えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
遠藤 昭 -「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー-
えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
遠藤 昭 -「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー-の記事
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おすすめ植物(その他)

秋に輝きを増すグラスガーデンの魅力その1 ペニセツムの仲間
秋らしい美しさのあるグラスガーデン 秋風が吹き始めると、グラスは美しさを増す。そこで、今回と次回の2回に分けて、グラスガーデンについて紹介したいと思う。 グラスガーデンがブームになったのは、確か2003~4年頃だったと思うが、今でも人気は根強い。色とりどりの華やかな草花と比べると地味だが、だからこそ自然の奥深さを感じ、自然の持つエネルギーに心癒やされる。 グラスガーデンに欠かせない存在 ペニセツム(ペニセタム)の思い出 僕がぺニセツム‘パープルマジェスティ’に初めて出合ったのは、2004年に浜名湖で実施された花博の、ガーデニングコンテストの時だった。コンテナガーデン部門の予選を写真審査で通過し、本選会に行くことができた。材料を横浜や東京にある大型の園芸店を数点巡って調達し、前日に横浜から車で材料を積み込んで浜名湖に入り、現地でコンテナに植え込んだ。その中に、ぺニセツム‘パープルマジェスティ’を入れていた。これがその時の、本選会の写真だ。タイトルは「悠久の時」とした。古代植物のシダや、日本古来のイワシャジン、そして最新のぺニセツム‘パープルマジェスティ’を入れ、永い時代の流れに負けない美しさを表現したかったのだ。 結果は、残念ながらコンテナ部門では入賞しなかったが、別の作品がガーデニング部門で最優秀賞を獲得し、副賞でニュージーランド・クライストチャーチのガーデン巡りの旅行をいただいて夫婦で行くことができた。そんな思い出のぺニセツムなのだ。 このぺニセツムは前年の 「All-America Selections」の「Gold Medal Winner for 2003」に選ばれていて、当時は珍しかったのだ。初めて、都内の園芸店で見つけて、確か1株2,800円もしたと思う。賞品のニュージーランド旅行が掛かっていたので奮発した記憶がある。 ぺニセツム‘パープルマジェスティ’の美しい姿 このコンテスト以来、ぺニセツム‘パープルマジェスティ’のタネを毎年採取し、播いて育ててきた。タネは毎年大量に採取でき、発芽率も極めてよかった。 その3年後には、我が家でペニセツムでいっぱいのグラスガーデンを試みた。 鉢植えにしたこともあった。 毎年栽培しているが、その葉や穂の美しさに、飽きるどころかますます惹かれていっている。 さて、ペニセツムを栽培するにあたり、我が家はもちろん、退職後に相談員の仕事を始めた植物園の花壇にも随分と利用している。多くの来園者が、この黒光りする葉に驚きの表情を浮かべてくれる。 魅力的なペニセツムの仲間 さて、ぺニセツムの仲間には、‘パープルマジェスティ’以外にも魅力的な品種がある。ここでは代表的なものをいくつか紹介しよう。 パープルファウンテングラス まずは、ポピュラーなぺニセツムの仲間、パープルファウンテングラス(ペニセツム・セタケウム‘ルブラム’)だ。名前の通りに、濃い紫(茶)の葉と穂が、噴水のように放物線を描く。国内で大株を見かけることはなかったが、ロサンゼルス出張時に立ち寄ったディズニーランドで見つけたのがこの大株。お見事! その後、大株を育てたくて、冬に一旦温室に取り込み、春にもう一度地植えして2年生の大株づくりにチャレンジしてみた。ロサンゼルスの株には及ばないかもしれないが、まあまあ立派に育てることができた。 ペニセツム‘ファイヤーワークス’ もう一種、ぺニセツムで忘れてはいけないのが、ペニセツム‘ファイヤーワークス’。印象はまるで花火ですね。葉に浮かぶピンクのラインが魅力的。太陽に当たると、かなり色が濃くなる。 ‘ファイヤーワークス’も2年生の大株に挑戦してみたら成功した。大きいとカッコイイ! ペニセツムの増やし方 ‘パープルマジェスティ’はタネの採取で増えるが、パープルファウンテングラスと‘ファイヤーワークス’は、タネからの発芽が難しい。そこで、伸びた茎を10cm程度に切り、挿し芽を試みたら、簡単に成功した。 グラスの挿し芽なんて、あまり聞かないが、試したら成功したのだ。大切なのは何事もチャレンジすることだ。ガーデニングだって、チャレンジすると道は開ける。 チャレンジをすれば、成功の喜びは大きく、たとえ失敗しようと、何かしらの結果が見え、次には必ず喜びや達成感がある。タネを採取し育て、長年繰り返せば、その植物のより深い深淵なる魅力を見出すことができる。ペニセツムは、僕にそんな人生観に繋がる園芸の楽しさを与えてくれた植物だ。 長年に渡って、園芸の魅力を追求する楽しさを、ペニセツムの栽培で体験してみませんか? Credit 写真&文/遠藤 昭 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー。 30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)。 ブログ「Alex’s Garden Party」http://blog.livedoor.jp/alexgarden/
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樹木

レモンマートルの育て方とお茶の楽しみ【オージーガーデニングのすすめ】
レモンよりもレモンを感じる素敵な庭木、レモンマートル 今回紹介する樹木、レモンマートルは育てる人を幸せ感いっぱいにする「いいことずくめ」な植物だ。 これまで数々紹介してきたオーストラリアの樹木は、ユーカリをはじめティーツリー(メラレウカ)など、素敵な香りがするものが多い。このレモンマートルも、その一つ。香りの秘密は、シトラールという柑橘系の芳香成分の含有率が、果実のレモンやハーブのレモングラスなどよりも多いこと。植物の中で最も多いとされ、「レモンよりもレモン」といわれるのだ。ユーカリと同じフトモモ科の樹木で、シトロネラールという防虫作用のある成分も含まれており、ユーカリと同様に蚊よけの効果がある。 学名は、Backhousia citriodoraだが、この学名はイギリスの植物学者、ジェイムズ・バックハウスにちなんでつけられた。レモンマートルという名前は、葉の香りがレモンのようなので付けられた、分かりやすい名前だ。ちなみに、マートルとはギンバイカ(銀梅花)学名:Myrtus communis のこと。やはりフトモモ科の樹木だ。 こちらが、ギンバイカの花。甘い豊潤な香りを持つ。 Flowering Lemon myrtle tree. Photo/Tatters レモンマートルはオーストラリアの北東部クイーンズランド州の亜熱帯地域が原生地で、成長すると樹高約10mにも達する。 花が咲くと庭は甘い香りで満たされる レモンマートルは、葉の香りだけでなく、甘い花の香りも魅力的だ。僕自身、数年前に園芸店で開花株の香りに魅了されて、この株を連れ帰ってしまったのだ。 花は7月頃に咲く。白く可愛い花で、咲くと我が家の庭は、甘い香りに包まれる。葉は観葉植物としても美しいうえに、素敵なレモンの香りがして、花も清楚で見ているだけで癒やされる。さらには、レモンマートルは、日本でもハーブティーとしても人気が出てきた。オーストラリアでは以前から、かなりメジャーなハーブなのだ。 レモンマートルをハーブティーに 我が家でも時々、採りたてのレモンマートルの葉で、ハーブティーを入れる。 葉にナイフで切れ目を入れて、数分熱い湯に浸けるだけで、レモンの香りたっぷりのハーブティーが楽しめる。 もちろん、紅茶へレモン代わりにレモンマートルの葉を一枚浮かべても、酸味がないのにレモンの香りがする、しゃれた飲み物になる。暑い夏にはよく冷やし、ハチミツを加えて炭酸水で割ると、一気に暑さを忘れ、疲れた体もリフレッシュする。 レモンマートルの育て方8つのポイント この「いいことずくめ」のレモンマートルの育て方に触れておこう。 育て方を知るには、原生地の気候・自然環境を知ることだ。オーストラリアの北東部に位置するクイーンズランド州は、亜熱帯〜熱帯気候だ。このレモンマートルが自生するのは、グレートバリアリーフが広がる海岸沿い。 この地域の年間雨量は1,000〜2,000mmあり、オーストラリアでは多い方だ。ただし、雨は冬に多く降り、夏は乾燥する。つまり、日本の夏の蒸し暑さは苦手なのだ。 寒さには比較的強いが亜熱帯の植物なので、霜に当てたり、氷点下に温度が下がったりすると枯死することがある。関東以西地域の温暖な地域では地植えもできるが、関東以北では鉢植えにするのが無難だ。 比較的育てやすい植物だが、レモンマートルを育てるポイントは8つ。 寒さには弱いが、暑さに強い。ただし、蒸し暑さには弱い。水やりは控えめに。通常の植物は“表土が乾いたらたっぷり水を与える”だが、レモンマートルの場合は“葉が萎れかけたら、たっぷり水を与える”くらいの気持ちで。特に根腐れに注意。水はけのよい用土を使用する。プラ鉢より通気性があるテラコッタやスリット鉢がおすすめ。他のオーストラリアの植物同様に肥料は控えめに。使用する際は、弱めの肥料を!太陽には十分当てる。剪定は花芽を落とさないように、花後の7〜10月頃に行う。挿し木で増やせる。5~6月に鹿沼土などに普通の挿し木の方法でOK。挿し木についてはこちら。病害虫に比較的強いが、アブラムシとうどん粉病に注意。予防としては、風通しがよい日なたで育てることだ。 さあ、幸せ感たっぷりの香りを漂わせてくれる、こんな“いいとこずくめ”のレモンマートルを育ててみませんか?
