【冬の庭仕事】一年の振り返りと新しいガーデニングシーズンを迎えるための庭準備

Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich
多くの植物が休眠し、庭景色も寂しくなる冬ですが、この時期に昨年1年間の庭を振り返り、今年の庭準備を進めておくことで、これから始まるガーデニングシーズンをより一層楽しく過ごすことができます。ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんがこの時期に行う庭仕事と、冬の間も楽しめる家庭菜園の収穫についてご紹介します。
目次
冬は一年の庭準備のシーズン

まだまだ寒い日々が続きますね。ガーデナーにとってはあまりに苗を早く購入して寒さにあわせないよう、財布のひもをグッと締めて、我慢が必要なシーズンです。ガーデニングにまだそこまで興味がない人にとっても、フラワーショップやガーデンセンターに現れる愛らしい春の花々の誘惑に抗うのは難しいもの。長く庭や風景に色のない季節が続いた後では、目にも心にも、色彩と生命力が必要なのです。こうした寒い冬の季節は、何かが育つのを見るのが大きな喜びになります。
さて、今年も楽しいガーデンシーズンのスタートを切るために、いま準備を進めておけることはいろいろあります。たとえ小さなスペースであっても、年のはじめからガーデンを楽しむことができるのは大きな喜びです。日々変化があり、また少しの間でも屋外で過ごすことで、新鮮な空気とガーデン周辺の景色を味わうことができますよ。
庭の弱点に合わせて対策を
外に出るには少し気合いが必要な季節ですが、冬はガーデンの見直しにぴったりです。改善できるエリアがないか、探してみましょう。
風の強いエリア
強い北風が吹く冬は、庭のどこに風よけが必要かを探るのにいい季節。ほかの季節にも風よけになるガーデンのレイアウトを考え、厳しい環境でも生き残れる、その環境に適した植物を取り入れましょう。台風にも耐える丈夫な植物や低木、例えば140cm以上の高さに育つ常緑樹などを、倒れたり壊れたりしないようなしっかりした大きなコンテナに入れるのもいいですね。

私が暮らす神奈川の湘南エリアは、ほったらかしでもキョウチクトウがよく育ちます。手がかからず、枝がしなって折れにくいうえ、育ちすぎた場合の剪定も簡単。樹液が肌につくとかぶれることがあるので、手入れの際は必ずゴム手袋などを着けましょう。
キョウチクトウを育てる際に気を付けたいことは、一年を通して葉が落ち、その葉は集めるのは簡単ですが、分解されるまでに時間がかかるということ。道に面した場所に植える場合は、道の掃除が欠かせません。特に長期の旅行に行こうと思うときには、頭の痛い悩みです。誰かに掃除をお願いしないと、几帳面なご近所の方とちょっとトラブルになってしまうかもしれません!
気温が低いコーナー
冬は、庭の中でも特に冷え込むコーナーを見つけるのが簡単。霜が長く残ったり、地面が凍りついたりしている場所です。あまりに暗くて寒い場所であれば、そこに適した植物を探すより、シェッドや収納を設けるのも合理的ですね。庭を明るくし、またローメンテナンスで管理できるようにもなります。
リビュー&リペア&リニューアル

新しい年の始まりには、たくさんのアイデアやプロジェクトが浮かびますが、それぞれ準備が必要です。昨年のガーデンを振り返りながら、庭の改善を進めましょう。
リビュー
昨年自分のガーデンで撮影した写真を見返して、改善したほうがいい場所を見つけましょう。我が家のガーデンでは、カンナ科のダンドクの生育がよすぎたため、掘り返して別の場所に植え直さなければなりませんでした。庭のカンナは全てオレンジなのですが、黄色や赤のバリエーションを足すのもいいですね。そのため、ガーデンカタログやガーデンセンターでぴったりの色を探さなければなりません。意外と難しいものですよ。
植え替え

育ちすぎた植物は、この時期に掘り上げて株分けすることが大切です。我が家の場合は、大きくなったアイリスやヘメロカリスなどを植え替えました。
宿根草の多くは、株分けをすることでより元気に育ちます。勢いのよい株を1つ選んでもよいでしょう。株分けで余った苗は捨ててしまうのではなく、友人やガーデナー仲間と分けあっても楽しいものです。
また、株分けして植物の量を減らしたり植え場所を変えると、ガーデンがすっきりして株間があき、病気や害虫が広がりにくくなります。
リペアとリニューアル
低すぎるトレリスや傷んだ木製のコンテナ、壊れたジョウロや道具類のプラスチック部品など、整備が必要な箇所は、そのままにしておくと危険です。たとえ小道の脇のちょっとした穴であっても、つまずいたりケガをする原因になるかもしれません。補修が必要な箇所は忘れずに修繕しておきましょう。
今年のガーデンデザインにひと工夫を
冬は理想のガーデンについて考えたり、アイデアを練るのにぴったりの時期。ガーデニングの本や雑誌、テレビ番組、ネットなどで、参考になるガーデンやベランダの実例を探すのもいいですね。広いスペースは必要なく、ちょっとしたことでも大きな喜びにつながります。
ガーデンルームで模様替え

