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SNSで話題沸騰!「赤い虫」の正体とは? 植物を襲うダニとの違いと、本当に気をつけたいダニ

SNSで話題沸騰!「赤い虫」の正体とは? 植物を襲うダニとの違いと、本当に気をつけたいダニ

Patrizia_Mancini1/Shutterstock.com

「ベランダに赤い小さな虫がたくさん…」「壁を動く赤い点が不気味」。この季節、SNSや検索で注目が高まる“赤い虫”。その正体は「タカラダニ」と呼ばれるダニの一種です。「ダニ」と聞くと、不快害虫やアレルギーの原因、植物の大敵など、悪いイメージを持つ方も多いはず。今回は、この赤い虫=タカラダニの正体とともに、植物に害を与えるハダニ、人に危険を及ぼすマダニ、そして私たちの肌にもすむダニの話まで含めて、ガーデナーが知っておきたい“虫との正しい付き合い方”をお届けします。

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■ 赤い虫の正体は「タカラダニ」。見た目に反して無害!

タカラダニ

春から初夏にかけて、ベランダや外壁、玄関まわりのコンクリートやタイルに、小さな赤い点がちょこまかと動いているのを見かけたら、それは「タカラダニ」かもしれません。国立環境研究所の報告によると、タカラダニは植物の葉を吸汁したりすることはなく、主に花粉や小さな昆虫などをエサとして生活する自由生活性のダニです[¹]。

特徴まとめ

  • 大きさ:0.5〜1mm程度の極小サイズ
  • 色:鮮やかな赤。肉眼でもよく目立つ
  • 活動時期:主に4〜6月。雨上がりの晴れた日に活発化
  • 好む場所:コンクリート、鉢受け皿、タイル面、室外機周辺など

人や植物に害は?

  • 咬まない・刺さない・病気を媒介しない
  • 植物の葉を吸汁したりもしない
  • 潰すと赤い体液が出てシミになるため、素手で触らない方が無難

なぜ赤いの?

あの鮮やかな赤は、捕食者への警告色(擬態)とされており、紫外線からの防御にも役立っていると考えられています。

■ でも本当に注意すべきは…植物の汁を吸う「ハダニ」

リンゴハダニ
リンゴハダニ。Tomasz Klejdysz/Shutterstock.com

タカラダニは無害ですが、園芸において警戒すべき“ダニ”がいます。
それが「ハダニ」。葉の裏に潜み、植物の汁を吸って弱らせる、ガーデナーの天敵です。

ハダニの特徴

  • 葉裏に寄生し、吸汁によって植物を枯らす
  • 乾燥した環境で増殖しやすい
  • 体長0.3mmほど。赤・黄・緑など色に個体差あり

被害のサイン

  • 葉の表面に白いかすれ模様
  • 葉裏にクモの巣のような細糸
  • 成長不良、葉の変色・落葉

対処法

  • 葉水で湿度を上げる(ハダニは乾燥が好き)
  • 被害葉を除去
  • 殺ダニ剤を使用(耐性がつきやすいためローテーションで)

■ コラム|“虫が虫を退治する”という発想。ハダニの天敵「ケナガカブリダニ」

ケナガカブリダニ
dohtor/Shutterstock.com

ハダニに悩まされた経験のある方なら、そのしぶとさをご存じかもしれません。乾燥するとどこからともなく現れ、葉裏に隠れて植物をじわじわと弱らせていく…。
そんなハダニに対して、薬剤に頼らず“自然の力”で対処する方法があることをご存じでしょうか?

その主役となるのが「ケナガカブリダニ」という小さなダニ。けれどこの子は、ハダニとは違い、植物には一切手を出しません。むしろ植物を守る“ボディーガード”のような存在です。

ケナガカブリダニは、ハダニの卵・幼虫・成虫を見つけては食べてくれる捕食性の益虫。1日にハダニの成虫・幼虫・卵を数十個体食べる強力な天敵として、農研機構でもその有効性が確認されています[²]。近年ではプロの農家さんだけでなく、家庭園芸用にも市販されており、バラや観葉植物のハダニ対策として、環境に配慮した防除手段として注目が集まっています。

