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ガーデン&テラス・バルコニーを彩るカラーテーマ【レッド&グリーン編】

ガーデン&テラス・バルコニーを彩るカラーテーマ【レッド&グリーン編】

Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

ガーデンの大切な要素の一つが、色彩です。植物の色は本当に幅広く、花はもちろん葉や茎もじっくり見るととてもカラフル。色彩を意識したガーデン作りには、テーマカラーを決めるのもおすすめです。ここでは、ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんに、テーマカラーにおすすめの植物を紹介していただきます。第1弾となる今回は、落ち着きのあるグリーンと、エネルギー溢れる生き生きとしたレッドがテーマです。

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ガーデンで楽しむ色合わせ

カラフルな花
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

色の組み合わせを考えるのは、とても楽しい時間です。色彩はセンスを刺激するほか、人をハッピーな気分にさせたり寂しくさせたりするなど、さまざまなパワーがあります。先日までドイツで長期間にわたるロックダウンを経験したことにより、形や色彩は私にとってさらに大切なものになりました。そこで今回は、ガーデンのいろいろな色彩と、色彩演出におすすめの植物についてご紹介したいと思います。今回は、心を落ち着かせてくれるグリーンと、生命力あふれるレッドの2色をテーマにお届けします。

心安らぐグリーンの色彩

リンデンの葉
Oleksandr Filatov/Shutterstock.com

ロックダウン期間中は、外出して人と会う機会がほとんどなかったので、自然と意識がほかのところへ向かい、忙しい時には見過ごしていたような、ちょっとした周囲のことに気づくようになりました。私の場合、特に感動を覚えたのが木々の新芽、若葉の美しさ。特に美しいと思うのは、ドイツではよく見かけるリンデンの若葉です。明るく優しい緑色は、目も心も癒やしてくれますし、手で触れてみても心地よいですよ。

勢いよく新芽が成長し始めた牧場は、まるで緑のカーペットが辺り一面敷かれているかのよう。若草色の小麦と大麦の畑も緑の牧草地のように見えます。もっとも、播種された畑はとてもまっすぐに緑が並び、きれいなラインの間に少しスペースが残っているだけという特徴があるので、花畑や野原との区別はすぐにつきますが。

緑の色彩をもたらす芝生の庭

芝生の庭
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / NouN

今回グリーンの庭としてご紹介したいのが、芝生の庭。ドイツでは芝生がとても人気で、庭主たちはみな、この緑の区画をきれいに保つために忙しく働いています。ガーデンセンターでは、芝刈り機やエッジカッター、芝用の肥料や除草剤といった芝生を管理するグッズが並ぶコーナーが大人気。土壌に空気を入れるエアレーションに使うための専用フォークなんかもありますよ。

芝生の管理は手がかかります。きれいな緑に保つには水やりと肥料が欠かせませんし、芝が剥げてしまった箇所は改めて種まきをし、また育てなければなりません。そして夏の間は、少なくとも週に1回は芝刈りが必要です。私の近所では土曜日の午後を芝刈りデーとしている人が多く、どこかで芝刈り機の音がやんだと思えば、ほかのところで始まるといった具合でした。もっと大きなスペースの場合、トラクターを使って芝刈りをしている人もいましたね。今までのところ、日本ではそこまで大きな芝生の庭は見たことがありません。

芝生の庭
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Didillon, Frédéric

このようなヨーロッパの芝文化に比べ、日本では芝生のスペースや、青々とよく管理された芝生の庭は少ないように感じます。

先日友人の家にお邪魔したところ、フロントヤードがガラリと変わっていてビックリしたことがあります。以前は黒いシートで覆われていて、周囲にいくらか木やハーブが植わっているだけだったのですが、シートが敷かれていた部分には青々とした芝生が美しく広がり、思わず目を疑うほど劇的に変わっていたのです! よくよく見て、そして手で触れて、初めてそれが人工芝だということに気が付きました。品質もよく、柔らかい触感でしたよ。

最近は人工芝もとてもリアルで高品質になってきたので、ひょっとするとこういう芝生のほうが取り入れやすいガーデナーさんもいるかもしれません。私も人工芝の導入を検討中です。我が家は土質が砂地で芝生を育てるのが難しく、土をすべて入れ替えるのはコストがかかりすぎますからね。