ガーデンの全てをリニューアルするのは大変ですが、一部分を新しくするだけでも新鮮な印象に。そこで、好きな植物や色を使って、テーマを持たせた一区画、ガーデンルームをつくってみるのはいかがでしょうか。ドイツでは、夏やバカンス、ビーチ、満開の花といった心地よいイメージを連想させる地中海風ガーデンがとても人気です。
1鉢のラベンダーやローズマリーだけでも、地中海風ガーデンを演出する第一歩に。香りや葉の形が、異国情緒を感じさせてくれます。ラベンダー柄やガーデンの中の家などの模様がついた鉢を使っても素敵です。
庭に限らず、バルコニーや窓辺も、可愛いガーデンルームになりますよ。
もっと大きなスペースにつくる場合は、好きな植物を挙げてリストを作り、どれを使うかを選びましょう。地域によりますが、地中海地域の植物の植え付けは4月ぐらいからスタートできます。オリーブなどの銀葉の植物は、さまざまなコーナーを明るく軽やかな印象にしてくれます。
リラックススペースを

椅子やベンチ、テーブルセット、パラソル、ハンモック…。どう思いますか? ベランダやバルコニー、ガーデンに、これらのリラックスできるエクステリアを設置することはできそうでしょうか。
ドイツの友人たちは、ガーデンの中に2、3カ所、座ってくつろげるような場所を設けていることが多いです。早朝の朝食やランチのときに、また夏は日陰でゆっくり夕陽を眺めたりするのにぴったりです。
ドイツの実家のガーデンには椅子はありませんが、庭に面してベランダがあり、そこに大きなテーブルとベンチを2つ置いて、10人以上が座れるようにしています。そこからはガーデンに出るのも眺めるのも簡単です。
もしスペースが限られているなら、折り畳み式の椅子やベンチなど、使わないときは仕舞っておけるタイプが選択肢になります。特に日本は、たくさんの種類が販売されているので、自分にぴったりのものを選んでみてはいかがでしょうか。
結局のところ、一番大切なことは、リラックスして緑の空間を楽しむこと。ただ植物を眺め、香りを楽しんだり触ったりすることが大切です。座ってドリンクを片手に庭を楽しんでみてはいかがでしょう。庭で採れたレモングラスやペパーミントなどのハーブを使ったドリンクもいいですね。
ガーデンカタログで植物選び
植物や鉢、ガーデンやベランダ用のデコレーションを選ぶのは楽しいですが、なかなか難しい作業。そんなとき、私が頼りにするメインのガーデン準備アイテムの一つが、ガーデンカタログです。
現在、私の机の上には3冊のカタログがあり、じっくり読んだのですが、毎年あまり変わり映えしないラインナップで、ちょっと残念に思っています。ガーデナー経験が長くなるにしたがって、かなり多くの植物を使ったりガーデンや鉢植えで見たことがあるせいかもしれませんね。さて、いままでの経験上、そうしたカタログの説明にINVASIVE(侵略的)と書かれている植物には、脳内で警報が鳴り響きます。その意味するところは、一度植えたら最後、ガーデンから排除することはほぼ不可能だということです。植物を選ぶ際には、こうしたデメリットがないかにも十分注意しましょう。
一般に、カタログはセレクトされた植物の写真と簡単な説明が掲載されているだけですが、ドイツにはもっと植栽実例や特徴について細かく書かれたものもあり、植物をより選びやすくしてくれます。
冬も楽しめる家庭菜園

いま、我が家の小さな畑では、菜の花が満開。菜の花は食べても美味しいですね。また、家の中に貯蔵しきれないサトイモもまだ土の中にあり、使う前には掘り出しています。
コマツナの生育もよく、この寒さで害虫もつきません。収穫期を待って全て抜き取るのではなく、外側から1枚ずつ葉を取って使っています。サヤエンドウもすでに1mほどの高さに育って花が咲いています。冬の最後の寒さを乗り切れるか分かりませんが、収穫を待つのではなく、花を楽しむことにしました。可愛らしい紫と白の花です。
私の一番好きなサラダ菜は、ルッコラ。寒さの中でも少しずつ育っています。量はわずかですが、毎週収穫できますよ。葉を摘み取って料理に使い、時にはバターを塗ったパンと共に、冬のガーデン作業のお供として、そのままガーデンで食べてしまうこともあります。
自家栽培の野菜はオーガニックですし、周囲は車も少なく排気ガスも気になりません。

私が個人的に、1月に植えるのを楽しみにしているのはサクラの木、その中でも河津桜です。何年もちょうどいいサイズの苗木と取扱店を探していましたが、ついにぴったりのものを見つけました。なぜ何年もかかったかというと、苗木は小さすぎるか、車に入らないほど大きすぎるかのどちらかだったため。また、植え付けに適さない時期や価格が高すぎる場合も見送ってきました。なので、園芸問屋のようなお店で見つけたときは、とても嬉しかったです。3株しかなく、またそのうち2株は少し曲がっていたので、残りの1株を選びました。長年待ち続けたサクラの木です。
この河津桜は、家族以外の多くの人にも見てもらえるフロントヤードに植えるつもりです。私の近所には河津桜を植えているところはないので、きっと多くの人に喜んでもらえることでしょう。
満開の枝をひと枝取って、日曜日のランチに飾る想像などして楽しんでいます。河津桜が咲くまで、あともう少し。待ち遠しいですね。
この寒く、けれど平穏な時間も楽しみましょう!
Credit
話 / Elfriede Fuji-Zellner - ガーデナー -

エルフリーデ・フジ・ツェルナー/南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。
Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood
まとめ / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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