クンシラン(君子蘭)はあでやかな花姿と艶のある葉が特徴! 美しく咲かせるコツも解説
Vaclav Volrab/Shutterstock.com
太い花茎を立ち上げた先端に、ラッパのようなオレンジ色や黄色の花を咲かせる様子が大変華やかなクンシラン(君子蘭)。ゴージャスな花姿で「高嶺の花」のようにも思われがちですが、意外や意外、いくつかの条件さえ守れば、初心者でも簡単に育てられる植物です。この記事では、クンシランの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、種類、詳しい育て方など、幅広くご紹介します。
目次
クンシランの基本情報

植物名:クリビア・ミニアタ
学名:Clivia miniata
英名:Natal lily、bush lily
和名:ウケザキクンシラン(受咲君子蘭)
その他の名前:クンシラン、クリビア、クリヴィア
科名:ヒガンバナ科
属名:クンシラン属(クリビア属)
原産地:南アフリカ
形態:宿根草(多年草)
クンシランは、ヒガンバナ科クンシラン属(クリビア属)の植物です。名前に「ラン(蘭)」が入りますが、ラン科の植物ではありません。原産地は、南アフリカのナタールで、寒さにやや弱いため霜や凍結には注意を要しますが、0℃程度でも越冬できます。主に森林内や岩陰などの環境で自生するため、4~9月の強い日差しは苦手ですが、10~3月は直射日光に当たっても問題ありません。ただし急激に日照条件が変わる場合は、葉焼けを起こすことがあるので注意します。一般に日本の気候では鉢栽培にして管理するのが基本となりますが、関東地方以西の平地の都市部などでは通年屋外で栽培でき、場所によっては常緑樹の下などで地植えすることもできます。クンシランは常緑性の多年草で、さほど多くの手間をかけなくても毎年開花し、何年も生き続けるのでコストパフォーマンスの高い植物といえます。
筒状の花が下向きに咲く別種のクリビア・ノビリスが本来のクンシランとされますが、一般には上向きに咲くクリビア・ミニアタ(ウケザキクンシラン)がクンシランとして市場に流通しています。この記事では、クリビア・ミニアタをクンシランとしてご紹介します。

クンシランの花や葉の特徴

園芸分類:草花
開花時期:3〜5月
草丈:30〜50cm
耐寒性:やや弱い
耐暑性:強い
花色:オレンジ、黄、紅、ピーチ、ピンク、白、緑、バイカラー
クンシランの花色といえばオレンジ色が最もポピュラーですが、黄や白(淡いクリーム色)、ピーチなどさまざまな花色があります。開花期は3〜5月。葉の中央あたりから太くて長い花茎を伸ばした頂部に花をつけます。花径は5~13cm、筒状で弁先が開いたラッパのような花姿が一般的です。10~30輪がボール状にかたまって開花し、中には‘羽陽の華’のように1花茎で30~50輪も咲かせる品種もあります。花弁数では一重咲きのほか、八重咲きもあり、なかには‘釧路八重’のように牡丹咲きと呼ばれる重ねの多い品種もあります。

草丈は、30〜80cm。剣のように長くて厚みがある葉が地際から左右に交互に広がる姿も美しく、葉姿にも観賞価値があります。特に白または黄色い斑入り葉の品種や、葉が巻くような姿をした「パーマネント」と呼ばれるものは希少種として扱われています。
クンシランの名前の由来や花言葉

クンシラン(君子蘭)という和名は、クリビア・ノビリスを訳して付けられたもの。日本にもたらされた明治期には、クリビア・ノビリスがクンシランとされており、「ノビリス」が「高貴な」「高名な」という意味を持つことに由来しているようです。学名のクリビアは、19世紀にイギリスの植物学の発展に貢献した、クライブ家出身のノーサンバーランド公爵夫人にちなんだものです。
クンシランの花言葉は「高貴」「誠実」「情け深い」などです。
クンシランの品種

後述のとおり、クンシランは株分けで増やすことができますが、増殖率が高くないため、選抜された優れた個体はとても高価で、主に愛好家の間で取り引きされ、一般の園芸店などに流通することはほとんどありません。ホームセンターや園芸店に並ぶのは実生で繁殖された株で、葉幅が広く短く株姿がコンパクトな「ダルマクンシラン」と呼ばれるタイプのものです。これらは単に「クンシラン」や「ダルマクンシラン」などの名で店頭に並びますが、近年は花色などで選抜された実生系の品種も流通しています。また斑入りのものは、単に「斑入りクンシラン」の名前で流通しています。
実生系品種
光玲(みれい)

黄色から弁先がピンクを帯びる黄色まで色幅が広いので、購入の際には好みの色を選ぶとよいでしょう。早咲き。株姿はコンパクトで、まとまりよく生育します。
悠久(ゆうきゅう)

色の濃淡がありますが、褐色がかったオレンジ色で弁底はグリーンを帯びます。株姿はコンパクトで、まとまりよく生育します。
光咲(ありさ)
黄色に覆輪状にオレンジ色が入り、その入り方は株によって大きく異なります。発色をよくするためには、ある程度の日照が必要です。早咲き。株はコンパクトで、まとまりよく生育します。
紅陽(こうよう)
赤みがかったオレンジ色で、一際目立ちます。色幅が多少あり、発色をよくするためにはある程度の日照が必要です。早咲き。株姿はコンパクトで、まとまりよく生育します。
ヒラオ

