【夏の庭デザイン】地中海風ガーデンにおすすめの植物&リゾート感を演出するアイテム
明るい日差しが似合う地中海風ガーデンは、夏により一層魅力的に感じるガーデンスタイルの一つです。バカンス先としても人気の地中海地域ですが、実際に訪れるのはなかなか大変。そこで、自宅に地中海風ガーデンを再現して、リゾート感覚を味わってみませんか? ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんが、地中海風ガーデンづくりにおすすめの植物や演出ポイントをご紹介します。友達を招いてガーデンパーティーを開けば、気分はもう地中海!
リゾート気分を味わえる地中海風ガーデン
夏に魅力的なガーデンスタイルの一つが、地中海風ガーデン。庭の一角に地中海風ガーデンをつくれば、自宅にいながらまるでリゾートで過ごしているようなバカンス気分が味わえます。もっとも、私の出身地であるドイツの夏は、いま私が暮らしている湘南の夏のような蒸し暑い地域に比べると、こうしたガーデンスタイルはやや難易度が高め。ドイツでは、日中は30℃以上まで気温が上がることもありますが、夜間はとても涼しくなります。地中海沿岸地域では、夏の期間はより長く、夜間の冷え込みも特にありません。海沿いであっても、山に近くても、涼しい地域では、地中海風のスタイルは夏本番の短い期間だけしか楽しむことはできないのです。
このように地域の気候によって利用できる植物は変わりますが、近年は急激な気候変動により、ガーデナーにとって気温の上昇や水不足への対処が重要な問題になっています。庭や公共緑化に利用する植物も、暑さや乾燥に強いものが多く見られるようになってきました。地中海風ガーデンで、よくイメージされるラベンダーやローズマリーなどは、そんな気候に合う植物の一つ。ラベンダーは南フランス、ローズマリーはその他の暖かい地域のイメージですが、どちらも乾燥に強く丈夫で育てやすい植物です。
地中海風ガーデンづくりにおすすめの植物たち
目に鮮やかな花色や爽やかな香りを運んでくれるハーブ類、海の青に映える迫力のある草姿のものなど、地中海のリゾート感を演出するのにピッタリな植物をいくつかご紹介しましょう。
地中海らしい鮮やかな色彩が楽しめる植物
赤いペラルゴニウムは、南スペインやイタリアを想起させる植物。大抵は白い壁の前に1つずつ置かれた素焼き鉢に入れられ、真っ赤な花と素晴らしいコントラストを描きます。小さな鉢にそれぞれ水やりをしていくのは大変でしょうが、とても美しい眺めです。
黄色や濃紫色の甘く小さな実がなるブドウは、つる性植物としておすすめ。収穫の楽しみもあり、見た目も愛らしいものです。日当たりのよい場所にコンパクトなトレリスなどを置けば、絡みながら上に伸びるため、意外と省スペースで育てることができます。つる性の植物では、鮮やかな色彩が魅力的なブーゲンビリアも私のお気に入りです。
柑橘類やイチジク、オリーブなどの果樹、白やソフトピンク、濃いピンクから深い赤まで色幅のあるキョウチクトウも地中海風ガーデンに向く植物。ほかに、さまざまなサイズがある青や白のアガパンサスや、黄色や赤、オレンジなどのカラフルな花とカラーリーフが楽しめるカンナもおすすめです。
ハーブのボックス
ハーブも地中海風ガーデンに欠かせない植物です。大人気のローズマリーや銀葉で独特の香りを持つカレープラントなどのハーブを集めて、バルコニーボックスに仕立ててみてはいかがでしょうか。種類が豊富なタイムは、レモンタイムやライムタイム、オレンジタイムなど異なる品種を2、3種植えても楽しいですね。
南欧では、スイートマジョラムが広く使われています。兄がよく自家製ソーセージを作るのにオレガノを使っていますが、ドイツではオレガノやマヨランと呼ばれているので、スイートマジョラムと同じものだと気づくまでに数年かかってしまいました。
