冬の鍋物料理に大活躍する白菜は、冬野菜の代表的な存在といえるでしょう。「でも、栽培するのは難しそう」と思い込んではいませんか? 白菜は秋にタネを播いてから2〜3カ月で収穫できます。秋には害虫の発生が少なくなるので、メンテナンスも楽。ぜひ、白菜の栽培にチャレンジして、ぜひ収穫の喜びを味わってください!
目次
白菜ってどんな野菜?
白菜は葉菜類の一種で、最初のうちは葉を広げて生育します。しかし、生育後期にスイッチが入ると生理現象によって結球が始まり、葉がかたく締まって成長する、少し変わった野菜です。ここではそんな白菜の、主なプロフィールやライフサイクル、ルーツ、栄養価などについて解説していきます。
白菜の基本情報
白菜は、アブラナ科アブラナ属の葉菜類。原産地は中国です。一年中スーパーや青果店で見かける白菜は、春や夏にタネを播いて育成することもできますが、本来は秋に播いて冬に収穫する野菜です。涼しい気候を好み、寒さにあたると甘みが増してより美味しくなります。
では、秋まきを基本にして、そのライフサイクルをご紹介しましょう。8月下旬〜9月上旬にタネを播いて、間引いて育成します。最初のうちは、普通の葉物野菜のように放射状に葉を広げるのですが、生育後半になると生理現象によって結球し始めます。気温が15〜17℃になり、外葉が20枚くらいになると、葉の中心が緩やかに巻き始めるのです。種まきから約60〜90日が経ち、しっかり結球して頭を押してみてかたく締まっていたら収穫のタイミング、11月頃から収穫できるというわけです。白菜は収穫が遅れても味が落ちるということがなく、しばらく畑に置いておいてもかまいません。
白菜のルーツと日本への伝来
白菜はアブラナ科に属する野菜で、コマツナやチンゲンサイなど、煮物や漬物などに向く「漬け菜」と同種です。その祖先は、地中海沿岸、中央アジア、東・北ヨーロッパ、ロシア周辺だとされています。これらの地域に自生していたアブラナ科の植物が中国に伝わり、改良されて白菜が誕生しました。自生の状態で結球する白菜は見つかっていないので、中国の華北地方で生まれたとされています。
白菜が日本に伝わったのは1875(明治8)年で、意外にも歴史の浅い野菜です。日本へ種子が輸入されましたが、うまく結球できない上に、日本の漬け菜類と交雑するなどして、栽培法が確立されずになかなか普及しなかったようです。しかし1894〜95(明治27〜28)年の日清戦争が、日本の食卓に白菜を迎えるきっかけに。白菜が盛んに栽培されている満州や朝鮮半島に渡った兵士たちが、その美味しさに気づき、日本に持ち帰って普及させたといわれています。
白菜の種類
白菜の種類は多様で、半分に切って中を見ると、真っ白なものもあれば、黄色、オレンジのものもあります。また種まきから収穫まで栽培期間の長さによって、極早生や早生、中生、晩生などがあります。ユニークなものでは、細長いタケノコ状になり、高さが40cm以上になるものも! プランター栽培には、食べ切りサイズのミニ白菜が向いています。
白菜は日本の食卓に欠かせない存在なので、品種改良が進んで種苗会社からさまざまな品種が生まれています。主な品種は下記の通りです。
割ってみると内部が明るいオレンジ色の‘オレンジクイン’は、青臭みが少なく、生食もできます。「きらぼし」シリーズは根こぶ病の耐病性に優れ、生育旺盛な黄芯系。耐寒性があり、厳寒期採り中晩生品種の‘冬峠’は、収量・品質ともに優れています。耐病性が強く、葉が肉厚で柔らかなのが‘冬月90’。‘CRお気に入り’は、重量約600gのミニ白菜で、プランター栽培に向いています。‘プチヒリ’は細長いタケノコ型で、大変目を引く品種です。
白菜は栄養素が豊富で調理の幅も広い