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ストーリー

中欧5カ国を旅して出合った植物のある風景 後編
東欧諸国の風景と植物 2019年5月に中欧5カ国の旅に出た。5カ国とはスロバキア、チェコ、ハンガリー、ドイツ、オーストリアである。世界遺産を見て回るのが目的で、特にガーデニングとは関係のない旅であったが、どうしても気になるのは、街角や世界遺産の宮殿で見かける庭や植物である。前編では、中欧5カ国の旅のハンガリーとスロバキアに触れたが、後半は3カ国目のチェコ共和国からご紹介したいと思う。 チェコの美しい街並みに咲くマロニエ チェコの首都であるプラハというと、TVドラマの『のだめカンタービレ』のロケ地で有名だが、テレビで有名になったプラハ城の坂道と、ピアノコンクール決勝のスメタナホールは、観光先として押さえておいた。スメタナホールは、ラッキーなことに当日券が買えたのだ。 さて、前回も書いた通り、この旅ではニセアカシアやマロニエとよく出合った。プラハでも、日本ではあまり見かけないマロニエが彼方此方にあり、建物ととてもマッチしていた。 また、プラハでは、あまり花は見かけなかったが、市場でアザレアやペチュニアなどが売られていて、庶民的な風景を見ることができた。 ドレスデンに咲く花々 団体旅行は忙しい。プラハから、4カ国目のドイツのドレスデンへは日帰り旅行だ。ちなみに、プラハからドレスデンは片道およそ150kmである。 今回の旅行で見ることができた感動的な光景に、このバスの移動中に見た広大な菜種畑があった。視界いっぱいに果てしなく黄色い絨毯が広がるのだ。 植えられている菜の花は、もちろん菜種油用だ。生まれて初めて見る光景だった。菜の花だが、日本の菜の花よりも、少々小型のようだ。 ドレスデンは、建物がすべて黒くくすんでいて、天候の影響もあり一見すると少々暗い印象だった。しかし、街中で、こんな鮮やかなシャクナゲに出くわしたり、寒いはずなのに、地中海地方を思わせるオリーブやレモンの木があったりと、思いがけない出合いで暗い印象が一気に飛んでしまった。植物の持つ力は凄い。 また、ドレスデンの街では、前回記事の冒頭で触れた、サンザシもたくさん咲いていた。 世界遺産の街テルチ 再びチェコに戻って訪れたのが、世界遺産の街テルチ。この可愛らしい街に、これまた可愛らしい園芸店があった。季節のせいか、植物が日本の園芸店に比べ地味な印象である。 園芸店近くの道路沿いにあった花壇を映した一枚。個人的には好きですが、なかなか渋い植栽ですね。 そうそう、この街の雑貨屋で、こんなハンギングの鉢カバーも思い出土産に買ってしまった。今までも、海外を訪れたら日本にはない鉢カバーを結構買っているのだ。帰りは、この中に洗濯物を詰め込んで…。買い物も海外旅行の大きな楽しみである。 ミラベル庭園とハルシュタット さて、次に訪れたのはモーツァルトの街、ザルツブルク。オーストリアに入り、旧共産圏とは異なる、明るさと洗練された文化を感じた。 ザルツブルクといえば、外せないのはミラベル庭園ですね。上はミラベル庭園にある、パンジーの平凡な花壇。 この高い位置に配されたポットがカッコイイ。 そして、芝生に唐草模様のように植えられたこのような花壇が印象的だった。 さて、次は塩で有名なハルシュタット。今回の旅で、ちょっと意外だったのが、このハルシュタットの景色。これが本物の南アルプスなのだ。まさか、こんな素晴らしい光景が見られるとは! 事前の勉強不足が、かえって大きな感動に繋がったのだ。 そして、このハルシュタットは洗練された街なのである。街中には、何となく和の雰囲気を感じる園芸店もあった。 店内には、ちょっと目を引く素敵なものがあちこちにあった。 これらは芸術品とは言い難いが、なんともユーモラスな置物たち。 ちょっと欲しかったもの。羊歯の支柱だろうか? そして、街中ではこんなに巨大で素敵なイベリスの株を発見。 イベリスがこんなに大きくなるものだとは! 日本で大株栽培に挑戦したくなってしまった。 クレマチス・モンタナの絡む住宅。住む人がちょっと羨ましくなってしまう、素敵な佇まい。 ウィーンの風景とシェーンブルン宮殿 さあ、中欧5カ国の旅も残すところあとわずか。最終目的地はウィーンである。 今回の旅で、僕が最も楽しみにしていたのは、ウィーンフィルの新春コンサートが催されるウィーン楽友協会黄金のホールで、コンサートを聴くことだったのだ。チケットを事前に確保することができ、憧れの黄金のホールへ。演目のプーランクのオルガンコンチェルトのパイプオルガンの響きが、まるで夢の世界にいるようで、大満足だった。いつか、こんなホールで演奏してみたいものだ。 さて、今回の旅の庭のハイライトは、何といってもシェーンブルン宮殿である。 何しろ広い。この奥にはパンダのいる動物園もあるのだとか…。 この芝生の中の唐草模様のような植え込みは、ミラベル宮殿でも見られたが、花苗の数が少なくて済み、経済的で効果的? 全面花壇よりも、意外と管理が楽かもしれないなどと、余計なことを考えてしまう。 バラの季節には少々早かったが、満開時にはこの豪華な建物と相まって、その絢爛豪華な光景を想像するだけで楽しくなる。 ウィーンの街は、洗練されていて本当に素敵だった。自由時間が日曜日だったため、多くの商店は閉まっていたのだが、一際目を引いたのがフラワーショップ。あまりに素敵に見えて、思わずたくさんの写真を撮ってしまった。 僕は生け花の世界には疎いが、この中欧の旅では、あまり華やかな花に出合うこともなかったせいか、このウィーンの花がとても美しく感じられたのだ。 2回に渡ってお伝えした中欧5カ国世界遺産の旅は、いかがだっただろうか? 2018年に旅したコッツウォルズに較べれば、花に関しては地味な旅だったが、それぞれの歴史建造物と共に、長い間生き続けた樹木たちの存在価値を感じさせられた旅であった。帰国して、改めてまだ訪れたことのない、多くの日本の世界遺産と、その庭園や樹木の存在に興味が芽生えたのだった。
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おすすめ植物(その他)

夏花壇はトロピカルに! オススメのトロピカル花壇植物をご紹介
