猛暑が続くこの夏、犬にも“夏バテ”や“熱中症”の危険が迫っています。とくに高齢犬や短頭種、ぽっちゃり体型のワンちゃんは要注意。そんなとき、心臓を守る効果が期待できるハーブ「ホーソン(セイヨウサンザシ)」が、暑さに負けない体づくりをサポート。ハーバルセラピストの資格を持ち、ペットのための自然療法も学ぶ海野美規さんが、犬の熱中症の予防&対策ポイントと、真夏に活用したいホーソンの効果と愛犬への使い方をご紹介します。
目次
暑い季節は犬も熱中症に注意

梅雨明け宣言の前から猛暑続きの毎日。人間もペットの犬も、早くも夏バテモードではありませんか? 年々、暑さが厳しく、夏が長くなっているように実感しています。
これほどの暑さが続くと、暑さに弱いといわれている犬たちも人間同様に健康管理が難しいですね。暑さによるエネルギーの消耗と、室内と外気の温度差の影響で、体温や体内の水分調整がうまくできなかったり、食欲が落ちたりして、だるさなどの不調が出やすくなってしまいます。
このような季節にはハーブを活用して、少しでも元気に過ごしたいですね。今回はホーソンを使ってみましょう。
ホーソンは「心臓の守り神」

ホーソンはバラ科の植物で、和名をセイヨウサンザシといいます。サンザシというと、中国茶のお茶請けのお菓子を思い浮かべる方も多いかもしれませんね。酸味のきいたスティック状のドライフルーツのお菓子で、甘酸っぱくておいしいですよね。

ホーソンは、花、葉、果実に薬効があるとされ、古くから欧米やアジアの伝統的な植物療法で、動悸、息切れ、心臓の痛みなど心臓のさまざまな症状に用いられてきました。現在でも、うっ血性の心不全の初期の症状や狭心症、心臓の周囲の圧迫感、老化による心臓機能の低下などの症状に幅広く用いられています。科学的な研究によれば、こうした作用は、心臓のポンプの働きを強化し、心臓に出入りする血液量を増加させたり、血管そのものを健やかに保つことによるとされています。
ホーソンを愛犬にも活用

人は汗をかいて熱を逃がし体温を下げることができますが、犬の場合は、体温調節を担う汗腺(エクリン腺)はほぼ足裏の肉球周辺にしかないため、発汗による体温調整はほとんどできません。犬は主に唾液を蒸散させ気化熱を利用する方法(パンティング)と、身体に冷たいものを直接あてる方法で体温調節を行っています。
その際に、体内のエネルギーを消耗して心臓に負担がかかります。高齢の犬や、鼻が短い犬種、暑い地域原産の毛がもふもふの犬、ぽっちゃり体型の犬、心臓に問題のある犬などは、特に注意しなくてはいけないということです。
心臓への負担を軽減し、全身の血液循環を促進、熱中症予防、暑さに負けない身体作りに役立つハーブのホーソンは、犬にも有効とされていますので、取り入れてみてはいかがでしょうか。
ホーソンは安全性が高く穏やかに作用するハーブということが分かっていますが、持病のある場合は獣医師に相談してください。
ホーソンのチンキを作ろう

ホーソンは、果実、葉、花を使うことができます。ハーブティーでもいいのですが、犬の場合は、チンキ剤が使いやすいようです。
<材料>

- ホーソン(果実) 10g
- ウオッカ 100mL
(アルコール度数40度以上のもの)
<作り方>
- ホーソンベリーを細かく刻みます。
2. ガラスの瓶に、ウオッカとホーソンベリーを入れます。

