クロコスミアの育て方完全ガイド|放置でも咲く! 初心者向けおすすめ品種もご紹介

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夏の暑さに強く、放っておいても毎年咲いてくれる「クロコスミア」。初心者でも失敗しづらく、花壇やベランダにビビッドな彩りを与えてくれる注目の球根植物です。本記事では、クロコスミアの特徴や正しい育て方、おすすめの人気品種、植えっぱなしでもOKな管理術まで、分かりやすく解説します。園芸ビギナーも必見です!
目次
クロコスミアの基本情報

植物名:クロコスミア
学名:Crocosmia
英名:Crocosmia、Montbretia、Coppertips
和名:ヒメヒオウギズイセン(姫檜扇水仙)
その他の名前:モントブレチア
科名:アヤメ科
属名:クロコスミア属
原産地:南アフリカ
形態:宿根草(多年草)
クロコスミアの学名はCrocosmia。アヤメ科クロコスミア属の球根植物で、原産地は南アフリカ。別名にモントブレチア、ヒメヒオウギズイセンがあります。モントブレチアという別名は、以前に分類されていた属名がモントブレチアだったためで、今でもその名前で呼ばれることがありますが、次第に移行してきています。
暑さに強く寒さをやや苦手とする傾向にあり、強健な性質で増えやすく、野生化することも多いようです。自生地では7種が分布しており、日本でよく流通しているのは、クロコスミア・オーレア(C.aurea)、クロコスミア・ポトシー(C.pottsii)、この2種を交配して生まれたクロコスミア・クロコスミフローラ(Crocosmia ×crocosmiiflora)などです。このほかにも人の手によって作出された園芸品種が多く出回っています。
クロコスミアは春植え夏咲きの球根植物で、晩秋になると地上部を枯らして休眠します。越年してまた生育期を迎えると再び新芽を出すライフサイクルを繰り返し、一度植え付ければ毎年の開花を楽しめる、息の長い植物です。草丈は品種によって異なり、40〜150cmと幅があります。花壇の中段〜高段向きです。
ハチドリが好む花としても知られるクロコスミア。BlackBoxGuild/Shutterstock.com
クロコスミアの花や葉の特徴

園芸分類:草花
開花時期:6〜8月
草丈・樹高:40〜150cm
耐寒性:弱い
耐暑性:強い
花色:赤、オレンジ、黄、複色
クロコスミアの開花期は、6〜8月で、花色は赤、オレンジ、黄色、複色などがあります。花茎を長く伸ばした先に、下から咲き上がって20輪前後の花を咲かせます。花径は3〜6cmほどです。葉は剣状で細長く、地際から放射状に伸ばします。
クロコスミアの名前の由来や花言葉

クロコスミアは、学名がそのまま流通名になっています。「Crocosmia」は、ギリシャ語でサフランの意の「Kroko」と香りを意味する「osme」から来ています。花を乾燥させてから湯に入れると、サフランのような香りがすることに由来するそうです。別名のモントブレチアは、フランス人の植物学者に由来するもの。和名のヒメヒオウギズイセンは、花姿をヒオウギとスイセンになぞらえた名前で、少し小さめなので名前の頭に「姫」がついています。
クロコスミアの花言葉は、「楽しい思い出」「謙譲の美」「陽気」など。いずれも鮮やかな花姿を表したもので、「謙譲の美」はうつむくように咲くことに由来しています。
クロコスミアの和名の由来になったヒオウギとスイセンはどのような花?
クロコスミアの和名はヒメヒオウギズイセン。この由来となったヒオウギとスイセンの2つの花はどんな花なのか見てみましょう。
ヒオウギ

ヒオウギはアヤメ科ヒオウギ属(ベラムカンダ属)の落葉性多年草です。原産地は日本、朝鮮半島、中国、インドで、暑さや寒さに強い性質を持っています。開花期は7〜8月で、花色はオレンジ、黄色、ピンク、紫、赤など。剣状の長い葉を重ねるように扇状になる姿から、宮中で貴人が用いた木製の「檜扇」に似ているとして名付けられました。花径は5〜6cmほどの6弁花で、そばかすのような斑点が見られます。草丈は40〜100cmほど。
スイセン

