【決定版】ヒオウギの育て方|夏は華やかオレンジの花、秋冬は“ぬばたま”の黒い実も楽しめる!
Cynthia Shirk/Shutterstock.com
暑い夏に鮮やかなオレンジ色の花を咲かせ、秋から冬には艶やかな黒い実“ぬばたま”を実らせるヒオウギ(檜扇)。風情ある花姿と丈夫な性質で、庭づくり初心者から園芸上級者まで人気の多年草です。一度植えれば毎年開花するうえ、育て方も簡単! この記事では、ヒオウギの魅力や育て方、増やし方まで、初心者にも分かりやすく徹底解説します。
目次
ヒオウギの基本情報

植物名:ヒオウギ
学名:Iris domestica
英名:Blackberry Lily、Leopard flower
和名:ヒオウギ(檜扇)
その他の名前:カラスオウギ
科名:アヤメ科
属名:アヤメ属
原産地:東アジア
形態:宿根草(多年草)
ヒオウギはアヤメ科アヤメ属の多年草です。学名はIris Domestica(イリス・ドメスティカ)。以前はBelamcanda chinensis(ベラムカンダ・シネンシス)という学名でヒオウギ属に分類されていましたが、21世紀に入ってDNA解析が進みアヤメ属に編入され、それに伴い学名も変更されました。北アメリカでは帰化植物となって野生化しており、黒い実をつけることから「ブラックベリー・リリー」と呼ばれています。
ヒオウギの原産地は日本、朝鮮半島、中国、インドなどの東アジア。暑さや寒さに強く、昔から山野の草地や海岸に自生してきた植物のため、放任してもよく育ちます。草丈は40~100cmほどで、花壇の中段〜後段に向いています。多年草のため、一度植え付ければ毎年開花する植物ですが、冬は落葉して休眠します。
開花のタイムラプス。ヒオウギは午前中に咲いて夕方にはしぼむ一日花。Ismagination/Shutterstock.com
ヒオウギの花や葉、実の特徴

ヒオウギの開花期は7〜8月。花色はオレンジ、黄、ピンク、紫、赤などで、5〜6cm前後の花を咲かせます。午前中に咲いて夕方にはしぼむ一日花ですが、花が少ない夏の間に次々と咲き続けて庭を彩ってくれます。花茎をのばして花を連ねる姿は凛として美しく、古くから庭植えにするほか生け花の素材としても親しまれてきました。
開花が終わると袋状の大きなさやができ、それが熟すと割れて、中から5mmくらいの艶やかな黒い種子が出てきます。しばらくは落ちずにそのまま残るため、シードヘッドとして楽しめるほか、花材としても利用できます。

ヒオウギの名前の由来と花言葉

ヒオウギを漢字で書くと「檜扇」で、葉が長く扇状に広がり、宮廷人が持つ檜扇に似ていることに由来。桧扇、日扇と書くこともあります。また「烏扇(からすおうぎ)」とも呼ばれています。ちなみに、真っ黒なヒオウギの種子のことを「ぬばたま(射干玉)」と呼び、万葉集では黒髪や夜など、黒をイメージさせる言葉にかかる枕詞になっています。
ヒオウギの代表的な種類

赤い花を咲かせるものはベニヒオウギ、黄色い花を咲かせるものはキヒオウギと呼ばれています。園芸においてヒオウギとして主に流通しているのは変種とされるダルマヒオウギで、草丈が低く、コンパクトにまとまるのが特徴です。園芸品種には黄色い花を咲かせる‘ゴーンウィズザウインド’や、オレンジの花に紅色の斑点が入る‘緋竜’(ひりゅう)、ダルマヒオウギの品種で紫花の‘ブルーサファイア’などがあります。
ヒオウギは鉢植え・地植えのどちらでも育てられる

ヒオウギは強健な性質で放任してもよく育ち、鉢植えにしても地植えにしてもかまいません。地植えにした場合は、数年は植えっぱなしにしてもよいのですが、込み合いすぎると生育が衰えてくるので、掘り上げて数芽ずつつけて株分けして植え直しましょう。鉢植えの場合は根詰まりしやすいので毎年植え替えます。種まきして育てることもできますが、開花までは数年かかるので、ホームセンターや花苗店で苗を購入してスタートするのが手軽です。
ヒオウギの栽培12カ月カレンダー
開花時期:7〜8月
植え付け・植え替え:4〜5月、9~10月
肥料:4〜5月、10月頃
種まき:4月頃、10月頃
ヒオウギの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たりがよく、風通しのよい場所を好みます。日当たりの悪い場所は花つきが悪くなるので、避けてください。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】根付いた後は乾燥に強く、多湿を嫌います。水はけと水もちのよい土壌で育てましょう。
耐寒性・耐暑性
暑さや寒さに強く、真夏でも元気に咲き、戸外で越冬できます。
ヒオウギの育て方のポイント
用土

【地植え】
植え付ける1〜2週間前に、腐葉土や堆肥などの有機質資材と緩効性化成肥料を植え場所に投入し、よく耕してふかふかの土をつくっておきましょう。土に土壌改良資材や肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【地植え】
草花の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。
水やり

株が蒸れるのを防ぐために、茎葉株全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると、水がすぐにぬるま湯になって株が弱ってしまうので、朝か夕の涼しい時間帯に与えることが大切です。
また、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、ひどく乾燥させないように水の管理をしましょう。根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。成長期を迎えてぐんぐん茎葉を広げ、多数のつぼみが上がってくるようになると、水を欲しがるようになります。気候や株の状態に適した水やりを心がけましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。
肥料

