スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
3and gardenの記事
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園芸用品
小鳥が庭にやってくる幸せ。おうちで楽しむ可愛いバードウォッチング|メジロやシジュウカラに出会える! 庭に小鳥を呼ぶアイデアとアイテム
おうちで楽しむバードウォッチングの魅力 バードウォッチングは、特別な道具や広い庭がなくても始められる身近な自然体験です。最近では、庭先で小鳥の姿や声を楽しむことを「ガーデンバードウォッチング」と呼ぶこともあります。海外では自宅の庭に巣箱やバードフィーダーを設置して、日常的に野鳥観察をするスタイルが一般的で、日本でも少しずつ広がりつつあります。わざわざ山や公園に出かけなくても、自宅の庭やベランダで小鳥の訪問を待つだけで、身近な自然を感じられるのが魅力。 朝、窓辺に目をやると、必ずつがいでやってくるメジロが仲良く並んで枝に留まっている——そんな姿にふと心が和みます。冬には、鮮やかなオレンジ色のジョウビタキが庭木の柵にちょこんととまって、季節の訪れを知らせてくれることもあるかもしれません。 鳥たちの訪問は、忙しい毎日に小さな発見と癒やしをもたらしてくれます。毎日同じ場所を見ているのに、「今日はこんな鳥が来てくれた」と思えるだけで、暮らしに少し特別な彩りが加わるのです。 鳥を呼ぶ工夫と気をつけたいこと バードバスは鳥の水飲み場としてだけでなく、花壇のフォーカルポイントとしても効果的。David H Wingate/Shutterstock.com 庭に鳥を呼ぶには、ちょっとした工夫が効果的です。 水場(バードバス):水浴びや水飲みで鳥を引き寄せる 巣箱(バードハウス):繁殖期に子育ての場となる 餌台(フィーダー):冬場などエサが不足する時期に効果的 バードバスは花を浮かべても楽しめる。 「鳥のためになるルール」 1. 餌やりの時期 基本的に「野鳥には餌を与えない」のが原則。ただし、冬の寒い時期など自然界にエサが不足する季節に限って、補助的に餌台を置いてあげるのは良いでしょう。親鳥や雛の栄養バランスを崩す可能性があるので、春〜夏の繁殖期には餌を与えないようにしましょう。 2. 水場の管理 バードバスの水は毎日、ジョウロやホースなどを用いて新鮮な水に入れ替えましょう。ボウフラや病原菌の温床にならないように注意します。 3. 設置場所 猫やカラスに狙われにくい場所に置きましょう。低すぎる場所は避けたほうが安全です。 4. 人との距離感 鳥は野生動物。触ったり捕まえたりせず、あくまで「観察」するスタンスを守りましょう。 庭を彩る鳥グッズ 小鳥が安心して訪れる庭にするには、巣箱やバードバスといったアイテムが役立ちます。実用性はもちろん、デザイン性が高く庭を彩る存在にもなります。ここでは、暮らしの中で楽しめるおすすめのアイテムをご紹介します。 フラワーモチーフの挿し込み式バードバス フラワーモチーフの水盤に、1羽の小鳥がちょこんと止まるデザインは、まるで童話のワンシーンのよう。足で軽く踏み込むだけで簡単に設置できる挿し込み式だから、移動もスムーズ。季節の草花や日当たりに合わせて、お好きな場所にレイアウトを変えることができます。鋳鉄の重厚感あるアンティーク調のカラーは、花々やグリーンと美しく調和し、庭の雰囲気をぐっと格上げしてくれます。 吊り下げ型のバードバス 枝やパーゴラなどから吊るして設置できるタイプのバードバス。水を飲んだり羽を休めたりと、鳥たちのくつろぐ姿を目の高さで間近に楽しめます。水場としてはもちろん、冬季は餌台としても活用できる遊び心あるガーデンアクセサリー。軽やかなデザインは、庭やベランダの上空に新たな景色をつくるアクセントとしてもおすすめです。 ゆったり水盤の自立型スタンド式バードバス まるい水盤に4羽の異なるポーズの小鳥たちが集う、優雅で愛らしいバードバス。直径27.2cmのゆったりサイズの水盤は、複数の鳥が同時に水浴びできる余裕のサイズ感。繊細な波紋模様の段々は、野鳥が足を掛けやすく、水を飲んだり水浴びをしたりと、安心して羽を休められる設計です。水を張った水盤に花を浮かべたり、夏の強い日差しの下でも涼やかな景色の演出が楽しめます。しっかりとした鋳鉄製のスタンドで自立するタイプだから、玄関前や花壇の中など、設置場所を自由に選べるのも嬉しいポイント。 グレーメタルのモダンなバードバス&フィーダー 鋳物のクラシカルな重厚感も素敵だけれど、洗練されたモダンガーデンには、こんなミニマルなデザインもおすすめです。グレーメタルの繊細な光沢と小鳥のモチーフがワンポイント。装飾は控えめながらも、静謐で上品な存在感があり、庭のフォーカルポイントとしても活躍します。ペグを土に挿し込むだけでどこにでも手軽に設置可能。 かわいい緑のおうち巣箱 まるで物語から抜け出したような愛らしいデザインの巣箱は、庭にひとつ掛けるだけで雰囲気がぐっと豊かに。まるで英国の田舎町にありそうなガーデンシェッドを思わせる、小さな家の形に、鉢植えやジョウロ、寝そべる犬など、ミニチュアのような細かな装飾が施され、オブジェとしても心惹かれる愛らしさがあります。丸い穴は小型の野鳥が出入りできる安心サイズで、かわいらしさだけでなく実用性も兼ね備えています。 住宅街の庭にやってくる身近な鳥たち 全国共通でよく見られる鳥 Chursina Viktoriia/Shutterstock.com スズメ:群れでやってきて地面をついばむ。チュンチュンという愛らしいさえずり。 EvergreenPlanet/Shutterstock.com ヒヨドリ:甘い果実や花の蜜が大好き。ややけたたましい鳴き声。 メジロ:目のまわりの白いリングと可愛らしいさえずりが特徴。 シジュウカラ:黒いネクタイ模様の小鳥で美しい鳴き声。 Agami Photo Agency/Shutterstock.com ヤマガラ:橙色と黒のコントラストが美しい、人懐っこい性格。 Malcolm Fairman/Shutterstock.com ムクドリ:群れで芝生を歩き回る。オレンジのくちばしが特徴。 two K/Shutterstock.com キジバト:「デデッポッポー」と特徴的に鳴く。 <地域ごとの特徴的な鳥> 北海道:コガラ、レンジャク(冬に実を食べに来る) 関東・東北:ジョウビタキ、ツグミ(冬の定番) 中部・近畿:カワラヒワ、コゲラ(小型キツツキ) 中国・四国・九州:イソヒヨドリ(海辺近く)、シロハラ 沖縄:シロガシラ、リュウキュウメジロ バードウォッチング初心者の見分け方のコツ 色と模様で区別:メジロは白いアイリング、シジュウカラは胸の黒いネクタイ模様。 鳴き声で区別:ヒヨドリは「ヒーヨ」、キジバトは「デデッポッポー」。 行動で区別:ムクドリは群れで地面を歩き、ツグミは落ち葉をひっくり返す。 季節で判断:ジョウビタキやツグミは冬鳥、スズメやシジュウカラは一年中。 小鳥が運んでくれる物語 ___小さなロビンが、庭の片隅からピーターをじっと見守っていました。赤い胸を揺らしながら、まるで「気をつけてね」と声をかけているように。 イギリスの絵本『ピーターラビットのおはなし』では、庭の小鳥ロビンが登場人物の冒険を見守る存在として描かれています。小鳥はただの背景ではなく、物語に寄り添い、やさしい眼差しを向ける存在です。 さまざまな文学に登場するロビン(コマドリ)。Wirestock Creators/Shutterstock.com 同じように『白雪姫』では歌う姫のまわりに小鳥たちが集まり、羽ばたきで彼女を励まします。『シンデレラ』でも、小鳥は希望を運ぶ仲間として登場し、灰にまみれた日常を明るく照らしました。 このように小鳥は人に幸福をもたらす存在として昔から大切にされてきました。庭に舞い降りる小鳥もまた、そんな昔話のように、私たちの暮らしに小さな幸運や癒やしを運んできてくれるのかもしれません。 鳥と暮らす庭で日常をもっと豊かに Yulia Kuznetsova2017/Shutterstock.com 庭に鳥がやって来ることで、日常の風景が少し特別になります。朝のコーヒータイムにさえずりを聞く、夫婦で一緒に鳥を数える…そんな小さな時間が暮らしを豊かにしてくれます。 お気に入りのアイテムをひとつ取り入れるだけで、庭は小鳥たちの舞台に。あなたの暮らしの中でも、小さなバードウォッチングを始めてみませんか?
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ガーデン&ショップ
【スペシャル・イベント】ハロウィン色で秋の庭が花やぐ「横浜イングリッシュガーデン」に出かけよう!
ハロウィンの起源を知ってお祭りを楽しもう 初夏は無数のバラが咲いていたローズトンネルの下が、ハロウィン・ディスプレイで賑やかな雰囲気に一変する秋の横浜イングリッシュガーデン(2025年)。 日本でも毎年恒例のイベントとなった10月31日のハロウィン(Halloween)は、キリスト教の諸聖人に祈りを捧げる祝日、11月1日の「諸聖人の日」「万聖節」(All Hallo)の前夜祭(All Hallo Eve)。先祖の霊をお迎えするとともに悪霊を追い払い、秋の収穫を祝うというヨーロッパが発祥のお祭りです。日本では「仮装の日」というイメージがありますが、本来の意味は「秋の彼岸」に似ているかもしれませんね。 横浜イングリッシュガーデンのハロウィン・ディスプレイの様子(2025年)。 ハロウィンの起源は、古代ケルトのドルイド教で行われていた「サウィン祭」といわれています。古代ケルトの暦では新年を11月1日とし、前日にあたる10月31日の大晦日の夜に先祖の霊が帰ってくると信じられていました。ところが、悪霊も一緒にやって来て、収穫した作物に悪影響を与えたり、子どもをさらうなど悪事をはたらくといわれていたのです。そこで人間は、悪霊から身を守るために仮面を被ったり、仮装をして悪霊の仲間に扮し、魔除けの焚き火をしていたといわれます。これがハロウィンにお化けの仮装をする由来です。 ハロウィンに欠かせない「ジャック・オー・ランタン」とは 横浜イングリッシュガーデンのハロウィン・ディスプレイの様子(2025年)。 ハロウィンで欠かせないのがシンボルとして使われるカボチャ。目・口・鼻の形をくり抜いて中にキャンドルを灯してランタンに仕立てたものを「ジャック・オー・ランタン」と呼びますが、そのジャックとは、アイルランドの物語に登場する男性の名前です。 横浜イングリッシュガーデンのハロウィン・ディスプレイの様子(2025年)。 ジャックは生前、悪いことを繰り返し、魂を取ろうとやってきた悪魔さえも騙すような行為をしたことから、地獄に堕ちることすらできず、死後もランタンに火を灯して闇夜をさまよい続けたという物語に由来します。愉快で可愛い印象のオバケカボチャですが、そのじつ業の深い人間の姿だったというわけです。ジャックはいまだ闇夜をさまよい続けているのでしょうか…。 写真撮影が楽しい! と毎年好評の「ハロウィン・ディスプレイ」 横浜イングリッシュガーデンのハロウィン・ディスプレイの様子(2025年)。 年々、素敵な仮装をした来園者も増え、楽しさも倍増している恒例のハロウィンをテーマとしたディスプレイは、10月31日(金)まで開催。今年は、秋の植物とともにたくさんのカボチャや大小さまざまなジャック・オー・ランタンを並べ、オレンジを基調とした明るくカラフルなフォトスポットが登場! 秋の植物とハロウィンのアイテムがコラボする横浜イングリッシュガーデン(2025年)。 また、芝地にはセメタリーガーデンをイメージした、モノクロのシックなディスプレイなど、ハロウィンとガーデンの植物がコラボレーションしています。賑やかでワクワクする秋の庭演出の数々を、ぜひ散策をしながら見つけてください。カラフルなコリウスや美しい穂を揺らすグラス類など、秋の庭演出も参考になりますよ。 芝生のエリアもハロウィン・ディスプレイ。周囲の木々のフォルムの違いもハロウィンの雰囲気を盛り上げています。 お見逃しなく!(2025年) 園内に入ってすぐに驚きがあり、園内のあちこちに映えるフォトスポットがあります。秋の植物も彩りに加わる、この時期ならではのガーデン散策をぜひお楽しみください。 10月24日(金)〜26日(日)3日間限定のライトアップイベント! 輝く「ハロウィンナイト」開催 10月24日(金)〜26日(日)の3日間限定で、ハロウィン装飾のライトアップを楽しめる夜間イベント「ハロウィンナイト」を実施します! 通常、日没後の園内はご覧いただけませんが、ハロウィン装飾のランタンに明かりを灯し、営業時間を20時まで延長して開園いたします。夕闇に浮かび上がる数々の照明でハロウィンらしさを演出します。普段は味わえない、幻想的な夜のガーデンをお楽しみください。 【「ハロウィンナイト」イベント概要】 期間限定公開の、横浜イングリッシュガーデン「ハロウィンナイト」は、秋が見頃の植物や咲き始めた秋バラのライトアップも見どころ(2024年)。 開催日:2025年10月24日(金)・25日(土)・26日(日)開催時間:17:30~20:00(最終入園19:30)イベント入園料:大人1,000円/小中学生500円/未就学児無料 ●10/24~26の「ハロウィンナイト」イベントチケットは、10月6日午前10時からネット予約システム(楽天・アソビュー)にて販売中開始。※当園窓口での販売予定はございません。ご入園前に電子チケットをお求めください。 ※「ハロウィンナイト」開催日は、通常営業は17:00(最終入園16:30)で終了します。当日の通常営業時間にご入園された場合は、「ハロウィンナイト」イベントチケットをお求めの上、17:30以降に再度ご入場ください。※悪天候の場合は、状況により中止または順延となる場合がございます。当日公式HPにてご確認ください。※「ハロウィンナイト」開催日当日は、無料送迎バスを延長して運行します。時刻表等詳細は、公式HPにてご確認ください。 期間限定公開の、横浜イングリッシュガーデン「ハロウィンナイト」の様子(2024年)。 芝生が広がるエリアも周囲の木々がハロウィンナイトの雰囲気を盛り上げます(2023年)。 秋バラが色濃く彩るオータム・ガーデン 秋バラが満開の横浜イングリッシュガーデン(2024年11月上旬)。 横浜イングリッシュガーデンでは、今年も10月中旬から秋バラが見頃を迎え、11月になってさらに開花が増えていきます。日毎に涼しくなる気候の下でゆっくりと花開く秋バラは、春バラと比べ色合いが鮮明で、ふっくらとした大輪の花を咲かせる傾向があります。 左上から時計回りに/ラ・マリエ/イージー・ダズ・イット/ニュー・ウェーブ/アンゲリカ/サザンホープ/シスター・エリザベス/ベルエポックフェアリー・ボタン 秋バラが満開の横浜イングリッシュガーデン(2023年10月下旬)。 花数こそ春と比べて少なくなるものの、一輪一輪の品質が高く重厚感があるのは秋ならではの魅力です。病害虫の発生しやすい日本の気候条件の下で夏を越し、秋バラを美しく咲かせるには、適切な管理が必要。横浜イングリッシュガーデンが自信を持ってお届けする美しい秋バラを、じっくり見て香りを嗅いで、堪能してください。 ⚫︎横浜イングリッシュガーデンのインスタグラム yokohama_eg_official や各種SNSでは、河合伸志さんの品種解説が書き添えられた見頃の花や庭の様子も毎日発信中! バラのほかにも、秋らしい植栽がいっぱいです。22品種ものコスモスやシュウメイギク、穂が美しいオーナメンタル・グラス、カラーリーフのコリウスなど、秋を代表するさまざまな植物が競演中。夕日に長く伸びる花影さえも目を見張る美しさです。 秋バラが満開の横浜イングリッシュガーデン(2024年11月)。 秋色の植物が大集合! 第13回ハンギングバスケットコンテスト 2023年のコンテスト展示の様子。 11月9日まで出展作品募集中 毎年11月に開催するハンギングバスケットコンテストの開催は、2025年で第13回目。全国から個性の光る魅力的なハンギングバスケットの作品の数々が一同に会し、その技術力とセンスを競います。多数の作品がずらりと並ぶ、見応えのある展示をお見逃しなく。*11月9日(日)までエントリー作品を募集中。詳しくは、HPをご覧ください。 「第13回 横浜イングリッシュガーデン ハンギングバスケットコンテスト」 展示期間:11月29日(土) ~12月7日(日) 10:00~18:00 ※最終日は15時までコンテストの種類 :① 壁掛けタイプ(募集数/80作品)作品テーマ「冬を彩るハンギングバスケット」② 吊り下げタイプ(募集数/20作品)作品テーマ「街を彩るハンギングバスケット」表彰式:12月7日(日) 13:30開催予定主催 :(一社)日本ハンギングバスケット協会 神奈川支部、横浜イングリッシュガーデン
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公共ガーデン
都立公園を新たな花の魅力で彩る「第3回 東京パークガーデンアワード」都立砧公園【秋の到来を知らせる9月】