3. 6〜8週間ほど漬け込みます。毎日数回、瓶を振ってよく混ぜます。

4. 出来上がったら、清潔な保存瓶に濾して移し替えます。
暗い所で1年ほど保存できます。
ホーソンのチンキの使い方
犬はアルコールを分解する酵素を持たないため、アルコールの摂取は危険です。以前にペットのためのメディカルハーブ講座を受講した際には、ごく少量のチンキの摂取なら問題はないとのことでしたが、ペットはアルコールの匂いを嫌うことも多いため、アルコールを飛ばす方法も教えてもらいました。
チンキ:熱湯=1:2〜3の割合で、チンキの中に熱湯をそそいで、蓋をせずに冷めるまで待てば、アルコールはかなり蒸発します。この方法で60〜70%ほどアルコールを飛ばすことができるそうです。ほかに湯煎にかける方法もあり、こちらは95%くらい飛ばすことができるとされています。
このようにしてアルコールを飛ばしたチンキをフードやおかずにかけて食べさせましょう。アルコールを飛ばしたチンキは保存がきかないため、冷蔵庫で保管して3日ほどで使い切ってください。
内服する際の目安は、1日分として体重10kgの犬に対し0.5〜1.5mLくらいですが、さらに少量から使って様子を見てください。アルコールを飛ばして、使用量を守って使うことが重要です。
犬の熱中症

人間と同じく、犬も熱中症になることがあります。犬は体温調整を呼吸に頼らざるを得ず、また厚い毛で全身を覆われていることから、人よりも高温の環境に弱い動物と考えられます。十分に注意をして、愛犬が熱中症にならないようにしましょう。
熱中症を起こしやすい状況としては、
- 炎天下での散歩
- 蒸し暑い日の屋外での運動
- 暑い室内での留守番
- 車の中に乗せたままにする
- 屋外での係留
などがあります。
熱中症は、犬種や体調による場合もありますが、どの要因も、飼い主が気を付ければ未然に防ぐことができます。

愛犬の柴犬あんは、時々陽に当たりたいと思うのか、部屋の中の日光の当たる暑いところで寝ていることがあります。部屋はエアコンをつけているので、短い時間なら大丈夫かなと思ってそのままにしておき、少し経ってから見に行くと、まだ寝たまま。ぐっすり寝入ってしまっていることがあります。急いで起こして、涼しいところに移動させますが、体は熱くなっています。その後、水をがぶがぶ飲んでいます。
エアコンをつけた屋内でも、危険なことがあります。
飼い犬を絶対に熱中症にさせないように、注意を怠らないようにしたいですね。
犬の熱中症の症状
次のような症状が現れた場合、犬が熱中症になっている疑いがあります。
- 急激な体温の上昇(犬の平熱は、37~39度)
- 元気がなく落ち着きをなくす
- 舌を出して荒い息遣いをする
- 大量のヨダレを垂らす
- 目や口腔粘膜の充血
- 嘔吐や下痢をする
- ぐったりして起き上がれない
- 意識を失う
- 身体を痙攣させる
以上の項目の下に進むにつれて、重症になっています。
重症になってしまったら大変です。早い段階で気がつくようにしたいですね。
犬の熱中症の応急処置

もし愛犬に熱中症の症状が出てしまったら。
病院に行くまでの間にできることを調べました。
- すぐに風通しがよく、涼しい場所に移し、扇風機を当てて十分な換気を行う。
- 水を飲むようであれば飲ませる。
- 口の中のよだれをぬぐう。
- 冷たい水に体全体を浸す。ただし、氷水は急激に冷えるので、使わない。
大型犬など浸しにくい時は、体全体に水をかける、冷たい水で濡らしたタオルをかけるなどして、全身を冷やす。- 意識がない場合は、犬の頭を氷で包む。
- 体温が39.5度以下に下がったら、冷やすのをやめる。
人間もペットも、熱中症にかからないように、くれぐれも注意して過ごしましょう。
参考/
「メディカルハーブの事典 主要100種の基本データ」林真一郎(編)
「犬と猫のためのメディカルハーブガイド」金田俊介(著)
「ペットのためのメディカルハーブ講座」講座テキスト
朝日新聞社の関連サイト SIPPO
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 海野美規 - フラワー&フォトスタイリスト -

うんの・みき/フラワー&フォトスタイリスト。ハーバルセラピスト。愛犬あんとの暮らしを通じて、動物のための自然療法を学ぶ。パリで『エコール・フランセーズ・ドゥ・デコラシオン・フローラル』に入門、ディプロムを取得。『アトリエ・サンク』の山本由美氏、『From Nature』の神田隆氏に師事。『草月流』師範。フランス、ハンガリー、シンガポールでの暮らしを経て、現在日本でパリスタイル・フラワーアレンジメントの教室『Petit Salon MILOU(プチ・サロン・ミロウ)』を主宰。
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