珍しいグリーンの品種で、株によって色の濃淡があり、個体によっては黄色みの強いものもあります。全般に肥培状況が良好なものほど緑色が濃く発色します。中~大型の品種で、葉幅は細めで、ダルマクンシランよりも長いです。
栄養系品種
ビコ・イエロー
かつて最高峰の黄花とされていた品種で、巨大輪を咲かせます。株は大型。実生の株もこの名前で流通していることがあるので、オリジナルであるかを確認するとよいでしょう。
ジパング
花の大きさは中輪サイズですが、丸弁の整った黄色品種として、かつては高価格で取り引きされていた品種。株はやや大型です。
クンシランの栽培12カ月カレンダー
開花時期:3〜5月
植え付け・植え替え:4〜5月、10~11月
肥料:4〜11月
種まき:3~4月
クンシランの栽培環境

日当たり・置き場所
クンシランは関東地方以西の平地の都市部や、海岸沿いの温暖な地域では、通年屋外で栽培できます。それ以外の地域では冬季は室内で管理しますが、耐寒性は比較的強く、霜にあたったり凍結しない限り、0℃程度の温度でも十分に越冬できます。
なお、10℃以下の低温に40~60日さらされないと花茎が十分に伸びず、葉の間で花が咲いてしまうので、越冬時にはあまり暖かな場所に置かないほうがよいでしょう。日照条件では晩春~初秋の強い日差しが苦手で、葉焼けします。そのため年間を通して日陰(常緑樹の樹陰程度の明るさ。遮光ネットを張る場合は50%程度の遮光率)で栽培しますが、開花期は多少日差しを強めに当てたほうが美しく発色します。冬季に室内で管理する場合は、窓辺の日光の当たる場所が適します。
耐寒性・耐暑性
寒さには比較的強く、関東地方以西の平地の都市部では通年屋外で栽培することができます。神奈川県の横浜イングリッシュガーデンや港の見える丘公園では、常緑樹の下に地植えされた株がゴールデン・ウィーク頃に開花しています。耐暑性も特に問題なく、風通しさえよければ、昨今の猛暑や熱帯夜でも枯死することはありません。
クンシランの育て方のポイント

用土

基本的に過湿を嫌うので、目の粗い水はけのよい用土を用います。水はけの悪い土では根腐れを起こしやすいので、注意が必要です。ホームセンターなどでは専用の用土も販売されているので、それらを利用するのもよいでしょう。自身で培養土をブレンドする場合は、赤玉土中粒5、軽石中粒3、腐葉土2を混合した排水性のよいものにします。さらに元肥としてリン酸分を多めに含む緩効性肥料を施しておくとよいでしょう。
水やり

鉢栽培の場合、生育期(3月下旬~11月)は、表土が乾いてから1~2日してからたっぷりと与えます。休眠期(12月~翌年3月中旬)はさらに間隔をあけ、表土が乾燥してから3~4日たってから与えます。クンシランは過湿を嫌うため、いつも用土が湿った状態にしていると根腐れの原因になるので、与えすぎには注意が必要です。反面、乾燥にはとても強く、水を半月くらい与えなくても萎れるようなことはありません。
水やりの際は、軟腐病などの発生を予防するためにも、株元を狙って与えてください。特に開花中の花弁に水がかかると、花が傷むので注意が必要です。灌水の時間は、午前中が望ましいです。
肥料

元肥として緩効性肥料を施した後は、毎年3~4月、10月頃に、緩効性化成肥料を鉢土の上に置きます。高温期は軟腐病などの原因になるので、施肥は避けます。また肥料は窒素分の高いものは避け、リン酸分の多い肥料を与えたほうが病害が発生しにくく、花色もよくなります。
注意する病害虫

【病気】
クンシランに発生しやすい病気は、白絹病や軟腐病などです。
白絹病はカビが原因の周囲に伝染しやすい病気です。根や地際の茎に発生しやすく、初期は地際に褐色の斑点が見つかります。進行すると株元や土の上に白いカビがはびこり、株は枯死します。病株を発見したらただちに抜き取り、土ごと処分してください。土づくりの際に、水はけのよい環境に整えることが予防につながります。
軟腐病は細菌性の病気で、高温期に発生しやすく、特に梅雨明けから真夏が要注意。
成長点や地際の茎が腐って悪臭を放つので、病株はただちに抜き取り、土ごと処分してください。なお数年間栽培した株の場合、生長点が病気で枯死しても茎が生き残ることがあります。この場合は茎を植えておくと、そこから再度芽吹くことがあります。予防としては、水はけのよい用土を使用し、風通しをよくし、あまり多肥にしないこと、また灌水の際にはなるべく生長点に水がたまらないようにすることが大切です。また、害虫に食害された部分から病原菌が侵入しやすくなるので、害虫からしっかり守ることもポイントになります。
【害虫】
クンシランにつきやすい害虫は、ナメクジです。
ナメクジは花やつぼみなどを食害します。体長は40〜50mmで、頭にツノが2つあり、茶色でぬらぬらとした粘液に覆われているのが特徴。昼間は鉢の下や落ち葉の下などに潜んで姿を現しませんが、夜に活動します。植物に粘液がついていたらナメクジの疑いがあるので、夜にパトロールして捕殺するか、難しい場合はナメクジ用の駆除剤を利用して防除してもよいでしょう。多湿を好むので風通しをよくし、落ち葉などは整理して清潔に保っておきます。
クンシランの詳しい育て方
苗の選び方
一般にクンシランは開花鉢で流通し、店頭で苗を見かけることはほとんどありません。購入する際は、葉色が濃く、傷んでいないものを選びます。株がグラグラしたものは、根腐れしている可能性があるので避けましょう。
植え付け・植え替え