第3回コンテスト会場は「都立砧公園」 公園の正門や駐車場からコンテストガーデンを向かうと見えてくる「東京パークガーデンアワード」の開催を示す2カ所の看板が目印。9月上旬もコンテストガーデンの花に蜂や蝶がやって来る様子も見られました。 2022年に代々木公園から始まった「東京パークガーデンアワード」。第2回の神代植物公園に続き、3回目となる今回は、成城学園、二子玉川など閑静な住宅街からほど近い場所にある都立砧公園(東京都世田谷区)が舞台です。芝生の広場と樹林で構成されたファミリーパークのほか、運動施設や遊具などが設置された広場が整備され、区民みんなに親しまれている公園でコンテストが繰り広げられます。 東京都立砧公園は、芝生が青々とした「みんなのひろば」をはじめ、バラ園、サイクリングコース、‘子供の森’など多数のエリアがあり、秋にはイチョウなどの紅葉・黄葉が楽しめます。 第3回のテーマは「みんなのガーデン」 今回のコンテストエリアは、‘みんなのひろば’前に広がるスペース。これから育っていく5つのガーデンは公園を訪れる多くの人の目を楽しませてくれることでしょう。 天気のよい休日には、家族連れがお弁当を広げる光景もあちこちで見られ、地域の住民をはじめ、多くの人々に親しまれている砧公園。‘みんなのひろば’前で開催される「第3回 東京パークガーデンアワード」のコンテストテーマは『みんなのガーデン』です。「東京パークガーデンアワード」の目指す“持続可能なロングライフ・ローメンテナンス”であることはもちろん、訪れる人々の五感を刺激し、誰もが見ていて楽しいと感じる要素を取り入れたガーデンであることが求められます。植栽のメインとなる宿根草は、丈夫で長生きすることから、季節ごとの植え替えは行わず、四季ごとに花の彩りがあることも期待されています。 第3回のコンテストガーデン コンテストガーデンが設けられた敷地の平面図。A〜Eの各面積は約40㎡ 。どのエリアでガーデンを制作するかは、2024年10月に抽選により決定しました。 各コンテストガーデンは、高さ40cmの枠に囲まれた中に作られました。子どもたちの目線にも近い高さで、かがまなくても植物を身近に鑑賞できるのも今回の特徴です。9月の様子。 今回のガーデンでは、通路を挟んで対に設けられた2つ1組の花壇が5つ連なっています。隣接する‘みんなのひろば’や‘ねむのき広場’からコンテストエリア全体を眺めたり、花壇に挟まれた通路を歩きながら、左右に育つ植物を観賞したりするなど、さまざまな角度からガーデンを堪能することができます。 写真手前の北から奥の南に向けて、A・B・C・D・Eの順に花壇が並ぶ。9月の様子。 2024年12月に行われた第1回作庭。5つのガーデン制作に関わった皆さん。 【第3回 東京パークガーデンアワード in 砧公園 最終審査までのスケジュール】 コンテストに挑戦する5名の入賞者が1年を通してガーデン制作に挑む「東京パークガーデンアワード」。2024年12月中旬に、それぞれの区画で1回目の作庭が完了し、2025年2月下旬に2回目の作庭日が設けられています。その後、4月は春の見頃を迎えた観賞性を審査する『ショーアップ審査』、7月は梅雨を経て猛暑に向けた植栽と耐久性を審査する『サステナブル審査』、11月は秋の見ごろの鑑賞性と年間の管理状況を審査する『サステナブル審査』が行われ、グランプリが決定します。 以下、入賞者決定~審査結果発表までのスケジュール。 【審査基準】公園の景観と調和していること/公園利用者の関心が得られる工夫があること/公園利用者が心地よく感じられること/植物が会場の環境に適応していること/造園技術が高いこと/四季の変化に対応した植物(宿根草など)選びができていること/「持続可能なガーデン」への配慮がなされていること/メンテナンスがしやすいこと/テーマに即しており、デザイナー独自の提案ができていること/総合評価※各審査は別途定める規定に従い、審査委員による採点と協議により行われます。 第3回 東京パークガーデンアワードの入賞者によるオンライン座談会イベント 都立砧公園にて開催中の第3回コンテストガーデン入賞者5名によるオンライン座談会を2025年8月1日(金)15:30~17:00に開催しました。座談会では、入賞者それぞれの応募書類の紹介、植物の調達から造園、メンテナンスまで、参加したからこそ分かる”ナマ”の声をお届けしました。 Pick up 月々の植物の様子 9月の植物の様子 アガスターシェ‘ブルーフォーチュン’(Aエリア)、ユーパトリウム・コエレスティナム(Bエリア)、オジギソウ(Bエリア)、リアトリス・スカリオサ‘アルバ’(Cエリア) アロニア‘メラノカルバ’(Dエリア)、ヒルベリー(Dエリア)、ヒビスクス・コッキネウス(モミジアオイ)(Eエリア)、 オキシペタルム・カエルレウム(Eエリア) 8月の植物の様子 ヘリアンサス‘ブリーディングハーツ’(Aエリア)、カラミンサ‘ブルークラウド’(Aエリア)、コレオプシス‘ガーネット’(Bエリア)、ヘレニウム‘シエスタ’(Cエリア) エキナセア‘メローイエロー’(Cエリア)、モナルダ(Dエリア)、カンナ‘ベンガルタイガー’(Eエリア)、ルドベキア‘リトルヘンリー’(Eエリア) 7月の植物の様子 ユーパトリウム‘ベビージョー’(Aエリア)、ゲラニウム‘アズールラッシュ’(Aエリア)、ヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’(Bエリア)、エキナセア‘ブラックベリートリュフ’(Bエリア) ヘメロカリス‘クリムゾンパイレーツ’(Cエリア)、オミナエシ(Dエリア)、ネリウム(=キョウチクトウ)’ペティットサーモン’(Eエリア)、エリンジウム・ユッキフォリウム(Eエリア) 6月の植物の様子 ルドベキア ‘フラメンコ・ブライトオレンジ’(Aエリア)、ムスクマロー‘ホワイトパーフェクション’(Bエリア)、リシマキア‘ミッドナイトサン’(Bエリア)、ブリザ・メディア(Cエリア) ユリ‘リーガルリリー’(Cエリア)、ウスベニアオイ(Dエリア)、アザミ(Dエリア)、ベロニカ・ロンギフォリア‘マリエッタ’(Eエリア) 5月の植物の様子 シラー‘ブルーアロー’(Aエリア)、オーニソガラム・アラビカム(Aエリア)、チャイブ(Bエリア)、ギリア・レプタンサ(Bエリア) カマッシア・クシッキー(Cエリア)、ビバーナム・ハリアナム(Cエリア)、パパベル・コムタツム‘レディーバード’(Eエリア)、エスコルチア ピンク(Eエリア) 4月の植物の様子 スイセン‘タリア’(Aエリア)、フロックス・ディバリカタ‘メイブリーズ’( Aエリア)、アジュガ‘ディキシーチップ’(Bエリア)、チューリップ‘エデュアルトペルガー’(Bエリア) 原種チューリップ・ヒルデ(Cエリア)、フリチラリア・インぺリアス‘オレンジビューティー’(Cエリア)、ベニバナマンサク(Dエリア)、ユーフォルビア・ウルフェニー(Eエリア) 3月の植物の様子 スイセン‘テータテート’(Aエリア)、ブラックローズリーフレタス(Bエリア)、原種系チューリップ‘アルバ コエルレア オクラータ’(Cエリア)、プルモナリア‘ダイアナ クレア’(Cエリア) ユーフォルビア・リギダ(ガーデンD)、アザレアツバキ(ガーデンD)、ナルキッスス ‘ペーパーホワイト’(ガーデンE)、クロッカス ‘アードジェンク’(ガーデンE) 2月の植物の様子 シラー・シベリカ‘アルバ’(Aエリア)、シラー・ミシュチェンコアナ(Aエリア)、日本スイセン(Bエリア)、イタリアンパセリ(Cエリア) ローズマリー(Dエリア)、カレックス・オメンシス‘エヴァリロ’(Dエリア)、ナルキッスス カンタブリクス モノフィルス(Eエリア)、コルヌス ‘ケッセルリンギィ’(Eエリア) 1月の植物の様子 左から/ロータス ‘ブリムストーン・ライムゴールド’(Aエリア)、ワイルドストロベリー ‘ゴールデンアレキサンドリア’(Bエリア)、コトネアスター(Bエリア)、エリンジウム パンダニフォリウム ‘フィジックパープル’(Cエリア) 左から/庭人さんのビオラ(Cエリア)、モンタナハイマツ(Dエリア)、アロエ ストリアツラ(Eエリア)、ユッカ ‘ゴールデンスウォード’ (Eエリア) 全国から選ばれた入賞者5名のガーデンコンセプトと月々の様子 コンテストのテーマとルールをふまえて制作される5つのガーデン。それぞれのガーデナーが目指す庭を、作者の制作意図や図面、植物リストの一部を紹介しながら、月々の様子を撮影した写真とともにお伝えします。 コンテストガーデンAGathering of Bouquet 〜庭の花束〜 【作品のテーマ・制作意図】 皆さんの日常に癒やしや潤いを届けたいという願いを込め、プランツ・ギャザリングの視点で、ガーデンをひとつの大きなブーケに見立ててデザインを構成しました。動物たちが次の訪問者のために心遣いを残していく絵本から着想を得て、あらゆる世代の方が見て触れて、香りなどを楽しめるように、花の形や手触りがおもしろいものを用いた植栽計画をしています。ぜひ手に取って、お気に入りの植物を見つけてください。たくさんの感動や気づきが新たな会話を生み、笑顔になるシーンが増えますように。 【主な植物リスト】 宿根草:エキナセア‘マグナススーペリア’/ペンステモン‘ストリクタス’/アガパンサス‘ピッチュンホワイト’/クラスペディア‘ゴールドスティック’/オルレア・グランディフローラ‘ホワイトレース’ などグラス類:ペニセタム・ビロサム‘銀狐’/メリニス‘サバンナ’/ホルデューム・ジュバタム/カラマグロスティス・ブラキトリカ など低木:コルヌス・ステラピンク/ビルベリー‘ローザスブラッシュ’/ニシキギ・コンパクター/コバノズイナ など球根:チューリップ‘フレーミングピューリシマ’/レウコジャム‘スノーフレーク’/アリウム‘グレイスフルビューティ’ など コンテストガーデンA 月々の変化 9月の様子 花壇のそばに植わるマツの木が、やわらかな木陰を落とすこのガーデンには、ほかのエリアよりもひと足早く、秋の気配が訪れています。花数はかなり減ったものの、アジサイ‘アナベル’の花がらやグラス類、さまざまなシードヘッドが、ダイナミックな造作のバイオネストに寄り添いながら、季節の移ろいを感じさせています。 上左/アジサイ‘アナベル’の丸い花がらや細いイトススキ、幅が広く長い葉のシランなど、さまざまなフォルムの植物が組み合わさって、花が無くても表情は豊か。一角では、アネモネ‘パミナ’のピンクのつぼみが膨らんできている。上右/夏に伸びきった枝葉がすっきりと剪定され、バイオネストがよく見えるようになった。一定方向に組まれた枝が、植栽に規則的な流れを生み出している。 下左/グラス類が風になびくさまが、秋を感じさせる。下右/ルドベキア‘リトルヘンリー’の控えめな花が、落ち着きを見せ始めたいまの季節にピッタリ。 8月の様子 7月に主役的存在だった淡い黄花のルドベキア‘フラメンコ・バニラ’は影を潜め始めました。 代わりに鮮やかな黄花のルドベキア‘ゴールドスターム’が咲き始め、先月から咲き続けているオレンジ花の‘フラメンコ・ブライトオレンジ’やアガスターシェ‘モレロ’とともに、鮮やかさと深みのある色彩を織り成しています。また、中央のバイオネストの傍らでは、小型の西洋フジバカマや、ユーパトリウム‘ベビージョー’が、グラス類とともにワイルドな趣を演出。ホトトギスやシュウメイギクなどの秋の植物も成長し始めています。 上左/盛夏もバイオネストがオーナメンタルな存在感を発揮。上右/ユーパトリウム‘ベビージョー’の群植が印象的。中左/赤(アガスターシェ‘モレロ’)×青(サルビア‘ミスティックスパイヤーズブルー’)×黄(ルドベキア‘ゴールドスターム’)のカラフルな花色の連なりが、夏らしさを強めている。中右/カラミンサのふんわりとした草姿が植栽に涼をもたらしている。下左/ルドベキア‘ゴールドスターム’やアガスターシェ‘ブルーフォーチューン’、グラスの爽やかなシーン。下右/アジサイ‘アナベル’やエキナセア‘サンシーカーズ レインボー’の花が色褪せ始め、ミスカンサスの穂がほんのりと秋の訪れを感じさせている。 7月の様子 ルドベキアにエキナセア、アガスターシェ、アスターなどの素朴な中に、華のある草花がメインとなり、この時季の彩りとなっています。その中で、アガパンサスとアジサイ‘アナベル’の白花が清涼感をプラス。ディスカンプシアやミスカンサス、ペニセタムなどのグラス類が花の間をつなぎ、この時季ならではの風景に一体感をもたらしています。 上左/ルドベキア ‘フラメンコ・バニラ’とアガパンサス‘エバーホワイト’の涼やかな組み合わせ。コンパクトなルドベキアを選んでいるので、抜群のまとまりに。上右/アガスターシェ‘モレロ’とアスター‘ロイヤルルビー’、ルドベキア ‘フラメンコ・ブライトオレンジ’の濃厚な花色の取り合わせが印象的なシーンを描いている。中左/素朴な雰囲気のエキナセア・マグナススーペリアとディスカンプシア‘ゴールドタウ’のフォルムのコントラストの妙が味わいを出している。中右/コルヌス‘ステラピンク’の白斑の葉とアジサイ‘アナベル’の白花が離れたところで呼応し、まとまり感をアップ。下左/バイオネストのダークカラーにアジサイ‘アナベル’の白さが際立ち、他の植物も美しく映える。下右/カレックス・エラータ‘オーレア’とヒューケラの葉の明るさがアクセントに。 6月の様子 この時季は、全体的にボリュームがありながらも、デザイン的に抑制が感じられる大人っぽい雰囲気の風景となりました。数種のグラス類に、少量の赤やオレンジ、青の花の存在感が見事に引き立てられています。ふわふわとした植物群の中で、アリウムの丸いつぼみやエリンジウム・プラナム‘ホワイトグリッター’の青花が描くドットが、心地よいアクセントとなっています。 上左/植物の茂みの奥で、鮮やかなオレンジ花のルドベキア ‘フラメンコ・ブライトオレンジ’が目を引き、視線を植栽の奥へと誘っている。上右/コルヌス‘ステラピンク’の斑入り葉やエリンジウム・プラナム‘ホワイトグリッター’の青みがかった株が見せる、幻想的なワンシーン。中左/花が少ないエリアで、赤花が落ち着いた彩りを添えているアガスターシェ‘モレロ’。中右/アガパンサス‘エバーサファイア’の濃いブルーの花が、風景に深みを与えて。下左/デスカンプシア・セスピトーサ ‘ゴールドタウ’が伸ばす繊細な穂が光を透過し、軽やかさときらめきをプラス。下右/アリウム・シュベルティのシードヘッドが、オブジェのような存在感を発揮。 5月の様子 たくさんの繊細な植物が風に揺られるさまは、花に満たされた野原のよう。全体的に白・ピンク・黄・青にまとめられた花色が、この時季ならではの軽やかでやさしい雰囲気を生み出しています。ナチュラルな景色の中に大小さまざまなアリウムが球状の花穂を上げ、特にアリウム・シュベルティが造形的なデザインを添えています。 上左/ホルデューム・ジュバタムのツヤのある穂がアクセントとなりながら、シーンの切り替えにも一役買っている。上右/オーニソガラム・アラビカムやダッチアイリス、アリウム‘シルバースプリング’などの球根類を、レースのような白花のオルラヤや紫のクナウティアがふわりと優しく繋いでいる。中左/ダッチアイリス ‘ブルーマジック’ の重量感とクナウティア・アルベンシスの浮遊感が対照的。中右/そばに植わるマツの木で日陰となるエリアは、ダッチアイリス ‘ブルーマジック’がキリッとしたアクセントに。下左/バプティシア・アウストラリスの量感が、シーンの見応えを高めている。下右/つぼみを下げるコバノズイナが野趣を漂わせて。 4月の様子 数種類のチューリップが、ピンク色を軸とした色合いで一斉に咲き始めました。黄色が混ざった小ぶりの花‘ガボタ’がピリリとスパイスを効かせています。周りにはオルラヤやグラス類がふわふわとした草姿で合間を埋めつくし、まさに『ギャザリング=花束』の雰囲気が表現され始めました。 上左/前面を彩っているチューリップ‘パープルエレガンス’と‘ガボタ’。圧倒するようなボリュームで訪れた人を出迎えている。上右/チューリップ‘ガボタ’に寄り添い咲くのは、ナチュラルな雰囲気のブーケに近年よく使われているナズナ(タラスピ・オファリム)。中左/松の枝でやや日陰気味になるコーナーはオルラヤがメイン。中右/後方は明るいピンクのチューリップ‘フレーミングピューリシマ’が賑やかさをアップ。下左/アリウムの隆々とした葉が植栽に立体感をもたらして。下右/下方を軽やかに埋めているフロックス・ディバリカタ‘メイブリーズ’。チューリップ‘ガボタ’とのコントラストが素敵。 3月の様子 2月から東側のガーデンの一角で咲き始めたシラー・ミシュチェンコアナが、黄色いスイセン‘テータテート’とともに、ガーデンのあちらこちらで咲き始めました。また、対の花壇それぞれに一株ずつ植わるユキヤナギが咲き始め、植栽に立体感が出始めています。 左上/林の中の一角を切り取ったような、自然味あふれるシーン。右上/早い時点から勢いよく葉を伸ばす、瑞々しいアリウムが植栽にインパクトを与えている。左下/奔放に枝を広げるユキヤナギがデザインに動きを出している。右下/あちらこちらから顔を出すシラー・ミシュチェンコアナ。先月より花穂が伸びて存在感が増している。 2月の様子 全体的に楚々とした植物で構成されているナチュラルなガーデン。枯れた花茎を残し、頭上から落ちるたくさんのマツの葉を味方につけることで、優しい野の趣が見事に表現されています。白花の2種の球根植物が、いち早く咲き始めました。 左上/クジャクアスターなどの株間で、ひっそりと白い花を咲かせているシラー・ミシュチェンコアナ。草丈2cmにも満たない極小の球根植物。 右上/清楚な彩りを添えるシラー・シベリカ‘アルバ’。原種ならではの繊細さが、ここにはよく似合う。 左下/マツ葉の布団の下から、いくつもの球根が一斉に芽吹き始めて。 右下/1月まで咲いていたアガスターシェ‘モレロ’の立ち枯れの姿が、野趣あふれるシーンを描いている。 1月の様子 2つの花壇の中央に据えられたバイオネストは、線の細い枝で組まれているので、まだ小さく幼い植物ともよく馴染み、オブジェのような存在感を放っています。昨年からちらほらと咲いている名残の花が、高さ20cm程に芽を成長させた球根とともに冬の庭に明るさをプラス。ガーデンの上に伸びるマツから落ちる影ともよく似合い、植栽をより自然な風景に見せています。 左上/クジャクアスターやアガスターシェ‘モレロ’の残花の彩りが、冷たい空気を温めているよう。 右上/ロゼット状に広がるアキレア‘カシス’の株の合間に、球根の芽がひょっこりと顔を出して。 左下/ビルベリー‘ローザスブラッシュ’の赤褐色の照り葉が、冬の光をきらきらと反射。 右下/成長を牽引するかのように球根類の芽が勢いよく伸びて、リズミカルで楽しげ。 12月の様子 コンテストガーデンA Gathering of Bouquet 〜庭の花束〜 12月下旬、作庭後の様子。 コンテストガーデンBCircle of living things 〜おいでよ、みんなのにわへ〜 【作品のテーマ・制作意図】 季節によってカラーリングが変化する植物や、実をつけて味わい深い風景を作ってくれる植物に集まる多様な生き物たち。そして各所に配置したサークルネストはそんな生き物たちの拠り所に。命の循環というキーワードをもとに植物だけではなく生きとし生けるものたちの集まる「庭」をテーマにデザインしました。人間だけに限らず、あらゆる生き物たち「みんな」にとっても楽しめる「命を感じられるガーデン」は「みんなのにわ」となり、命を循環させてゆきます。 【主な植物リスト】 宿根草:バプティシア‘ブルーベリーサンデー’/アガスターシェ‘ゴールデンジュビリー’ /糸葉丁子草/スタキス・オフィシナリス などグラス類:カレックス‘プレーリーファイア’/メリニス‘サバンナ’/ぺニセタム・オリエンターレ など低木:ブルーベリー/イチジク/紫式部 など球根:アリウム各種/チューリップ各種 など コンテストガーデンB 月々の変化 9月の様子 真夏の勢いを多分に残しながらも秋の気配を感じさせる、生命力あふれるガーデンです。オレンジや黄色のビタミンカラーの花々が、白い穂を出すグラス類とともに、初秋の日差しをまぶしく反射しています。春に種まきされたオジギソウの株が、花壇の縁で勢いよく生育中。 上左/ルドベキアやバーベナ、パトリニア・プンクティフローラの群生からユニークに飛び出すペニセタム・マクロウルム‘テールフェザーズ’が、植栽に躍動感をもたらして。上右/ヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’やルドベキア‘ブラックジャックゴールド’のホットな色彩が、秋の陽光に照らされたカレックスとともに、落ち着きと温かみを演出。下左/ムラサキシキブの斑入り葉が植栽のトーンを抑え、メリハリを与えている。下右/ユーパトリウム‘マスク’が、アメリカテマリシモツケ‘サマーワイン’とともに勢いよく伸びている。ペニセタム・オリエンターレの白い穂とのコントラストも面白い。 8月の様子 親しみを感じさせてきたナチュラルなガーデンは、濃厚な色彩の大人っぽい雰囲気に変わり始めました。ヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’とルドベキア‘ゴールドスターム’の赤花×黄花がつくる波が、この時期のガーデンの印象を強めています。また、ニンジンについたキアゲハの幼虫が旺盛に葉を食べており、数週間後にはたくさんのアゲハ蝶がここから旅立ちそうです。 