ち、年々株が太って花数が増えるのも魅力です。また、品種によってはこぼれ種でも増え、敷石の隙間や樹木の間など、少し日陰になるようなところにいつの間にか花が咲いていることがしばしばあります。 ゲブラナガトヨのビオラ、ゲラニウム‘ビルウォーリス’とともに咲くクリスマスローズ。クリスマスローズはオオゼキナーセリーのオーレア系レッドシングル。 苗は、地元米子の園芸店「ラブリーガーデン」に厳選されたクリスマスローズがあるので、多くはそこで入手しています。また、毎年東京・池袋で開催されている「クリスマスローズの世界展」にも、飛行機に乗って花を見に行くのが恒例になりつつあります。魅力的な新品種が次々に登場するので興味は尽きませんが、私はクリスマスローズのコレクターというわけではなく、ほかの草花との競演を何よりも楽しみにしています。 クリスマスローズと似合う春の花々 春先のこの時期は、クリスマスローズより草丈が高くなるような花は少なく、原種シクラメンもビオラも、クリスマスローズの株元で咲きます。この2つの花は、クリスマスローズの花の雰囲気にぴったりです。 素朴で可愛らしい原種シクラメン 原種シクラメンは地際7〜8cmの高さで咲き、花も小さく素朴で可愛らしい雰囲気です。ガーデンシクラメンも小型のシクラメンで庭植えされますが、原種シクラメンは、もっと花が小さく控えめに咲くので、クリスマスローズをよく引き立ててくれます。夏は涼しい木陰など、場所さえ合っていれば、球根が分球してどんどん増えていってくれるのもお気に入りの点です。 原種シクラメン、ビオラと咲くダブルのピコティのクリスマスローズ。 ビオラはコンパクトな株姿をセレクト スキミア(後ろのエンジ色の花)、ビオラと咲くクリスマスローズ。 また、ビオラも地植えにするものは、ボリュームが出すぎず、キュッとコンパクトな株姿で咲く品種を選んでいます。ビオラは本当にたくさんの品種があり、色も咲き姿も魅力的なものが豊富ですが、私が庭植えにする際に重視しているのは株姿です。草丈が高くなり、株全体が花で覆われるような育ち方をするものは、庭では目立ちすぎてしまうので、寄せ植えなどに用いています。この庭では、草丈があまり高くならず、横に広がって育ち、葉の存在感があるようなビオラが似合うのですが、こればっかりは育ててみないことには分かりません。ですから私は、前年の経験を生かして同じ系統のビオラを選ぶようにしています。 赤い個性的なビオラ、植田園芸のレインボーウェーブ・アプリコットローズとともに。 楚々とした姿が魅力的な雪割草 雪割草のような山野草も、クリスマスローズとの相性抜群です。ただし、雪割草は新潟県が原産地で涼しいところを好むため、夏越しが難しく消えていってしまうものもあります。それでも、樹木の下や日陰になる場所などではいくつか残って、毎年可愛らしい花を見せてくれるので、大事に育てています。 グラウンドカバープランツのベロニカ 地面を覆うように咲く植物のことをグラウンドカバープランツと呼びますが、ベロニカも春先に咲く、そんな花の一つです。横に広がりながら、エンジ色の葉っぱに冴え渡るブルーの小花を咲かせます。上の写真のクリスマスローズは、庭づくりの最初に買って植えたもので、ベロニカと一緒に何年も咲いてくれています。日当たりのよい花壇ですが、夏はバラの木陰になり、ベロニカも土の温度上昇や乾きを防いでくれるからでしょう。 クリスマスローズの花がうつむいて咲く姿は、株元のそうした小さな花々を見守っているようにも、話しかけているようにも見え、想像がふくらんで、とても楽しいです。花が咲くと、私は一輪ずつそっと手のひらに載せるようにして、その顔をのぞきます。立って上から眺めているだけでは、ダブルやピコティといった花の内側に隠された豊かな表情が楽しめないからです。 プロが教えるクリスマスローズの寄せ植えのコツ クリスマスローズ‘パラデニア’を主役にした白花の寄せ植え。 