ラベンダーやサルビア、ローズマリー、タイム、ミントなどは非常に種類が豊富で、色や開花期もさまざま。たくさんの品種の中から、自分の庭に合うタイプを見つけるのはなかなか難しいかもしれません。自分の目や指先、鼻を頼りに、好みの葉の質感や香りを持つ品種を探していくのは、大きな喜びを伴うチャレンジです。ハーブによっては、見た目はそっくりなものもあるので、違いを見分けるには葉をちぎってみるしかないときもあります。
ガーデンパーティーに友人を招いたときは、それぞれの香りをかいで名前を予想してもらうミニゲームなんかもできますね。枝を切って渡せば、素敵なお土産にもなります。
多肉植物やサボテン
小さなスペースで地中海の雰囲気を演出するなら、多肉植物やサボテンを素敵な鉢に入れたり、水はけのよい場所に取り入れるのがおすすめ。石を使ってディスプレイするのもいいですね。
多肉植物やサボテンを多用したガーデンとしては、モナコの傾斜地につくられたエキゾチックガーデンが有名です。モナコはフランスの隣にある小さな国ですが、カジノやギャンブル、豪華なヨットハーバー、フォーミュラ1のレースなど、全世界の富裕層向けの旅行先として知られています。そんなモナコにあるエキゾチックガーデンは、モナコ市街やコート・ダジュールを見渡す岩の多い丘の上に、約 15,000 ㎡にわたり広がっています。 数千を超えるサボテンや多肉植物が植わり、一年中いつでも何かが花を咲かせています。私が訪れたのはもう何年も前のことですが、多肉植物やサボテンを中心とした地中海風ガーデンの風景は、現在もあまり変わっていないよう。忘れられない光景です。
こうしたガーデン風景を見て、好みのシチュエーションや植物の組み合わせを探すのは、とても庭づくりの参考になりますよ。
ドイツに暮らす私の兄は、自宅の前に素敵なサボテンガーデンを作っています。兄はコンサバトリーを持っているので、9月から5月まではその中にサボテンや多肉植物を入れて18℃以上に保ち、6月になると取り込んでいた植物をすべてテラスに移動することで、ドイツの冬を乗り切っています。どのサボテンにもちょっとしたエピソードがあり、それを聞くのも楽しいものです。
ドイツで一番人気があるサボテンは、ドイツ語では「義母の椅子」というニックネームで呼ばれる「金鯱」でしょうか。丸みを帯びたフォルムは、確かに鋭い金色のトゲがなければちょうどいい椅子になるかもしれませんね。トゲは青々としたサボテンと見事なコントラストを描きます。
兄の義母に当たる人は、もう80代半ばになりますが、30年以上にわたりサボテンや多肉のコレクションを続けていて、兄も大いに刺激を受け、時に新しい株をいただいたりもしているようです。毎年、兄は義母の育てているサボテンや多肉植物、キョウチクトウ、柑橘類、アガベなどを移動する手伝いをしています。タフな作業ですが、毎年のことですし、義母を訪ねるよい機会になっているようです。
最近、兄はこの風物詩的な仕事を息子、つまり私の甥にも手伝わせているそうです。甥は両親と祖母のところに行って一緒に作業をし、祖母は自分の娘や孫と楽しい時間を過ごします。 いつか別れの日が訪れた時も、こうした時間は間違いなく素晴らしい思い出になるでしょう。
地中海風な雰囲気の演出に! ペイビングや屋外家具、コンテナを活用
ペイビング
明るい色合いの天然石は、地中海風ガーデンの演出に素晴らしい役割を果たしてくれます。ドイツの自宅では、70kmほど離れた場所で産出されるゾルンホーフェン石灰岩をモザイク状に使っていました。我が家の石のスペシャルなところは、すでに醸造所のセラーで使用された、100年近く前の石であること。こうしたかつて何かに使われていた石も、再利用によって第2の道を与えることができます。
ガーデンファニチャー
地中海風ガーデンでリゾート気分を味わうなら、ゆったりくつろげるスペースがあるといいですね。しかし屋外で快適に座れる椅子と、テラスやガーデンにおける実用性は、時に両立が難しいものになります。近年、大きくてしっかりしたアウトドアチェアとソファが大人気で、どのホームセンターやガーデンセンターに行ってもディスプレイされていますが、気をつけないと存在感がありすぎて窮屈になり、かえってリラックスできない空間になることも。冬の間の収納場所も必要ですし、きれいに保つには手入れが必須であることも考えて、サイズや材質には注意しましょう。
