家庭菜園をしてみたいけれど、「スペースがない」「どうしたらいいか分からない」と思っている人は意外と多いもの。でも、じつは家庭菜園には、広さなどそれほど必要ありませんし、難しいこともありません。ここでは住宅街の小さな庭で、車1台分の駐車スペースを確保しつつ、デッキ・菜園・芝生など、欲しいものを全て取り入れたガーデンの実例をご紹介します。スペースを最大限に活用した、アイデア満載の楽しい庭です。
目次
ビフォーは、雑草が繁茂していた庭

庭づくりをする前は、軽自動車2台分のスペースに雑草が繁茂していました。このままでは雑然とした雰囲気ですし、ヤブ蚊も発生してしまいます。このような雑草だらけの庭をどうにかしたいと思っている方は非常に多く、その手段としてコンクリートで覆ってしまうケースがよくあります。でもその前に、別の案を探ってみることを強くおすすめします。
庭をコンクリートで覆ってしまわないで!
コンクリートで覆われた地面は、日射を受け赤外放射という熱を発します。頭上からの日射に足元からの赤外放射が加わると、外気温が30℃でも体感温度は40℃にも上がってしまいます。コンクリートで覆われた面積が広ければ広いほど、この赤外放射の熱量は増し、室内の冷房効率も著しく低下します。
一方、地面が緑で覆われている場合、その表面温度はコンクリートと比較し10℃も低くなることが環境省から発表されています。
●庭づくりは暑さ対策にも効果絶大! 10℃も差が出る緑の実力
アフターは駐車もできて、家庭菜園も芝生もある庭に!

この庭の依頼を受けたのは、造園家の阿部容子さんが在籍する「かたくり工房」。公園や病院、マンションの庭、ショーガーデンなどを手がける一方で、個人邸の庭づくりを大事にしています。
施工にあたっては、庭の手前に駐車スペースを確保し、フェンスを仕切りにして奥をガーデンにしました。駐車スペースは全体をコンクリートで覆ってしまうと、前述のように高温になりすぎるので、芝生を張ってタイヤが通る部分だけを石張りに。タイヤが通る部分は踏圧で植物が育たないので、最初から石張りにしたほうが芝生の張り替えなどの手間も省けて効率的です。
スリッパのまま行き来ができるデッキ一体型菜園

フェンスの奥が、芝生とデッキ、菜園が揃ったプライベートエリアです。デッキと菜園は一体型になっていて、地面レベルがほぼ同じ高さです。リビングからスリッパのままデッキへ出て、菜園で野菜を収穫し、そのまま室内に戻るということが可能です。施工当時、まだお子さんが小さかったことから、できるだけ菜園を生活空間に近づけて、靴を脱いだり履いたりする手間も省けるようにしました。

隣家との境には、リンゴの木とジューンベリーを植栽してあります。ジューンベリーは春の白い花、初夏の赤黒い果実、秋には美しい紅葉と、楽しみの多い果樹です。果実は生で食べても甘酸っぱく美味しくいただけますし、ジャムなどにして保存することもできます。ジューンベリーを角地に植栽し、その両サイドにリンゴをエスパリエ仕立てにしました。エスパリエ仕立てとは、枝を水平に伸ばす果樹の仕立て方の一つです。枝をそのまま自然樹形で仕立てると、その下にある菜園が日陰になってしまいますが、エスパリエ仕立てなら陰を作ることなく省スペースで果樹栽培が可能なので、小さな庭づくりにはおすすめの仕立て方です。菜園は深さがあるので、ジャガイモやダイコンなどの根菜類も育てられます。
家族がゆったり集えるオリジナル「デッキ in テーブル」

デッキは家族が庭を眺めながらゆっくり過ごせるアウトドアリビングとして活躍します。デッキチェアが2脚置けますが、テーブルセットも置くと菜園までの動線の邪魔になるので、使う時だけ引き出して使える「デッキ in テーブル」を制作しました。使用しない場合は、デッキの中にしまえる仕掛けになっています。この写真は、このデッキを制作したのは「かたくり工房」スタッフで、テーブルは4人で囲めるくらいの大きさです。また、庭へ降りる際のステップは、上り下りしやすい段差であることはもちろん、奥行きも吟味。ステップに腰を下ろしてリラックスできるよう、十分な奥行きが取られています。

防犯対策にもなるメロディーフェンス

フェンスは格子状のデザインとし、庭への風通しや日照が確保できるようにしました。このフェンス、じつは音が鳴るのです。間に長さの異なる鉄筋が入っており、バチで叩くとメロディーが奏でられる楽しい仕掛けがあります。お子さんやその友人たちにも大人気です。
中央の白い大きなコンテナは、ライトが灯るライティングコンテナ。夜になると公道に面した駐車場側は明るく照らし出され、庭側は暗くなるので、プライベートエリアを守ることができます。このように、完全に壁などで覆ってしまわないほうが、防犯対策には有効です。
庭は五感刺激の宝庫

デッキを下りたエリアは芝生にしました。立水栓の周囲を玉砂利でデザインし、タイムも植栽してあります。玉砂利の上を裸足で歩くと足裏が刺激され、タイムの香りも立ち上ります。タイムは料理にも使えるハーブですし、五感への刺激は豊かな感性を養うきっかけにもなります。
立水栓の位置は意外と大事。庭の真ん中にあったほうが水まきの際にホースさばきが楽です。地植えの植物には基本的に水やりはいらないのですが、近年のような猛暑が続く場合には、菜園にも芝生にも水やりをしたほうがいいでしょう。特に、ナスは水が不足すると硬くて食べられません。葉っぱがくたっとなるような場合には、水やりが必要です。

このように、小さな庭こそプロの知恵と技術を借りましょう。最初にいいデザインをしてもらうことで、その後のガーデニングの楽しみや暮らし方が大きく違ってきます。「こんな小さなスペースをお願いしていいのかしら」「ガーデンデザイナーに依頼するなんて敷居が高い」と思われている方が少なくありませんが、そんなことはありません。気軽に相談して、充実したガーデンライフを叶えてくださいね。
Credit
アドバイス / 阿部容子 - ガーデンデザイナー/造園家 -

あべ・ようこ/岐阜県可児郡「かたくり工房」に所属。モデルガーデンのガーデンカフェ「ガズー(Garzzz)」を拠点とし、公共、企業、個人の庭を全国各地でデザイン、施工。ぎふ国際バラコンクール審査員として岐阜県「花フェスタ記念公園」でも活動。アメリカ園芸療法協会会員として米国のカンファレンスで学んだ知識や技術を生かし、病院のガーデンも施工しています。
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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