コレクターの方が鉢植えにする理由の一つには、可愛い花の顔がよく見えるという利点があるのでしょうね。私もいくつかは鉢植えにして少し高い場所に置き、花の顔が楽しめるように鉢を並べています。また、クリスマスローズはこの時期の花の中では花径が大きめなので、寄せ植えの主役としても活躍してくれます。クリスマスローズの寄せ植えは、ガーデナーの安酸友昭さんにお願いしていますが、植え方にはちょっとしたコツがあるようです。 クリスマスローズは葉があまりない状態で、ほかの花苗より大きい鉢サイズで流通しています。ですから、鉢から抜き出した際の根鉢が大きいのと、草丈の違いから、普通に寄せ植えすると、クリスマスローズの株元にぽっかり空間ができてしまいます。そうならないように、株元部分では、苗を横に並べるのではなく、クリスマスローズの上に他の草花を置いて、隙間ができないようにします。その際、邪魔になる葉っぱがあればちぎってしまいますが、その後の生育には問題ありません。クリスマスローズは宿根草なので、花が終わった後も鉢で養生するか、地植えにしておけば、来年もまた咲いてくれます。 庭のクリスマスローズで作る華麗なブーケ クリスマスローズを植えて数年経った今年、株が充実して花数も増えたので、思い切って庭のクリスマスローズを切ってブーケを作ってみました。25本ほどの花茎の、両手にこぼれるほどのブーケができ、我ながら感動です。内心、今が盛りの花を切るのはとても勇気のいることでしたが、花瓶に活けると、さまざまなクリスマスローズの花の顔をじっくり眺めることができ、これは育てている者の特権だなぁと、なんとも贅沢な気分になりました。じつは、庭の花を素敵に飾れるように、フラワーアレンジメントのレッスンでスパイラルという花束の基本スタイルを学んだのですが、その甲斐あって、手早くきれいにまとめることができました。 庭の花のブーケを作ってみて思ったのは、あまり花を吟味して選ばなくても、適当にササッと切って束ねても、美しくまとまるということです。でも、よく考えてみれば、庭に植えるときにすでに花々が調和するように選んで植えているので、当然なのかもしれません。それに、新鮮さにかけてはピカイチ。アレンジメントという新しいテクニックを覚え、ますます庭の楽しみは広がる一方です。
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樹木

庭木にぴったりな「コニファー」! 人気品種や正しい育て方のコツは?
さまざまな魅力を持つ「コニファー」とは? Artush/Shutterstock.com コニファーとは、細い葉を密に茂らせる「針葉植物」の総称です。秋に落葉することなく、一年中瑞々しい葉を保つ常緑樹でもあります。エバーグリーンのため観賞用として人気が高いうえ、外からの目隠しや境界線となる生け垣にも使えます。クリスマスツリーにも利用できるので、庭木として1本植えておくと、毎年冬の飾り付けが楽しみになります。 コニファーは、樹種によって樹高が高くなるものもあれば、這うように広がるものもあり、グリーンの葉色もシルバー系、ブルー系、イエロー系などバラエティー豊かです。樹形も自然に円錐形にまとまるものもあれば、球形・半球形、ほうき状になるものもあります。また、樹種によっては剪定を工夫してトピアリー仕立てにできるものも。品種による性質の幅が広いので、好みのものを上手に組み合わせれば、オリジナリティーあふれるおしゃれな庭づくりに一役買ってくれます。ただし、暑さや寒さへの耐性が、樹種それぞれに異なるため、購入前によく性質を把握しておきましょう。 種類も豊富! コニファーの人気品種 一年中鮮やかなグリーンを楽しめるコニファーは、特定の植物の名称ではなく、「常緑針葉樹」の総称です。常緑針葉樹に属する樹種は数多く、さまざまな品種が出回っていますが、ここでは、特に人気の高い6種のコニファーをご紹介します。 ‘ゴールドクレスト’ Victoria Kurylo/Shutterstock.com コニファーの中でも最もポピュラーで、明るい黄緑〜淡い黄緑の葉を持つので、洋風の庭を明るく見せてくれます。‘ゴールドクレスト’は園芸品種で、樹種名はモントレーサイプレス、またはモントレーイトスギ。自然樹形で円錐形にまとまるので、冬は飾り付けをしてクリスマスツリーに利用してもいいでしょう。葉に触れると、山椒のような爽やかな香りが立ちます。生育適温は15〜25℃、最低気温は0℃以上で、コニファーの中ではあまり寒さに強くないほうです。高温多湿が苦手なため、梅雨から夏にかけては蒸れに注意し、風通しよく管理しましょう。成長が早く、原産地では樹高が20mにも達する高木で、日本で庭木として植栽しても5mにも達することがあります。あまり大きくしたくなければ、剪定でコントロールする必要があります。 エメラルドグリーン V.Lawrence/Shutterstock.com エメラルドグリーンはニオイヒバの園芸品種で、別名エメラルド、スマラグとも呼ばれています。名前の通りにエメラルドグリーンの発色が美しく、葉に光沢があるのが特徴。冬になると、やや褐色を帯びてきます。ヒノキ科らしい爽やかな香りも持っています。自然樹形で円錐形にまとまるので、冬はクリスマスツリーとして庭の主役におすすめ。日本の気候に合い、寒さや暑さに強く、生命力が強いので育てやすいコニファーの一つです。葉が密集して茂るので、目隠し用の生け垣としても利用できます。成長のスピードは速すぎず、遅すぎず、刈り込みにも耐えます。樹高は1.5〜3mに達するので、樹高を抑えたい時には定期的な剪定によって、スマートな樹形を維持しましょう。 ‘エレガンテシマ’ ‘エレガンテシマ’はコノテガシワの園芸品種として流通しているコニファーです。葉は全体に明るいグリーンで、新芽の時期になると葉先は黄色みがかかったグリーンに。気温が低くなると、やや褐色を帯びてきます。自然樹形は広円錐形で、葉は密に茂り、刈り込みにも耐えるので、生け垣にも利用可能です。成長スピードは速いほうで、枝が伸びすぎると樹形が乱れたり、芯が複数立ったりするので、定期的な剪定によって美しい樹形を保ちましょう。寒さが苦手で、庭に地植えできるのは東北南部以南の地域まで。また、高温多湿が苦手なため、梅雨から夏にかけては蒸れに注意し、風通しよく管理しましょう。最終樹高は8mにも達するので、大きくしたくない場合は剪定でコントロールします。 ‘ヨーロッパゴールド’ ニオイヒバの園芸品種として流通している‘ヨーロッパゴールド’。葉は黄色みを帯びた明るいグリーンで、触れると爽やかな香りが漂います。日向〜半日陰で生育しますが、日当たりのよい場所で育てたほうが、葉の発色がよくなるようです。新芽が出る頃は黄色みの強いグリーン、夏は濃いグリーン、冬はやや褐色がかるなど、季節によって表情が変わります。寒さに強く、高冷地でも地植えで育てられます。生育スピードは遅いほうで樹形が乱れにくいため、メンテナンスが楽なのも美点で、ビギナーにおすすめです。樹高は5mにも達しますが、芯を抑えて剪定すると、樹高を保つことができます。刈り込みに強く、目隠し用の生け垣として利用することも可能です。 ‘ブルーアロー’ ClaudiaMMImages/Shutterstock.com ‘ブルーアロー’は、ヒノキ科のジュニペルスの園芸品種です。青みが強いグリーンで、クールな表情を見せるコニファーです。自然樹形は、ほうき状の円錐形で、スマートな雰囲気を持っています。寒さには強い一方で、暑さにはやや弱い性質があり、蒸れに注意して風通しよく管理することがポイントです。生育スピードは速いほうで年間に20〜30㎝ほど枝が伸び、樹形が乱れたり、芯が複数本立ったりするので、定期的に剪定する必要があります。刈り込みにも耐え、目隠し用の生け垣に利用できるほか、円柱形に仕立てることも可能。原産地での最終樹形は約30mですが、日本で育てると5mくらいに達します。