暑さも楽しむ夏花壇 夏の花壇といえば、ヒマワリやジニア、ニチニチソウなどを思い浮かべるが、ありきたりで面白くない。地球温暖化の影響で、ここ最近の日本の夏はまるで熱帯気候である。そんな暑い夏は、開き直って花壇もトロピカルにして、夏の気候を楽しんでしまおう。僕が緑化相談員をしている川崎市緑化センターでは、毎年、夏花壇はカラーリーフや熱帯植物を地植えにしてトロピカルムードを楽しんでいる。2019年のトロピカルガーデンを紹介しよう。 トロピカルガーデンを演出する花素材 夏花壇を演出する定番の花は、ストレリチアだ。別名、極楽鳥花(ごくらくちょうか)といわれるように、その姿は極楽鳥さながら。かつて、プラントハンターが南アフリカからヨーロッパに持ち込んだ時は、大変な人気だったそうだ。意外と耐寒性があり、冬は凍らないように防寒すれば、関東南部以西では露地で越冬する。横浜の我が家では、南側の軒下で20年以上越冬している。 南国ムードがあるカラーリーフで、耐寒性のある植物としては、ニュージーランド原産のコルディリネやニューサイランがある。これらの剣葉はシャープな雰囲気を醸し出す。 また、南国ムードを演出するには、やはり観葉植物が手っ取り早い。観葉植物は屋内でよく観賞されるものだが、屋外に地植えにして花壇の素材としてもよいのだ。 あとは、存在感のある銅葉のカンナや、秋には大きくなるハゲイトウを植えておくと、ボリュームが出る。 トロピカル花壇をつくるのに忘れてはいけないのが、カラーリーフの代表格のコリウスだ。挿し芽で簡単に増やせるし、成長も早く、剪定にも強いのでオススメのガーデニング素材。色や模様のバリエーションも豊富だ。 これらに加え、さらに熱帯花木のハイビスカスを植え込むと、トロピカルムードが一層盛り上がる。 トロピカル花壇のグラウンドカバーとアクセント これでほぼ花壇の骨格はできたので、後は隙間にアクセントとなるケイトウやグラスを植え、グラウンドカバーにヒポエステスやムラサキゴテン(紫御殿)、イポメアなどを植え込めば完璧だ。 これだけでも十分なのだが、ワンランクアップの少しおしゃれな花壇を演出するには、ダリアの‘黒蝶’や、銅葉のヘーベ、黒花のサルビアなどを植え込んでもよい。どれもシックな色合いが、色鮮やかなトロピカル花壇とよく似合う。 夏を楽しむトロピカル花壇、いかがだろうか? 10月頃にはグラス類が大きく茂り、観葉植物を取り去ると、素敵なグラス花壇に変身する。暑い夏を楽しむ一つのアイデアとして、ぜひ取り入れてみてほしい。 Credit 写真&文/遠藤 昭 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー。 30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)。 ブログ「Alex’s Garden Party」http://blog.livedoor.jp/alexgarden/
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育て方

オージープランツの増やし方|挿し木の手順と発根を成功させるコツ
オーストラリアの豊かなガーデンライフ 代表的なオージープランツの一つ、グレビレア‘ムーンライト’。 僕は現在プロのガーデナーとして、日本の茶庭からオージーガーデンまで幅広い造園と、コンテナガーデンや花壇のデザイン制作、そして「バラの育て方」や「多肉植物のリース作り」などの講習会を幅広くさせていただいているが、やっぱり得意分野はオージープランツである。 ハーデンベルギア。 僕は30年前に、メルボルンに駐在員として5年間過ごし、オーストラリア人の豊かなライフスタイルにカルチャーショックを受けた。日本で最近ようやく話題になっている働き方改革が既に熟成され、現地の同僚たちは、当時の日本のサラリーマンでは考えられない、お金ではない豊かな生活を楽しんでいた。そんな5年間を過ごした傍らには、常にユニークなオージープランツがあった。毎週末のように仲間とバーベキューパーティーをした庭にはグレビレアやカンガルーポーが咲き、郊外にドライブに行けばツリーファーンやユーカリの林があり、花屋の店頭にはバンクシアが溢れんばかりに咲いていた。 ピンクのボトルブラシ。日本でもブラシノキと呼ばれて普及している。 帰国後、オーストラリアの植物を育て始めたが、その先には、いつもオーストラリアのライフスタイルへの憧れがあった。オージープランツを育てることで、豊かなライフスタイルを保持したかったのだ。オージープランツは、それだけでもちろん素敵だけれども、オージープランツの普及と共に、オージーライフスタイルも広めたいというのが本音である。 さて、本題に入ろう。日本で挿し木というと、キク、アジサイ、ツバキなどを思い浮かべるが、じつはオージープランツの多くは、挿し木で簡単に増やせるのだ。実際、僕は、家のオージープランツから挿し木でたくさんの苗木をつくり、職場の植物園で手ごろな価格で販売し、オージープランツの普及をさせてもらっている。 そこで、今日はオージープランツの挿し木について説明したい。 意外と簡単!オージープランツの挿し木方法 それでは早速、オージープランツの挿し木方法について解説しよう。6~7月が挿し木の適期だ。基本は、日本で一般的に行われているアジサイなどの挿し木と同じである。 右から、グレビレア‘ムーンライト’、ボトルブラシ(ピンク花)、ウエストリンギア、ボトルブラシ(緑花)、メラレウカ‘レボリューションゴールド’、ハーデンベルギアの6本の挿し穂。 写真は、挿し穂と呼ばれるもの。挿し穂とは、挿し木に利用する枝や茎のことで、これを土に挿して発根させ、挿し木苗をつくる。健康な株から勢いのよい枝を選んで挿し穂にするとよい。 用意するもの 挿し木にする枝、鹿沼土、活力剤、発根促進剤 挿し木の手順 まず、挿し木にする枝を集める。乾かないように、枝を切ったらすぐに水を入れたバケツに浸ける。 枝を10cm程度に切って挿し穂をつくる。挿し穂をつくる際は、葉からの過度な蒸散を防いで挿し穂の負担を軽くするため、大きな葉がある場合は半分程度に小さくするとよい。また、土に挿す部分に葉がある場合は取り除く。 つくった挿し穂を活力剤を入れた水に1時間程度浸ける。ここでは「メネデール」を使用した。 挿し床にする容器に鹿沼土を入れ、土を湿らせておく。 湿らせた鹿沼土に棒で穴をあけ、植え穴をつくる。 発根促進剤を挿し穂の先端に付ける。ここでは「ルートン」を使用。 発根促進剤の「ルートン」がしっかり付着した挿し穂。 穴に挿し穂を植え付ける。 植え付けたら、軽く押さえて倒れないようにする。 植物の名前が分からなくならないよう、それぞれの挿し穂に名札を立てる。 これで挿し床のでき上がり。この後、日陰で湿度を保つようにすると1~2カ月で発根する。 挿し木で育てた苗は、親の性質をそのまま受け継ぐ。実生に比べ、開花までの期間が短縮されるため、翌年には開花することも多い。 以下が挿し木1年後の姿。早いものは花をつける。 花芽を付けたグレビレア‘ムーンライト’の挿し木苗。 4年も経つと、どれも立派な姿になる。下の写真は、挿し木苗から育ったボトルブラシとメラレウカ‘レボリューションゴールド’。我が家の庭で大きく成長している。 ボトルブラシ。 メラレウカ‘レボリューションゴールド’。 この数年で、職場の川崎市緑化センターで、挿し木から育てたオージープランツの苗木を、おそらく数百本以上販売・普及してきたと思う。彼方此方で大きく育ち、開花している姿を想像するだけでウキウキする。仲間が増えるのは楽しいことだ。 これからも挿し木でオージープランツを増やし、オージープランツの普及を継続するとともに、豊かなオージーライフスタイルを広めていきたいと思う。
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ガーデン

中欧5カ国を旅して出合った植物のある風景 前編
