トップへ戻る

まちづくりを支える花とみどり…みつけイングリッシュガーデン、一人一花運動、中之条ガーデンズの事例 〜園芸・ガーデニング業界最新情報をお届け〜

まちづくりを支える花とみどり…みつけイングリッシュガーデン、一人一花運動、中之条ガーデンズの事例 〜園芸・ガーデニング業界最新情報をお届け〜

40年以上の歴史を持つ老舗業界専門雑誌『グリーン情報』最新号から最新トピックスをご紹介! 2025年9月号の特集は、「まちづくりを支える花とみどり」。そのほかにも、最新のイベント紹介はじめ園芸業界で押さえておきたいトピックスなど、注目のテーマが盛りだくさん。業界誌だからこそ発信できる貴重な情報の一部をお見せします。

まちづくりを支える花とみどり

まちづくりを支える花とみどり

SDGsやウェルビーイングといった観点から、地域の緑地を見直す動きはスタンダードになりつつあります。では、花とみどりを活用したまちづくりに取り組む自治体は、どのような取り組みを行い、どのような効果を得ているのでしょうか。

本特集では、新潟県見附市のみつけイングリッシュガーデン、福岡県福岡市の一人一花運動、群馬県中之条町の中之条ガーデンズの事例を取り上げ、それぞれの取り組みをサポートする専門家やチームの活動とともにご紹介しています。

ここでは、3つの取り組みの概要をご紹介します。詳しくはぜひ本誌をお手にとってご覧ください。

みつけイングリッシュガーデン(新潟県見附市)―市民主体で維持管理されるまちのシンボルガーデン

春のみつけイングリッシュガーデン
春のみつけイングリッシュガーデン。

新潟県見附市の産業団地の魅力づくりのために2009年にオープンした「みつけイングリッシュガーデン」。当初は何もない1.6haの空き地だった場所に人が集まるようになり、企業誘致率100%を達成。多くの雇用を生み、今ではまちのシンボルとなっています。

見附市には以前は目立った観光地がありませんでしたが、今はみつけイングリッシュガーデンを目当てに市を訪れる観光客も多くなり、2024年は約18万人が来園しました。

このプロジェクトの中で見附市が重視したのは、「市民の手で管理すること」。市は「ナチュラルガーデンクラブ」というボランティア団体を結成し、2003年ごろに会員募集を呼びかけました。プロによるガーデニング講座などを行い、ガーデンの維持管理を学んだ40人ほどが参加。このクラブの特徴は有償である点で、メンバーには市から時給500円が支払われています。こうして目に見える評価が得られるのも、やりがいの一つとなっているといえます。

ナチュラルガーデンクラブの皆さんが植栽を担当。
ナチュラルガーデンクラブの皆さんが植栽を担当。

今となっては、みつけイングリッシュガーデンが長年、市のシンボルとして親しまれている影響は大きく、市民の健康づくりやまちの景観美化にもつながっています。

取り組みを支える人たちーー蓼科高原バラクライングリッシュガーデン

2002年、みつけイングリッシュガーデンから「平凡な産業団地にしたくない」という依頼のもと、ガーデンの設計とボランティアの指導を任されたのが、日本のイングリッシュガーデンを牽引してきた蓼科高原バラクライングリッシュガーデンのガーデンデザイナーであるケイ山田さんです。

本誌では、地域活性を助ける本格的な庭園としてみつけイングリッシュガーデンをつくり上げた経緯や、ワークショップなどを通じたプロならではのサポート、蓼科高原バラクライングリッシュガーデンの取り組みなどをご紹介しています。

みつけイングリッシュガーデンを市職員と回ったケイ山田さん。ガーデンを眺め、「皆さんの努力でガーデンが維持されていることを、誇りに思います」と話した。
みつけイングリッシュガーデンを市職員と回ったケイ山田さん。ガーデンを眺め、「皆さんの努力でガーデンが維持されていることを、誇りに思います」と話した。
親子向けの寄せ植え教室「わくわく体験塾」で子どもたちの寄せ植えを見守るケイさん。
親子向けの寄せ植え教室「わくわく体験塾」で子どもたちの寄せ植えを見守るケイさん。