あまり大きくしたくない場合は、剪定によってコントロールしましょう。 ‘レッドスター’ ‘レッドスター’はヒノキ科のヌマヒノキの園芸品種で、「パープルフェザー」の別名でも流通しているようです。生育期の春から秋にかけて、葉は明るいグリーンですが、霜に当たると赤紫を帯びてくるので、季節によって葉色の変化を楽しめます。葉の先端をよく見ると、星のような形をしているのも特徴的です。生育スピードは遅いほうであまり大きくなりすぎないため、剪定のメンテナンスを抑えられるのも長所。葉を密に茂らせ、刈り込みにも耐えるため、目隠し用の生け垣にも向いています。日向〜半日陰で育ち、強い寒さにはやや弱く、生育適地は東北南部まで。高温多湿の環境も苦手で、蒸れると内部から枯れ込んでくるので、風通しよく管理しましょう。 コニファーを育てるポイント Viacheslav Lopatin/Shutterstock.com コニファーは常緑針葉樹の総称のため、多様な樹種が属し、自生地によって性質に差はありますが、育てるうえで注意すべきことはある程度共通しています。ここでは、コニファーを健やかに育てるための、5つのポイントをご紹介します。 【ポイント1】生育環境を整える Maria Evseyeva/Shutterstock.com コニファーのほとんどの樹種は、日当たりのよい場所を好みます。なかには半日陰の環境に耐えるものもありますが、特に黄色や青色などの葉色が美しい樹種では、発色をよくするには十分な日照が必要です。また、樹種に応じた土壌に整えることも大切。ニオイヒバの仲間やジュニペルスの仲間は、植え付けてしっかりと根付いた後は、割と乾燥にも耐えますが、レイランドサイプレスの仲間などは、極度の乾燥を嫌うものもあります。そして、コニファーは自生地の範囲が広いため、樹種によっては暑さに弱いもの、寒さに弱いものもあります。そのため耐寒性や耐暑性に配慮し、地域の気候に合う苗を購入し、適した環境で育てることも大切。コニファーは環境に適さないと枯れやすいため、十分な配慮が必要です。 【ポイント2】苗を選ぶ Olga Rolenko/Shutterstock.com コニファーは常緑針葉樹のため、一般家庭ではタネから育てるには困難な植物です。コニファーを育てる場合は、園芸店やホームセンターなどで苗を購入することからスタートします。同じ樹種の鉢苗がたくさん並んでいる場合は、その中からできるだけよい苗を選びましょう。じつは苗の良し悪しが、その後の成長に大きく関わるケースもあるからです。葉の一部が変色しているもの、触ってみると葉がポロポロと取れてしまうもの、枝がヒョロヒョロと伸びているもの、葉と葉の間がスカスカになっているものなどは避けて、枝が太く、株元がしっかりと充実しており、葉が瑞々しく勢いのあるものを選びましょう。お店のスタッフに選んでもらうのも得策です。 【ポイント3】土作りをする Oleg Kopyov/Shutterstock.com コニファーを鉢植えにして栽培をスタートする場合は、病害虫の発生を防ぐためにも、以前に植物を育てていた古い土を使い回しせずに、新しい培養土を用意しましょう。花苗店やホームセンターで販売されている、コニファー用や庭木用、観葉植物用などにブレンドされた培養土を利用すると、大変便利です。買い置きがあれば、新しい赤玉土や腐葉土などをブレンドして、自身でコニファー用の配合土を作ってもかまいません。地植えにする場合は、まず苗木よりも1〜2回り大きな穴をスコップで掘りましょう。掘り出した土に腐葉土や堆肥をよく混ぜ込んで植え穴に戻し、肥沃な土壌にします。水はけの悪い土壌であれば、腐葉土を多めにすき込んでおきましょう。 【ポイント4】植え付け・植え替えをする Radovan1/Shutterstock.com コニファーを鉢植えにする場合は、苗木よりも1〜2回り大きな鉢を用意しましょう。鉢底の穴に鉢底網を敷き、水はけをよくするために軽石を2〜3段分入れ込みます。