実用的な提案としては、手入れが簡単な素材で作られた折り畳み式のデッキチェアやテーブルはどうでしょうか。特に日本では、夏の台風シーズンには屋外のものをちょくちょく片付けなければなりません。そのため、しっかりした収納場所を用意して、簡単に片づけられるガーデンファニチャーを選ぶとよいでしょう。
プランターやコンテナ
テラコッタの大鉢は、イタリアへのオマ―ジュに最適。素焼き鉢はとても重いので、素焼き風の色合いで素敵な装飾が施されたプラスチック製のもので代用してもいいですね。
ドイツでは、緑青が吹いたような鉢も人気があります。屋外にしばらく置かれていたようなヴィンテージ風のもののほうが、まっさらな見た目のものより庭に馴染みやすいのです。シャビーシックなコンテナも人気で、単色だけでなく、グレーやシルバー、白っぽい色のミックスカラーも人気があります。
地中海イメージの料理を並べて、地中海風ガーデンをもっと楽しく!
せっかく地中海風ガーデンでパーティーを楽しむなら、料理も地中海風に。串に刺した肉や、ナスとズッキーニを、オリーブオイルとニンニクたっぷりでマリネして、バーベキューにしてみるのはいかがでしょう。
ドイツでは、スーパーで冷凍や冷蔵の串焼きマリネが豊富に販売されています。カラフルなパプリカやナス、タマネギなどの野菜と肉を挟んだものや、肉を使っていないヴィーガン用のものまで、どれもバーベキューグリルで焼くだけの状態になっています。
ガーリックバター、自家製ハーブソルトやドライスパイスなどは肉や野菜の風味づけに。ガーリックトーストも美味しいです。さらに、クリームチーズ、サワークリーム、カッテージチーズを使ったさまざまなディップを作れば、色とりどりに目を楽しませてくれます。ワイン好きには、イタリアやスペイン、ギリシャの赤や白、ロゼを。アルコールを飲まない人には、ペパーミントを入れたレモン水やノンアルコールドリンクを用意しておきましょう。
自家製パンや、地元のベーカリーの美味しいパンを並べれば、楽しいパーティーの始まりです。
自分なりの解釈で自由なガーデンスタイルを
地中海風ガーデンというテーマはとても幅広く、一つに決まっているわけではありません。今回ご紹介したのは私なりの解釈のガーデンスタイルで、ほかにもさまざまなものがあります。
最も重要なことは、地中海風ガーデンをつくろうと決めたら、取り入れる植物に愛情を持ち、バルコニーや玄関、ガーデンの一角など、作る予定の場所とつながりを持つこと。地中海地方を実際に訪れたことがあれば、その空気感を視覚的に再構築するのに大いに助けになり、庭づくりはより簡単になります。
こうしたテーマを持ったガーデンづくりは、なにも庭の全面的なリニューアルが必要なわけではありません。時にはちょっとした変更だけで、地中海風ガーデンの演出ができることも。1 本のオリーブの木があれば、イタリア、スペイン、ギリシャに滞在中の素敵な気分を想像するのには十分助けになります。自分の好きなように自分なりのスタイルを探し、挑戦してみましょう。
Credit
話 / Elfriede Fuji-Zellner - ガーデナー -
エルフリーデ・フジ・ツェルナー/南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。
Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood
まとめ / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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