【地植え】
4月〜5月中旬と10月に効性化成肥料を株元からやや離した場所にばらまき、軽く耕して土になじませます。
【鉢植え】
4〜7月と10月に、月に1度を目安に効性化成肥料を株元からやや離した場所にばらまき、軽く耕して土になじませます。もしくは、10日に1度を目安に液体肥料を与えてもよいでしょう。
注意する病害虫

【病気】
ヒオウギは育てやすい草花ですが、病気が発生することがあります。ここではかかりやすい病気についてご案内します。
軟腐病
軟腐病は細菌性の病気で、高温時に発生しやすくなります。特に梅雨明けから真夏が要注意。
球根や成長点近くの茎、地際の部分や根が腐って悪臭を放つので、発症したのを見つけたら、周囲に蔓延しないようにただちに抜き取り、周囲の土ごと処分してください。水はけをよくしていつもジメジメとした環境にしないことが予防につながります。また、害虫に食害されて傷ついた部分から病原菌が侵入しやすくなるので、害虫からしっかり守ることもポイントにです。
さび病
さび病は、かびによる伝染性の病気です。葉にくすんだオレンジ色で楕円形の斑点が現れます。この斑点は、やや細長くイボ状に突起するのが特徴です。症状が進むと斑点が破れ、中から粉のように細かい胞子を飛ばします。発症すると株が弱り、枯死することもあるので注意。発病した葉は見つけ次第切り取って処分し、適用する薬剤を散布して防除します。
【害虫】
ヒオウギの栽培では、害虫の心配はほとんどありませんが、ナメクジやアブラムシがつくこともあります。
ヒオウギの詳しい育て方
苗の選び方
苗を選ぶ際は、がっしりと締まって勢いがあるものを選びましょう。ヒョロヒョロと間伸びしていたり、下葉が黄色くなっているものは避けたほうが無難です。
植え付け・植え替え

ヒオウギの植え付け適期は、十分気温が上がって遅霜の心配がなくなる4〜5月、または9~10月です。苗はホームセンターや花苗店で入手できます。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に苗よりもひと回り大きな穴を掘って植えつけます。苗をポットから出したら根鉢をやや崩して植えましょう。複数の苗を植え付ける場合は、草丈に応じて20〜40cmの間隔を取ってください。最後に、たっぷりと水やりします。
多年草のため、数年は植えっぱなしにしてもいいのですが、大株に育って込み合ってきたら掘り上げて株分けし、植え直して若返りを図るとよいでしょう。
【鉢植え】
7〜8号鉢に1株を目安に植え付けます。
用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。苗を鉢に仮置きし、高さを決めたら、苗をポットから出して根鉢を軽くくずして植え付けましょう。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
鉢植えの場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して根鉢をくずし、新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢をくずす程度にして植え替えてください。
日頃の管理

【花がら摘み】
次から次へと花が咲くので、終わった花は早めに摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも終わった花を残しておくと、種子をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
【マルチング】
真夏の高温期は乾燥しやすくなるので、株元にバークチップなどを施してマルチングをしておきましょう。
増やし方

ヒオウギは、株分け、種まき、挿し芽で増やすことが可能です。ここでは、それぞれの方法について解説します。
【株分け】
ヒオウギの株分け適期は10月頃です。
株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りを図ります。株を掘り上げて根を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、同じ姿の株が増えていくというわけです。
【種まき】
ヒオウギの種まき適期は、4月頃か10月頃です。種まき用のセルトレイに市販の草花用培養土を入れて種をまき、薄く覆土してください。種が流れ出すことがないように、トレイより一回り大きな容器に浅く水を張り、トレイを入れて底面から吸水させます。発芽までは半日陰の場所に置いて、乾燥しないように管理しましょう。
発芽後は日当たりがよく、風通しのよい場所へ移動しましょう。本葉が2〜3枚出始めたら、黒ポットに植え替えて育苗します。10日に1度を目安に、液肥を与えると生育がよくなります。根がよく張ってしっかりした株に育ったら、植えたい場所に定植しましょう。開花までは2〜3年要します。
【挿し芽】
挿し芽とは、茎葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。ヒオウギの挿し芽はやや成功率が低いとされ、株分けや種まきで増やすのが一般的です。
ヒオウギの挿し芽の適期は、花後すぐの9月頃です。新しく伸びた茎葉を3節つけて切り口が斜めになるように切り取ります。採取した茎葉(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、水の吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を2〜3枚取ります。黒ポットを用意して新しい培養土を入れ、水を入れて十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。成長して根が回ってきたら植えたい場所へ定植しましょう。挿し芽のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
ヒオウギの庭での生かし方

ヒオウギは草丈が40〜100cmになるので、花壇に植える際は中段〜後段が向いています。旺盛に茂るので、密植せずにある程度株幅を取っておきましょう。群植すると、ダイナミックな咲き姿を楽しめます。一方で楚々とした花姿は和の庭にもよく似合い、アクセントとして目を引くポイントに入れても素敵です。黒い実をつける姿も愛らしいので、開花期後半からは花がら摘みをやめて、秋からはシードヘッドを楽しむのもおすすめです。
日本に自生するヒオウギで庭に彩りを加えよう

花茎を立ち上げて次々と花を連ねて咲かせるヒオウギは、素朴な風情で和洋を問わず庭に彩りを与えてくれる草花です。鮮やかな花や艶やかな実の美しさはもちろん、ビギナーにも育てやすく、多年草で一度植え付ければ毎年開花を楽しめるコストパフォーマンスのよさも魅力なヒオウギを、ぜひ庭で身近に育ててみてください。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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