その上に培養土を入れ、ポットから抜いた苗木を仮置きして高さの調整を。ウォータースペースを2〜3cm残して土を入れ込み、植え付けます。鉢の奥まで土が行き渡るように、割り箸などを使ってしっかりと詰め込んでいくとよいでしょう。植え付け後、1〜2年して鉢が窮屈になったら植え替えをします。 地植えにする場合は、植え穴を掘って土作りをしたところに植え付けます。水はけの悪い場所では、土を周囲よりもやや高めに盛って植えるとよいでしょう。複数本植える場合は、成長後の樹高を考慮して、木と木の間は十分な間隔を取っておくことが大切です。 【ポイント5】水・肥料を与える anastasiia agafonova/Shutterstock.com 鉢植え、地植えともに、植え付けた後はたっぷりと水やりします。しっかり根付いて枝葉を伸ばすようになるまでは、適湿を保って乾燥させないようにしましょう。根付いた後、鉢植えでは、表土が乾いたら鉢底から水が流れ出すまでたっぷりと水やりします。地植えの場合は、ほとんど不要ですが、夏の乾燥期など極端に雨が少ない時に、葉に元気がないようであれば水やりをして補いましょう。コニファーの中には湿気を嫌うものも少なくないので、水やりのしすぎに注意し、適湿を保つことが大切です。肥料は、鉢植えの場合は3月と6月に追肥します。緩効性化成肥料を用いると手軽です。庭植えの場合は、3月に油かすなどを含んだ有機肥料を与えるとよいでしょう。 コニファーを美しく元気に! 剪定方法 photowind/Shutterstock.com 「コニファーは自然に樹形が整い、剪定が不要でローメンテナンス」とイメージされがちです。しかし、じつのところは定期的に剪定をして、樹形をキープすることは欠かせない作業です。ここでは、コニファーの上手な剪定の仕方をご紹介します。 剪定方法 Ann Stryzhekin/Shutterstock.com コニファーは、生育スピードが速くて樹高が高くなりやすい樹種や、複数の芯を出して樹形が乱れやすい樹種があり、それぞれの特性に応じた剪定が必要です。ほとんどのコニファーは深い刈り込みに弱く、葉がない部分まで切る強剪定にすると枯れ込みやすいので、注意しましょう。最もポピュラーな円錐形のコニファーを剪定する場合、まず内側で枯れ込んでいる葉を手でしごいて落とします。次に、勢いよく長く伸びた徒長枝、下に向かって伸びる下り枝、地際から勢いよく伸びるひこばえなどは元から切り取りましょう。元から切ると樹形を崩す原因になりそうな徒長枝は、バランスのよい部分で切ります。最後に現状より1〜2回り小さい円錐形をイメージして、円錐のアウトラインからはみ出している、全体の枝を切って形を整えましょう。枝の切り方や剪定時期などによっては枯らしてしまうこともあるので、専門業者に依頼するのも一つの方法です。 剪定に適した時期 IVL/Shutterstock.com コニファーは、広葉樹に比べて萌芽性が劣る性質があります。葉がない部分の深い位置まで剪定すると、芽吹かずにそのまま枯れてしまうことが多いので、強剪定をしないためにも、1年に1度は整枝剪定をして、樹形をキープすることが大切です。コニファーの剪定の適期は、3〜4月と覚えておきましょう。これは、剪定した後に、新芽が芽吹きやすい時期だからです。コニファーは暑さに弱い性質の樹種が多く、真夏に剪定すると弱る恐れがあるため、蒸れそうだからといって軽々に剪定するのは避けましょう。一方で、寒さに弱いコニファーは、冬に剪定すると寒さに耐えられずに傷んでしまうこともあります。コニファーの剪定は、必ず適期に行いましょう。 コニファーをうまく育てて一年中緑を楽しもう! Viacheslav Lopatin/Shutterstock.com 円錐形に自然樹形がまとまるコニファーは、常緑針葉樹なので、一年中目に鮮やかなグリーンの葉を観賞できます。洋風の邸宅にマッチする樹姿も魅力で、庭におしゃれな雰囲気を醸し出してくれます。また、樹種を選べば、目隠し用や生け垣として仕立てることもできる優れものでもあります。冬にはオーナメントやリボン、イルミネーションを飾って、クリスマスツリーとして活用できるのも嬉しいところ。ここでご紹介した育て方のポイントや剪定方法を参考に、コニファーのある暮らしを楽しみましょう。 参考文献:上条祐一郎『切るナビ! 庭木の剪定がわかる本』NHK出版 (2017年第17刷)