市販のクンシランの株は、小さな鉢に植えられていて、根詰まりの状態になっていることがあります。その場合は鉢増しをしたほうが、スムーズに生育します。作業の適期は4〜5月、もしくは10~11月です。
まず、現在の鉢よりも2回り大きな鉢を準備します。底穴に鉢底ネットを敷き、鉢底石を1層入れてから上記の専用の培養土を根鉢の大きさを考慮して少し入れます。株を鉢の中に据え、高さを調整しながら周囲に用土を入れていきます。用土がスムーズに入らない場合は、棒などでつついて入れるようにします。根鉢を抜いた際に根腐れを起こしていた場合は、腐った根を除去し、根鉢が入るくらいの小さな鉢に植え直します。いずれの場合も、植え付けの深さは株元が軽く埋まる程度とし、ウォータースペースを必ず確保してください。植え付けが終わったら、鉢底から水が流れ出るまで、十分に水を与えます。
クンシランは根が太く、成長と共に根詰まりを起こしやすいので、2~3年を目安に鉢替えをするとよいでしょう。また、植え替え前には水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。
日常のお手入れ

採種する予定がなければ、開花が終わった花茎は早めに切り取ります。病害の感染を防ぐために花茎を手で折り取ってもよく、その場合は後に残った花茎が枯れてきたら引き抜くと簡単に取れます。
また、クンシランは光が差し込む方向に新葉が片寄って展開するので、放射状にバランスよく草姿を整えるには、葉姿を見ながら週に2回ほど鉢を反転させて調整しましょう。
増やし方

クンシランは、種まきと株分けで増やすことが可能です。それぞれの増やし方についてご紹介します。
【種まき】
採種する場合は、開花時に雄しべの花粉を筆にとって、雌しべの柱頭に撫でつけて受粉させると、より結実しやすくなります。できれば同じ株の花粉を付けるよりは、別の株の花粉を付けたほうが、雑種強勢により丈夫な株が生まれやすくなる傾向があります。無事に受粉するとやがて果実が膨らみ始め、晩秋には赤や黄色に色付きます。着色したら果実を収穫し、取りまきにします。クンシランは種子を乾燥させてしまうと発芽しなくなるので、注意します。
クンシランの種まき適期は、室内であれば冬から行うことができます。まずは果肉を割って中から種子を取り出し、薄皮を剥いた後に流水できれいに洗います。黒ポットに市販の播種用土を入れ、種子が半分くらい埋まるように播きます。発芽後、根がうまく土に潜らない場合は、ピンセットなどを使用して土に埋まるようにします。葉が1~2枚になったら1株ずつ鉢上げし、株が大きくなるごとに順次鉢の号数を大きくしながら育苗しましょう。開花までは3~7年ほどかかりますが、手をかけた分だけ喜びもひとしおです。

【株分け】
クンシランの株分け適期は4〜5月、または10~11月です。株を植え付けて数年が経過すると、脇から子株が吹いてくることがあります。子株の葉が4~5枚になり、子株に十分な本数の根があることを確認できたら、株分けすることができます。子株の葉の枚数や根が少ないのに無理に株分けをすると、その後の生育が悪くなったり、枯れてしまうこともあります。そもそもクンシランは増殖率が悪いので、株分けはそう頻繁にはできません。また株分けをしなくても株が老化することはなく、むしろ大株にしたほうが一度に複数の花茎が上がって咲くので見応えがあります。この作業は、マストなものではありません。
クンシランの豪華な花を楽しもう

クンシランは、温度管理や葉焼けに多少注意を払う必要があるものの、それ以外はいたって手のかからない丈夫な植物です。年数をかけて育った大株は、同時に複数本の花茎を上げて咲き、大変に見事なものです。また関東地方以西の都市部では地植えができ、特に「日陰の乾燥地」という、一般には植物が育ちにくい環境で育てることができるので、これからの都市緑化にも大いに役立ちそうな存在です。豪華な花姿が魅力のクンシランを、ぜひ庭先やベランダなどに迎えてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。12刷り重版好評!「ガーデンストーリー」書籍第1弾『植物と暮らす12カ月の楽しみ方』(発行/KADOKAWA)発売中!
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