友人宅のフロントヤードは、人工芝のおかげでクリーンな印象の素敵な緑の空間に変わっていました。ガーデンに緑のスペースを作る手段の一つとして、芝生や人工芝はとても効果的な要素になりますよ。

エネルギーにあふれたレッドガーデン

レッドガーデン
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

続いて赤色の植物について見ていきましょう。先日、緑の庭を持つある友人に植物を贈ろうと思ったとき、思い描いたのが赤色のもの。例えば、半日陰の庭に向く赤いインパチェンスを、彼女の庭の茂みの隙間に置けば、緑と赤の素晴らしいコントラストを描いてくれるでしょう! 庭のスペースには余裕がありそうなので、カシスやラズベリーなどのベリー系の樹木もいいかもしれません。

インパチェンスのいいところは、よい土に植えて水と肥料を切らさなければ、夏中花が続くこと。また、ジニアも夏によく咲いてくれる実感があります。小花が咲く種類は優しげながらも印象的。ピンクや黄色など本当にたくさんの花色が販売されています。赤色のジニアをワイヤープランツと合わせれば、緑と赤の素敵な組み合わせになりますよ。

アイビーゼラニウム
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

夏に咲く赤い花といえば、ゼラニウム、サルビア、ベゴニア・センパフローレンス。もちろん、バーベナも忘れてはいけません。ハンギングタイプのアイビーゼラニウム(ペラルゴニウム・ペルタツム)は、ドイツの自宅のバルコニーで毎年欠かせない花です。ビビッドな赤は、艶のある暗い緑色の葉と好対照。

ゼラニウム栽培の難点は風で、花茎が弱く簡単に折れてしまいます。花弁も風で散らされて飛んでいくので、お隣さんがすぐそばの場合、散った花弁で迷惑をかけるかもしれません。そのため、風が直接当たらない場所で育てるとよいでしょう。

レッドボーダーガーデン
クロコスミア、ペンステモン、キンギョソウで作るレッドボーダー。Gardens by Design/Shutterstock.com

これらの一年草のほか、赤い大型のユリやクロコスミア(ヒメヒオウギズイセン)など、アイキャッチャーとなるような球根植物もあります。鉢植えにすれば、花壇に一時的に入れ込んだり、玄関に置くこともできます。花が終わった後には日陰の涼しい場所に移し、翌年の花のためのエネルギーを蓄えさせましょう。

種類も多く使いやすいのは、赤色の花を咲かせる宿根草。日陰のエリアにはアスチルベがよく似合います。もう少し日当たりのよい場所にはアキレアやペンステモン、ガイラルディアがおすすめ。赤いアキレアはカッティングフラワーやドライフラワーとしても使いやすい花です。ペンステモンは切り戻しをすれば何度も返り咲いてくれます。だんだん花は小さくなりますが、それでも綺麗ですよ。

ここまでにご紹介した宿根草は、どれも草丈30~40cmほど。ミックスボーダー花壇にもピッタリです。鉢植えにするなら、濃い緑色のアイビーなどの這い性植物や、コンパクトに育つグラス類などのグリーンと合わせてもいいですね。ほかに可愛い花を咲かせるタバコソウも人気。先端が灰に覆われたタバコのように見える特徴的な花姿です。

タバコソウ
タバコソウ。Nahhana/Shutterstock.com

野菜を使ったカラフルガーデニング

野菜のガーデン
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

赤や緑のカラーガーデンは、野菜を使っても簡単に作ることができます。野菜はすべて食べきらなくちゃとか、畑や大きな庭でしか栽培できないなどと思い込んでいませんか? 赤色の野菜をガーデンプランツの一種ととらえ、オーナメンタルプランツや一年草と一緒に植えれば、面白く効果的な組み合わせになりますよ。例えば、まっすぐで太く美しい赤い茎を持つ、ビーツやスイスチャードを取り入れてみるのはどうでしょう。花壇やコンテナに植えれば、造形的にも美しいですし、もちろん食べることもできます。赤ジソも簡単に育てられますし、葉を収穫した後には生きたトレリスとしてほかの植物を絡ませることもできます。野菜だからといって、収穫が終わったらすぐ抜いてしまうのではなく、別の視点で利用する方法を考えてみるのも楽しいですよ。