2019年、中欧5カ国を巡る旅 2019年5月に中欧5カ国の旅に出た。5カ国とはスロバキア、チェコ、ハンガリー、ドイツ、オーストリアである。2018年に旅したイギリス・コッツウォルズのガーデン巡りとは異なり、世界遺産を見て回るのが目的で、特にガーデニングとは関係のない旅であった。とはいえ、どうしても気になるのは、街角や世界遺産の宮殿で見かける庭や植物である。きっと職業病のようなものだろう。じつは、旅に出る前に5年間ウィーンに駐在経験のある知人から、「あの辺のガーデニングは期待できないよ!」と言われていた。はて、結果は如何に? あまり話題にされることのない、中欧の植物&ガーデンを綴ってみたいと思う。 ヨーロッパで出合ったサンザシ まず、最初の訪問地はブラチスラバ。余り聴きなれない地名だが、れっきとしたスロバキアの首都である。5月とはいえ、寒波で最高気温が7~8℃という、真冬のような気候だった。 バスを降りてまず目についたのが、このサンザシ(山査子)である。街路樹なのだ。 僕の中でサンザシといえば、盆栽のイメージしかなかったのだが、まさかスロバキアの街路樹で遭遇するとは、驚きだった。 ところが、このサンザシには、その後の訪問地の数カ所で遭遇し、今回の旅で一番印象に残った植物となった。下はドレスデンで出合った満開のサンザシ。 そして、かのウィーンのシェーンブルン宮殿にもたくさんのサンザシが! 今までにも海外旅行で、日本の紅葉やヤツデ、アオキなどを見かけ、ちょっと嬉しい思いをしたことはあったが、盆栽のイメージしかなかったサンザシが、ヨーロッパの彼方此方に街路樹として登場したのは意外だった。なお、帰国後に調べてみると、西洋サンザシはメイフラワーと呼ばれ、ヨーロッパでは街路樹などによく使用されているとのこと。日本でもサンザシを街路樹に植えると素敵ではないだろうか。 さて、ブラチスラバは中世の街を思わせる美しく芸術的な街で、彼方此方に彫刻があった。 そして、そんな彫刻とともに街を彩るのが寄せ植えなどの花々。 レストランの前にはこんなポットが。植えられている花は平凡なペチュニアだが、スロバキアの言葉が書かれた樽の上に置く演出がユニークで面白い。 ブダペストの街を散策 2つ目に訪れた国はハンガリーのブダペストである。ドナウ川をはさみ、西岸のブダと東岸のベストが合併した街なのだそうだ。 ドナウ川ナイトクルーズは寒かったが、美しくライトアップされた街並みが素敵だった。もっとも、僕らが乗った2週間後に、このクルーズで事故があった。思い起こせば、救命具とか避難の説明はなかったような…。思い出すと恐ろしい。やはり海外旅行はリスクが伴う。 団体旅行で行くと、必ず「あら、あの花はなにかしら?」と誰からともなく、独り言のような声が必ず聞こえる。別段僕の身分は明かしていないのだが、つい、「ニセアカシアですね」とか、「マロニエじゃないですか?」などと得意げに答えてしまう。 そうです。ブタペストにはニセアカシアとマロニエがたくさん咲いていたのです。 ブダペストの街中で、らせん状に仕立てられたちょっと素敵なトピアリーに出合った。ヒノキ系だろう。ちょっと真似したい気持ちになる。 バルコニーのフレームを赤い花で飾るのはゼラニウム。ゼラニウムもヨーロッパの鉢植えでは定番の花ですね。 素朴な家々や草花が愛らしい ハンガリーのホロック村 3日目はブタペストから、約100km離れた、世界遺産のホロック村へ。人口がわずか340人の、ハンガリーで一番美しい村だそうだ。まだ、あまり日本の観光客が訪れない場所らしい。閑静で小雨も降り、しっとりとした落ち着いた街だ。 家々の壁面も素敵だ。思わずカメラを向けてしまった。 草花も素朴な佇まい。 枯れ木や標識などに、瓶やポットを飾るのがホロック風? 多肉の飾り方がユニーク。並べられているのは、サルの腰掛けだろうか? ホロック村はとても可愛らしい村だった。ただ、一日かけるのならブタペストに留まり、もう少し深く観光してもよかったかもしれない。海外旅行の日程を決めるのは、楽しいながら難しいものだ。 レドニツェ城の広大な庭園 4日目はブタペストを離れ、途中、レドニツェ城で庭園散策。 レドニツェ城と、ヴァルチツェ城で283㎢という広大な面積だそうで、東京23区の中でも大きい世田谷区が58㎢ほどだから、その5倍近くだ。如何に広大なのかが分かる。 このレドニツェ宮殿はリヒテンシュタイン家の夏の別荘として使われていたという。なんともスケールの大きな話だ。何しろ庭が広く、どこまでが全敷地なのだか分からない。 庭園は主にフランス式だ。季節的に花は少なかったが、きっと1カ月後に訪れたら素敵な花壇を見ることができると思う。 そして庭園の片隅には温室も! まさか、中欧の旅で温室に巡り合えるとは思わなかった。 真冬並の寒さの中で、熱帯の花メディニラ・マグニフィカがとても美しく感じられた。 温室の中では、可愛いミッキーマウスツリーとも出合うことができ、ちょっとホッとしたひと時であった。 意外なものと出合うと、やはり印象に残る。桐ダンスに使うキリの木が、こんな所に! 遠い異国で思いがけない植物との再会があるのも、旅の楽しみの一つだ。 あっという間に、前半の4日間が過ぎた。 次回は続きの旅で出合った植物のある風景を紹介しようと思う。お楽しみに! ⚫︎中欧5カ国を旅して出合った植物のある風景 後編
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宿根草・多年草

イングリッシュガーデンの名脇役! デルフィニウムが華やかに咲く庭づくり
イングリッシュガーデンを象徴するデルフィニウム かつてイングリッシュガーデンが流行り、ガーデニングブームが最高潮だった頃のガーデニングショーに行くと、必ずイングリッシュローズとデルフィニウムがたくさん使われていた。かくいう僕も、当時ガーデニングコンテストに応募する時は、デルフィニウムをよく使用した。 下の写真が、その時の応募写真(ガーデニング雑誌『園芸ガイド』にて2003年に開催されたコンテストで、グランプリをいただいた応募写真の一部)。やはり、ブルーの花が多数咲くデルフィニウムが主役になっていた。 あれから17年の歳月が流れ、ふと今年、職場である川崎市緑化センターの花壇に我が家のベンチを持ち込み、イングリッシュガーデン風の花壇を制作。デルフィニウムを中心に植栽したら、これが来園者に大好評なのだ。意外と一般の方々がデルフィニウムを見る機会は少ないようだ。 「外国の景色みたい!」「この花、日本でも育つのですか?」「ガーデンショーに来たみたい!」…、と感動の言葉を口にしてくださる。 正直なところ、時代遅れかなと心配したが、やはりデルフィニウムの豪華さや華やかさは、20年近い歳月を経ても衰えることがなく、多くの来園者が感動してくださり、このコーナーは毎日賑わっているのだ。わざわざ事務所に御礼を言いに来てくださる方もいらっしゃるほどだ。 デルフィニウムとは このデルフィニウム(学名:Delphinium)は、キンポウゲ科の植物で、原産地はヨーロッパ・北米なので、環境的に日本の夏の暑さは苦手だ。本来は多年草だが、日本の暖地では夏を越すことができず、一年草扱いされる。 イングリッシュガーデンの本場イギリスでは、多年草として栽培されるので大株に育ち、昨年イギリス旅行をした時には、彼方此方で2mを越すような巨大なデルフィニウムにたくさん出くわし、その大きさに圧倒された。 ちなみに、インターネットの情報によると、学名のDelphiniumの由来は、ギリシア語でイルカを意味するDelphisで、 これはつぼみの形がイルカに似ていることに由来するという。 