上左/ホットな印象を与えるヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’やルドベキア‘ゴールドスターム’が、淡く素朴な花を咲かせるパトリニア・プンクティフローラと対比的な風景を創り出す。上右/ムラサキシキブの斑入り葉とコトネアスターのシルバーリーフが植栽にアクセントを添えている。中左/先月に引き続き咲き群れる白花の群れに、メリニス‘サバンナ’の白い穂が加わり、移りゆく季節を感じさせる。中右/アキレア‘ラブパレード’やコレオプシス‘ガーネット’の奥にもペニセタム・オリエンターレが加わり、装飾的な雰囲気を醸し出す。下左/ワインレッドの深みがぐっと増しているレッドコーナー。下右/ペニセタム・マクロウルム‘テールフェザーズ’の直立した細長い穂が、ガーデンの中心でユニークに揺れている。 7月の様子 強烈な存在感で人目を引いているのは、大輪の純白のユリ、オリエンタルリリー・プロポーザル。2つのガーデンの中央部でたくさんの花を咲かる姿は圧巻です。続けて印象的なのが、オリエンタルリリー・プロポーザルの手前に広がるシャスタデージーとムスクマロー‘ホワイトパーフェクション’が広がるホワイトエリア。ユリとともに、周囲の赤やピンク、黄色の花の鮮やかさを引き立てています。 上左/ユーパトリウム‘マスク’やアンジェリカ・ギガス、エキナセア・テネシーエンシス、エキナセア‘ブラックベリートリュフ’で魅せるレッドエリア。上右/シャスタデージーとムスクマロー‘ホワイトパーフェクション’が広がるホワイトエリア。中左/ヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’の赤花とアキレア‘テラコッタ’の黄花、ブロッコリーのブルーグレーの葉、ワイルドストロベリー‘ゴールデンアレキサンドリア’の組み合わせが印象的。中右/スタキス・オフィシナリスとアリウム‘ミレニアム’、バーベナ‘バンプトン’のピンクの花に、ペニセタム・ビロサムがやさしく寄り添って。下左/オリエンタルリリー・プロポーザルの周りにバーベナ・ボナリエンシスやバレリアナ・オフィシナリスがワイルドに丈を伸ばしている。下右/ブルーベリーの実がおいしそうに色づいてきた。 6月の様子 色分けした各ゾーンがいずれもボリュームが出て、見応え満点の風景となりました。春はオレンジや黄、ピンクの花で、カラフルで楽しげな雰囲気でしたが、初夏になると黄×銅葉、白花と黒花など、シックで大人っぽい色合わせに変化しています。一角では、種子から育ったブロッコリーやニンジンが発芽して育ち、傍らではネジバナも咲くなど、のどかなシーンを展開。ガーデン内にはカナヘビも棲みついているようです。 上左/アリウム‘パープルセンセーション‘や斑入りのムラサキシキブのシックな植栽に、アキレア・クリペオラータがピリリとスパイスを効かせている。上右/ワイルドストロベリー‘ゴールデンアレキサンドリア’の黄緑葉とヘリオプシス’ブリーティングハーツ’の銅葉、ブロッコリー‘スティックセニョール’のブルーグレーがかった葉で魅せる、重厚な雰囲気が漂うコーナー。中左/ピンク花のスタキス・オフィシナリスと終わりかけのアリウム‘クリストフィー’の造形的な対比がユニーク。中右/シャスタデイジーやホタルブクロの白花と、アジュガ‘バニラチップ’やムラサキシキブの斑入り葉を組み合わせた、涼やかなエリア。下左/白花のサンギソルバテヌイフォリアアルバ、黒花のスカビオサ‘エースオブスペード’など草丈のあるもので構成された、シックでワイルドなエリア。下右/ニューサイランとサニーレタスの銅葉がガーデンの印象を引き締めている。 5月の様子 2月末に植えたサニーレタスがこんもりと茂り、種子を筋まきした一角ではニンジンが芽を出し、イチゴも赤く育ち始め、実りある景色が楽しめるようになりました、この庭のコンセプトである‘命の育み’が強く表現されはじめています。一方、アリウムが咲き群れるエリアには、シックで大人っぽい雰囲気が漂うなど、眺める角度によって楽しめるシーンが大きく異なっています。 上左・上右/ギリア・レプタンサ×アリウム‘パープルセンセーション’の花が宙を浮いているように咲いていて幻想的な雰囲気。中左/2種のアリウム、スティビタツム‘ホワイトジャンアントとクリストフィー。異なる色形・高さでリズミカルに競演。中右/アキレア‘テラコッタ’の銀葉とリシマキア‘ファイヤークラッカー’の銅葉の組み合わせが、シックなアクセントを添えている。下左/サニーレタスを軸に赤褐色がにじむ植物でまとめられたエリア。下右/チャイブや実をつけるワイルドストロベリーがのどかな時間を演出。 4月の様子 西側のガーデンではピンクのチューリップの開花の盛りが過ぎ、東側のガーデンのオレンジ×黄のチューリップにバトンタッチしました。温かみのある色鮮やかな組み合わせが遠くからでも目を引き、心浮き立つ風景が広がっています。中央に植わるブルーベリーの開花がピークを迎え、収穫期の楽しい風景が待ち遠しいガーデンです。 上左/チューリップ‘バレリーナ’とスイセン‘フォーチューン’の元気が出る色合わせ。上右/こんもりと茂るギリア‘レプタンサブルー’の群生の中にチューリップ‘エデュアルトペルガー’が大人っぽいアクセントを加えている。中左/アジュガ‘ブロックスカップ’が広がる傍らで、ポツンポツンと咲くムスカリ・ラティフォリウム。中右/ピンクのチューリップ‘フレーミングピューリシマ’の株元でワレモコウのやわらかい新葉が無数に上がっている。下左/コーナーを彩る矮性のチューリップ‘ポップコーン’。 訪れた人を華やかに出迎えているよう。下右/イチゴと原種のチューリップ・ヒルデの素朴な愛らしさを漂わせるワンシーン。 3月の様子 モコモコとしたバークのマルチングの中からさまざまな小球根が芽を出し、ちらほらと花を咲かせ始めました。先月から開花し始めたニホンスイセンは花数が増え、植栽にやさしい華やぎをもたらしています。ガーデンの手前の方では、シラー・シベリカ‘アルバ’やピンクやブルーのムスカリの愛らしい姿が見られるようになりました。 左上/素朴な風情あふれる植栽にニホンスイセンがよく似合っている。右上/2月下旬に植えられたダークカラーのレタス。茶色いカレックスをクッションにして、ワイルドストロベリー‘ゴールデンアレキサンドリア’との色の対比を効かせている。左下/花壇の縁でひょっこり顔を出すムスカリ‘ピンクサンライズ’。右下/イチゴの株の中から花を上げるムスカリ・アズレウム。 2月の様子 やわらかい新葉を芽吹かせる宿根草のグリーンが、冬の日差しにまぶしく輝き、春の訪れを感じさせています。一番乗りでスイセンが咲き始めましたが、その他にもたくさんの球根類が芽を出し始め、のどかな風景が広がっています。 左上/大株のユンカス・ブルーアローがまだ寂しい植栽にボリューム感を与えている。 右上/日本スイセンが開花し始め、ほんのりと華やぎ始めた。 左下/繊細な細葉を上げるアリウム・レッドモヒカンなどの球根類の芽吹き。 右下/青みがかったルー(ヘンルーダ)の葉が、イエロートーンの植栽のアクセントになっている。 1月の様子 ふかふかとした明るい色のマルチングの中に、瑞々しくやわらかい草花の株が点在する様子は、まさに春遠からじといった風景。やわらかい葉のグラス類が風を受けて花壇に動きを感じさせています。グリーンを残すギリア ‘レプタンサブルー’やシシリンチウム ‘ストリアタム’や黄葉のワイルドストロベリー ‘ゴールデンアレキサンドリア’が表土に明るさをもたらしています。S字状の溝部分に入れたトチノキの実やその殻が愛らしく、花壇の中にストーリーを感じさせます。 左上/ギリア‘レプタンサブルー’やシシリンチウム ‘ストリアタム’の明るいグリーンが、花壇に瑞々しい景観を作り出している。 右上/数カ所に設けたサークルネストが、愛らしい鳥の巣を思わせる。左下/冬の陽光に黄金色に輝く、黄葉のワイルドストロベリー ‘ゴールデンアレキサンドリア’とブラウンがかったカレックス ‘プレイリーファイアー’の取り合わせが美しい。 右下/赤い実をつけるコトネアスターのシルエットがユニーク。 12月の様子 コンテストガーデンB Circle of living things 〜おいでよ、みんなのにわへ〜 12月下旬、作庭後の様子。 コンテストガーデンCLadybugs Table 「てんとう虫たちの食卓」 【作品のテーマ・制作意図】 砧公園で暮らす「小さな住人(虫たち)」がこのガーデンを訪れて住みやすいように生態系を意識した植栽のデザインをしています。植栽は、見る場所や角度によって印象が変わるように、カマキリなどの天敵が身を潜められるような複雑さが出るよう工夫しました。植物は、てんとう虫やカマキリの食料となるアブラムシなどが好む「バンカープランツ」や蝶やミツバチたちの蜜源となる植物を植えています。「小さな住人(虫たち)」の生活をそっとのぞき見ることができる場所を目指しています。ここでの小さな体験が、自分の身近な自然環境を考えるきっかけになってもらえたら嬉しいです。 【主な植物リスト】 バンカープランツ:へメロカリス/ユウスゲ/イタリアンパセリ など宿根草:モナルダ‘ブラドブリアナ’/エキナセア‘メローイエロー’/アスター‘オクトーバースカイ’ などグラス類:スキザキリウム‘ハハトンカ’/ぺニセタム・カシアン/パニカム‘シェナンドア’ など低木:キンカン/アロニア/コバノズイナ など球根:ダッチアイリス‘ブルーマジック’/カマシア/カノコユリ‘ブラックビューティー’ など コンテストガーデンC 月々の変化 9月の様子 先月に続き、自然の風合いや趣が楽しめるガーデンです。この時期ひときわ目を引くのは、ぺニセタムやカラマグロスティスのグラス類。どこまでも広がる草原の風景を思わせるような群生が、残暑の厳しいこの季節に、爽やかな空気を運んでくれています。 上左/先月から花壇の中央付近に広がるスキザキリウム‘ハハトンカ’が一段と草丈を伸ばし、ワイルドな魅力が増してきた。上右/カノコユリのタネが大きく膨らみ、にぎやかだった夏の風景を思い出させるような、ノスタルジックな雰囲気を漂わせている。下左/花壇全体を高台から見守るように丈を伸ばしているのは、キンカンやカラマグロスティス‘カールフォスター’。下右/花穂が乾いたユーパトリウム‘マスク’の株元で、にぎやかな黄花を咲かせているのはルドベキア‘ゴールドスターム’。 8月の様子 花数が減り、リーフで魅せる時期となりました。さまざまな色形のグラスが穂を上げ、花後の株とともに、葉の魅力を生き生きと見せています。キンカンの奥にあたる西側エリアは、開花するルドベキア‘ゴールドスターム’とヘレニウム‘シエスタ’の群生が広がり、にぎやかな雰囲気が楽しめる一角になっています。 上左/ガーデンの縁から溢れんばかりのぺニセタム‘カシアン’のダイナミックな穂が、訪れる人々を出迎える。上右/先月、モナルダやアリウムが咲き群れた花壇の中心部では、スキザクリウム‘ハハトンカ’のブルーグリーンの細い葉が風に揺れる美しい姿を見せている。中左/ペニセタム‘カシアン’と反対側の角に植わるモリニア‘エディスダッチェス’の繊細な穂が、キンカンと宿根草をうまくつなぎながら、野趣のあるエリアを作っている。中右/ホスタ‘オーガストムーン’の花後の花茎が、ライムグリーンの葉とともに、さりげないアクセントになっている。下左/ユーパトリウム‘ベビージョー’やカラマグロスティス‘カールフォスター’、ペニセタム‘カシアン’が風に揺れる野趣あふれるワンシーン。下右/キンカンとカラマグロスティス‘カールフォスター’の向こうに広がるエキナセア‘メローイエロー’やルドベキア‘ゴールドスターム’、ヘレニウム‘シエスタ’がにぎやかに花色を添えている。 7月の様子 中央に横たわる谷筋の両側に生き生きと広がる植栽は、どこか高原のワンシーンを想起させる野性味あふれる雰囲気。小川のせせらぎや鳥のさえずりが聞こえてくるよう。ガーデン内に植わる2種類のヘメロカリス。通常アブラムシだらけになりがちな花のつぼみに、まったく姿が見られないのは、テントウムシが食べてくれたから。植物が力強く育っている健康的なガーデンです。 上左/ぺニセタム‘カシアン’の白緑に輝く穂や紫ピンクのモナルダの群生が爽やかな風を感じさせている。上右/アジサイ‘アナベル ピンク’やホスタ、アスチルベ・タゲッティ‘スペルマ’のピンクがやさしい雰囲気。中左/ユーパトリウム・マスクとユーパトリウム‘ベイビージョー’やカラマグロスティス‘カールフォスター’、カマツカがワイルドに広がる谷間に咲くのは、ヘメロカリス‘クリムゾンパイレーツ’の朱色の花。ひっそりとした佇まいが目にとまる。中右/アリウム‘ミレニアム’とエキナセア‘メローイエロー’の丈の低い群植とエリンジウム・ユッキフォリウムやカラマグロスティス‘カールフォスター’の草丈の差がメリハリを生んで。下左/カシワバアジサイ‘ルビースリッパー’の赤みが差した花がナチュラルな彩りを加えている。下右/明るいアクセントをもたらすホスタ‘オーガストムーン’を軸にした、野趣にあふれるエリア。カンパニュラ‘アメリカーナ’の青い花穂が爽やか。 6月の様子 先月まで咲き誇っていたアリウム‘マイアミ’の花が終わり、茶色い枯れ穂がユニークな風景を描いています。ナチュラルなガーデンだけに、カシワバアジサイやユリ‘リーガルリリー’の白い花の豪華さが際立ち、アクセントになっています。また、庭のあちらこちらで、テントウムシの幼虫がたくさん見られるようになりました。これは、冬の内にテントウムシが棲みやすい状態に整えていたことと、バンカープランツとしての原種系チューリップやイタリアンパセリを植えたからこそ。まさにこのガーデンは、テントウムシたちの食卓となっています。 上左/アリウム’マイアミ‘の株元を、モナルダ‘ブラドブリアナ’やピンクのモナルダがカバー。上右/コバノズイナ‘ヘンリーズガーネット’が白花を咲かせる穂を下げ、ホスタ‘ファーストブラッシュ’などと共に、瑞々しいシーンを描いている。中左/カシワバアジサイ‘ルビースリッパーズ’の大きな穂が目を引き、植栽の見応えをアップ。 中右/ユリ‘リーガルリリー’が堂々と咲いて華やかな雰囲気。下左/サルビア・カラドンナの群生と数本のアロニアで作る野趣の漂うワンシーン。下右/ホスタ‘オーガストーム’や原種のジギタリス・ルテアなどがグリーンの美しいグラデーションを見せている。 5月の様子 先月開花したフリチラリア‘オレンジビューティー’の株元で静かに待機していたアリウム‘マイアミ’が一斉に開花。落ち着いた色形の品種が選ばれていることで、デザイン的な風景にまとまっています。東側のガーデンでは先月末まで咲いていたカマッシアが終わり、ダッチアイリス‘ブルーマジック’にバトンタッチ。西側のガーデンでは主役が原種チューリップからアリウム‘カメレオン’に移り変わりました。無数にあがる花後のカマッシアが、野趣を強く漂わせています。 上左/太くしっかり伸びた花茎に小さめな花が咲くアリウム‘マイアミ’。無数の花が整然と並ぶ風景は、まるでインスタレーション作品のよう。上右/ダッチアイリス‘ブルーマジック’の背後に伸びるカマッシア・ライトヒトリニ‘カエルレア’の花後の姿にも風情が。中左/谷筋にカマッシア‘クシッキー’やソテツ、ユリがワイルドに広がる。中右/原種チューリップの花後の莢のまわりに広がるのは、コンパクトな草丈のアリウム‘カメレオン’。下左/肉厚で赤い葉脈を持つホスタ‘ファーストブラッシュ’の葉が地際に広がりデザインを引き締めている。下右/プルモナリア‘ダイアナクレア’×ツワブキ×メリカ・ヌタンスと、異なる色形のリーフを組み合わせているエリア。 4月の様子 ビオラ中心の素朴だった風景に、オレンジのフリチラリアや純白のスイセンが開花し、華やかさとボリュームが加わりました。静かに眠っていたガーデンの‘目覚め’が強く感じられます。花壇の縁や通路沿いでは小さなスミレや原種のチューリップ、プルモナリアが開花。コンパクトな株姿が斜面に植わる様子はまるでヨーロッパの自生地のようです。 上左/フリチラリア・インぺリアス‘オレンジビューティー’×アリウムの葉が、動きのあるユニークな風景を創り出す。上右/プルモナリア‘ダイアナクレア’とスイセン‘タリア’の色合わせが上品な雰囲気の一角。中左/小さなビオラ・ラブラドリカとグラスのメリカ・ヌタンスの華奢な組み合わせが、眺める人の視点をぐっと寄せつけている。中右/春の日差しを愛らしく反射する、原種のチューリップ・トルケスタニカとヒルデの群落エリア。下左/エピデディウム‘ピンクエルフ’とビオラが描く、野趣に富んだ風景。下右/アシズリノジギクの上にゲラニウム・ツベロサムが咲くまでは、スイセン‘タリア’が華やぎをもたらしているエリア。 3月の様子 2月下旬の作業でビオラと数種類の苗が加わったことで、宿根草や球根の花が咲くまでのガーデンは、よりにぎやかになりました。ビオラは楚々としながらもニュアンスのある品種を用いているので、デザインに深みを感じさせます。植栽の中をよく見ると、チューリップやアイリスが広がる中で、勢いよくフリチラリア‘オレンジビューティー’の新芽が上がり始めました。 左上/パープルのビオラが広がるエリアで、フリチラリア‘オレンジビューティー’がニョキリと芽を伸ばし始めた。右上/東側のガーデンの一角でひっそりと咲くプルモナリア‘ダイアナ クレア’。左下/ダッチアイリスの群植がユニークな景色を作る。右下/原生地を思わせる咲き姿の原種系チューリップ‘アルバ コエルレア オクラータ’。 2月の様子 なだらかな丘に咲くビオラの株が少しずつ大きく育ってきました。全体的には大きな変化はありませんが、よく見ると球根類の小さな芽があちらこちらに芽吹き始め、これから先の時期への期待が高まります。 左上/ビオラの花色やモナルダ・ブラドブリアナの紫葉、グラスの赤みが、このエリアのメインカラーとなっている。 右上/腐葉土をかぶり、葉をつけたまま越冬したアシズリノジギクが、ひっそりと顔をのぞかせて。 左下/愛らしい綿毛が、晩冬の風情を高めているツワブキ。 右下/枯木立のアロニアやコバノズイナの合間に芽を出しているのは、ダッチアイリス‘ブルーマジック’。 1月の様子 花壇の中は盛土された場所や溝が掘られた場所があることで全体に起伏があり、いくつもの丘が広がるような風景を思わせます。斜面に植わる落葉した数本の灌木と冬枯れの宿根草が沢沿いのようなシーンを連想させたり、ビオラが群植する様子がのびやかに広がる丘のようなシーンを感じさせたりするなど、さまざまな素朴な風景が展開。全体にのどかな雰囲気が漂っています。 左上/落葉したアロニアやノリウツギの数本の幹が、野趣のあるシーンを演出。 右上/長い花茎の先に残るツワブキの花が、侘びと力強さを感じさせる。 左下/丘の斜面に咲き群れるように広がるビオラたち。 右下/まだ厳しい寒さを物語るほかのエリアとは異なり、青々としたイタリアンパセリとエリンジウム パンダニフォリウム ‘フィジックパープル’が明るい透明感を添えている。 12月の様子 コンテストガーデンC Ladybugs Table 「てんとう虫たちの食卓」 12月下旬、作庭後の様子。 コンテストガーデンDKINUTA “One Health” Garden 【作品のテーマ・制作意図】 ヒトの健康、生きものの健康、環境の保全を包括的な繋がりとして捉えるワンヘルス (One Health)の概念を軸に、それら3つの主体が密接に関わり合う「ワンヘルスガーデン」をつくります。土壌環境を改善し、植物や微生物を豊かに育て、鳥や虫などの地域の生きものを呼び込む。