スイスチャード
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

昨年、私は可愛い日本のサクランボを庭に植えたのですが、残念ながらうまく育たず枯れてしまいました。すでに2mほどに成長していたので、枯れてしまったことはショックでしたが、今では枯れ木がもっと小さな植物のための風よけとなっています。いずれこの枯れた木を自然のトレリスとして、つる性のマメの支柱に使おうかなと画策しています。このように、収穫後や枯れた後までアイデア次第で活用できるのもガーデニングの楽しみです。

赤い実がなる野菜たち

いろいろなトウガラシ
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

レッド&グリーンガーデンには、さまざまな大きさや形のトマトをプラスするのもいいアクセントになってくれそう。私は玄関の扉の前でトマトを育てているのですが、ここに置くと、毎日赤い果実とその成長の過程を楽しむことができるので、なかなかおすすめ。人が出入りする玄関なら、野鳥も実をついばむのを遠慮して、この緑と赤の可愛い一角を残してくれるのではないかという期待もしています。

ほかに赤い実がなる野菜といえば、パプリカやいろいろな種類のトウガラシ。長いもの、短いもの、真ん丸のもの、小さいものから驚くほど長いものまでさまざまです。目にも楽しいですし、観賞期間が長いのも嬉しいですね。我が家には数年前に収穫して乾燥させたものがまだ吊してあり、次第に色褪せてきています。トウガラシは大量に食べることはないかもしれませんが、いろいろな使い道がありますよ。スパイシーな食事が好きな友人にプレゼントしたり、もちろん自分で料理に使ったり、乾燥させて保存用にしたり、クラフトに使ったり。果実の赤と葉の緑を花壇の彩り用に利用するのもいいと思います。

トウガラシ
Juninatt/Shutterstock.com

トウガラシといえば、こんな思い出があります。2年ほど前、友人が連絡をくれた時に、トウガラシの育て方についても訊かれたのです。とても忙しい人で、植物の栽培にはさほど興味がなさそうだったので、どうしたのかと不思議に思っていました。なので、しばらく経ってからそのトウガラシは彼女が育てているのではなく、ヨーロッパで一人暮らしをしている息子さんが育てているものだと聞いて合点がいきました。

その後息子さんは、大きな鉢に入れられて30cmほどまで立派に成長したトウガラシの写真を送ってくれました。初めて彼一人で育てた植物で、友人からの贈り物だったそうです。とても丁寧に管理していたので、ほとんど一年中この一つの株から収穫できるほどでした。植物が、こんなに人を幸せにしてくれるのだということに改めて気づかされた出来事でした。

なので、ちょっとリスクを取って、積極的に鉢花や野菜苗を贈り物にしてみてはいかがでしょうか? 植物がすでに大きく成長した立派な状態で、もうじき収穫も楽しめるくらいのものがいいかもしれませんね。

レッド&グリーンの庭カラー

レッド&グリーンガーデン
IrynaL/Shutterstock.com

読み返してみると、赤い植物についての話が多くなってしまいました。緑色の植物はどこにでもあるので、意識的に探すのは、ついつい赤い植物になってしまうのです。

探そうと思うと、意外と赤い色彩の植物はそれほど見つけられません。虫たちが訪れ、ミツバチが蜜を集めるような花は、いったいどこに隠れているのでしょうか。そんな中で目につくのは、遅咲きのバラや、赤いインパチェンスなどです。

この季節に目に入る庭景色の多くは緑色。グリーンは庭の基本的な色とはいえ、個人的には緑ばかりの景色は落ち着きすぎて、ちょっと退屈に感じてしまいます。なので、庭やベランダ、ベルコニーに赤色も取り入れて、ダイナミックさとエネルギーも呼び込んでみましょう。鬱陶しい梅雨の時期を乗り切る助けになるかもしれませんよ!

Credit

ストーリー/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood

取材/3and garden 

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