そこで、手持ちの写真の中からつぼみの写真を探してみた。なるほど! 可愛いイルカだ。 ところで、豪華な花姿を持つデルフィニウムは、花径数cmの花が穂状に縦に並んで咲いているように見えるが、実はこの花は、花弁のように見えている部分は萼片である。本当の花は中心で、花弁が集まり小さく咲いているように見える部分なのだ。 また、デルフィニウムはバラの最盛期と同時期に咲き、バラとの見た目の相性がとてもよいことでも知られている。爽やかな白やブルーの花が、艶やかなバラを一層引き立ててくれる。 デルフィニウムの白とブルーは爽やかで、5月の新緑に映え心癒される色だ。 デルフィニウムの育て方とタネの採取方法 最後に、デルフィニウムの育て方についてご紹介しよう。 デルフィニウムは、春先に園芸店などでポット苗を入手することができるが、タネから育てるのも楽しい。発芽適温は15~20℃で、あまり暖かいと発芽率が落ちるので、関東地方では10月の中旬~下旬頃にタネを播くとよい。本葉が2~3枚になったら、3.5号ポットに移植して育苗する。日当たりのよいところであれば、冬でも成長するので、液肥を2週間に一回ほど施すとよい。 これは1月中旬の様子。 この後、花壇などに定植するが、その際には苗と苗の間に30cmほどの間隔が必要だ。植え付けの前に、土に腐葉土、堆肥、元肥をしっかり漉き込んでおこう。なお、この時期は寒さが厳しいので、霜柱の被害を防ぐために、植え付けたらマルチングで寒さ除けをしたほうが無難。あるいは、一旦7号鉢に鉢増しし、日当たりのよい軒下で育て、5月に花の色が判明してから花壇に植え付ける方法をとると、寒さ対策にもなり、配色デザインをきれいにまとめることができる。もちろん、そのまま鉢で楽しんでもOK。鉢植えの場合は、2週間に1回程度、液肥を与えるとよい。なお、倒れやすいので、支柱を添えるのをお忘れなく。 デルフィニウムのタネを採取する場合、必ずしも親世代のクローンができるとは限らないが、花後に採取し、ポリ袋に乾燥剤と共に入れて冷蔵庫の野菜室に保管し、10月に播くと、自家採取したタネで翌年の花を楽しむことができる。 併せて読みたい ・知っておきたい! 流行中の薔薇トレンドとオススメ品種10選 ・【初めてのバラ選び】河合伸志さんに教わる世界で最も厳しいADR認証 ・デルフィニウムを初夏の庭に咲かせよう!種類&育て方
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黒花はカッコいい! 令和の新しいスター花 ガーデニングにオススメの黒花12選
「カッコいい花」黒花 僕は黒が好きだ。黒い服を着こなすナイスガイに憧れる。かつて、黒という色は不吉な色とされ、バブル時代の「黒服」は、決してよいイメージではなかった。ところが、以前は紺色のスーツが定番だった学生の会社訪問の服装も、最近は黒のスーツに代わり、新入社員も黒のスーツが定番となった。黒服の似合う男は知的でカッコイイ。時代と共に、色のイメージも変化するものだ。 そして花の世界でも、平成の中ごろから、黒花は「カッコイイ花」として人気が出てきている。かつては黒い花が「気持ち悪い」とか「縁起が悪い」とか、「不気味」とかいって嫌われたのに、これは大きな変化だ。きっと、新しい令和時代には、黒花はトレンドな花となり、もっと人気が出るのでは? ということで、令和最初のレポートは「黒花特集」としよう。 一口に黒花といっても種類豊富 最近は、さまざまな黒花が簡単に入手できるようになった。 一般的に多くの人は、子どもの時は赤やピンクや黄色といった色とりどりの花が好きで、大人になると、ブルーガーデンやホワイトガーデンのように青花や白花、そしてハーブやバラなどの香るモノが好きになり、さらに黒花や緑花へと嗜好が変化するようだ。そして高齢化と共に、子どもの頃の趣向に再び回帰してゆくようにも思える。 中には花よりもシダとか、グラス類やリーフ系に走る人も多い。また、黒花は、こうしたシダとか、グラス類にもよく似合うのだ。黒花とシダやグラスとの組み合わせは、冷静で聡明な黒服の似合う男のような雰囲気が出る。 僕が最初に、カッコイイ黒花に出合ったのは、もう30年近く前のこと。その花がブラックキャット(学名:Tacca chantrieri )だ。園芸店で見つけて連れ帰ってしまった。しかし、一般家庭で育てるのは難しく、枯らしてしまった。今は職場の植物園の温室で育てているが、なかなか開花は難しい。 その後、さまざまな黒花を育てた。しかし、黒花といっても、本当の黒の花は少なく、多くは臙脂色だったりする。 ここでは、僕が育てた範囲で、「黒花」の「黒さ」ベスト12を以下に紹介する。 「黒い」花ランキングベスト12 12位:ツバキ‘ナイトライダー’ 草花ではないが、花木であるツバキにもこんなカッコいい黒花が咲く種類があるのだ。挿し木で比較的簡単に増やすことができる。 11位:サルビア 昭和時代のサルビアは赤が主流だったが、最近はさまざまな色が誕生しているようだ。 特に黒い花として流通しているのは、サルビア‘ディスコロール’。シルバーリーフがより一層黒花を引き立てる。 10位:チューリップ‘ブラック・ヒーロー’ チューリップも最近は黒花が増えた。写真は‘ブラック・ヒーロー’。チューリップを翌年も咲かせるには、花後すぐにタネができないように花を切り取り、お礼肥をしっかり与え、太陽に当てて球根を太らせるのが大切。6月末に葉が枯れたら掘り上げる。植え付けは秋冬に。 9位:ジャーマンアイリス‘ハローダークネス’ 青から、白、虹色、バイカラー(2色咲き)など、多くの色バリエーションがあるジャーマンアイリスの中にも、ベルベットのような質感の‘ハローダークネス’など黒花種も存在する。なお、球根の植え付けの際には深植えは禁物。やや青みがかった黒だが、気品あふれるジャーマンアイリスだ。 8位:ヤグルマギク‘ブラックボール’ 別名にコーンフラワーやセントーレアなどとも呼ばれるヤグルマギク。放射状の花形が矢車のようで、昭和時代に流行った一年草の矢車菊のことである(当時は矢車草とも呼ばれていたが、ヤグルマソウは別種)。青花のイメージが強い花だが、最近は黒花のタネも通販などで手に入れることができる。 7位:ダリア‘黒蝶’ かつては、黒ダリアでは‘ブラック・モナーク’という品種があったが、最近は入手することができず、‘黒蝶’が一般的。4月に球根を植えつけ、11月に掘り上げる。7月の花後に、一度バッサリと切り戻すと、秋にも花を楽しむことができる。 6位:カラー‘ホットチョコレート’ カラーも球根から育てることができ、4月に植え付けると7月には開花する。高温多湿を嫌うが、夏の管理をうまくすれば、翌年も咲かせることができる。‘ホットチョコレート’は、茎まで黒く全体的にシックな印象。 5位:フリチラリア・ペルシカ グレーがかった黒花が鈴のように枝垂れて多数開花する。秋から球根が販売されるので、10月に植え付けると、翌春には開花する。ただし、暑さや蒸れが苦手で、夏越しが難しい。 4位:ビオラ‘ブラックデライト’ 花の中央にちょこんと入る黄色い目がアクセントになる黒花のビオラ。すっかりお馴染みになった黒花だ。