ガーデンの香りや触れ合いを通し、ヒトの健康と安らぎを生み出すガーデンをつくり、いろいろな生きものがやってくる「みんなのガーデン」を実現します。 【主な植物リスト】 宿根草(蜜源植物):ルドベキア/オミナエシ/モルダナ/アザミ/ガウラ/スミレ/チェリーセージ など宿根草(四季の移ろい):グラス類のフェスツカ/カレックス/イトススキ/フウチソウ/チカラシバ/レモングラス/ミューレンベルギア‘カピラリス’ など低木類(鳥類・昆虫類来訪):スモークツリー‘グレース’/ガマズミ/アロニア‘メラノカルパ’カラーリーフ:カラスバセンリョウ/カリステモン‘リトルジョン’/イリシウム‘フロリダサンシャイン’その他(季節の果実や葉):ビルベリー/コバノギンバイカ/レモンマートル コンテストガーデンD 月々の変化 9月の様子 若々しく成長していたガーデンも、少しずつ落ち着いたトーンに変わってきました。初夏から独特なオーラを放っていたアーティチョークの花がらは褐色に変わり、ユーパトリウム‘グリーンフェザー’を背景に、より一層の存在感を示しています。 上左/ブッドレアやバーベナ・ボナリエンシスが重なる茂みが、秋の陽光に照らされ、初秋のきらめきを放っている。上右/枯れ色を帯びたアーティチョークの大きな花がらが、ワイルドな植栽の中で宙に浮かび上がり、ガーデンの表情を豊かにしている。下左/アジサイ‘アナベル’の枯れた花穂が秋の訪れを感じさせる。下右/初夏から咲き続けるバーベナ・ボナリエンシスが、いまもなお植栽にナチュラルな彩りを添えている。 8月の様子 盛夏らしく全体的にググっと大きく成長し、見上げて楽しむ風景となりました。春よりもシンプルな植栽ですが、それぞれにボリュームが増して、見応えのある植栽となっています。なかでも特に目を引くのは、ルドベキア‘ゴールドスターム’。旺盛に茂るグリーンを背景に、濃厚な黄色が効果的に映えています。 上左/シンボリックな存在感を放っていたアーティチョークの花が終わり、開花時以上に彫刻的な姿を見せている。上右/花色が少ないエリアでは、アジサイ‘アナベル’の褪せはじめた花が上品な雰囲気を漂わせている。中左/ルドベキア‘ゴールドスターム’のにぎやかな群植が、植栽のインパクトを強めて。中右/ビルベリーの実が色づき始め、風景の小さなスパイスに。下左/花を終えたウスベニアオイがさらに成長を続け、大人の背丈をはるかに超える高さに。よく見ると花茎が帯化(たいか:植物の茎や根などが帯状に平らになる現象)した姿がおもしろい。下右/思わず触わって香を確かめたくなるハーブ類もイキイキと成長。 7月の様子 宿根草が灌木類に寄り添うように大きく育ち、インパクトのある植栽となりました。とくに力強くアピールしているのは、初夏からぐんぐんとつぼみを膨らませてきたアーティチョークの紫色の花。シルバーがかった切れ込みの深いリーフとともに、彫刻的な存在感を放っています。そのほかモナルダ(赤)やルドベキア‘ゴールドストラム’などの赤や黄色の花が、若々しい夏のシーンを描き始めました。また、アロニアやビルベリーの実が色づき始めた様子も楽しめます。 上左/春の終わりから咲き続けているクナウティア・マケドニカが、まだまだ元気に咲き続けている。 上右/発色のよいモナルダ(赤)が、カレックス‘エヴァリロ’やラムズイヤーのカラーリーフに映え、鮮やかさがさらにアップ。中左/ユーパトリウム‘グリーンフェザー’が2mほどに成長し、アーティチョークとバランスを取りながら、植栽にボリューム感を与えている。中右/アーティチョークの紫花とイリシウム‘フロリダサンシャイン’の色のコントラストや、スモークツリーのふわふわとした花が印象的。下左/ルドベキア‘ゴールドストラム’が咲き始め、オミナエシとともに黄色い花が瑞々しい風景に。下右/アジサイ’アナベル‘の豊かな花房と対比して、背景ではアロニア‘メラノカルバ’が小さな紫の実をつけている。 6月の様子 6月に入り植物たちは爆発的な成長を見せ始め、爽やかな初夏を謳歌しています。4月から咲いているクナウティアに加え、ゼニアオイの紫がかった濃いピンク色の花が加わりました。そのシックな雰囲気の中でアジサイ‘アナベル’が明るさを、モナルダやブラシの木の赤花がアクセントを添えています。ところどころに置いた菌糸のステップは、朽ちて崩れ、菌糸たちは土の中の微生物とともに植物の旺盛な成長を促しています。 上左/2種のクナウティアとゼニアオイの濃いピンクの花が、瑞々しい背景につややかに映えている。上右/この時季、遠くからでも目を引く2株のアーティチョーク。間の茂みに、イリシウム‘フロリダサンシャイン’の黄金葉とアジサイ‘アナベル’の白花が、明るさを添えている。中左/向かい合うエリア同士は軽重のバランスを変え、飽きの来ない風景をデザインしているのが分かる。中右/バイオネストが顔をのぞかせ、まるでオブジェのよう。下左/植栽手前側は、カレックス‘エヴァリロ’やラムズイヤーなどのカラーリーフで色彩豊かに。下右/バーベナ・ボナリエンシス(サンジャクバーベナ)が幻想的な風景を作り出す。 5月の様子 植物の成長が全体的に進み、こんもりと茂って生命力が感じられるガーデンに。特にウスベニアオイの旺盛な成長からは、健やかな土中の状態が伝わってきます。そんな重量感のある風景に軽やかさと彩りを添えているのは、2種のクナウティア・マケドニカやアルベンシス。スモークツリーやカリステモン‘リトルジョン’、ビバーナムなどの花も咲き始め、カラーリーフが主体の庭も変化に富んだ表情を見せています。 上左/濃いピンクのクナウティア・マケドニカと紫花のクナウティア・アルベンシスが風になびく姿が、見る人の心和ませる。上右/銅葉のツツジとガウラの新芽が、シーンに深みを与えて。中左/この時季は花が少ないものの、青々と茂るウスベニアオイや黒ずんだ葉のカラスバセンリョウ、陽に透ける美しい葉のスモークツリー‘ロイヤルパープル’など、リーフのバリエーションで楽しめる。中右/ピンクの小花をつけ始めたラムズイヤーのシルバーリーフは、思わず触れたくなる質感。下左/白い粒々とした花を咲かせるビバーナム・ハリアナム。下右/大きな葉を広げるアーティチョークのつぼみが膨らんできた。 4月の様子 先月までは主に灌木が存在感を放っていましたが、4月になると数種の球根が咲き、ほんのり華やぎが加わり始めました。この時季の主役はあちらこちらに点在するピンクのチューリップ。濃緑の葉や銅葉の灌木を背景に、つややかさを際立たせています。2月末に据えた菌糸を固めたステップにオオヒラタケが生え始め、地中の活発な様子がうかがえます。 上左/カラーリーフの中でチューリップ‘メンフィス’の華やぎが際立っている。上右/冬の間からふっくら生成り色のつぼみをつけていたベニバナマンサクがようやく開花。中左/カリステモン‘リトルジョン’のホットな赤花が、他とは異なる異国情緒を漂わせて。中右/まだ銅葉のような葉色をしたヒメハマヒサカキが、植栽に陰影をプラス。下左/手前側を軽やかに埋めているのは、ユーフォルビア・リギダとフェスツカ・グラウカ。下右/ひらひらとしたオオヒラダケのキノコが、菌糸ステップからヒョコリと現れている。こんな風景もこのガーデンならでは。 3月の様子 冬の景色として残していたアスターやススキなどのシードヘッドを2月末の作業で切り戻し、すっきりとした風景となりました。ガーデン手前側のラムズイヤーやクリーピングタイムは茶色い葉が整理され、芽を出した球根類と共に、植栽の瑞々しさをアップ。茶~黄の色彩だった風景は、徐々に緑色の風景へと移ろいつつあります。 左上/つややかな緑が映えるチューリップの芽出し。右上/アザレアツバキが開花。褐色の葉がカラーリーフとして活躍し、イリシウムの黄葉やアカシアの銀葉との色の対比が楽しめる。左下/ラムズイヤー、クリーピングタイムが青々と成長し、ガーデンの色合いをグリーンに牽引。右下/ニョキリと伸びる茎の先に花をつけるユーフォルビア・リギダ。株元では新しい芽をたくさん確認。 2月の様子 冬の装いをした低木の下で、成長の早い宿根草や球根類が成長を始めています。ふわふわとした枯れ姿のノコンギクの株元には、新たな葉がびっしりと広がっています。マルチングに用いたナシのチップがキノコの菌糸と絡み合い、朽ちて土に馴染み始めました。 左上/ベルベット調の質感を持つベニバナミツマタのつぼみが日に日に膨らんでいる。 右上/まわりとの取り合わせで、朽ちた姿にも風情があるアメジストセージやフェスツカ・グラウカ。 左下/ひと足早く青々と成長しているバーベナ・ボナリエンシス。 右下/ラムズイヤーの傍らで芽吹く、赤い新芽のガウラ。奥には球根類がたくさん芽を出している。 1月の様子 落葉した灌木類と冬枯れしたススキやノコンギクなどの宿根草とのコンビネーションが、冬の日差しに反射し、きらめきのある風景を描いています。一方、常緑樹のモンタナハイマツやローズマリーの瑞々しくどっしりとした重量感が、花がないこの時期にも豊かな表情を見せてくれます。所々に配された菌糸を固めて作った平板をめくると、接地面から菌糸が広がっており、土中の微生物たちがぐんぐんと成長しているのが分かります。 左上/アーティチョークのギザギザとした葉で、空間に造形的な面白さをプラス。 右上/枯れ姿のノコンギクが風情たっぷり。フサアカシアなどの灌木同士を、ふんわりとつないでいる。 左下/赤みを帯びたユーフォルビアのユニークなフォルムが、植栽のデザインに動きをもたらしている。 右下/冬の間も楽しめる、モンタナハイマツ×テンジクスゲ×ツワブキの造形の異なる常緑植物の組み合わせ。 12月の様子 コンテストガーデンD KINUTA “One Health” Garden 12月下旬、作庭後の様子。 コンテストガーデンE「みんなのガーデン」から「みんなの地球(ほし)」へ 【作品のテーマ・制作意図】 私は「みんなのガーデン」を、来園者だけでなく、花を訪れる虫、土壌菌類などの分解者、そして庭の先につながるこの生きた星「地球」の環境といった全ての「生あるもの」をつなげる庭と捉えました。温暖化する東京の気候に合った植物を差別なく組み合わせ、虫や菌たちによる循環系の形成、見るだけでなく庭づくりに参加もできる「みんなのガーデン」。「みんな」が共に助け合いながら、末長く幸せに暮らす世界、生命共存の尊さ・美しさを伝えたい。この想いが、この庭から未来へ・社会へ・地球へと広がっていけば、と考えています。 【主な植物リスト】 宿根草:マンガベ ‘マッチョモカ’/アムソニア ‘ストームクラウド’/アガパンサス ‘ブラックマジック’ /アネモネ トメントーサ/ジンジバー(ミョウガ)斑入り/イリス・エンサタ(ハナショウブ)‘バリエガータ’/パトリニア プンクティフローラ/タリクトラム ‘エリン’ /ユーフォルビア ‘ファイアーグロー’/ユーパトリウム ‘リトルレッド’ などグラス類:カラマグロスティス ‘カールフォースター’/モリニア ‘トランスペアレント’ /アンドロポゴン ‘ブラックホークス’ /スキザキリウム ‘ハハトンカ’ /コルタデリア ‘ミニパンパス’/メリニス ‘サバンナ’/ムーレンベルギア/スティパ/ホルデウム など低木:ネリウム(キョウチクトウ)‘ペティットサーモン’/コルヌス(サンゴミズキ)‘ケッセルリンギィ’/ロロペタルム (トキワマンサク) ‘黒雲’ /ブッドレア・ グロボサ など球根:ナルキッスス(スイセン)タリアなど数種/チューリップ(原種、園芸種含めて多品種)/アリウム (開花期をずらして数種)/イキシア・バビアナ・ワトソニアなどの南アフリカ原産種 など コンテストガーデンE 月々の変化 9月の様子 彩り豊かな植栽は、少しずつ深みのある色調に変化しながらも、まだまだたくさんの花々でにぎやかです。マンガベやユッカなど、繊細な植栽のなかで重量感のある植物、乾き始めて軽やかさが増しているグラス類、ダリアやアマランサス‘ホピレッドダイ’など植栽を引き締めている赤葉や銅葉など、それぞれの役割をもった植物が必然性のある配置で、輝きを放っています。赤いオクラや綿の花も見頃。 上左/酷暑を乗り越え、なお元気に育つ多様な草花の中で、カンナ‘ベンガルタイガー’の明るい葉が、圧倒的な存在感で花壇全体をまとめている。上右/どっしりと葉を広げるマンガベ‘マッチョモカ’と、バーベナ‘バンプトン’の霞のような株姿の重量感のコントラストが、組み合わせの妙を感じさせる。下左/パトリニア・プンクティフォリアの花後の白緑色の種穂が輝く重層的な植栽。下右/ユッカ‘ゴールデンスウォード’のまわりで開花を迎えた、ビゲロウィア・ヌッタリィとアリウム‘メデューサズヘア’。スティパ・テヌイッシマも合わせた、このガーデンの晩夏のシンボリックなエリアの一つ。 8月の様子 酷暑の真夏も引き続き多種多様な花が咲き続けています。個性的な色彩とフォルムの対比をさまざまなグラス類が巧みに繋ぎ、混沌しているようでありながら、植物と人、虫たちまでもが見事に一体化された生命の空間を感じられます。グラス類や線の細い植物に対し、カールドンやエリンジウムなどのシードヘッドの彫刻的フォルムが対照的で魅力的。 上左/中央部分では大人の背丈を超える高さにまで植物が生育。アリウム‘サマードラマー’やルドベキア・マキシマのシードヘッドの間で、ヒビクス・コッキウス(モミジアオイ)が赤い花を咲かせている。上右/赤紫葉のアマランサス‘ホピレッドダイ’を引き立てるように、煙のような穂をつけているのはグラス、エラグロスティス・スペクタビリス。中左/線の細い植物を支えるように、ピクナンセマム・ムティクム(広葉マウンテンミント)の白い苞葉が広がっている。中右/日本で古くから育てられていて懐かしさを感じるムラサキゴテン(セトクレアセア・パリダ)と細かい穂のグラス、エラグロスティス・スペクタビリスの組み合わせや、エリンジウム・ユッキフォリウムの丸いシードヘッドが、幻想的な風景を描く。下左/ダウクス‘ブラックナイト’やルドベキア・マキシマのシードヘッドと黒葉のダリア‘ブラックナイト’のシルエットが個性的な風景を演出。下右/強烈な印象を放つカンナ‘ベンガルタイガー’とソフトな草姿のシルフィウム・モーリーや斑入りのグラス、ミスカンサス‘モーニングライト’との取り合わせが好対照。 7月の様子 花壇の中央部の草花は人の背丈を超え、見上げる景色になりました。この時季でも多種多様な花が咲き続けて、日々大きく変化する絵画的シーンとの一期一会の場になっています。あえて無造作に見せるカッティングと目立たないよう支柱を添えることで、整いすぎない植栽の野生みを楽しみながら、植物の生命力まで感じることができます。 上左/にぎやかに咲くコレオプシス’ガーネット’の濃いピンクや、その背後から顔を出すエキナセア’マーマレード’、赤紫葉のアマランサス’ホピレッドダイ’などのこっくりとしたカラーを、スティパのエアリーな褪せた穂がひと際あでやかに引き立てている。上右/エリンジウム’ブルーグリッター‘やアキレア’ヘラ・グラショフ‘などさまざまな色形の植物が、一幅のタペストリーのようなシーンを描いて。中左/リリウム・ライヒトリニィ(=コオニユリ)やフロックス‘ハーレクイン’、モナルダ’ファイアーボール‘のビビッドな花色が、強烈なインパクトを放つ。中右/リアトリス‘コボルト’とダリア‘ブラックナイト’など比較的コンパクトな品種で安定感を出したエリア。下左/ニューサイランの縦ラインを中核に、ブロンズフェンネルやダウクス‘ブラックナイト’などセリ科の花特有の水平感を対比させ、そこにアリウム‘サマードラマー’の球状のシードヘッドがふわりと浮かぶシーンはどこか幻想的。下右/ヘレニウム‘モーハイムビューティー’の花に、ニュアンスある銅葉のクロコスミア‘ソルファタラ’ が寄り添う。その黄〜濃オレンジ花の色彩と、奥に咲くバーベナ・ボナリエンシスやサルビア・グアラニチカなどの青紫花との補植対比が風景にリズムを加えて。 6月の様子 春に引き続き、初夏の花がにぎやかに開花しています。パレットのように豊かな色彩が展開し、花姿・草姿もじつに多種多様。グラス類のメインはホルデウム・ユバツムからスティパに移行しています。中でも繊細でいて堂々とした存在感を放つのは、大型種のスティパ・ギガンテア。ニューサイランやカールドン、エルムルスとともに、造形的でありながら野趣のある風景を織り成し、観る人の関心をぐっと引き寄せています。 上左/ダイアンサス・カルスシアノルムの濃いピンクの花とペルシカリア‘ゴールデンアロー’の黄金葉のコントラストが、シーンの印象をぐっと高めて。上右/さまざまな草姿・花姿の植物が美しいレイヤーをつくり、重層的な風景を紡ぎ出している。中左/ダリア‘ブラックナイト’やバーバスカムなどの多様なリーフの中で、アキレア’アプリコットディライト’、シシリンチウム・ストリアツムが効果的に彩りを添えている。中右/ニューサイランやスティパ・ギガンテア、カラマグロスティス‘カールフォースター’で魅せる、独創的なシーン。すらりと伸びるアリウム‘サマードラマー’のつぼみがユニーク。下左/アロエ・ストリアツラの手前側に合わせられたピンク花のマツバギクと黄葉のカレックス‘エヴァリロ’。ガーデンの入り口にふさわしいウェルカムコーナーとして存在感を放っている。下右/アルストロメリア‘サマーブリーズ’ のオレンジ×黄の花が、灰紫色の葉とともに植栽の表情を豊かに演出。 5月の様子 4月まで個々の形が際立っていた植栽もすくすくと成長し、様々な花が風に揺れる野原のようなナチュラルな風景に様変わりしました。主役はチューリップから、バリエーションもさまざまなアリウムにバトンタッチ。ガーデンのあちらこちらでユニークな花姿が楽しめます。色形のバラエティ豊かな植栽のなかで、特に目を引くのは、ピンクのエスコルチアやパパベル’レディーバード’の花とホルデウム・ユバツムのキラキラした穂。風に揺れる花がビビッドなスパイスとなりつつ、牧歌的・幻想的な光景を演出しています。 上左/目にも鮮やかなピンクのエスコルチアとトラディスカンティア‘スイートケート’、ロロペタルム’黒雲’の配色取り合わせ。アリウム・シューベルティがシーンに形のリズムも添えて。 上右/パパベル’レディーバード’の真っ赤とネペタ’ウォーカーズロウ’の青紫の花色対比が遠目からでも色鮮やかに映える。 中左/ホルデウム・ユバツムの穂が陽光に輝いて描き出す幻想的な野の風景。 中右/花壇中央、ボリュームのあるバプティシア’キャロライナムーンライト’のクリーム色の花穂とアリウム’グラディエーター’と紫色の球形花序で色形のコントラストを表現。 下左/サルビア‘カラドンナ’の深みのある暗紫花がシーンの色彩をぐっと引き締めてより印象を強化。 下右/やわらかく軽やかな色・質感の植物の中、個性の強いアロエ・ストリアツラやベスコルネリアが、優しい表情に溶け合いつつ同時に重量感のあるフォーカルポイントに。 4月の様子 グラベルガーデンのような趣から一転! スイセンやチューリップ、フリチラリアなどの球根に加えてラナンキュラス・ラックスも満開を迎え、一気に華やぎのある風景となりました。 花色の美しさに加え、楽しませてくれるのが個性豊かな春咲き球根の開花リレーやリーフの鮮やかな芽吹き。独創的、かつ景色の移ろいと生命の歓喜を堪能できる季節です。 上左/コーナーで満開を迎えたロロペタルム’黒雲’の濃厚な銅葉と濃赤花が目を引く。黄金葉のトラデスカンティア‘スイートケイト’、青紫花のシラー・シベリカとのコントラストが挑発的。