白菜はなんと95%以上が水分なんです! 食物繊維が豊富で、ビタミンC、カロテン、ビタミンKを含むほか、カリウムやマグネシウムなどのミネラル分などもバランスよく含んでいます。また、白菜100g当たりのカロリーは14キロカロリーと大変低い側面ので、ダイエット中にたっぷり食べても背徳感のないヘルシー野菜です。
白菜は、冬の定番料理、鍋物には欠かせないアイテム。みそ汁やスープなどの具材としてもよく、さっとゆでて和え物やお浸しなどにしても美味しくいただけます。また、中華の炒め物には欠かせませんし、餃子の具に入れてもgood。そして、漬物にすれば保存食にもなります。調理に幅広く利用できるので、家庭菜園で多めに育てるのも一案です。
白菜を育てよう
ここまで、白菜の基本情報について触れてきました。ここからは実践編として、白菜の育て方について詳しく解説。たくさん育てたい方は、種まきからスタートするとコストダウンにつながります。「あまり消費できないから数株あれば十分」という方には、苗をホームセンターや花苗店で購入してスタートするのがおすすめです。また、白菜はプランターでも栽培することができるので、その管理の仕方についてもご紹介していきます。
栽培環境
アブラナ科に属する白菜は、連作を嫌う植物です。そのため2年間はキャベツやブロッコリー、コマツナやミズナなど、アブラナ科の植物を植えていない場所を選びましょう。生育適温は17〜20℃。日当たり、風通しがよく、比較的涼しい気候を好みます。
また、適した土壌酸度はpH5.5〜6.5で、やや酸性土壌を嫌うため、土づくりの際には苦土石灰を散布しておくとよいでしょう。乾燥には比較的強いのですが、水はけの悪い土壌では根腐れを起こしやすくなります。植え付けの際は水はけのよい場所を選び、心配ならやや高畝にするとよいでしょう。
土づくり
【地植え】
種まき・または苗の植え付けの2〜3週間以上前に、苦土石灰を1㎡当たり約100〜150g散布し、よく耕して土に混ぜ込んでおきます。
種まき・または苗の植え付けの1〜2週間前には、1㎡当たり牛ふん堆肥2〜3kg、化成肥料(N-P-K=8-8-8)約100〜150gを均一にまき、土にまんべんなく行き渡るようによく耕しておきましょう。
種まき・または苗の植え付け前に、土壌改良資材や元肥となる肥料を施しておくことで、時間をかけて分解されて土が熟成します。種まきや苗の植え付けの頃にはよい土壌に育っているので、あらかじめ土づくりをしておくひと手間が、収穫成功への第一歩となりますよ!
【プランター栽培】
葉菜類用にブレンドされた市販の培養土を使うと便利です。
種まき
ビギナーさんや、プランター栽培なら、花苗店やホームセンターで苗を買い求めて植え付けるのがおすすめですが、白菜は種まきからでも簡単に育成できます。「毎年、白菜の漬物を仕込むので、たくさん植えたい!」という方は、タネを購入して栽培するのがお得です。
白菜の種まき適期は8月下旬〜9月上旬頃。丈夫で育てやすいので、畑やプランターに直接播く「直まき」にします。
白菜の栽培で大切なのは、種まきの適期を逃さないこと。適期よりも早く播くと、虫の被害に遭いやすく、遅く播くと、結球せずにトウ立ちしてしまうからです。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、幅60cm、高さ10cmの畝をつくります。株間を40cm取り、畝の中央に深さ1cm程度の植え穴をあけて、タネを3〜4粒ずつ播きましょう。土を戻し、軽く手で押さえます。下から水が上がってくるので、土が湿り気を含んでいたら水やりは不要です。乾いていたら、ジョウロにはす口をつけて高い位置から水をかけ、タネが流れ出さないように水やりします。
発芽したのち、本葉が3枚ついたら間引きます。生育がよい苗を1本のみ残し、ほかは抜き取ります。抜き取る際は根元を指で押さえて、残す苗の根を傷めないようにしましょう。間引いた苗は、ベビーリーフや汁物の具として利用できますよ!