最近ではメジャーな品種になって、ホームセンターでも販売されている。花がら摘みと追肥の手入れが長く咲かせるコツ。 3位:クリスマスローズ黒花系 かつては‘ルーセブラック’が有名だったが、最近は八重咲き品種でも黒花が出回っている。花期も長く、品のある花だ。自家採取したタネからでは、黒花は咲きにくいため、株分けで増やすとよい。 2位:ペチュニア‘ブラックチェリー’ ペチュニアというと、ピンクとか白とか明るい色が多いが、こんな真っ黒な種類もあるのだ。雨に弱いのが難点。普通のペチュニア同様に、花がら摘みと追肥が長く咲かせるためのコツ。最近では、花びらが黄色く縁取られる八重咲きの黒花‘黒真珠’も人気だ。 1位:黒花タチアオイ ホリホックともいわれている。本当に非の打ち所のない黒である。光沢のある花弁も美しい。開花期は7月。タネから比較的簡単に育てられる。虫がつきやすいので、予防をしっかりとする必要がある。 以上、僕が、この20年ほどの間に育てた黒花だ。 今、こうしてリストアップして感じるのは、やはり黒花が随分と入手しやすくなり、一般化したことだ。きっと令和の時代には、また新しい黒花が誕生し、楽しませてくれることを期待したい。
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【ハナショウブ(花菖蒲)】令和時代にも注目したい、色彩豊かな日本の伝統園芸植物
見直される日本の伝統園芸 「初春の令月(れいげつ)にして、気淑(よ)く風和(やわら)ぎ、梅は鏡前の粉を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香を薫らす」 新しい年号「令和」の出典である万葉集の歌では、「梅」と「蘭」が登場し、令和時代は、日本の古典園芸が見直される予感がする。平成時代は「イングリッシュガーデン」に圧倒されてしまった日本の伝統園芸だが、しかしそこには、西洋の園芸にはない魅力が存在する。それは、日本の気候風土と日本人独特の感性のきめ細やかさ、奥ゆかしさが創り出した芸術的な美しさだ。長い歳月をかけて作出されたさまざまな品種には、文学的な名前が付けられ、詩歌にも歌われて、当時の園芸愛好家たちの知的レベルの高さがうかがえる。 梅雨の煌き ハナショウブ さて、これから迎える梅雨に咲く花といえば、紫陽花とともに、忘れてはいけないのがハナショウブ。ニホンサクラソウのように、何となく年寄り臭いイメージを持つ人が多いかもしれないが、ニホンサクラソウ同様に奥が深いのだ。これから初夏は、各地の植物園でハナショウブ展が開催されるタイミングなので、ぜひその魅力を再発見してほしい。 定年退職してからの植物園勤務を契機に、ツバキ、サクラソウ、サツキ、ハナショウブ…と、季節とともに伝統園芸の洗礼を受け、そして、日々さまざまな園芸相談も受けているのだが、自分の脳内で、園芸世界が宇宙誕生のビッグバンの如く爆発しているような感覚である。園芸世界は宇宙のように広く果てしない。その宇宙のような世界でも、燦然と一等星のように輝く星の一つが、ハナショウブなのだ。 ハナショウブは梅雨空のもとでも、碧空のような鮮やかな青色系を中心に、華麗優美な花姿を見せてくれる。江戸時代を中心に、日本各地で数多くの品種が育成され、その数は2,000種以上とも、また咲き方や絞り、覆輪の組み合わせを含めると5,000種以上ともいわれるほど。梅雨時のしっとりとした風情と、多彩な花の形や花弁の色・柄のバリエーションが魅力の花だ。 ハナショウブとよく似た花の見分け方 ハナショウブは、よくアヤメやカキツバタ、ショウブ、さらに最近はジャーマンアイリスとも混同されるようだが、それぞれ違いがある。まず、ショウブは菖蒲湯に使用されるもので、花はガマの穂のような形状をしており、観賞に向く花ではない。ハナショウブは、葉がショウブに似ていたので、ハナショウブと呼ばれるようになったとのこと。 花を見て、よく似た花を咲かせるアヤメやカキツバタと見分けるには、花弁の根元に注目するとよい。ハナショウブは花弁の根元に黄色い部分が見える。アヤメは花弁に独特の網目模様が見える。カキツバタは花弁の根元に白い目のような模様が見える。一方、最近、増えているジャーマンアイリスは、花が大きく派手で、ハナショウブの持つ独特な繊細さや、しっとり感がない。 上の3枚はジャーマンアイリス。黒花はカッコいいが、しっとりとした優美さはない。 そして、ハナショウブの花の特徴は、花弁の根元に黄色い部分が見えることだ。 ‘勇獅子’という江戸系で垂れ咲きの六英花。花弁の根元が黄色いことが分かる。 種類豊富なハナショウブの系統と品種 ハナショウブの品種は、大きく分けて、花の咲き方と、かつて栽培が盛んだった品種の育成地で分類されることが多い。 花の咲き方は、花弁を基準に、「三英咲き(さんえいざき)」と呼ばれる3枚の花弁が大きく目立つものと、6枚の花弁が広がる「六英咲き(ろくえいざき)」、そして「八重咲き」などがある。 また、品種の育成地によって、「江戸系」、「伊勢系」、「肥後系」の3タイプに大別されるが、これらの交配種もあり、さらに、種間交配によって育成された黄花品種や、アメリカなど海外で育成された品種もある。 江戸系のハナショウブ 江戸中期頃に初のハナショウブ園が葛飾堀切に開園し、歌川広重によって堀切のハナショウブが築山などと共に浮世絵に描かれた。浮世絵を通して、江戸系のハナショウブは屋外で遠目に観賞されていたことが分かり、屋内で観賞する肥後系や伊勢系とは異なる特徴が生まれたと考えられる。こうした観賞方法にも品種改良の方向性が見え、江戸系は色とりどりの多彩な色調で、鉢植えより庭植えにして群生させると映える品種が多いそうだ。 ‘相生’。三英咲き(さんえいざき)と呼ばれる3枚の花弁が特徴。 伊勢系のハナショウブ 一方、伊勢系や肥後系は、屋内観賞用に品種改良が重ねられた。伊勢系のハナショウブは花弁が垂れるのが特徴で、伊勢ナデシコ、伊勢ギクと共に、伊勢三花と呼ばれるに至った。花弁が3枚の三英花(さんえいか)が多い。 肥後系のハナショウブ 肥後の国(現在の熊本県)で室内観賞向きに栽培されてきた品種である。肥後熊本藩主細川斉護が、藩士を菖翁のところに弟子入りさせ、満月会によって現在まで栽培・改良が続けられている。門外不出という会則を現在も厳守している点が、他系統には見られない掟である。花が大きく豊潤な印象で、花弁が6枚の六英花(ろくえいか)が多い。 長井古種系のハナショウブ 江戸に持ち込まれる以前の原形を留めたものとされ、江戸後期からの品種改良の影響を受けていない、江戸中期以前の原種に近いものとされている。長井古種系と他系の品種を掛け合わせて作られた新品種を「長井系」としている。 その他の品種 ハナショウブには、日本国内だけでなく、海外で改良された品種もある。下の2つはアメリカで作出された品種だ ツバキなどと同様に、海外で育種された花は、大ぶりのものが多い印象だ。 ハナショウブの育て方 ハナショウブを育てるにあたっては、次のようなポイントを押さえておこう。 水やり 菖蒲園を見学に行くと、ハナショウブは水に浸かった状態で栽培されているので、ハナショウブは常に水に浸かっていないといけないと考えがちだが、これは主に修景効果のためであって、じつは水に浸けておく必要はなく、鉢植えや花壇で育てることができる。