スイセンはヒガンバナ科スイセン属の球根植物です。原産地はイベリア半島を中心とした地中海沿岸で、寒さに強い性質を持っています。開花期は11月中旬〜4月で、花色は白、オレンジ、黄色、複色など。花は筒状の副冠と花弁、萼片で構成されており、クロコスミアには似ていません。人気の高い花だけに品種が豊富で、花色や花姿は多様です。草丈は10〜50cmほど。
クロコスミアの主な品種

クロコスミアは、300種以上の園芸品種があるとされています。日本で流通している主な品種をいくつかご紹介します。
クロコスミア・クロコスミフローラ

クロコスミア・オーレアとクロコスミア・ポトシーの交雑種で、クロコスミアの和名であるヒメヒオウギズイセンは主にこの品種を指します。野生化した状態のものが各地で見られ、日本では広く普及している品種です。朱赤や濃いオレンジの花を咲かせます。
‘ルシファー’

鮮明な深紅の花色が美しく、人気の高い園芸品種。草丈1m以上になる大型種。
‘コンスタンス’
鮮やかなオレンジ色の花を咲かせる園芸品種。草丈は80~90cmほど。
‘コロンブス’

大輪で発色のよい山吹色の花が美しい。草丈50〜70cm。
‘ノーウィッチキャナリ’

花つきがよく、小さめの黄色い花を多数咲かせる品種。草丈60cm程度の小型種。

クロコスミアの栽培12カ月カレンダー
開花時期:6〜8月
植え付け・植え替え:3〜4月
肥料:4月頃(鉢植え)
クロコスミアの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】クロコスミアは日当たりがよく、風通しのよい場所を好みます。半日陰の環境でも育ちますが、極端に日当たりの悪い場所では花つきが悪くなるので、避けてください。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】水はけ、水もちのバランスがよい土壌を好みます。植え付け前に有機質肥料などを施して土づくりをしておきましょう。
耐寒性・耐暑性
暑さには強く、放任しても元気に咲きます。寒さにはやや弱く、暖地なら地植えのままで越冬できますが、霜が降りないまたは霜柱ができない場所が越冬条件です。戸外で越冬させる場合は株元に寒さ対策としてバークチップなどをまいてマルチングをしておきます。凍ると枯れることがあるので、寒冷地では球根を掘り上げて貯蔵しておきましょう。
クロコスミアの育て方のポイント
用土

【地植え】
植え付ける1〜2週間前に、腐葉土や堆肥などの有機質資材と元肥として緩効性化成肥料を植え場所に投入し、深くまで耕してふかふかの土をつくっておきましょう。土に土壌改良資材や肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
草花の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。
水やり
株が蒸れるのを防ぐために、茎葉株全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。真夏は気温が高い昼間に水やりすると、水がすぐにぬるま湯になって株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。
【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、ひどく乾燥させないように水の管理をしましょう。根付いた後は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。成長期を迎えてぐんぐん茎葉を広げ、多数のつぼみが上がってくるようになると、水を欲しがるようになります。気候や株の状態に適した水やりを心がけましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。
肥料

【地植え】
あまり多肥を好まない性質で、肥料を施すとかえって軟弱になったり、葉が茂りすぎて倒れやすくなったりするので、追肥は不要です。ただし、株に勢いがなく葉色が冴えないようであれば、速効性の液肥を与えて様子をみるとよいでしょう。
【鉢植え】
越年した後、毎年4月頃に緩効性肥料を少量与えます。
注意する病害虫

【病気】
クロコスミアの栽培では、病気の心配はほとんどありません。
【害虫】
クロコスミアに発生しやすい害虫は、ハダニなどです。
ハダニは、葉裏に寄生して吸汁する害虫です。体長は0.5mmほどと大変小さく、黄緑色や茶色い姿をしています。名前に「ダニ」がつきますが、クモの仲間です。高温で乾燥した環境を好み、梅雨明け以降に大発生しやすいので注意が必要。繁殖力が強く、被害が大きくなると、葉にクモの巣のような網が発生することもあります。ハダニは湿気を嫌うため、予防として高温乾燥期に葉裏にスプレーやシャワーなどで水をかけておくとよいでしょう。
植え付け・植え替え