中央のアンティーク調の一輪はチューリップ‘ラ・ベルエポック’、その左、細い外弁に緑色がのる咲き方がユニークな白半八重チューリップは‘ホワイトバレイ’。 上右/ピンク花で黒軸のチューリップ‘ライトアンドドリーミー’やスイセン‘タリア’、銅葉のアスチルベ‘ダークサイドオブザムーン’の濃厚な対比がやわらかい葉群の中で際立っている。中左/ペルシカリア‘ゴールデンアロー’の黄金葉とチューリップ‘ハッピーフィート’の明暗の対比が鮮やか。 中右/大型で彫刻的な姿・不穏な花色のフリチラリア・ペルシカがシーンをぐっと劇的に引き締めて。下左/ユッカ‘ゴールデンスウォード’の株元を軽やかに彩るアスフォデリネ・ルテアの細葉とベロニカ‘ジョージアンブルー’の紫花。下右/原種系のチューリップ ‘ジャイアントオレンジサンライズ’。独特な葉模様と巨大花が個性的なフォーカルポイントに。 3月の様子 グラベル仕上げの地面で個性を放つ植物たち。それら一つひとつにフォーカスして楽しめるのは、地上部が少なく隙間があるこの時季ならではの見どころです。さまざまな芽が小さな景色を織り成す中、今春の一番手で花をつけているのはスイセンとクロッカスの2種。このガーデンでは真っ白い花が見られるのは春の初めだけで、これからカラフルに色づく植栽の静かなイントロダクションとして、清楚な彩りを添えています。 左上/世界の多種多様な植物が、健やかに成長できるよう配慮して植えられたガーデン。右上/ベタっと広がるアリウム ‘マイアミ’。アリウムだけでも大小・姿形さまざまに展開する多様な種類が用いられている。左下/透明感あふれるナルキッスス パピラケウス。右下/白花の外側の花弁が紫色のクロッカス ‘プリンスクラウス’。自然界で見られる“コロニー(群生)”のように、ぎゅっとまとめて植えている。 2月の様子 中央のニューサイランを軸にして渦を描くように設けられた花壇に、早くも植物たちが色形の異なる個性を見せ始めました。現在は、造形的なフォルムのアロエやエリンジウム ‘フィジックパープル’、黒葉のベルゲニア ‘レッドスタート’、ペンステモン ‘ダークタワーズ’などの植物が、他にリードして存在感を放っています。その間では小さな宿根草や球根が愛らしく芽を伸ばして。 左上/芽出しから独特な姿を見せるチューリップ ‘ジャイアントオレンジサンライズ’。 右上/葉の縁が赤く色づくチューリップ シルベストリスと黒みがかる繊細なダイアンサス カルスシアノルム、そしてベタっと大きめの葉を広げるフロミスなどが植わるエリア。どこを切り取っても組み合わせの妙が感じられる。 左下/ユッカの傍らに植わる、クルクルと渦を描く姿がユニークなアスフォデリネ ルテア。個性的だがブルーがかるやわらかい質感が、ユッカの強烈な雰囲気を和らげている。 右下/マットな革質の黒葉ならではの質感で存在感を放っているのはベルゲニア‘レッドスタート’。 1月の様子 化粧砂利のような明るい表土とアールを描く通路のデザインは、植物が小さなこの時期の大きな見せ場の一つとなっています。見下ろした風景はまるでノットガーデンのよう。常緑性のニューサイランやアロエなどのほかは、冬季落葉性の宿根草や低木類で、地上部がとても小さかったり枝のみだったりしますが、冬越しのロゼット葉の造形やカラーステムがとてもユニーク。それだけに、これからの成長と風景の変化も大きな見どころです。 左上/幹立ちして展開するアロエ ストリアツラと、カレックス ‘エヴァリロ’のライムイエローの葉が、植えたてのため不織布を被せて防寒養生中のベスコルネリアをやんわりと目隠し。右上/鹿沼土と軽石をブレンドした明るい表土をトキワマンサク ‘黒雲’の照りのある黒葉で引き締めている。左下/細い葉をふんわりと広げるルッセリア エキセティフォルミスやカレックス ‘プレイリーファイアー’、ロドコマ カペンシスに矮性のネリウム (キョウチクトウ) 、ネリウム ‘ペティットサーモン’を組み合わせた、植物の多様な面白さが感じられるシーン。右下/多くの植物が冬季落葉中のなか、放射状に葉を広げるエリンジウム ‘フィジックパープル’が、目を引くアクセントとして活躍しながら空間を埋めている。 12月の様子 コンテストガーデンE 「みんなのガーデン」から「みんなの地球(ほし)」へ 12月下旬、作庭後の様子。 「第4回 東京パークガーデンアワード 夢の島公園」の参加者募集! ※締め切りました 2022年にスタートしたガーデンコンテスト「東京パークガーデンアワード」が、代々木公園・神代植物公園・砧公園での開催を経て、2025年、夢の島公園で始まります。第4回のコンテストの舞台は、夢の島公園「グリーンパーク」内(東京都江東区)。コンテストのテーマは、「海辺のサステナブルガーデン」です。応募の締め切りは、2025年8月31日(日)18時必着。応募方法など詳細は、以下のバナーをクリック! 5月25日(日)「入賞者イベント」開催! ※終了しました 第3回東京パークガーデンアワードの入賞ガーデナー5組によるガーデンイベントを5月25日(日)に開催しました。入賞ガーデナーが案内する「ガーデンツアー」や「たねダンゴづくり」、「微生物観察ワークショップ」など、子どもから大人まで楽しめるガーデンイベントで当日は賑わいました。 ■日 時:2025年5月25日(日)10:00~15:10(雨天中止)■会 場:都立砧公園(東京都世田谷区砧)コンテストガーデンエリア(みんなのひろば前)■参加費用:無料 5つの花壇のコンセプト・作庭・審査様子の詳しいレポートはこちらをチェック! コンテストガーデンを見に行こう! Information 都立砧公園「みんなのひろば」前所在地: 東京都世田谷区砧公園1-1電話: 03-3700-0414https://www.tokyo-park.or.jp/park/kinuta/index.html開園時間:常時開園※サービスセンター及び各施設は、年末年始は休業。営業時間等はサービスセンターへお問い合わせください。入園料:無料アクセス:東急田園都市線「用賀」から徒歩20分。または東急コーチバス(美術館行き)「美術館」下車/ 小田急線「千歳船橋」から東急バス(田園調布駅行き)「砧公園緑地入口」下車/小田急線「成城学園前駅」から東急バス(二子玉川駅行き)「区立総合運動場」下車駐車場:有料
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野菜
【初心者OK】ワケギの育て方・食べ方完全ガイド|ネギとの違いも解説!
ワケギの基本情報 Dipak Shelare/Shutterstock.com 植物名:ワケギ学名:Allium × wakegi英名:Wakegi、Bunching onion和名:ワケギ(分葱)別名:ヒトモジ科名:ヒガンバナ科属名:ネギ属原産地:西アジアから地中海東部形態:宿根草(多年草) ワケギはヒガンバナ科ネギ属の野菜で、原産地は不明ですが、西アジアから地中海東部という説があります。ネギに似た見た目ですが、ネギとタマネギの一種であるエシャロットとの交雑種です。 日本では主に西日本でよく栽培されています。東日本ではワケネギをワケギと呼ぶことがありますが、厳密にはワケネギはワケギとは別の種類です。植え付けから収穫までは条件がよければ30日ほどと短く、葉を刈り取る際に根元を残せばまた成長するため、長期間収穫を楽しむことができます。日々の料理に使いやすく、ビギナーにもおすすめの野菜です。 ワケギの花や葉の特徴 Ong.thanaong/Shutterstock.com 園芸分類:野菜草丈・樹高:60〜70cm耐寒性:普通耐暑性:普通花色:白 ワケギは、地上部はネギによく似た見た目で、根元はタマネギに似て球根のように膨らんだ鱗茎があります。花色は白ですがほとんど咲きません。花をつける位置にはむかごができ、ネギのような種子はできません。味はクセが少なく香りもソフトで、ネギよりも辛みが少なく甘みが多いのが特徴です。 ワケギの収穫時期と旬 moolek skee/Shutterstock.com ワケギは通年出荷されている野菜ですが、露地ものの収穫最盛期は3月中旬〜5月中旬と、9〜11月です。旬といわれているのは3〜4月で、冬に蓄えた栄養で成長するこの時期のワケギが特に美味しいとされています。 ワケギの名前の由来と花言葉 Trialist/Shutterstock.com ワケギは、鱗茎からよく枝分かれして育つことから「分け葱」として名付けられました。よく分かれて増えることから、ワケギのぬたを子孫繁栄の縁起物とする風習もあります。 ワケギのみに設定された花言葉はありませんが、ワケギはアリウムの仲間。アリウムの花言葉は「無限の悲しみ」「くじけない心」「夫婦円満」などです。 ワケネギやアサツキとの違い New Africa/Shutterstock.com ワケギはネギとタマネギの仲間の交雑種で、球根(種球)で増やしますが、ワケネギは「分けつ(新しい茎が枝分かれして生えてくる現象)」が多いネギの一種で、1つの株が分かれて増えるのが特徴です。アサツキもネギの仲間で、ネギよりも色が薄くほっそりした形をしています。 ワケギとワケネギやアサツキを見分けるポイントは根元の形で、根元が膨らんでいるものがワケギです。ただし、東日本ではワケネギをワケギと呼ぶことも多く、混同されていることも少なくありません。 ワケギの栽培12カ月カレンダー 最も一般的なのは、8月下旬~9月に植え付ける冬どり栽培ですが、早生種や晩生種などの品種もあり、品種により秋口から春まで収穫できます。 植え付け: 8月下旬〜9月中旬(冬どり)収穫:10月〜翌年2月(冬どり)肥料:適宜(草丈15cm程度が目安)掘り上げ:5〜6月 ワケギの栽培環境 Bits And Splits/Shutterstock.com 日当たり・置き場所 【日当たり/屋外】ワケギは日当たりと風通しのよい場所に植えます。 【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本ですが、明るい場所で水栽培することもできます。 【置き場所】酸性の土壌をやや嫌うため、苦土石灰などを用いて調整しておきましょう。 耐寒性・耐暑性 生育の適温は15〜20℃で、温暖な環境を好みます。 ワケギの育て方のポイント 用土 VM1989/Shutterstock.com 【地植え】 畑で栽培する場合は、植え付けの2週間前に土壌に苦土石灰を混ぜ込んでおき、1週間前には堆肥や元肥を入れましょう。 【鉢植え】 プランターで栽培する場合は、野菜用培養土を使うのがおすすめです。 植え付け Samoilova_Olena/Shutterstock.com ワケギは種子ができにくい植物のため、球根(種球)を購入して植えるのが一般的です。ワケギの種球は鱗が重なったような形状の鱗茎です。 植え付けの適期は8月下旬〜9月です。植える際は1カ所に2〜3球まとめ、株間を15〜20cmあけて植え付けます。芽先が地面からのぞくくらいの深さに植えましょう。 日常のお手入れ IrinaSol/Shutterstock.com プランター栽培の場合は、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。地植えの場合は自然の雨任せでも育ちますが、乾燥しやすい場所や時期には適宜水やりをするようにしましょう。 また、草丈が約15cm程度になったら、化成肥料と油粕を少量施します。葉の様子を見ながら、2週間に1回程度のペースで追肥するとよいでしょう。 収穫 Rui Elena/Shutterstock.com 草丈が約20cm程度になったら収穫することができます。 収穫する際は、株元を地際から3〜4cmほど残し、刈り取るようにします。このようにすると、すぐに新芽が伸びて元のような姿に戻り、何度か繰り返し収穫ができます。収穫後は、株元に追肥しましょう。 増やし方 Alisadox/Shutterstock.com ワケギは分球で増やすことができます。4月中旬まで収穫することができ、5〜6月になり葉が枯れてきたら球根を掘り上げます。掘り上げた球根は、土を落として乾燥させ、風通しのよい場所にネット袋などに入れて保管します。そして、また8月下旬〜9月になったら、掘り上げた球根を分けて植え付けます。 キッチン栽培も可能 Mehriban A/Shutterstock.com ワケギは菜園やプランターだけでなく、キッチンでも手軽に再生栽培できます。 キッチンでのワケギの栽培方法は、以下の通りです。スーパーなどで購入した根が付いたワケギを5cmほどカットし、清潔な器にワケギの根元を入れて水を注ぎます。日当たりのよい窓際などで管理し、毎日水を変え、ぬめりもしっかりと洗い流します。 再生栽培したワケギは、加熱して食べると安心です。 ワケギの選び方や保存方法 ここからは、スーパーや八百屋などでのワケギの選び方や保存方法について解説します。 選び方 Helena Dum/Shutterstock.com ワケギを選ぶ際は、葉が細くすらっと伸び、根元が膨らんでいるものが望ましいです。また、葉の長さや太さがそろっていて、先までピンと伸びているものがよいでしょう。古い葉や枯れ葉が混じっていないかをチェックすることも大切です。 冷蔵保存 Andrey_Popov/Shutterstock.com ワケギを冷蔵保存する際は、切っていない状態で新聞紙に包んで野菜室に入れます。もしくは、湿らせたキッチンペーパーで包み、ポリ袋に入れて冷蔵庫で保存する方法もあります。 切ったワケギを保存する場合は、湿らせたキッチンペーパーを敷いた保存容器に入れ、さらに湿らせたキッチンペーパーをかぶせます。ただし、キッチンペーパーはまめに交換する必要があります。 ワケギは鮮度が落ちやすい野菜なので、できるだけ早めに使いましょう。 冷凍保存 VH-studio/Shutterstock.com ワケギを冷凍保存する際は、刻んで密閉容器に入れるかラップに包み、冷凍庫で保存します。刻んでから冷凍すると必要なときにすぐに使うことができ、便利です。 また、軽く茹でてよく水気を絞ってから冷凍することも可能です。この場合、3週間ほど保存することができます。 調理するときは解凍すると水気が出るため、凍ったまま使用します。 ワケギに含まれる栄養 rizki dian pratama/Shutterstock.com ワケギにはβカロテンや葉酸、ビタミンCなどが多く含まれています。また、食物繊維やカリウム、鉄なども含まれています。さらにワケギに含まれる香り成分の硫化アリルには、消化を促進し、食欲増進をサポートする効果があることが知られています。 ワケギはどう食べる? Peter Hermes Furian/Shutterstock.co ワケギを調理する際の下処理の方法や、主な食べ方をご紹介します。 下処理 Maksym Fesenko/Shutterstock.com ワケギは下処理をすることで、ぬたなどの料理に簡単に使うことができます。 沸騰した湯に根元から入れ、葉先までさっと茹でます。根元のほうが火が通りにくいため、根元から茹でることで火の通りが均一になります。水気を切ってまな板の上に置き、包丁やすりこぎで根元から葉先へとしごくと、ぬめりを取り除くことができます。ただし、ぬめりにもネギの風味があるため、全て取り除く必要はありません。好みに応じて取りましょう。 主な食べ方 jreika/Shutterstock.com ワケギはぬたにするのがポピュラーな食べ方です。下処理をして適当なサイズにカットし、みそや砂糖などの調味料と和えます。酢味噌やからし酢味噌などともよく合います。 また、ワケギを細かく刻んで薬味にするのもおすすめです。ネギよりも辛みが少なく食べやすい薬味になります。 ワケギを育てて料理に活用しよう jreika/Shutterstock.com ワケギは小ネギによく似ていますが、根元が膨らんでいるところが見分けるポイント。辛みが少なく甘みが多いので、食べやすいのが魅力です。 育てるのも比較的簡単で、プランターやキッチンでも栽培できます。手元で育てていると薬味などに少量ずつ使えて便利なので、ぜひ自宅でワケギを育ててみてはいかがでしょうか?
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花と緑
「鬼灯」ってなんて読む? 正解できたらすごい難読植物名漢字クイズ【Let’s Try! 植物クイズ】Vol.13
身近な植物!「鬼灯」ってどんな植物? Fumeezz/Shutterstock.com 実際に育てていても、漢字で表記されると案外分からない植物も多いもの。普段呼んでいるのとは違う名前があったり、意外な漢字表記があったり、植物の漢字も面白いものです。 そんな植物の漢字表記の中から、身近な植物に関するものをクイズで出題! 今回のお題は「鬼灯」。あなたはこの漢字が読めますか? ヒント ふっくらと膨らんだ提灯が吊り下がったような個性的な姿が愛らしい植物。食用の種類もあります。 正解は… ↓ ↓ ↓ ↓ ほおずき motorolka /Shutterstock.com ホオズキの基本データ 学名:Physalis alkekengi var. franchetii科名:ナス科属名:ホオズキ属原産地:東アジア和名:ホオズキ(鬼灯、酸漿)別名:カガチ、ヌカズキなど英名:Winter Cherry, Chinese lantern plant観賞期:8~9月花色:クリーム色(観賞用のガクは朱赤)形態:宿根草草丈:30~100cm 鈴なりにつくオレンジ色の袋が可愛らしいホオズキは、お盆の時期には花屋やスーパーなどでも朱色のホオズキが出回り、全国各地の寺や神社に市が立つなど、日本の季節を彩る植物として親しまれています。ぷっくり膨れたホオズキの袋は、じつはガク。薄いクリーム色の小さな花が咲いた後、実を包み込むようにガクが育って緑の袋が次第に膨らみ、熟すとオレンジ色のホオズキになります。袋をむくと、中には艶やかな丸い実があります。観賞用として親しまれる朱色のホオズキのほか、実が黄色くフルーティーな食用ホオズキもあり、特にヨーロッパでは栄養価の高いスーパーフードとして知られています。 Harry Huber /Shutterstock.com ホオズキは耐寒性や耐暑性も強く、初心者にも育てやすい植物の一つ。オレンジ色の袋を下げたユニークな姿が、秋のガーデンを彩ってくれます。落葉性で、晩秋には成長も衰えてくるので根元から刈り取りましょう。透かしホオズキやリースなどのクラフトを楽しんでみるのもおすすめです。 「鬼灯」の由来とは? Ligak/Shutterstock.com ホオズキは漢字で書くと「鬼灯」または「酸漿」。「鬼灯」という漢字は、赤く膨らんだ実が提灯に似ていることが由来とされ、「鬼灯」の「鬼」は死者を、「灯」は提灯を意味するといいます。お盆には、ホオズキを死者の霊を導く提灯に見立てて、枝がついた状態で飾る風習もありますね。一方の「酸漿」は生薬名に由来し、酸味のある果実の味からだそう。漢方では根を「酸漿根(さんしょうこん)」と呼んで利用します。 ホオズキという名前の由来は諸説ありますが、実の朱色を人の頬の紅色に見立て、「頬つき」からとする説が有力です。ほかに実が赤く熟すことから「火火(ほほ)つき」、ホオズキの実を口に入れて鳴らす遊びから「ほほつき(頬突き)」などの説もあります。 クイズ一覧はこちら!