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育て方

株分けとは? 植物を増やして元気にする栽培テクニック
株分けとは? 株分けをする2つの目的 定植から3年経ち、大きく成長したルバーブの株。横幅が1mほどになって畑を占領するので、株分けして小さくすることにしました。 株分けとは、大きく成長した宿根草の株をいくつかに分ける作業です。株分けの目的は2つあります。一つは植物を増やすこと。大きくなった株は3株、5株、10株と分けられるため、一カ所から庭のあちこちへ広げたり、友達にあげたりすることができます。もう一つの目的は、株の更新。株が大きくなりすぎると、密生して風通しが悪くなったり、成長が悪くなったりする場合があります。そんな時、株分けをすると一株が小さくなり、間がすいて再び生育がよくなります。 株分けの方法 では実際の株分けのやり方を見ていきましょう。素材は宿根草のルバーブ。茎を収穫してジャムなどにするタデ科の植物です。栽培をはじめてから3年ほど経ち、大株に育ったので株分けすることにしました。株分けの適期は春と秋ですが、今回は春のルバーブを株分けします。根っこを傷めないようにルバーブの周囲の土にぐるりとシャベルを入れた後、株元を持ってそっと掘り上げます。新芽と根っこのつながりを確認しながら切り分け、移動したいところに定植すれば完了です。誰かにあげるときは、鉢に植えるとよいでしょう。 ルバーブの根は下にまっすぐ伸びる直根性。周囲を深く耕して、根を傷つけないようにそっと掘り上げます。 一株に新芽(or 花芽)が一つはついているようにし、さらに根っことのつながりを見極めながら消毒した刃物やナイフで切り分けます。 一株を4つに切り分けました。一つを元の場所へ戻して植え付けて、たっぷり水やりを。一つは植木鉢に植え付けて、以前から欲しいと言っていた友人にあげます。残りは庭の別の場所へ。こうして、株分けで増えた株は、庭仲間にお裾分けができたり、株が耐えてしまわないように予備の株を育てることができたり。何よりも株が2倍に増えるのですから、花が2倍に増えたり、野菜類ならば、収穫量が増えたりと株分けは、いいことがいっぱい。 株分けができる植物とは? イチゴの株分け。photowind/Shutterstock.com 主に、地中に根塊をもち、地際から葉や枝を伸ばしている植物なら株分けができます。株分けができる主な植物は以下です。 【樹木】シャクナゲ、アジサイ、ブルーベリー、クチナシ、コデマリ、ユキヤナギなど 【草花】クリスマスローズ、アガパンサス、カンナ、アイビー、プリムラ、ラナンキュラス、カラー、ギボウシ、シャクヤク、シンビジウムやカトレアなどのラン類など 【野菜類】ルバーブ、イチゴ、アスパラガス、アヤメ、シバザクラ、オダマキ、ノギクなど 【観葉植物】ポトス、アジアンタム、ストレリチア、シダ類、スパティフィラムなど Sarycheva Olesia/Shutterstock.com なお、チューリップやムスカリ、スイセン、ユリ(百合)などの球根植物も植えっぱなしにしておくと、球根が増えて一見株が増えているように見えます。これは、親株となる球根の脇に1つ、2つと新しい球根ができていて、手で分けることができますが、これは「分球(ぶんきゅう)」と呼びます。 株分けのコツを覚えて、お得に増やしてガーデニングライフを充実させましょう。



















