レモンマートルの育て方とお茶の楽しみ【オージーガーデニングのすすめ】
葉にレモンのような芳香があり、庭で育てがいのあるオージープランツの一つ、レモンマートル。庭木に、または鉢植えにしても育てることができ、花も可愛い上に葉をハーブティーとして活用することもできます。ここでは、オーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、神奈川県の自宅の庭で25年間、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主、遠藤昭さんがレモンマートルをご紹介します。
目次
レモンよりもレモンを感じる素敵な庭木、レモンマートル
今回紹介する樹木、レモンマートルは育てる人を幸せ感いっぱいにする「いいことずくめ」な植物だ。
これまで数々紹介してきたオーストラリアの樹木は、ユーカリをはじめティーツリー(メラレウカ)など、素敵な香りがするものが多い。このレモンマートルも、その一つ。香りの秘密は、シトラールという柑橘系の芳香成分の含有率が、果実のレモンやハーブのレモングラスなどよりも多いこと。植物の中で最も多いとされ、「レモンよりもレモン」といわれるのだ。ユーカリと同じフトモモ科の樹木で、シトロネラールという防虫作用のある成分も含まれており、ユーカリと同様に蚊よけの効果がある。
学名は、Backhousia citriodoraだが、この学名はイギリスの植物学者、ジェイムズ・バックハウスにちなんでつけられた。レモンマートルという名前は、葉の香りがレモンのようなので付けられた、分かりやすい名前だ。ちなみに、マートルとはギンバイカ(銀梅花)学名:Myrtus communis のこと。やはりフトモモ科の樹木だ。
こちらが、ギンバイカの花。甘い豊潤な香りを持つ。
レモンマートルはオーストラリアの北東部クイーンズランド州の亜熱帯地域が原生地で、成長すると樹高約10mにも達する。
花が咲くと庭は甘い香りで満たされる
レモンマートルは、葉の香りだけでなく、甘い花の香りも魅力的だ。僕自身、数年前に園芸店で開花株の香りに魅了されて、この株を連れ帰ってしまったのだ。
花は7月頃に咲く。白く可愛い花で、咲くと我が家の庭は、甘い香りに包まれる。葉は観葉植物としても美しいうえに、素敵なレモンの香りがして、花も清楚で見ているだけで癒やされる。さらには、レモンマートルは、日本でもハーブティーとしても人気が出てきた。オーストラリアでは以前から、かなりメジャーなハーブなのだ。
レモンマートルをハーブティーに
我が家でも時々、採りたてのレモンマートルの葉で、ハーブティーを入れる。
葉にナイフで切れ目を入れて、数分熱い湯に浸けるだけで、レモンの香りたっぷりのハーブティーが楽しめる。
もちろん、紅茶へレモン代わりにレモンマートルの葉を一枚浮かべても、酸味がないのにレモンの香りがする、しゃれた飲み物になる。暑い夏にはよく冷やし、ハチミツを加えて炭酸水で割ると、一気に暑さを忘れ、疲れた体もリフレッシュする。
レモンマートルの育て方8つのポイント
この「いいことずくめ」のレモンマートルの育て方に触れておこう。
育て方を知るには、原生地の気候・自然環境を知ることだ。オーストラリアの北東部に位置するクイーンズランド州は、亜熱帯〜熱帯気候だ。このレモンマートルが自生するのは、グレートバリアリーフが広がる海岸沿い。
この地域の年間雨量は1,000〜2,000mmあり、オーストラリアでは多い方だ。ただし、雨は冬に多く降り、夏は乾燥する。つまり、日本の夏の蒸し暑さは苦手なのだ。
寒さには比較的強いが亜熱帯の植物なので、霜に当てたり、氷点下に温度が下がったりすると枯死することがある。関東以西地域の温暖な地域では地植えもできるが、関東以北では鉢植えにするのが無難だ。
比較的育てやすい植物だが、レモンマートルを育てるポイントは8つ。
- 寒さには弱いが、暑さに強い。ただし、蒸し暑さには弱い。
- 水やりは控えめに。通常の植物は“表土が乾いたらたっぷり水を与える”だが、レモンマートルの場合は“葉が萎れかけたら、たっぷり水を与える”くらいの気持ちで。特に根腐れに注意。
- 水はけのよい用土を使用する。プラ鉢より通気性があるテラコッタやスリット鉢がおすすめ。
- 他のオーストラリアの植物同様に肥料は控えめに。使用する際は、弱めの肥料を!
- 太陽には十分当てる。
- 剪定は花芽を落とさないように、花後の7〜10月頃に行う。
- 挿し木で増やせる。5~6月に鹿沼土などに普通の挿し木の方法でOK。挿し木についてはこちら。
- 病害虫に比較的強いが、アブラムシとうどん粉病に注意。予防としては、風通しがよい日なたで育てることだ。
さあ、幸せ感たっぷりの香りを漂わせてくれる、こんな“いいとこずくめ”のレモンマートルを育ててみませんか?
Credit
写真&文 / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -
えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
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