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一年草
触ると葉が閉じる不思議植物「オジギソウ」! 驚きの仕組みと育て方・花の特徴を完全ガイド
オジギソウの基本情報 NOPPHARAT236/Shutterstock.com 植物名:オジギソウ学名:Mimosa pudica英名:sensitive plant、touch-me-not plantなど和名:オジギソウ(含羞草)その他の名前:ネムリグサ科名:マメ科属名:オジギソウ属原産地:中央アメリカ~南アメリカ形態:宿根草(多年草)・一年草 オジキソウの学名はMimosa pudica(ミモザ・プディカ)。別名は「ネムリグサ」「ミモザ」など。マメ科オジギソウ属の草花です。葉に触れたり、日が暮れたりすると閉じるために「オジギソウ」「ネムリグサ」と呼ばれ、古くから親しまれてきました。また学名から「ミモザ」と呼ばれることもあります。原産地は中央アメリカ〜南アメリカで、暑さには強い一方で寒さには弱い性質です。原産地では多年草ですが、高温多湿の環境を好み、日本では寒さに耐えられずに枯死することが多いので、一年草として扱われています。ただし霜が降りない暖地では、越年できることもあるようです。 オジギソウの花や葉の特徴 yushussain/Shutterstock.com 園芸分類:草花開花時期:7〜10月草丈・樹高:20〜50cm耐寒性:弱い耐暑性:強い花色:ピンク オジギソウの開花期は7〜10月で、花色はピンク。葉の付け根から花茎を伸ばし、花径1〜2cmのポンポンのような球状の花を咲かせます。開花後にはマメ科らしい莢がついて中に種子ができるので、完熟したら採取しておき、適期に種まきして増やすことも可能です。葉は互生し、羽状複葉で長さは10〜15cmです。葉に触れるなどの刺激を与えると、葉が閉じて垂れ下がるのが特徴。草丈は20〜50cmで、地植えでも鉢植えでも楽しめます。 オジギソウの名前の由来と花言葉 Fusionstudio/Shutterstock.com オジギソウの名前の由来は、刺激を受けたり夜になると葉を閉じるという特徴的な性質。葉を閉じてうつむくように垂れ下がる姿が、お辞儀するように見えることに由来しています。英名のsensitive plantもわずかな刺激にも反応することが由来。種小名のpudicaはラテン語で「内気な・恥ずかしがる」を意味し、こちらも葉に触れるとすぐに閉じる様子からつけられたものです。 花言葉は「繊細な感情」「感受性」「謙虚」などで、やはり触れると葉を閉じる性質が由来となっているようです。 オジギソウはなぜ閉じる? AjayTvm/Shutterstock.com オジギソウは、接触や熱、強風、振動などの刺激を受けると葉を閉じる性質が特徴的です。先端から徐々に閉じ始め、基部まで閉じると葉全体がうつむく動作をします。この仕組みは、オジギソウの葉柄には関節のような役割をする「葉沈(ようちん)」という器官がキーポイントです。葉が刺激を受けると葉沈にカルシウムによる信号が届き、均等に含まれている水が移動することでバランスが崩れ、葉を閉じる動きを起こします。一度閉じた葉は、再び葉沈の水が移動してゆっくりと元に戻ります。元に戻るのには10~20分ほどかかるとされます。葉に触れる行為は植物にとってはストレスとなるようなので、むやみに何度も触らないほうがよいでしょう。 オジギソウとミモザとの違い 左がオジギソウ、右がミモザ。Rahman Ar-Rizqi、FatimeBarut/Shutterstock.com オジギソウの学名はMimosa pudica(ミモザ・プディカ)のため、ミモザと呼ばれることがあります。しかし、日本では春に黄色い花を咲かせるアカシアの仲間をミモザと呼ぶことが多く、これはフサアカシアの英名がmimosa(ミモザ)であることがその理由です。フサアカシアの学名はAcacia dealbata(アカシア・デアルバタ)で、まったくの別種なので混同しないようにしてください。特に苗を購入する際には取り違えのないようラベルなどで確認するとよいでしょう。 オジギソウとミモザはどちらも小さな葉が羽のようにつく羽状複葉で、葉の見た目はよく似ていますが、ミモザの葉は刺激を与えても閉じることはありません。また、観葉植物として人気が高いマメ科コホバ属のエバーフレッシュも、オジギソウによく似た葉を持ちます。こちらは葉に触れても変化はありませんが、夜は葉を閉じるという就眠運動を行います。 エバーフレッシュの葉。gois_gois/Shutterstock.com オジギソウの栽培12カ月カレンダー 開花時期:7~10月植え付け:5〜7月肥料:5〜10月種まき:5月下旬~7月上旬 オジギソウの栽培環境 HannaMaryam Balqies/Shutterstock.com 日当たり・置き場所 【日当たり/屋外】日当たり、風通しがよい場所を選びます。日当たりの悪い場所では、花つきが悪くなったり、ヒョロヒョロとか弱い茎葉が茂って草姿が乱れたりするので注意しましょう。 【日当たり/屋内】日照を好み、屋外での栽培が基本です。冬越しに挑戦する場合、冬は室内に取り込んで管理します。 【置き場所】多湿を嫌うので、水はけのよい場所を選ぶのがポイント。また、オジギソウは移植を嫌うため、植え場所には十分吟味しておきましょう。 耐寒性・耐暑性 暑さには強い一方で寒さには弱く、原産地では多年草で越年しますが、日本では冬越しが難しく一年草として扱われています。しかし霜が降りない暖地では越年することがあるので、鉢上げして暖かい場所で冬越しさせるのも一案です。 オジギソウの育て方のポイント 用土 Wstockstudio/Shutterstock.com 【地植え】 日当たり、風通しのよい場所を選び、植え付けの1〜2週間前に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などを施し、土づくりをしておきます。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。 【鉢植え】 草花用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。 水やり Afanasiev Andrii/Shutterstock.com 水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。 真夏は、気温が高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。 【地植え】 根付いた後は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。 【鉢植え】 日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつもジメジメとした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまうので注意。土の表面が乾いてから、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。 肥料 Sarycheva Olesia/Shutterstock.com 【地植え】 元肥として緩効性肥料を施してあれば、追肥の必要はありません。株の生育に勢いがないようなら、液肥を与えて様子を見てください。 【鉢植え】 5〜10月に、株の状態を見て勢いがないようであれば、緩効性化成肥料を少量、株の周囲にまきます。スコップなどで軽く耕し、土に馴染ませておきましょう。開花期間中は、緩効性化成肥料をやめて速効性の肥料を与えるのも一案。開花を促すタイプの液体肥料を、10日に1度を目安に与えて株の勢いを保ちます。窒素成分の多い肥料を与えると、茎葉ばかりが茂って花つきが悪くなるので、与える際には注意してください。 注意する病害虫 Catherine Eckert/Shutterstock.com 【病気】 オジギソウは強健な性質で、病気にかかる心配はほとんどありません。 【害虫】 オジギソウに発生しやすい害虫はハダニなどです。 ハダニは、葉裏に寄生して吸汁する害虫です。体長は0.5㎜ほどと大変小さく、黄緑色や茶色い姿をしています。名前に「ダニ」がつきますが、クモの仲間です。高温で乾燥した環境を好み、梅雨明け以降に大発生しやすいので注意が必要。繁殖力が強く、被害が大きくなると、葉にクモの巣のような網が発生することもあります。ハダニは湿気を嫌うため、予防として高温乾燥期に葉裏にスプレーやシャワーなどで水をかけておくとよいでしょう。 オジギソウの詳しい育て方 苗の選び方 苗を購入する際は、節間が短く茎ががっしりと締まって勢いがあるものを選びましょう。 植え付け Nataly Studio/Shutterstock.com オジギソウの植え付けの適期は5〜7月です。ただし、花苗店などでは植え付け適期以外でも苗が出回っていることがあります。入手したら、植えたい場所へ早めに定植します。 【地植え】 土づくりをしておいた場所に、苗を植え付けます。複数の苗を植え付ける場合は、約30cmの間隔を取っておきましょう。あまり密に植え付けると、風通しが悪くなって株が蒸れることがあるので、余裕を持たせておくのが無難です。植え付けた後は、たっぷりと水やりをしておきましょう。 【鉢植え】 鉢の大きさは、5〜7号鉢を準備します。 用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。苗を鉢に仮置きし、高さを決めます。植え付けの際は根鉢を崩さないことがポイント。オジギソウは真っ直ぐに伸びる太い根を持ち、これを傷めると著しく生育が悪くなるためです。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきましょう。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。最後に、鉢底からたっぷりと水が流れ出すまで、十分に水を与えます。 植え替え kunanon/Shutterstock.com オジギソウは夏秋咲きの一年草扱いで、寒くなると枯れてしまうので植え替える必要はありません。枯れて株まわりが汚くなる前に抜き取って処分します。 生育の途中で植え替えたい場合は、根を傷めないように扱うことが大切。オジギソウの根は「直根性」で太くて長く、これを傷めると生育が悪くなるためです。根鉢を崩さないように掘り上げて丁寧に扱いましょう。移植を嫌うため、植え付けの際は植え場所をよく吟味しましょう。 日常の手入れ GlimpseDays/Shutterstock.com 【花がら摘み】 オジギソウは次々に花が咲くので、終わった花は早めに摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながります。また、いつまでも終わった花を残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。 増やし方 Esti Budi/Shutterstock.com オジギソウは種まきで増やせます。種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなります。 オジギソウの発芽適温は25〜30℃ほどで、種まきの適期は、気温が十分に上がる5月下旬頃〜7月上旬です。黒ポットに十分に湿らせた市販の草花用培養土を入れて数粒ずつ種子をまき、種子が隠れる程度に覆土してください。半日陰の場所に置いて乾燥しないように管理すると、1週間ほどで発芽します。 発芽したら日当たりがよく、風通しのよい場所で管理しましょう。本葉が2〜3枚出始めたら、間引いて1〜2本残します。ヒョロヒョロと伸びて弱々しい苗や葉が虫に食われている苗、葉が黄色くなっている苗などを選んで間引きましょう。本葉が5〜6枚ついてしっかりした株に育ったら、植えたい場所に定植しましょう。定植する際は、根鉢を崩さずに植えるのがポイントです。 開花後に種子を採取したい場合は、開花期が終わりを迎える頃に花がら摘みをやめます。鞘がついて完熟したら種子を採取して密閉容器に入れ、種まきの適期まで保管しておきましょう。 オジギソウの栽培に関するQ&A divya murmur/Shutterstock.com この章では、オジギソウを育てている際に困ることや疑問に思うことなど、よくある項目をピックアップして回答します。 オジギソウには毒性があるって本当? オジギソウには、毒性のあるアルカロイドが含まれています。あまり強い作用が出るわけではなく中毒事例は見られませんが、念のため幼児やペットのいる家庭では、誤って口に入れることのないように管理しましょう。茎葉を触る分には問題ありません。 オジギソウにはトゲがある? オジギソウの茎には細毛とトゲがあります。小さい苗のうちは目立たず、あまり気になりませんが、大きく成長するとトゲに引っかかる恐れもあるので、植え場所には配慮が必要です。また、葉を触る際にもトゲが刺さらないよう注意しましょう。 オジギソウの花が咲かないのはなぜ? オジギソウの花が咲かない理由としては、日照不足や水の与えすぎが考えられます。日当たりがよく、風通しのよい場所に植え付けることが大切です。観葉植物として室内に置いている場合は、植物育成ライトを使うことも検討してみてください。また、オジギソウは水はけのよい環境を好みます。鉢栽培している場合は特に、水やりが多すぎると根腐れを起こして株が弱ってしまうことも。常に土が湿った状態にはせず、土の表土がしっかり乾いてからたっぷり与えるように心がけてください。 オジギソウが閉じなくなってしまった! オジギソウは、触りすぎると閉じなくなってしまうことがあります。葉を閉じる動作にエネルギーを使って消耗してしまうことが原因と考えられます。オジギソウが反応すると意思疎通ができているような楽しさもありますが、触りすぎないように管理してみてください。 冬越しさせたい場合の方法は? オジギソウは本来多年草なので、越年することは可能です。しかし、日本の厳しい冬の寒さに弱いので、霜が降りたり凍結するような環境では枯死してしまいます。冬越しさせたい場合は、鉢に植え替えて、日当たりのよい室内や温室などに置いて管理するとよいでしょう。 オジギソウを育ててみよう SKY Stock/Shutterstock.com オジギソウは病害虫の被害が少なく、強健で比較的育てやすいのでビギナーにもおすすめ。触れると葉を閉じる楽しい性質に加え、愛らしいポンポン状のピンクの花が夏から秋まで咲き続けて、庭に彩りを与えてくれます。ぜひ庭やベランダで育ててみてください。
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宿根草・多年草
残暑を乗り切る! クリスマスローズ夏越し完全ガイド
クリスマスローズが夏に弱る理由 春の可憐な姿を見るには、夏〜秋のケアが重要。 クリスマスローズは、冬から春にかけて花を咲かせる「冬咲き宿根草」です。そのため、真夏の高温多湿は大の苦手。特に8〜9月の残暑期は、「蒸れ」「葉焼け」「根腐れ」が一気に重なりやすい危険な季節です。こうした状況になると、クリスマスローズの株には以下のような症状が表れます。 高温と過湿/根が酸欠状態になりやすく、しおれや根腐れになる 強い直射日光 /葉が茶色に焼けたり、斑点が広がる 蒸れた環境 /病原菌や害虫が繁殖しやすくなる 花芽が形成されるのは夏を越えた秋。ここで株を弱らせると、冬の花数が減ってしまいます。だからこそ「守りのケア」が重要です。 残暑を乗り切る置き場所の工夫 地植えの場合 落葉樹の株元や北東側の明るい半日陰が理想です。 西日が強い場所では、遮光ネット(70%)を斜めに張って光を和らげましょう。 株元を落葉や堆肥、バークチップなどで覆う(マルチングする)と地温の上昇が防げます。 鉢植えの場合 面谷ひとみさんは、開花期が終わったら北側のバックヤードへ鉢を移動し夏越しさせている。 直射を避けられる半日陰に置きましょう。 鉢を直に床に置くと熱がこもります。レンガや鉢台にのせて通気を確保。過湿を防ぐためには40〜50cmの高さに置くのが理想的。 黒いプラ鉢は熱を吸収するので、白い鉢カバーに入れて二重鉢にすると安心です。 水やりと湿度管理のポイント 基本は「表土が乾いたら朝にたっぷり」。土の表面が白っぽく乾いたら、鉢底から流れるまでしっかり与え、受け皿の水は必ず捨てること。暑いからといって、毎日たっぷり水をあげるのは禁物。鉢内に残った水分がお湯になって、根腐れの原因となります。 葉の整理と蒸れ対策 病斑や黄色くなった葉はハサミで早めに除去しましょう。風通しをよくするだけで病気のリスクは大きく減ります。ただし夏の強剪定はNG。葉を減らしすぎると光合成力が落ち、回復が遅れます。 夏の施肥はお休み、秋に備える 真夏の施肥は根を傷めやすいので一切与えません。涼しくなり始める9月下旬〜10月、ヒガンバナの開花を目安にし、液肥から少量ずつ再開します。 病害虫への警戒と対処 過湿や蒸れで病変が出ているクリスマスローズ。 根腐れや立ち枯れ/蒸れが主因。水やりの間隔を見直し、風通しを確保しましょう。腐って黒くなった部分は取り除き、殺菌剤を散布します。 ナメクジに注意/枯れた葉や蒸れて傷んだ部分を食害します。見つけ次第捕殺するか、予防薬を近くに置くことで防げます。 9〜11月にかけての回復プログラム 9月下旬:ヒガンバナの開花を目安にして、液体肥料を再開。遮光ネットも外し、日照にも徐々に慣らしていきます。 10月:植え替え・株分けの最適期。根詰まりしている鉢はここでリフレッシュ。 11月:根の成長を促し、古葉取りなど、冬の開花に備える大切な充実期。 今日からできる残暑チェックリスト 西日が当たらない木陰で残暑を乗り越え、美しく咲いたクリスマスローズ。 □ 西日が当たらない場所に置いているか。 □ 鉢底を浮かせて風を通しているか。 □ 朝に水を与え、受け皿の水は残していないか。 □ 病気や枯れた葉を早めに取り除いたか。 □ 施肥は停止中(再開は9月下旬〜)。 専門家による「酷暑・残暑の克服術」セミナー&鳥取県出張診察・即売会開催! 持ち込まれたクリスマスローズの鉢を診察するDr.横山。 残暑対策を押さえておけば、秋からの回復がスムーズになり、冬の花数にもつながります。さらに直接専門家から学べる機会もあります。9月21日(日)午前10時から、クリスマスローズ専門家の 横山直樹さんがガーデンストーリーのインスタライブにて「酷暑・残暑の克服術」を伝授してくれます。 また、同日午後1時からは、鉢を持ち込んだ方を対象に、横山さんが不調の原因を見極め、健全に育つように自ら植え替える「出張診察・即売会」も開催。クリスマスローズのケアに悩む方は、この機会をぜひ活用してください。 「酷暑・残暑の克服術」Dr.横山のクリスマスローズ&秋の球根クリニック 【日時】9月21日(日)◾️10時〜10時45分/ガーデンストーリーインスタライブhttps://www.instagram.com/gardenstory.jp/◾️13時〜15時/Dr.横山の診察開院&即売会*診察ご希望の方は12時45分よりご来院順に診察整理券を配布します。【参加費】無料(要別途植え替え料)。ご予約は不要です。お時間になりましたらご来院ください。お庭もご自由にご覧いただけます。【場所】面谷内科・循環器内科クリニック鳥取県米子市道笑町4丁目221-1JR米子駅より徒歩約17分
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観葉・インドアグリーン
【決定版】パキラの育て方完全ガイド! 初心者も安心のコツから風水効果・種類まで徹底解説