苗の植え付け
ここでは、花苗店やホームセンターで買い求めた苗の植え付けからスタートする方に向けて解説します。種まきから栽培するのを選んだ方は、この項目はスルーしてください。
本葉が3〜4枚ついた頃が、苗の植え付け適期です。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、幅60cm、高さ10cmの畝をつくります。株間を40cm取り、苗を植え付けます。根を傷めるとその後の生育が悪くなるので、ポットから苗を取り出したら、根鉢を崩さずにそのまま植え付けましょう。最後にたっぷりと水を与えます。
【プランター栽培】
標準〜大型サイズのプランターを用意し、2株を目安に植え付けます。また、プランター栽培に適している品種を選ぶことも大切。‘タイニーシュシュ’や‘サラダ娘’など、極早生のミニ白菜を選びましょう。
プランターの底穴に鉢底網を敷き、底が見えなくなるくらいまで鉢底石を入れます。葉菜類用にブレンドされた培養土に、元肥として用土10ℓ当たり化成肥料(N-P-K=8-8-8)を大さじ2ほど混ぜ込んでプランターに入れましょう。水やりの際にあふれ出さずに済むように、ウォータースペースを鉢縁から2〜3cm残しておきます。株間を30〜40cm取って根鉢より一回り大きな植え穴を掘り、根鉢を崩さずに苗を植え付けましょう。最後に鉢底から流れ出すまで、たっぷりと水やりをします。
水やり
【地植え】
地植えの場合は、下から水が上がってくるので、天候にまかせてもよく育ちますが、雨が降らずに乾燥が続くようなら、適切に水やりをして補いましょう。
【プランター栽培】
土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えます。秋から冬にかけては土が乾きにくくなるので、土の湿り具合をよく見て、乾いていたら与えましょう。
追肥
【地植え】
種まきから育成した場合、間引いて1本立ちするタイミングで追肥します。化成肥料(N-P-K=8-8-8)を、1株にひとつまみほどを目安に、株周りに施して土になじませます。
【プランター栽培】
本葉が10〜15枚ほどついたら、化成肥料(N-P-K=8-8-8)約10gを目安に、株の周囲全体にばらまいて追肥します。移植ゴテで軽く土になじませ、株元に土を寄せましょう。
1回目の追肥から約2週間後、化成肥料(N-P-K=8-8-8)約10gを目安に、株の周囲全体にばらまいて追肥し、土になじませて株元に土を寄せます。
中耕
【地植え】
降雨などにより、土がだんだんと硬く締まってきます。2〜3週間に1回を目安に、畝の周囲の土を耕して空気を送り込むと、水はけが改善し、白菜の根の張りもよくなります。
【プランター栽培】
特に不要です。
病害虫対策
病気はモザイク病、根こぶ病、軟腐病に注意。「土壌酸度の調整」「高畝にするなど水はけのよい土壌づくり」「連作をしない」など、栽培の環境づくりに気を付ければある程度は予防できます。病気の兆候が見られたら、周囲に蔓延するのを防ぐために、ただちに抜き取って処分しましょう。
害虫は、アブラムシ、アオムシ、コナガなどに注意。種まきのあと、防虫ネットを設置しておくと安心です。畝の数カ所にアーチ状に支柱を設置し、防虫ネットを張って、物理的に虫が侵入するのを防ぎます。白菜が成長して、トンネルの天井付近に葉がつくまでに大きくなったら、撤去してもかまいません。
プランター栽培の場合も、苗の植え付け後に加工のしやすいワイヤーを使ってアーチ状に配置し、不織布や防虫ネットを張ればOKです。
収穫
【地植え】
白菜は、種まきから約60〜90日で収穫できます。葉がしっかり巻いて結球し、玉の頭を押さえてみて、かたく締まっていたら収穫適期です。外葉を2枚ほどつけて、地際に包丁を差し込んでカットし、収穫します。白菜は収穫がやや遅くなっても味が変わらないので、使う分ずつ収穫してもかまいません。冬に差し掛かっている場合、霜にあたると葉が傷むので、外葉で包み込んで麻ひもなどで縛ってまとめておくと、防寒対策になります。収穫した際に外葉が茶色く傷んでいても、はがしてみると芯はきれいなままです。
【プランター栽培】
ミニ白菜は、種まきから45〜65日程度で収穫できます。しっかり結球して頭がかたく締まっていたら収穫します。地際に包丁を差し込んでカットしましょう。
保存方法
新聞紙で包んで、凍らない冷暗所に立てておけば、長く保存ができます。
漬物にすると冷蔵庫で2〜3週間は保存できます。白菜を1/4に切ってよく洗い、半日ほど天日干しに。容器に入れて塩を振り、押しぶたをして重しをのせ、3〜4日おきます。白菜の漬物を取り出したら洗って水気を絞り、食べやすいサイズに切っていただきます。
栄養いっぱいのおいしい白菜をつくろう!
白菜の基本情報やそのルーツ、栄養価から栽培方法まで、幅広くご紹介してきました。ここまで読んだあなたは、白菜の栽培に本気で取り組みたいと考えている方ですね。ぜひタネまたは苗を入手して、チャレンジしてみてください。自身で収穫した白菜の深い味わいには、きっと感動を覚えることでしょう!
参考文献/
『やさしい家庭菜園』 監修者/藤田智、加藤義松 発行/家の光協会 2006年3月1日第1刷
『はじめての野菜づくり コンテナ菜園を楽しもう』著者/藤田智 発行/日本放送出版協会 2007年5月25日発行
『別冊やさい畑 野菜づくり名人 虎の巻』発行/家の光協会 2009年2月1日発行
『甘やかさない栽培法で野菜の力を引き出す 加藤流絶品野菜づくり』著者/加藤正明 発行/万来舎 発売/エイブル 2015年5月25日発行第2刷
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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