一人一花運動(福岡県福岡市)―花とみどりを介して市民でつくる花のある心地よいまち

一人一花スプリングフェス会場の県営天神中央公園貴賓館前広場。
一人一花スプリングフェス会場の県営天神中央公園貴賓館前広場。

福岡市では、市民・企業・行政一人ひとりが花とみどりを育て、公園や歩道、会社、自宅など、市内のあらゆる場所を花とみどりでいっぱいにするべく「一人一花運動」に取り組んでいます。2018年に始まったこの運動は今年8年目を迎え、今では「福岡市=花のまち」を市民に印象付けるまでに成長しました。

「一人一花」「一企業一花壇」を合言葉に「花による共創のまちづくり」を実現・定着させるための花壇制度は3つあります。

  1. 「おもてなし花壇」:企業等を対象に、天神や博多などの都心部を彩る花壇のスポンサーになれる制度。2025年7月1日現在で160社(177口)が協賛しており、花壇には協賛企業のロゴ入りの特製プレートが設置されています。
  2. 「ボランティア花壇」:歩道や公園などの公共空間で、市民や企業などが花壇づくりに取り組める制度。現在は391団体が登録しています。
  3. 「一人一花パートナー花壇」:店や会社など多くの人の目に触れる民有地の花壇を登録する制度。登録をすると、花壇に挿す「一人一花オリジナルプレート」が配布され、市のウェブサイトでも紹介されます。現在は694団体が登録しています。
福岡ソフトバンクホークスの「ホークスガーデン」。一人一花パートナー花壇に登録されている。
福岡ソフトバンクホークスの「ホークスガーデン」。一人一花パートナー花壇に登録されている。

そのほか、花壇コンテストや「一人一花『まち・ひと・しごと』づくりプロジェクト」、春に博多・天神エリアで開催される「一人一花スプリングフェス」、市民と企業が一体となってチャレンジしている「Fukuoka Flower Show(FFS)」など、福岡市の花とみどりによるまちづくりは順調に広がっています。

取り組みを支える人たちーーTAPJグループ

一人一花運動を広め、取り組みを定着させる役割を持っている「一人一花スプリングフェス」。年々勢いを増しており、今年は約6万4,000人が来場しました。

このイベントを企画しているのは、地元密着で保育園、社会人向けサッカークラブ、約260名が在籍するサッカースクール、農業法人などの会社を束ねるTAPJグループです。

本誌では、官民学を巻き込み、一人一花をそれぞれにとって自分ごとにするために取り組んだ同グループのさまざまな企画をご紹介しています。

ハンギングバスケットコンテストも開催。市民の花の技術も年々向上している。
ハンギングバスケットコンテストも開催。市民の花の技術も年々向上している。
学生のアイデアをプロがフィードバックし、共同して形にした「共創の庭」。
学生のアイデアをプロがフィードバックし、共同して形にした「共創の庭」。

中之条ガーデンズ(群馬県中之条町)―質の高いガーデンづくりで町民が花に触れる機会を増やす

中之条ガーデンズのナチュラルガーデン。花を咲かせる時期だけでなく、枯れる姿も植物の表情として見せる新しいガーデン。
中之条ガーデンズのナチュラルガーデン。花を咲かせる時期だけでなく、枯れる姿も植物の表情として見せる新しいガーデン。

 中之条ガーデンズを中心として、中之条花楽の里や花桃街道、オープンガーデンなど、花とみどりに触れる場の多い中之条町。四万温泉や沢渡温泉、尻焼温泉など多くの温泉地を有し、自然豊かな保養地として人気の町です。
 
1983年の第38回国民体育大会「あかぎ国体」・第19回全国身体障害者スポーツ大会「愛のあかぎ大会」開催をきっかけに、「花と湯の町なかのじょう」をスローガンとした花とみどりのまちづくりを推進。ガーデンの無料化など、町民が参加しやすい制度をつくり、地域全体でのまちづくりを行っています。
 