パキラの基本情報 feralflower/Shutterstock.com 植物名:パキラ学名:Pachira英名:Guiana Chestnut、Money Tree和名:カイエンナッツ別名:発財樹科名:パンヤ科属名:パキラ属原産地:中南米形態:木本植物、常緑高木 パキラは耐陰性に優れるため、室内に飾って楽しまれることが多い植物です。形態は低木から高木に分類され、学名をPachiraで、パンヤ科パキラ属の木本植物です。原産地は中南米で、メキシコから中米の熱帯アメリカにかけて分布しています。株が成熟し、適した環境で育つと、パンヤ科らしい可憐な花が咲きます。カイエンナッツともいわれ、現地では炒って食用にされることも。熱帯域に自生しているため耐暑性は強く、日本の夏の暑さも平気ですが、その反面、耐寒性は弱く、耐えられる最低気温は5~10℃前後です。 パキラの花や葉の特徴 Lynn Bulgrin/Shutterstock.com 園芸分類:観葉植物開花時期:6〜7月草丈・樹高:10cm〜20m耐寒性:弱い耐暑性:強い花色:赤、白 パキラは熱帯のジャングルの川沿いなどに自生しています。樹の高さは最大で約20m。成長すると幹がとっくり状にずんぐりと太くなり、葉の軸を長く伸ばして、その先端に5~7枚の小さな葉をつけます。葉は長楕円形で皮革質の光沢のある緑色で、やや厚めです。 比較的乾燥に強いのですが、雨期には水没するような場所に自生しているため、多湿な土壌でも育ちます。園芸店などで水耕栽培のようにして販売もされているのは、そのため。 園芸分類では観葉植物に分類されます。とても丈夫で育てやすいため、初心者にもおすすめの植物です。 パキラの花言葉や名前の由来 Olenaduygu/Shutterstock.com パキラの名前は、原産地「ギアナ地方」(南アメリカ大陸の北東部から太平洋に面した地方)での呼び方からきています。「カイエンナッツ」「発財樹(MoneyTree)」という別名を持ち、前者はパキラの実の名前から、後者は「新しい芽が次々と出てくるパキラをたくさん売ったら大金持ちになった」という言い伝えを由来としています。 花言葉は「快活」「勝利」。別名と同じく、パキラを売ってお金持ちになったという言い伝えや、生命力が強くて丈夫な様子からきています。 パキラの風水効果 Pelinyasar/Shutterstock.com パキラは、室内に観葉植物として置くことで、風水的にもよい効果をもたらすといわれています。葉の形からよい気を発し、悪い気を鎮めてくれるのだとか。得たい運気の流れが活発なところに置くと効果があるそうで、方角としては、金運や商売繁盛の運気を強めたい場合は西、または北西に、仕事運を強めたい場合は東、北西、南西に飾るとよいとされています。また調和をもたらしてほしい場合は、人通り(出入り)の多い場所に飾りましょう。 パキラの代表的な種類 パキラには20種類ほどの品種があるといわれていますが、日本で流通している種類はそれほど多くありません。主な4種をご紹介します。 パキラ・グラブラ Razu mia/Shutterstock.com パキラ・グラブラの花。Poetra.RH/Shutterstock.com 日本で最も流通している品種の一つ。花は白、実は緑色。濃い緑の葉を茂らせます。定番品種で、花屋やホームセンターで入手できます。 次に紹介するパキラ・アクアティカと似ていますが、葉の形がより尖っているのがグラブラの特徴です。 パキラ・アクアティカ Toyakisphoto/Shutterstock.com アクアティカも日本で広く流通している品種の一つ。淡いピンクから黄色の花弁に、雄しべの先端赤く色づく特徴的な花を咲かせ、実は赤茶。グラブラよりも葉が丸みを帯びています。 園芸店などで、幹の部分がおしゃれに編まれて販売されていることも多い品種です。 ‘ムーンライト’ 葉にライムグリーンの斑模様が入っている珍しい品種。太くしなやかに曲がった太い幹が特徴です。 ‘ミルキーウェイ’ 「ミルキーウェイ=天の川」の名が示すように、星の煌めきをイメージさせる美しい斑入り葉が楽しめる希少品種。他の品種と同様にて気温を保ち、葉焼けに注意して葉色を保ちましょう。 パキラの栽培12カ月カレンダー 開花時期:6月〜7月植え替え適期:5月〜9月肥料:4月〜9月入手時期:通年植え付け時期:通年 パキラの育て方 Vladimirova Julia/Shutterstock.com パキラはとても丈夫な植物ですが、適した環境で健やかに育てることで、長期にわたってより丈夫で枝ぶりのよい姿が楽しめます。ここでは育て方のポイントをまとめていますので、ぜひ参考にしてください。 パキラの栽培環境 日当たり・置き場所 mokjc/Shutterstock.com 【日当たり/屋外】日当たりと風通しがよい場所で育てます。 【日当たり/屋内】週に2〜3回は窓際や屋外など日当たりのよい場所に移動しましょう。 【置き場所】 外で育てる場合、春から秋にかけては明るくて風通しのよい場所に置くようにしましょう。夏は、午後からは日陰になる場所へ。 ある程度の耐陰性もあるため、屋内で通年育てることもできます。その場合はひょろひょろと伸びる「徒長」が起きやすくなるので、週に2、3回は窓際などの明るい場所や、屋外の日当たりのよい場所に移動しましょう。エアコンの風は苦手なので、風が直接当たらない場所で管理します。 また、室内から屋外に急に移動すると、環境の違いについていけず葉を落としたり、急に直射日光に当ててしまうと葉焼けを起こすことがあります。屋外に出す際は、徐々に明るさに慣らすようにしましょう。 温度 Tenkorys/Shutterstock.com 熱帯原産の植物なので比較的高い温度を好み、16〜25℃が栽培適温です。寒さに弱いので、春〜秋はベランダなどの屋外で育てている株も、冬は室内に取り込みましょう。室温が10℃を下回ると落葉して活動が止まり、休眠状態になります。 パキラの育て方のポイント 用土 santypan/Shutterstock.com 用土は水はけのよいものが適しています。観葉植物用に配合された用土も販売されているので、それを使うのもいいですし、室内管理でもう少し乾きやすい土がよいということであれば、観葉植物用の用土に赤玉土と鹿沼土を2:1:1程度の割合で配合するなどして、生育環境に合わせて調整するのがよいでしょう。 観葉植物用の用土には腐葉土やピートモスなどの有機質が使われており、場合によってはコバエなどが発生することがあります。気になる場合は、赤玉土や軽石、化粧砂など無機質の用土で表面を覆うことで、発生をある程度抑えることができます。 また、前述のようにパキラは水への耐性も高いことから、水に浸したセラミスやハイドロボールなど無機質の用土に植え付けて栽培することも可能です。 水やり Taras Garkusha/Shutterstock.com 水やりのタイミングと水の量は、季節によって調整するとよいでしょう。生育期は、用土が乾いたら、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと与えます。乾燥にも強いので、用土が乾ききってしまったあとでも大丈夫。 生育が緩慢になる冬や、葉が落ちてしまったときなどは、水やりを控えめにしましょう。鉢の大きさにもよりますが、乾かし気味に管理し、水やりの間隔は2週間から1カ月に1回程度でかまいません。また定期的な葉水(霧吹きなどで葉に水をかける)を行い、埃を落として葉を清潔に保ち、病害虫を予防しましょう。 肥料 肥料はあまり必要としませんが、緩効性肥料や液体肥料を生育期に少量与えると生育が早くなります。ただし、適正量を超えると肥料焼けを起こして根が傷んでしまい、最悪の場合枯れてしまうこともあるので、肥料の容器などに書かれた規定量と頻度を守って与えるようにしましょう。 パキラの詳しい育て方 Toyakisphoto/Shutterstock.com パキラは成長速度が早く、環境が適していると大きくなりすぎて手に負えなくなってしまうことがあります。反対に、パキラを大きくしたいのに適切な管理ができていないと生育が緩慢になることも。ここでは、思い描くサイズ感や枝ぶりにするためのお手入れの方法について解説します。 選び方 topimages/Shutterstock.com パキラは、園芸店に行くと小さい苗から大きく育った大型のものまで、さまざまなサイズが並んでいます。価格もそれに応じて変わるので、自分の好みに合ったものを選んで購入しましょう。また選ぶ際は、葉が青々としてよく茂り、幹のしっかりしたものがおすすめです。 種まき Sam Robru/Shutterstock.com パキラは種子から育てることができる観葉植物です。種子から育てた株は「実生株(みしょうかぶ)」となり、自然樹形が楽しめて、個性的な花が咲くことも期待して育てる人もいます。ただし、開花までは最低でも5年はかかるとされており、難易度は高いでしょう。 パキラの種子は、実生株から採取するか、まれに園芸店や通販で入手できることもありますが、採取して半月〜1カ月程度で発芽力を失ってしまうため、新鮮な状態の種子を購入することが大切です。 種子を入手したら、下記の手順で土に植えましょう。 1. 水没検査をする 種を水の入った容器に入れて、種を1〜2日間吸水させます。この段階で水の底に沈んだ種は発芽する可能性があるので、沈んだ種を選別します。 2. 水苔で包む 選別した種は、発芽するまで湿らせた水苔で包みます。20℃程度の暖かい場所に、種が乾燥しないように管理しながら置いておくと、早くて2日ほどで発芽が始まります。 3. 発芽したら殻をむく 発芽が進むと殻が割れてくるので、手で取れそうな場合は丁寧に殻をむきます。発芽したての芽(=胚)が2〜3cmになるまで育てます。 4. 鉢に植え付ける 胚が2〜3cmになったら、赤玉土の入った用土(前出の「用土」の項目参照)に植え付けます。赤玉土を敷き詰めて十分に湿らせ、その上に胚を半分ほど埋まるように植え付けて、葉が出てくるまで上から水苔を被せておきます。 その後、胚が育ち双葉が出て発根し、双葉が芽生えたら、日当たりのよい場所へ鉢を移動させましょう。 剪定・切り戻し Maksym Om/Shutterstock.com パキラが大きく育ちすぎたり、屋内管理で徒長してだらしない姿に乱れてしまったときは、切り戻す剪定をしましょう。その際、枝の根元にある成長点より2cmほど上の位置で切り取ると、成長点から新しい枝が出てきて更新ができます。幹や枝の表面にある、節のように膨らんでいる茶色い部分が成長点です。 パキラは挿し木で増やすことができ、また切った枝を水につけておくと根が出てくるので、そのまま水耕栽培で育てたり、鉢植えにすることもできます。その際は、切り取った枝の葉の先を切り落としておくと、その後の生育が順調に進みます。 植え替え・鉢替え Sokolov Olleg/Shutterstock.com パキラは根の生育も早いため、定期的な植え替えが必要となります。植え替えをしないと根詰まりが起き、生育が緩慢になってしまうので、大きく育てたい場合は1〜2年に1回、一回り大きな植木鉢に植え替える「鉢増し(はちまし)」をしましょう。コンパクトに育てたいのであれば、植え替えの時に鉢のサイズは変えずに植え直します。根の周りの古い土を1/3程度落とし、傷んで黒ずんだ根を取り除いた後、新しい土を補充してください。 植え替え直後は微細な土の粒がたくさんあり、そのままにしていると土が目詰まりする原因に。鉢底から流れ出る水が透明になるまで、たっぷりと水やりをしてください。 増やし方 KITKAT903/Shutterstock.com パキラの増やし方には、主に挿し木と種子繁殖があります。 挿し木の適期は5~9月。挿し木用の土は、バーミキュライトや鹿沼土、挿し木専用の用土も市販されているので、それらを使うのもよいでしょう。挿し木用のトレーにまとめて挿したり、ポリポットに1本ずつ挿してもよいでしょう。水を切らすと発根が遅くなるので、水切れさせないように管理を。1カ月ほどで新芽と根が出てくるでしょう。 また種子繁殖(実生)に挑戦する場合は、まれに園芸店やネットショップで入手できたり海外から種子を輸入するのも一案ですが、入手はやや困難です。 夏越し 外で育てる場合、日本の真夏の直射日光下では葉焼けを起こすことがあるので、午後からの強い直射日光を避けるために日陰になる場所に置くとよいでしょう。そうした置き場所がない場合は、西側に簡易なフェンスを設けたり、遮光するシェドを設置するか、株が大きくて強い日光にも耐えるオリーブなどの鉢植えを置くなど、日差しを遮る工夫をするのがおすすめです。 室内で育てる場合、暑すぎると高温障害も起きるので、夏場に閉め切った部屋に置きっぱなしにすることはやめましょう。 冬越し 耐寒性は弱いので、屋外で育てている場合も冬は室内に取り込みましょう。冬も生育させたい場合は最低15〜16℃以上、葉が落ちるのを防ぐためには最低10℃以上の室温が必要です。室温が10℃を下回ると落葉して活動が止まり、休眠状態になります。 パキラのよくあるトラブルと対処法 病害虫 Chubykin Arkady/Shutterstock.com パキラは病害虫に強く、栽培適地で健康に育っている株であれば、あまり心配することはありません。ただ空気の乾燥する時期や屋内管理で風通しが悪いときなどは、ハダニやアブラムシ、カイガラムシなどの害虫が発生することがあります。葉色が悪くなったり、葉の色が抜け落ちる、あるいは葉の基部などに白い物が付いていたりしたら害虫が潜んでいる可能性があるので、葉裏などもしっかり観察しましょう。 害虫を見つけた場合は早めの対処が肝心です。早期であれば葉水などで害虫を洗い流したり、捕殺したりしましょう。ある程度広がっている場合は、スプレー式の適用のある薬剤を噴霧するのもよいでしょう。その際は、葉裏もお忘れなく。 葉焼け パキラは、強い直射日光があたり続けると葉焼けしてしまうことがあります。葉焼けとは、葉が強い光を浴びて、葉先から茶色や白色に変色してしまうこと。 それまで室内に置いていた株をいきなり直射日光に当てると葉焼けを起こすこともあるので、屋外に出す際は、最初は直射日光が当たらない場所で1週間ほど明るさに慣らしながら徐々に移動させるようにしましょう。 一度葉焼けしてしまうと元には戻らず、そのままにしておくと株全体が枯れることもあります。対処法としては、置き場所を変えるなどの工夫をし、葉焼けした葉を切り取って新しい葉が出るのを待ち、元気な葉だけ残すようにしましょう。 根腐れ 根腐れとは、土が常に湿った状態で根っこから酸素が吸収できなくなり、呼吸ができなくなって腐ってしまうことです。葉が黄色くなる、幹がブヨブヨとやわらかくなる、などの変化が見られたら、その症状はかなり進行しており、そのまま放置していると、やがて株全体が弱り、枯れてしまいます。 根腐れの症状が初期の場合、鉢受けの水を捨てて土を乾燥させ、日当たりと風通しのよい場所に移動させてしばらく水やりを控えることで、復活の可能性はあります。 根腐れを防ぐためにも、水やりの頻度は前述のように「用土が乾いてから」を守るようにしましょう。 パキラを育てて素敵な空間を楽しもう t.sableaux/Shutterstock.com パキラの特徴から具体的な育て方まで幅広く解説しました。パキラは育てやすく風水的にも縁起がよいとされ、大変人気のある植物です。サイズや樹形もさまざまで、自分のお気に入りのものを選ぶ楽しさもあります。部屋にグリーンがあるとみずみずしい空間になり、緑が日々の生活に癒やしを与えてくれますよ。この記事を参考にして、ぜひ素敵にパキラを育ててみてください。
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野菜
【家庭菜園ビギナー必見】ラディッシュ(ハツカダイコン)の育て方と美味しい食べ方
ラディッシュの基本情報 ANDREW PROFOTO/Shutterstock.com 植物名:ラディッシュ学名:Raphanus sativus var. sativus英名:radish和名:ハツカダイコン(二十日大根、廿日大根)科名:アブラナ科属名:ダイコン属原産地:ヨーロッパ~中央アジア形態:一年草 ラディッシュは、アブラナ科ダイコン属の野菜で、根菜類に分類されています。原産地は諸説ありますが、ヨーロッパから中央アジアが有力と考えられています。赤く丸い品種が最もポピュラーですが、ほかにも楕円形や細長いもの、白い根のものもあります。品種を使い分けたり、味比べをしたりするのもいいですね。あまり場所を取らないので、畑の隅や空いているプランターで手軽に栽培できます。 ラディッシュの栽培は春に種まきをする「春まき」と、秋に種まきをする「秋まき」とができ、年に2回の栽培が可能です。種まきから20〜30日程度の短い期間で収穫でき、栽培可能な期間も長いため、ビギナーでも手軽に収穫が楽しめるおすすめの野菜。家庭菜園では、一度にたくさんの種子を播くよりは、1週間から10日おきに食べられる分だけ少しずつ播く「ずらしまき」をすると、長い期間にわたって収穫を楽しめます。 ラディッシュの花や葉、根の特徴 prado6557/Shutterstock.com 園芸分類:野菜開花時期:5〜7月草丈・樹高:20〜100cm耐寒性:普通耐暑性:普通花色:白、ピンク ラディッシュは小さな赤カブに似ていますが、カブではなく小型のダイコン。根・胚軸・葉が食用になります。根は直径1~3cm、長さ2~10cmの球形から楕円形。皮の色は赤や紫、黄、黒、白などがありますが、中身は白色です。葉は根生葉で、茎の途中につくのではなく、株元に密集して伸びるのが特徴。収穫せずに育てると、花茎が伸びて茎の先にアブラナ科らしい4枚の花弁が十字になる白から淡いピンクの花が咲きます。花が咲くと葉が硬くなったり食味が落ちるため、食用にする場合は適期を逃さずに収穫しましょう。 ラディッシュの名前の由来と花言葉 topotishka/Shutterstock.com ラディッシュの和名の「二十日大根(ハツカダイコン)」は、種まきから収穫までが20~40日程度という生育期間の短さが由来。英名のradishは、本来はダイコン全体を指しますが、日本ではラディッシュといえばハツカダイコンを意味します。ラディッシュの花言葉は「適応力」「潔白」「節度」「再生」などがあります。 ラディッシュに含まれる栄養素 VI Studio/Shutterstock.com ラディッシュの根の部分のカロリーは、100gあたり約15キロカロリーです。ジアスターゼやビタミンCが豊富なほか、カリウムやカルシウム、葉酸なども含みます。一方、葉の部分はβカロチン、ビタミンC、カリウム、カルシウムなどを多く含んでいます。 ラディッシュの代表的な品種 Helga Fluey/Shutterstock.com ラディッシュの栽培スケジュール ラディッシュの栽培は、春に種まきをする「春まき」と、秋に種まきをする「秋まき」とができ、年に2回の栽培が可能です。一般地を基準にすると、「春まき」は3月下旬〜6月上旬に種子を播き、5月〜7月上旬に収穫。「秋まき」は8月下旬〜10月に種子を播き、9月下旬〜12月上旬に収穫します。また、種子を一度に播くのではなく、少しずつ播く「ずらしまき」をすると、長期間にわたり栽培・収穫を楽しめます。 ラディッシュの栽培環境 Victoria Moloman/Shutterstock.com ラディッシュの生育適温は15〜20℃で、冷涼な気候を好みます。ラディッシュは連作(同じ場所で同じ種類〔科〕の植物を育て続けること。土壌バランスが崩れて生育障害が起きやすくなる)を嫌う性質を持っています。そのため、ラディッシュが属するアブラナ科の植物を1〜2年は育てていない場所を選びましょう。日当たり、風通しのよい場所が適地で、水はけ、水もちのよい土壌を好みます。 ラディッシュの育て方のポイント 用土 funnyangel/Shutterstock.com 【地植え】 根菜類に属するラディッシュは、移植ができないので種まきからスタートします。畑の準備はその2〜3週間前に行っておき、有機物などが分解して土が熟成するのを待ちましょう。 まず、種まきの2〜3週間以上前に、苦土石灰を1㎡当たり100g散布し、よく耕して土に混ぜ込んでおきます。さらに植え付けの1〜2週間前に、1㎡当たり堆肥2kg、化成肥料(N-P-K=8-8-8)約100gを全面に散布し、よく耕して平らにならしておきましょう。 【鉢植え】 野菜の栽培用にブレンドされた市販の培養土を利用すると便利です。 種まき GreenThumbShots/Shutterstock.com ラディッシュの種まき適期は、「春まき」は3月下旬〜6月上旬、「秋まき」は8月下旬〜10月です。 【地植え】 土づくりをしておいた場所に、幅約60cm、高さ約10cmの畝をつくります。畝の長さはつくりたい量や広さに応じて自由に決めてかまいません。この畝に、2列の種まき用の溝をつけます。溝の間隔(条間)を20〜30㎝あけて、園芸用の支柱を押し当てて深さ1〜2cmのまき溝をつけます。そのまき溝に、1cm間隔でラディッシュの種子を播きましょう。溝の両側から土を寄せて薄く土をかぶせ、軽く手のひらで押さえます。最後に、はす口をつけたジョウロを使い、高い位置からやわらかな水流でたっぷりと水やりをしましょう。 【鉢植え】 標準サイズのプランターを準備。底穴に鉢底網を敷き、底が見えなくなるくらいまで鉢底石を入れ、その上に野菜用にブレンドされた培養土を入れます。水やりの際に水があふれ出ずに済むように、ウォータースペースを鉢縁から2〜3cm残しておきましょう。園芸用支柱などを使い、手前と後ろに10〜15cmほどの間隔をあけて2本のまき溝をつけます。溝の深さは1cmほどが目安です。ラディッシュの種子を1cm間隔で播き、溝の両側から土を寄せて軽く土をかぶせ、軽く表土を手で押さえます。最後に、はす口をつけたジョウロを使い、高い位置からやわらかな水流で鉢底から水が流れ出すまでたっぷりと水やりしましょう。発芽までは乾燥させずに管理することがポイントです。 防虫ネットの設置 THETAE/Shutterstock.com アブラナ科に属するラディッシュは、大変虫がつきやすい野菜です。でも、せっかく家庭で栽培するのですから、できるだけ無農薬で管理したいですよね。そんな時は、園芸用資材を上手に利用する方法があります。用意するのは、不織布と防虫ネット、園芸用支柱です。 不織布は、種まきの直後に、畝にべたがけにして四方に土を盛って固定しておくと、幼苗を虫から守ることができます。ある程度苗が育ってきたら、不織布をはずして防虫ネットの設置に切り替えましょう。園芸用支柱を畝の両端と中央あたりにアーチ状にして深く差し込み、防虫ネットを被せます。畝の両端で防虫ネットを結んで固定し、四方の裾に土を盛ってしっかりと固定。これで物理的に虫の侵入を抑えられるというわけです。プランター栽培でも同様に管理できます。虫が苦手な方は、園芸用資材を上手に使って防除するのがおすすめです。 水やり Ivanko80/Shutterstock.com 【地植え】 発芽後は、地植えの場合は地中から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、晴天が続いて乾燥が続く場合は水やりをして補いましょう。 