生物農薬
捕食性ダニが入ったサシェ。Firn/Shutterstock.com

おもしろいのは、ちゃんと“探し出して”食べてくれること。葉の裏、隙間、見えにくい場所まで動き回り、ハダニの居場所を突き止めます。

導入のタイミングは「ハダニが出始めた頃」。薬剤とは違い、早めに仕込んでおくのがコツです。そして、農薬との併用はNG。せっかく入れた益虫までやられてしまいます。

こうした天敵を使う「生物農薬(バイオコントロール)」の考え方は、これからのガーデニングや農業にとって、とても重要なキーワード。「害虫を敵対視する」だけでなく、「自然の中のバランスで見守る」という視点は、庭づくりをもっと深く、楽しいものにしてくれます。

目には見えにくいけれど、植物のそばには、こんな頼れる小さなヒーローもいるのです。

■ 人体に最も危険なのは「マダニ」

マダニ
shoma81/Shutterstock.com

もうひとつ、絶対に見逃せないのが「マダニ」。
人や動物に咬みついて吸血し、ウイルス感染症(SFTSなど)を媒介する危険なダニです。国立感染症研究所は、マダニが媒介する「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」やライム病などのリスクについて警鐘を鳴らしており、草むら作業や犬の散歩後の全身チェックを強く推奨しています[³]

マダニの特徴

  • 草地や山林、庭の雑草エリアや植栽地に潜む(庭にもいます)
  • 活動時期:春〜秋にかけて活発化
  • 咬まれると数日間、皮膚に張りついて吸血する

対策と予防

  • 庭作業や草刈りは長袖・長ズボン・靴下で肌を覆う
  • 作業後は着替え・シャワー・ペットの毛チェック
  • 咬まれても自力で引き抜かず皮膚科へ
    (口器が残ると感染リスク大)

■ コラム|庭づくりと“虫との距離感”

庭作業
Natalia Bohren/Shutterstock.com

植物を育てるということは、自然とともに暮らすことでもあります。
タカラダニのような無害な虫もいれば、ハダニのように注意が必要な存在も、マダニのように命に関わるものもいます。

特にマダニは、見えにくい密に茂った日陰の花壇や雑草が放置された場所などにも潜む可能性があるので、雑草を適切に管理し、植栽エリアの風通しをよく手入れすることも大切な防虫対策のひとつ。ペットがいる場合は、庭への出入りはマダニのリスクが少ない芝生などの開けたエリアに限定するといいでしょう。

そして虫よけスプレー(マダニに効果ありと記載されているもの)をして、長袖・長ズボンを着るなど、「虫への備え」を“ガーデニングスタイル”のひとつとして加えてみてください。

正しい知識を持って、きちんと準備をすれば怖がることがありません。虫たちと上手に距離を取りながら、安心して庭時間を楽しみましょう。

虫よけスプレー
Irina Shatilova/Shutterstock.com

■ そもそもダニって何? 身のまわりにこんなにいる!

「ダニ」とひとくちに言っても、その数は膨大。国際ダニ学会(International Congress of Acarology)によれば、世界で記載されているダニは約5万種、未記載を含めれば100万種以上が存在すると推定されています。

◆ ダニの大きな分類(代表例):

分類主な特徴
自由生活性ダニ自然界で単独生活タカラダニ、コナダニ
寄生性ダニ他の生物に寄生マダニ(人や動物に吸血)、ハダニ(植物に寄生)
屋内性ダニ人家に生息ヒョウヒダニ(アレルゲン)、コナダニ
捕食性ダニ害虫を捕食ケナガカブリダニ(農薬代替として注目)

■ 人の肌にもいる⁉ ニキビダニ(顔ダニ)の話

じつは健康な人の皮膚の毛穴にも、ごく自然に「ニキビダニ(Demodex)」がすんでいます。
普段は無害ですが、増えすぎると吹き出物などの肌トラブルにつながることもあります。

「見えないけれど共に生きている」──それがダニの存在。
すべてが敵ではなく、私たちと共生しているものも多いのです。

■ 最後に|知れば不安は減り、備えができる

春から初夏にかけて、「赤い虫が出た!」という不安の声が増える季節。
その正体は多くの場合、無害な「タカラダニ」です。

しかし、同じ“ダニ”の仲間にも、植物にとって危険な「ハダニ」、人間にとって深刻な「マダニ」がいることを知っておくことは、安心してガーデンライフを送るための知識の一歩です。

不安な虫が出てきたら、まずは「何者か」を見極めて。
“怖がる前に知る”ことで、自然と共に過ごす毎日が、もっと心地よくなるはずです。

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