花のまちづくりの中核となるのは、花の駅美野原をリニューアルして2021年に有料施設としてグランドオープンした「中之条ガーデンズ」。プロデュースを塚本こなみさん、総合プランニング・ガーデンデザインを吉谷博光さんが担当し、ローズガーデンの植栽は「横浜イングリッシュガーデン」のスーパーバイザーを務める河合伸志さん、スパイラルガーデンとナチュラルガーデンの植栽はガーデンデザイナーの吉谷桂子さんが行い、花数や品種数だけでなく、デザイン性と丁寧さを重視した庭園になりました。管理には、施設職員はもちろん、パート職員や地域の事業者など多くの人が関わっています。

ローズガーデン。7つのセクションに区切られており、それぞれ違った雰囲気を感じることができる。
ローズガーデン。7つのセクションに区切られており、それぞれ違った雰囲気を感じることができる。

役場で発行される「町民パスポート」があれば、町民は無料で入場ができます。2022年度の来園者数は年間10万人を突破し、その1割が町民です。

町民の来園が多い理由のひとつが、花の駅美野原の時代から受け継がれた「町民花壇」。専門家の植栽ではない町民の花壇が、有料施設に常設展示されるケースは珍しく、参加者にとって大きなやりがいとなっています。

町民花壇(EAST)。それぞれ趣向の異なる町民の植栽が見られる。
町民花壇(EAST)。それぞれ趣向の異なる町民の植栽が見られる。

このほか、中之条町では、花楽の里や花桃街道、町民によるオープンガーデンなどを巡る「ガーデンツーリズム(庭園間交流連携促進計画)」も少しずつ進んでおり、各拠点が連携した花のまちづくりが実現しています。

中之条花楽の里。
中之条花楽の里。
1万本のハナモモが沿道を彩る花桃街道。
1万本のハナモモが沿道を彩る花桃街道。

取り組みを支える人たちーー庭生 Arborist Team

中之条ガーデンズの高木・低木や大藤棚、芝生の管理を担うのが「庭生 Arborist Team(にわしょう アーボリストチーム)」。アーボリストとは樹木のスペシャリストのことです。樹木に関する知識を持ち、危険木の伐採や管理・保護などを行います。ツリークライミングに長け、樹木と距離が近い周辺の建物に被害を出さないように、部分的に切り進める特殊伐採や、高木の手入れといった場面で活躍します。海外では広く知られているものの、日本ではまだ少ない職人です。

本誌では、庭生代表のアーボリストクライマー・生須由幸さんの中之条ガーデンズでの活動内容や、日常の管理に留まらないイベントへの協力体制などについてご紹介しています。

芝生の手入れをする生須さん。
芝生の手入れをする生須さん。
「たくさんの子どもが自然に触れる機会を作りたい」という生須さんの思いから開催されているりんご畑の収穫祭での「木登り体験」。
「たくさんの子どもが自然に触れる機会を作りたい」という生須さんの思いから開催されているりんご畑の収穫祭での「木登り体験」。

—————————————————————————————–

国内3つ「まちづくりと花とみどり」の取り組みの概要をご紹介しました。本誌ではさらに詳しい内容を写真とともにご紹介しています。

業界の最新情報が盛りだくさんの『グリーン情報』

このほか、『グリーン情報』2025年9月号には、第2特集として、

・「生産地と消費地が近いメリットを生かした生産に取り組む東京の植木生産者たち(前編)」

ピックアップとして

・第42回全国都市緑化ぎふフェア
・第20回世界バラ会議福山大会2025閉幕

など、またトピックスとして

・第107回 大原ビックフェスティバル活況
・八ヶ岳農業大学校 八ヶ岳ガーデンプロジェクト始動

などを掲載。ほかにも業界最新ニュース、話題の園芸店紹介、学べるクイズコーナーなど、園芸・ガーデニング・グリーン業界の幅広く深い情報が満載です。ぜひお手にとってご覧ください。

グリーン情報9月号

『グリーン情報』のお求めはガーデンストーリーウェブショップへ

 『グリーン情報』はガーデンストーリーウェブショップからご購入いただけます↓↓
ショップページはこちら。
https://www.gardenstory.shop/shopbrand/ct8/

人気の記事

連載・特集

GardenStoryを
フォローする

ビギナーさん向け!基本のHOW TO