ただし、つぼみを持ってから開花期の間は水分を十分に必要とするので、鉢を腰水につけておくとよい。展示の修景効果とも一致するわけだ。 用土 用土は赤玉7、腐葉土3とする。市販の草花用培養土でもよい。 施肥 植え付け、株分け時には与えないが、根が安定した秋以降の施肥は必要。秋の彼岸頃に株を太らせるために施肥すると、翌年、よい花が咲く。早春の芽が出る頃の芽出し肥、花後のお礼肥も忘れずに。 育て方のポイント 定期的(鉢植えは毎年)な植え替え、施肥、そして、特に花の時期は乾燥に弱いので、十分に水やりをする。 ハナショウブの増やし方 ハナショウブを増やす前に、まず、伝統園芸品種の増やし方の鉄則を覚えておきたい。ニホンサクラソウにしてもハナショウブにしても、品種保存のためには、交雑を避けるために種子繁殖は行わず、株分けで増やすのが基本だ。 株分けの時期は花後の7月。今年咲いた芽には来年は咲かないので、切り捨てる。他の芽を切り分け、7号鉢に3芽ずつ植え付ける。その際、根を切らないように注意する。この時、株の表と裏があるので、葉脈が1本ある表を内側、裏を外側にして、鉢の中心に浅植えにする。元肥は、株分け時には与えなくてよい。植え替え直後は、特に水切れに注意が必要。 株分け作業の手順 株分け作業は次の通り。 花後に鉢から株を取り出し、根鉢を崩して棒などで突きながら土を落とす。 株を切り分ける。その際、今年咲いた花芽は翌年は咲かないので切り捨て、葉を長さ25cmほどに切り詰める。 .鉢の表面につける名札が紛失した場合に備え、鉢の底にも名札を入れる(一緒に埋めておけば、万が一名札が紛失しても、掘り起こせば判明するのだ)。そして、その上に鉢底石を入れる。 鉢底石の上に、用土を入れる。ハナショウブの表裏を確認し、植え付けの向きを決める。ハナショウブは裏側から芽が出るので、植え付けの際は裏を外側に。表裏は葉の葉脈の有無で見分け、葉脈が1本走っているほうが表。 植え付けの向きを確認したら、7号鉢に3芽ずつ、浅めに植え付ける。そして、根が隠れる程度まで用土を足して植え付け終了。葉はまとめて縛っておくとよい。 植え付け後は水切れしないように注意し、しっかりと根付くまで養生させる。 平成時代はガーデニングブームだったが、令和の時代は、万葉から平成の悠久の歳月で培われた、さまざまな日本の園芸文化が進化し、花開くことを願っている。さて、ハナショウブは、みなさんにとっても令和の星になれるのだろうか? 併せて読みたい ・【ニホンサクラソウ(日本桜草)】清楚で美しくユニークな名前を持つ伝統植物の魅力 ・オージーガーデニングのすすめ オーストラリアの青い空と海を映す「ブルーレースフラワー」 ・どんな花が咲くのかな? 変化朝顔のタネを播いて咲かせてみました Credit 写真&文/遠藤 昭 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー。 30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)。 ブログ「Alex’s Garden Party」http://blog.livedoor.jp/alexgarden/
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平成園芸を彩った三種の神器「バラ」「クレマチス」「クリスマスローズ」
園芸からガーデニングが生まれた「平成」の時代 間もなく平成という時代が終わろうとしている。平成時代は、正しくガーデニングの時代だった。それは“園芸”が“ガーデニング”と呼ばれるようになり、内容的にも大きく変化した変革の時代だった。平成が幕を閉じ、年号が令和に代わるこの機に当たり、平成時代の園芸を振り返ってみたい。 昭和時代、園芸は「盆栽・菊・洋蘭」に代表される男性の趣味の世界が中心だった。それが、平成時代が終わろうとしている現在は、ガーデニングは女性中心の世界に大きく変化した。園芸の世界でも、平成時代に男女平等社会が進んだのだ。 さて、それはいつから始まったのだろうか? 一つの大きなきっかけとされているのが、1990年、つまり平成2年の大阪花博、正式には「国際花と緑の博覧会(The International Garden and Greenery Exposition, Osaka, Japan, 1990)」、俗にいう「花の万博」「花博」「EXPO'90」である。この花博のテーマが「花と緑と人間生活のかかわりをとらえ 21世紀へ向けて潤いのある豊かな社会の創造をめざす」であり、何と、2,312万人もの入場者があった。この花博で多くの家庭園芸向きの西洋の草花が紹介され、女性たちが園芸の世界に入るきっかけになったようである。 また、第1回目の世界らん展日本大賞が開催されたのが1991年(平成3)で約40万人の来場者があった。この世界らん展日本大賞は、2019年(平成31)には、「世界らん展2019 花と緑の祭典」へと進化した。この世界らん展も、かつて男性中心だった蘭の世界に女性が「見学」に来る大きなきっかけになった。 さらに当時は、NHK『趣味の園芸』も全盛時代で、1989年(平成1)のテキスト発行部数は毎号90万部と、現在の13万5千部とは比較にならないほど、園芸番組の人気があったのだ。 やがて、『園芸ガイド』や『BISES』等の園芸分野の雑誌が発行され、1997年(平成9)には「ガーデニング」が流行語大賞を受賞し、1999年(平成11)には第1回国際バラとガーデニングショウが開催され、ガーデニングが大ブームとなった。このガーデニングブームを牽引したイベントも昨年、2018年(平成30)に20回で幕を閉じた。平成と共に生きたイベントだった。 平成を彩った3つのガーデンプランツ 「バラ・クレマチス・クリスマスローズ」 僕も『趣味の園芸』テキストは、この40年余り購読しており、他の園芸雑誌もよく購読したが、平成時代の人気記事は「バラ・クレマチス・クリスマスローズ」だったように思う。実際、出版関係者から、この「バラ・クレマチス・クリスマスローズ」を特集すると販売部数が伸びると聞いたことがある。 何故、バラ、クレマチス、クリスマスローズの3種のガーデンプランツは人気が出たのだろうか? かねてより人気の園芸植物である菊や蘭に共通するところは、品種数が多いことである。その点、この3種は、その要件を満たしているのだ。そしてブームに火をつけたのが、女性向け園芸雑誌である。その購読者の多くの女性たちが、これらのガーデンプランツを庭に取り入れ、お洒落なガーデンライフスタイルを実践したのだ。 そして、もう一つの平成園芸の背景は、最近のSNSの「インスタ映え」という言葉があるように、インターネットが一般化したことによるネット通販の普及や、ホームセンターの台頭による流通革命だろう。バラやクレマチス、クリスマスローズのような品種の多い植物は、店頭在庫を抱えるには適さず、ネットを通して購入するのに向いている。ネットの普及が、「バラ・クレマチス・クリスマスローズ」を平成園芸三種の神器にのし上げたといっても過言ではないと思う。 僕は十数年前から、この「バラ・クレマチス・クリスマスローズ」を、「平成園芸三種の神器」と呼んでいる。