クロコスミアの植え付け適期は、3〜4月です。市販されている球根を植え付けます。開花期に出回る花の咲いた鉢植えを植え付けても構いません。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、5〜6cmほどの土をかぶせられるように球根の大きさに合わせて穴を掘って植え付けます。複数植える場合は、間隔は30cmほど取っておきましょう。
地植えの場合は植え替えの必要はなく、放任しても毎年開花を楽しめます。数年経って株が込み合ってきたら、植え付け適期に掘り上げて株分けして植え直しましょう。
【鉢植え】
7号鉢に8〜10球を目安に植え付けます。鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を8割くらいまで入れましょう。土は鉢内までしっかり行き渡るように鉢底をコンコンと打ち付けながら土を落ち着かせ、しっかりと培養土を入れ込みます。4〜5cmほどの土をかぶせられるように、球根の大きさに合わせて植え穴を掘って植え付けましょう。また、水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3㎝下を目安にし、ウォータースペースを取っておきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
クロコスミアは数年植えたままにしても構いません。しかし大株に生育して込み合ってきたら植え付け適期に掘り上げ、株分けして植え直しましょう。
日常のお手入れ

【花がら摘み】
次々に花が咲くので、終わった花は早めに摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも終わった花を残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
【冬越し】
寒くなると地上部が枯れ込むので、地際で刈り込みましょう。暖地では敷きワラやバークチップなどなどを施してマルチングし、寒さ対策をしていれば戸外に植えたままで越冬します。
しかし、凍結すると枯れることがあるため、寒冷地では球根を掘り上げて翌年の植え付け適期まで貯蔵しておくと万全です。秋が深まって地上部の茎葉が枯れ込んだら、地上部を刈り取って球根を掘り上げます。段ボールや発泡スチロールなどにおがくずなどを入れて球根を埋め込み、翌年まで貯蔵しましょう。球根が乾燥すると枯れることがあるので注意。掘り上げたくない場合は、20〜30cmほど盛り土しておくと、凍結を防ぐことができます。
増やし方

クロコスミアは、一般的には株分けで増やすほか、種まきでも増やすことができます。
【株分け】
クロコスミアは球根が増えやすく大株になるので、掘り上げて球根を切り分け、増やすことができます。適期は3〜4月です。あまり小分けにせず、2〜3芽つけて切り分けます。株分けのメリットは、親株と同じ花が咲くクローンを増やせることです。
【種まき】
クロコスミアは、開花した後につけた種子を採取し、種まきして増やすことができます。そろそろ開花期が終わる頃になったら花がら摘みをやめて結実させ、完熟したら種子を採ります。採取した種子は、黒ポットに草花用の培養土を入れ、2〜3粒ずつ播きます。発芽して本葉が出た頃に、勢いがあってがっしりと締まった苗を1本残し、ほかの弱々しい苗は間引きましょう。黒ポットに根が回るほどに生育したら、目的の場所に定植します。花が咲くまでは、3年くらいかかります。園芸品種の場合は、親株と同じ花が咲くとは限りません。
クロコスミアの栽培上の注意点

クロコスミアは強健で育てやすい一方で、種類によっては非常に繁殖力が強く、野生化しやすいという報告が見られます。佐賀県では自然植生への影響を及ぼす可能性があるとして、「佐賀県環境の保全と創造に関する条例」によりクロコスミア類の栽培や持ち込みが制限されているので、注意してください。地植えした際に、あまりに増えすぎるようであれば、地中にトタン板を埋め込むなどして範囲を限定し、株が大きくなったら株分けして小さくするなどの工夫をしましょう。
クロコスミアで夏の庭に彩りを与えよう

クロコスミアは強健な性質で、植えっ放しにして手をかけずとも毎年夏に鮮やかな花を咲かせてくれます。暑さに負けずに一つの花茎に多数の花を連ねるので、夏の庭をカラフル彩るのにおすすめ。ぜひ庭やベランダに迎え入れてみてください。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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