【鉢植え】 日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。 間引き Denis Pogostin/Shutterstock.com 【菜園・プランター栽培ともに】 双葉が出揃ったら、3〜4cm間隔になるように間引きます。葉が傷んでいるものや、弱々しく生育が悪い苗を選んで抜き取ります。 追肥・土寄せ New Africa/Shutterstock.com 【地植え・鉢植えともに】 本葉が2〜3枚ついたら追肥として、菜園では化成肥料を1㎡当たり30g、コンテナでは約10gを周囲にばらまき、土によくなじませて株元に土を寄せておきましょう。 収穫 【地植え・鉢植えともに】 ラディッシュは、収穫が近づくと根が太って地面にせり上がってくるようになります。表土に上がってきた根の直径が2〜3cmになった頃を目安に収穫しましょう。株元を持って一気に引き抜いて収穫します。収穫が遅れると、肥大しすぎて根が割れたり、すが入ったりして品質が落ちるので、適期のタイミングを逃さないようにしてください。収穫したら、葉を残しておくと水分が葉から蒸散されてしまうので、すぐに葉の部分を切り取りましょう。茎葉の部分も栄養価が高く、調理に利用できます。 注意する病害虫 nechaevkon/Shutterstock.com 【病気】 ラディッシュが発症しやすい病気は、うどんこ病、灰色かび病などです。 うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放任するとどんどん広がるので注意。対処せずにそのままにしておくと光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用する殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。 灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほど、かつ多湿の環境下にて発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合いすぎていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合いすぎている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。 【害虫】 ラディッシュに発生しやすい害虫は、アブラムシ、アオムシなどです。 アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついてしまうほどに。植物の茎葉について吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目にも不愉快なので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。 アオムシは、モンシロチョウの幼虫です。葉裏などに卵を産み、孵化した幼虫は旺盛に葉を食害します。葉に穴があいているのを見つけたら、葉を裏返すなどして幼虫がついていないか確認し、見つけ次第捕殺します。大きくなるとギョッとするほどのサイズになり、葉脈のみを残して食べ尽くすほどの害を与えるので、早めの対処が大切です。 ラディッシュ栽培でよくあるトラブルと対処法 tastyfood/Shutterstock.com ラディッシュは栽培しやすい野菜ですが、トラブルが起こることもあります。ここでは、よくあるトラブルと対処法についてご紹介します。 発芽しない 気温が低いか水分が足りないのが、発芽しない原因と考えられます。気温が低かったと心当たりがある場合は、種まきする時期をずらして、もう一度トライしてみてください。また、種まき後は、水切れさせないことがポイントなので、発芽までは水やりを忘れないようにしましょう。いずれも、1週間待っても発芽しないときは諦め、新たに種まきするとよいでしょう。 根が割れる 収穫したところ、根が割れていることがありますが、これは収穫するタイミングが遅れたことが主な原因です。表土に顔を出している根の直径が2〜3cmになった頃を目安に収穫しましょう。ラディッシュは若いうちの収穫がよく、適期を過ぎると食感も悪くなります。ただし、割れていても食べるのには問題ありません。 あまり大きく成長しない ラディッシュの根があまり大きくならなかった場合は、いくつかの原因が考えられます。まず、株間が狭すぎたこと。忘れずに間引きをして、3〜4cmほど株間を開けましょう。また、間引いた際に、土寄せをすると根の栄養吸収がよくなって肥大しやすくなります。ほかにも、日当たりが悪い場合や、水不足などでも根が大きくならないことがあるようです。ラディッシュの栽培に適した環境に整えましょう。 ラディッシュの食べ方 asife/Shutterstock.com ラディッシュは、根も葉も美味しく食べられる野菜です。ここでは、ラディッシュの利用の仕方についてご紹介します。 根の食べ方 ラディッシュの根は生食でき、サラダやマリネ、ピクルス、漬物などに利用可能です。ピリッとした辛みが、アクセントになってくれます。ほかに、炒め物やオーブン焼き、スープの具材など、加熱料理にも利用でき、マイルドな味わいを楽しめます。 葉の食べ方 葉は根よりも栄養豊富といわれているので、捨てずにぜひ食材として利用してください。胡麻和えやナムル、炒めもの、スープの具材などに利用できます。 ラディッシュの飾り切り Photo Food Pro/Shutterstock.com 表皮が赤く、中が白いラディッシュは、飾り切りにすると赤と白のコントラストが映え、料理のアクセントとしても活躍します。まず、よく洗って茎を切り落とします。根は小さいので、刃先の短いナイフを使うのがおすすめ。最も簡単なのは、根の表面にいくつかのV字の切り込みを入れて模様をつけること。星形などにアレンジしても素敵です。 ラディッシュの保存方法 Ilia Nesolenyi/Shutterstock.com 収穫したラディッシュを保存する際は、ひげ根を落とし、葉と根を切り分けておきましょう。 葉をつけたままにしておくと、蒸散作用によって水分が抜けやすく、いつまでもつけておくと根の栄養が葉に吸い取られます。 根と葉を切り分けたら、水を含ませて軽く絞ったキッチンペーパーで葉と根をそれぞれ別に包みましょう。そのまま保存袋に入れて野菜室で保存。 1週間ほどで食べ切ります。 冷凍したい場合、葉は茹でて絞ってからラップに包み冷凍庫に入れると、1カ月ほど保存が可能です。根は食感が損なわれるため冷凍保存には向きません。 ラディッシュを育てて採れたてを食べよう Natalya Kopyl/Shutterstock.com ラディッシュは種まきから栽培するのが基本ですが、種まきから収穫までの期間が1カ月程度と短いのが特徴です。家庭菜園に興味がある方は、まず成功体験を得るためにも、ラディッシュの栽培から始めるのがおすすめ。ぜひ栽培にチャレンジしてみてください。
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宿根草・多年草
クロコスミアの育て方完全ガイド|放置でも咲く! 初心者向けおすすめ品種もご紹介
クロコスミアの基本情報 Tom Meaker/Shutterstock.com 植物名:クロコスミア学名:Crocosmia英名:Crocosmia、Montbretia、Coppertips和名:ヒメヒオウギズイセン(姫檜扇水仙)その他の名前:モントブレチア科名:アヤメ科属名:クロコスミア属原産地:南アフリカ形態:宿根草(多年草) クロコスミアの学名はCrocosmia。アヤメ科クロコスミア属の球根植物で、原産地は南アフリカ。別名にモントブレチア、ヒメヒオウギズイセンがあります。モントブレチアという別名は、以前に分類されていた属名がモントブレチアだったためで、今でもその名前で呼ばれることがありますが、次第に移行してきています。 暑さに強く寒さをやや苦手とする傾向にあり、強健な性質で増えやすく、野生化することも多いようです。自生地では7種が分布しており、日本でよく流通しているのは、クロコスミア・オーレア(C.aurea)、クロコスミア・ポトシー(C.pottsii)、この2種を交配して生まれたクロコスミア・クロコスミフローラ(Crocosmia ×crocosmiiflora)などです。このほかにも人の手によって作出された園芸品種が多く出回っています。 クロコスミアは春植え夏咲きの球根植物で、晩秋になると地上部を枯らして休眠します。越年してまた生育期を迎えると再び新芽を出すライフサイクルを繰り返し、一度植え付ければ毎年の開花を楽しめる、息の長い植物です。草丈は品種によって異なり、40〜150cmと幅があります。花壇の中段〜高段向きです。 クロコスミアの花や葉の特徴 Scott Cummings/Shutterstock.com 園芸分類:草花開花時期:6〜8月草丈・樹高:40〜150cm耐寒性:弱い耐暑性:強い花色:赤、オレンジ、黄、複色 クロコスミアの開花期は、6〜8月で、花色は赤、オレンジ、黄色、複色などがあります。花茎を長く伸ばした先に、下から咲き上がって20輪前後の花を咲かせます。花径は3〜6cmほどです。葉は剣状で細長く、地際から放射状に伸ばします。 クロコスミアの名前の由来や花言葉 Quercus 1/Shutterstock.com クロコスミアは、学名がそのまま流通名になっています。「Crocosmia」は、ギリシャ語でサフランの意の「Kroko」と香りを意味する「osme」から来ています。花を乾燥させてから湯に入れると、サフランのような香りがすることに由来するそうです。別名のモントブレチアは、フランス人の植物学者に由来するもの。和名のヒメヒオウギズイセンは、花姿をヒオウギとスイセンになぞらえた名前で、少し小さめなので名前の頭に「姫」がついています。 クロコスミアの花言葉は、「楽しい思い出」「謙譲の美」「陽気」など。いずれも鮮やかな花姿を表したもので、「謙譲の美」はうつむくように咲くことに由来しています。 クロコスミアの和名の由来になったヒオウギとスイセンはどのような花? クロコスミアの和名はヒメヒオウギズイセン。この由来となったヒオウギとスイセンの2つの花はどんな花なのか見てみましょう。 ヒオウギ Cynthia Shirk/Shutterstock.com ヒオウギはアヤメ科ヒオウギ属(ベラムカンダ属)の落葉性多年草です。原産地は日本、朝鮮半島、中国、インドで、暑さや寒さに強い性質を持っています。開花期は7〜8月で、花色はオレンジ、黄色、ピンク、紫、赤など。剣状の長い葉を重ねるように扇状になる姿から、宮中で貴人が用いた木製の「檜扇」に似ているとして名付けられました。花径は5〜6cmほどの6弁花で、そばかすのような斑点が見られます。草丈は40〜100cmほど。 スイセン Radovan1/Shutterstock.com スイセンはヒガンバナ科スイセン属の球根植物です。原産地はイベリア半島を中心とした地中海沿岸で、寒さに強い性質を持っています。開花期は11月中旬〜4月で、花色は白、オレンジ、黄色、複色など。花は筒状の副冠と花弁、萼片で構成されており、クロコスミアには似ていません。人気の高い花だけに品種が豊富で、花色や花姿は多様です。草丈は10〜50cmほど。 クロコスミアの主な品種 ‘ルシファー’ Irene Fox/Shutterstock.com クロコスミアは、300種以上の園芸品種があるとされています。日本で流通している主な品種をいくつかご紹介します。 クロコスミア・クロコスミフローラ High Mountain/Shutterstock.com クロコスミア・オーレアとクロコスミア・ポトシーの交雑種で、クロコスミアの和名であるヒメヒオウギズイセンは主にこの品種を指します。野生化した状態のものが各地で見られ、日本では広く普及している品種です。朱赤や濃いオレンジの花を咲かせます。 ‘ルシファー’ Debu55y/Shutterstock.com 鮮明な深紅の花色が美しく、人気の高い園芸品種。草丈1m以上になる大型種。 ‘コンスタンス’ 鮮やかなオレンジ色の花を咲かせる園芸品種。草丈は80~90cmほど。 ‘コロンブス’ Joe Kuis/Shutterstock.com 大輪で発色のよい山吹色の花が美しい。草丈50〜70cm。 ‘ノーウィッチキャナリ’ Nahhana/Shutterstock.com 花つきがよく、小さめの黄色い花を多数咲かせる品種。草丈60cm程度の小型種。 複色の品種も。Alex Manders/Shutterstock.com クロコスミアの栽培12カ月カレンダー 開花時期:6〜8月植え付け・植え替え:3〜4月肥料:4月頃(鉢植え) クロコスミアの栽培環境 Peter Turner Photography/Shutterstock.com 日当たり・置き場所 【日当たり/屋外】クロコスミアは日当たりがよく、風通しのよい場所を好みます。半日陰の環境でも育ちますが、極端に日当たりの悪い場所では花つきが悪くなるので、避けてください。 【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。 【置き場所】水はけ、水もちのバランスがよい土壌を好みます。植え付け前に有機質肥料などを施して土づくりをしておきましょう。 耐寒性・耐暑性 暑さには強く、放任しても元気に咲きます。寒さにはやや弱く、暖地なら地植えのままで越冬できますが、霜が降りないまたは霜柱ができない場所が越冬条件です。戸外で越冬させる場合は株元に寒さ対策としてバークチップなどをまいてマルチングをしておきます。凍ると枯れることがあるので、寒冷地では球根を掘り上げて貯蔵しておきましょう。 クロコスミアの育て方のポイント 用土 funnyangel/Shutterstock.com 【地植え】 植え付ける1〜2週間前に、腐葉土や堆肥などの有機質資材と元肥として緩効性化成肥料を植え場所に投入し、深くまで耕してふかふかの土をつくっておきましょう。土に土壌改良資材や肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。 【鉢植え】 草花の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。 水やり 株が蒸れるのを防ぐために、茎葉株全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。真夏は気温が高い昼間に水やりすると、水がすぐにぬるま湯になって株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。 【地植え】 植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、ひどく乾燥させないように水の管理をしましょう。根付いた後は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、水やりをして補います。 【鉢植え】 日頃の水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。成長期を迎えてぐんぐん茎葉を広げ、多数のつぼみが上がってくるようになると、水を欲しがるようになります。気候や株の状態に適した水やりを心がけましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。 肥料 Sarycheva Olesia/Shutterstock.com 【地植え】 あまり多肥を好まない性質で、肥料を施すとかえって軟弱になったり、葉が茂りすぎて倒れやすくなったりするので、追肥は不要です。ただし、株に勢いがなく葉色が冴えないようであれば、速効性の液肥を与えて様子をみるとよいでしょう。 【鉢植え】 越年した後、毎年4月頃に緩効性肥料を少量与えます。 注意する病害虫 Catherine Eckert/Shutterstock.com 【病気】 クロコスミアの栽培では、病気の心配はほとんどありません。 【害虫】 クロコスミアに発生しやすい害虫は、ハダニなどです。 ハダニは、葉裏に寄生して吸汁する害虫です。体長は0.5mmほどと大変小さく、黄緑色や茶色い姿をしています。名前に「ダニ」がつきますが、クモの仲間です。高温で乾燥した環境を好み、梅雨明け以降に大発生しやすいので注意が必要。繁殖力が強く、被害が大きくなると、葉にクモの巣のような網が発生することもあります。ハダニは湿気を嫌うため、予防として高温乾燥期に葉裏にスプレーやシャワーなどで水をかけておくとよいでしょう。 植え付け・植え替え AlenKadr/Shutterstock.com クロコスミアの植え付け適期は、3〜4月です。市販されている球根を植え付けます。開花期に出回る花の咲いた鉢植えを植え付けても構いません。 【地植え】 土づくりをしておいた場所に、5〜6cmほどの土をかぶせられるように球根の大きさに合わせて穴を掘って植え付けます。複数植える場合は、間隔は30cmほど取っておきましょう。 地植えの場合は植え替えの必要はなく、放任しても毎年開花を楽しめます。数年経って株が込み合ってきたら、植え付け適期に掘り上げて株分けして植え直しましょう。 【鉢植え】 7号鉢に8〜10球を目安に植え付けます。鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を8割くらいまで入れましょう。土は鉢内までしっかり行き渡るように鉢底をコンコンと打ち付けながら土を落ち着かせ、しっかりと培養土を入れ込みます。4〜5cmほどの土をかぶせられるように、球根の大きさに合わせて植え穴を掘って植え付けましょう。また、水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3㎝下を目安にし、ウォータースペースを取っておきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。 クロコスミアは数年植えたままにしても構いません。しかし大株に生育して込み合ってきたら植え付け適期に掘り上げ、株分けして植え直しましょう。 日常のお手入れ Aleksei Golovanov/Shutterstock.com 【花がら摘み】 次々に花が咲くので、終わった花は早めに摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも終わった花を残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。 【冬越し】 寒くなると地上部が枯れ込むので、地際で刈り込みましょう。暖地では敷きワラやバークチップなどなどを施してマルチングし、寒さ対策をしていれば戸外に植えたままで越冬します。 しかし、凍結すると枯れることがあるため、寒冷地では球根を掘り上げて翌年の植え付け適期まで貯蔵しておくと万全です。秋が深まって地上部の茎葉が枯れ込んだら、地上部を刈り取って球根を掘り上げます。段ボールや発泡スチロールなどにおがくずなどを入れて球根を埋め込み、翌年まで貯蔵しましょう。球根が乾燥すると枯れることがあるので注意。掘り上げたくない場合は、20〜30cmほど盛り土しておくと、凍結を防ぐことができます。 増やし方 Kunlanan Yarist/Shutterstock.com クロコスミアは、一般的には株分けで増やすほか、種まきでも増やすことができます。 【株分け】 クロコスミアは球根が増えやすく大株になるので、掘り上げて球根を切り分け、増やすことができます。適期は3〜4月です。あまり小分けにせず、2〜3芽つけて切り分けます。株分けのメリットは、親株と同じ花が咲くクローンを増やせることです。 【種まき】 クロコスミアは、開花した後につけた種子を採取し、種まきして増やすことができます。そろそろ開花期が終わる頃になったら花がら摘みをやめて結実させ、完熟したら種子を採ります。採取した種子は、黒ポットに草花用の培養土を入れ、2〜3粒ずつ播きます。発芽して本葉が出た頃に、勢いがあってがっしりと締まった苗を1本残し、ほかの弱々しい苗は間引きましょう。黒ポットに根が回るほどに生育したら、目的の場所に定植します。花が咲くまでは、3年くらいかかります。園芸品種の場合は、親株と同じ花が咲くとは限りません。 クロコスミアの栽培上の注意点 Alex M Orr/Shutterstock.com クロコスミアは強健で育てやすい一方で、種類によっては非常に繁殖力が強く、野生化しやすいという報告が見られます。佐賀県では自然植生への影響を及ぼす可能性があるとして、「佐賀県環境の保全と創造に関する条例」によりクロコスミア類の栽培や持ち込みが制限されているので、注意してください。地植えした際に、あまりに増えすぎるようであれば、地中にトタン板を埋め込むなどして範囲を限定し、株が大きくなったら株分けして小さくするなどの工夫をしましょう。 クロコスミアで夏の庭に彩りを与えよう surotbar/Shutterstock.com クロコスミアは強健な性質で、植えっ放しにして手をかけずとも毎年夏に鮮やかな花を咲かせてくれます。暑さに負けずに一つの花茎に多数の花を連ねるので、夏の庭をカラフル彩るのにおすすめ。ぜひ庭やベランダに迎え入れてみてください。