ガーデニングブームに乗ったガーデン愛好家たちも、この3種は平成時代の必須植物と捉え、競って買って育てていたようである。僕自身は、流行は追わない主義なのだが、ふと気づいて見ると、自分の平成時代のブログ『男庭日記』には、オージープランツの次に「バラ・クレマチス・クリスマスローズ」の記事が多くアップされているのである。 まあ、この三種の神器のお陰で、僕自身も平成園芸を楽しませていただいたのだ。ということで、平成最後のGarden Storyの記事は、この平成園芸の時代を共に駆け抜けた、我が家の平成園芸三種の神器「バラ・クレマチス・クリスマスローズ」の写真でお送りしたい。 バラが彩った、平成の我が家の庭風景 まず、僕が大切にしてきたバラが、母が遺したこの‘クィーン・エリザベス’だ。もともと、僕が高校生の頃に、タキイの通販で購入し、挿し木苗を分けてもらった。既に30年以上経ち、平成という時代を共に生きた大切なバラだ。鉄砲虫に食われ瀕死の時期もあったが、復活した。 キモッコウバラも平成の代表的なバラだ。 純白の花を咲かせる‘アイスバーグ’は、オーストラリアに暮らしていた時代の思い出のバラ。オーストラリアで一番多く見かけたバラが、この‘アイスバーグ’だ。オージープランツ感覚で「思い出」と共に育てた。 つるバラの魅力は、アーチ仕立てなどにすると、狭い庭でも空間を有効に使用できること。このアーチに絡めた‘スーベニール・ドゥ・ドクタージャメイン’は香りが素晴らしい。 そしてバラは、デルフィニウムと共に、イングリッシュガーデンらしさを醸し出すには最適だった。 クレマチスが彩った、平成の我が家の庭風景 つる植物であるクレマチスも、庭の空間演出に欠かせないガーデン素材だ。品種のバリエーションも多く、僕のガーデンにもいくつもの品種が育っている。 しかし、こうして写真で振り返ってみても、バラとクレマチスは改めて相性の良い植物だと思う。たくさんのツーショット写真がある。 なお、クレマチスはバラの季節以外にも、1月のアンシエンシス(アンスンエンシス)、3月のアーマンディなど、花のない時期に咲いてくれる品種があるのも魅力だ。 クレマチス・アーマンディはいち早く春の訪れを知らせてくれる。成長が速いので大きくなりすぎないように注意が必要。 クリスマスローズが彩った、平成の我が家の庭風景 そして、バラとクレマチスとは開花の季節が異なるが、もう一つ平成時代にブームを引き起こしたのがクリスマスローズだ。まず、クリスマスローズという名前が魅力的である。そして、常緑で、花の少ない冬から春にかけて、さまざまな色や形の花が庭を華やかにしてくれるので、ガーデニングの素材として人気が出たのだ。さらに、交配で新品種を自分で簡単に作り出せるところも人気の秘密だろう。 平成の我が家のクロスマスローズのある景色をご紹介しよう。 我が家のクリスマスローズは、平成を駆け抜けて大株に育ってくれた。令和の時代も楽しみだ。 室内で楽しむガーデンプランツ これら平成園芸三種の神器は、ガーデンではもちろん、部屋の中でも楽しめる。 庭のバラを切り花にして活けるのも、ガーデニングの醍醐味の一つ。日差しが強い時期は、切り花のほうが長もちすることもある。 クリスマスローズを苔玉にするのも楽しい。白花のクリスマスローズには、楚々とした魅力がある。 クリスマスローズは、終わりかけた花を切り取った後、もったいないので生け花にしてもおしゃれな雰囲気。 バラ・クレマチス・クリスマスローズの育て方カレンダー 最後に、僕の庭でのバラ・クレマチス・クリスマスローズの栽培の年間スケジュールを簡単にご紹介しようと思う。育てている品種や環境によっても違いが出るが、これを栽培の際の一助とし、平成時代のガーデニングを象徴するガーデンプランツ、バラ・クレマチス・クリスマスローズを楽しんでもらえれば幸いだ。 バラ・クレマチス・クリスマスローズの育て方(年間管理) バラ クレマチス クリスマスローズ 1月 施肥(寒肥)・剪定 大苗植え付け・鉢植え替え たくさんの系統があり、花期等、それぞれ異なった特徴がある。施肥(寒肥) 葉切りと施肥 つぼみに光を当てる、霜よけ 1,000倍の液肥 2月 施肥(寒肥)・剪定 大苗植え付け・鉢植え替え 落葉性タイプは、剪定やつるの整理。旧枝咲き、新枝咲き、新旧両枝咲きにより、剪定は異なる 開花 寒肥 交配育種 3月 追肥 アーマンディ開花 追肥 露地植え付け 鉢増し 花がら摘み 4月 病害虫対策(うどん粉病) 旧枝咲きは4~5月に開花が多い。新旧両枝咲きは主に4月下旬~10月に開花 お礼肥 病害虫予防 種房の袋かけの準備 5月 病害虫対策(うどん粉病・黒星病・アブラムシなど) モンタナ開花 タネの採取・病害虫対策 (ダニ・アブラ虫防除など) 6月 追肥・花がら切り、挿し木 病害虫対策 カザグルマ開花 白万重開花 追肥・挿し木の適期 夏越しの準備 日よけ対策 肥料切り 7月 病害虫対策 鉢バラの暑さ対策 花後の剪定で年2~4回楽しめる 直射日光からの遮光方法 8月 病害虫対策 暑さ対策 水切れ注意・花芽形成 9月 追肥・夏剪定 病害虫対策‘ 剪定 タネ播き・株分け 鉢増し 10月 つるバラシュート仮誘引 花がら切り 病害虫対策 シルホサ開花 追肥 施肥 日向へ移動 生育期 11月 大苗植え付け・鉢植え替え 花がら切り 植え替え(休眠期に実施) 古い葉を切る(無茎種のみ) 12月 大苗植え付け・鉢植え替え つるバラ剪定 アンシエンシスなど冬咲き系開花 ニゲル種開花 施肥 つぼみに光を当てる 僕自身が、平成時代にガーデニングに目覚め、趣味で楽しみ、そして定年退職後の平成最後の10年間はプロとして、植物と向き合ってきたが、やはり、「バラ・クリスマスローズ・クレマチス」の三種の神器のお陰で、豊かなガーデニング生活が送れたと思う。 令和の時代には、また新しい植物たちが登場し、人気が出て「令和園芸三種の神器」が誕生するのが楽しみだ。 *注 三種の神器とは? 天皇が皇位の璽 (しるし) として代々伝えた3種の宝物、八咫鏡(やたのかがみ)・草薙剣(くさなぎのつるぎ)・八坂瓊曲玉(やさかにのまがたま)のこと。 また、1950年代の家電三種の神器は、白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫。現在の新・三種の神器は、食洗機・全自動洗濯機・掃除ロボットを指すことが多い。 併せて読みたい ・三大ガーデンプランツの一つ、クリスマスローズの魅力を探る ・バラを育てたい! 初心者さん必見 バラの種類・育て方・病気などを解説 ・宿根草ショップの店長が教える! バラと組み合わせるクレマチスのおすすめ品種 ・クレマチスのスクリーン仕立てで小さな庭も花いっぱい! Credit 写真&文/遠藤 昭 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー。 30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)。 ブログ「Alex’s Garden Party」http://blog.livedoor.jp/alexgarden/





















