寒い冬も心は温かく! ドイツのクリスマスライティング&プレゼント事情をご紹介
冬は、クリスマスやお正月など一年でも特別な時間も多く、この季節ならではの楽しみもたくさん! また、ガーデナーにとっては静かに翌年の春を待つ、庭の一休みの時間でもありますね。今回はそんな冬季期間の楽しみについて、ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんが、滞在中のドイツからレポート。ドイツで出会ったこの季節ならではのデコレーションやギフトアイデアをお届けします。
目次
寒い冬の日々
寒く、暗く、冷たい風が吹き付け、ツバキ以外にはほとんど花も咲かないような、凍える冬。庭仕事もそれほどやることはありません。そう聞くと、なんだか冬は楽しみがほとんどないかのように思えるかもしれませんが、そんなことはありません! どんな気候でも、いろいろなことや小さな不思議を改めて認識するだけで、寒い冬も楽しい季節になりますよ。
日本では、冬の庭というと、どちらかといえばネガティブなキーワードが浮かぶような気がします。そこで、そうしたネガティブなことをポジティブに変えるよう、毎年新たに挑戦を続けています。子どもの頃、冬は大好きな季節でしたし、冬やクリスマス時期にしかできない楽しいことを忘れないようにしたいものです。
窓ガラスについた雪の結晶、氷に覆われて青空に輝く木々の枝、森の奥から伸びて庭の近くまで続くウサギやシカ、リス、鳥など動物の足跡……時には隣家の猫の足跡も加わります。気温がマイナス5℃を下回る頃には、雪の音が静かに響き、水たまりは凍り付いて、まるで小さなスケートリンクのようです。
こうした思い出を風化させないため、ヨーロッパ、特に母国ドイツを、冬も訪れることにしています。この冬も、冬の特別な瞬間を味わいに、ドイツで過ごすことにしました。
冬のドイツへ
今回ドイツへ行く際に乗ったのは夜行便。東京を真夜中少し前に出発し、その後15時間は日の光を見ることのない移動となりました。飛行機に乗って14時間以上のフライト中はずっと暗く、直行便だったのも幸いしてリラックスできました。夜間の移動なので睡眠もとりやすかったですし、空席もあって足も伸ばしやすかったのもよかったです。このように見方を変えれば、暗闇でさえもメリットになるのです。そして夜行便の利点がもう1つ。着陸の際に、真っ暗な中に浮かび上がる空港のまばゆいライトも、とてもワクワクさせてくれました。
寒いドイツに到着すると、気候とは正反対に友人たちの歓迎は温かいもので、空港で花のブーケで迎えてくれました。生花のプレゼントはとても嬉しいものです。昼が短い季節には、もっと生き生きとしたフレッシュフラワーを飾りたいですね。
寒さの中に輝く明かり
空港から向かうのは、車で30分ほどの小さな村。小さな村々を通り過ぎていく田舎道が、私を故郷の村まで運んでくれます。
その道中にも、たくさんの明かりが灯っていました。街灯ではなく、道に面した個人邸の庭に飾り付けられているライトです。星やトナカイ、そり、大きな光の玉などが木に吊り下がり、広々としたアーチやトレリスも輝いて、形も大きさもさまざまな明かりがあります。生け垣に沿って光のフレームを描き、囲いとしての役割を果たす長いフェアリーライトも忘れてはいけません。
この道中のハイライトは、たくさんのバリエーションがある、屋外に設置されたクリスマスツリー。
もともとはさまざまなサイズのマツの木を伐り、明かりで飾り付けたものでしたが、近年は、クリスマスツリーの形を模した金属のフレームにライトを取り付けたものが多くなりました。見た目もよいですし、どんなサイズにも調整できます。ほかにも、玄関ドアに取り付ける LED ライト付きのクリスマスツリードアハンガーなども見かけました。
個人的には、温かな白い光が一番クリスマスらしく、心地よい空気感を演出してくれると思います。LEDのクールな白色光は冬に見るには冷たすぎ、青い光と合わせると涼やかすぎてクリスマスらしくは感じないのです。また、カラフルに瞬く光は、アミューズメントパークや子ども向けの空間にはぴったりですが、静かで特別なクリスマスの夜にはちょっと不釣り合いに感じます。もちろん、こうしたデコレーションは個人の好みに大きく左右されるので、自分なりの空間を楽しむのがベストです。
静かに家族と過ごすドイツのクリスマス
ドイツのクリスマスは静かで穏やか。長く、しかし暗くはない夜の間、暖かな家の中で、家族や友人とリラックスして静かな時間を過ごします。クリスマスイブは閉店も早く、多くのお店やスーパーは14時には閉店します。クリスマスイブの14時を回ると、多くの人が家族や友人との時間を過ごすために家に帰り、手作りクッキーや紅茶を片手に暖かいリビングに腰を落ち着けるため、人通りは次第に少なくなります。日が落ちた後に誰か、特に小さな子どもがいる家庭を訪ねることは、とても失礼なことだと考えられています。
クリスマスイブの過ごし方は人それぞれで、教会の催しに参加したり、お昼のコンサートを楽しむ家庭もあります。我が家では、昼はみんなが忙しいためシンプルなランチで済ませ、夜はソーセージにザワークラウトやパンを添えて食べるのが定番でした。
冬の日の楽しみ
雪がたっぷり降って辺り一面が真っ白に覆われると、とても美しい光景に。すべてがとても純粋で綺麗に見えます。雪の下で静かに春を待つ、庭の冬休み期間です。
さて、こんな冬に美味しいのが手作りの甘いお菓子。冬のベイキングタイムに楽しみたいのが、自家製のイチゴやプラム、チェリージャムを使ったクッキー作りです。こうしたクッキーは単なるおやつではなく、自家製ジャムのフィリングが、夏の思い出も運んできてくれるのです。例えば5月のイチゴ畑で、一年分のジャム作りのために、数キロもの真っ赤なイチゴをひたすら摘んでヘトヘトになった日や、6~7月にチェリーを同じようにたっぷり摘んだことなど。こうして収穫して保存しておいた果実が、果物の少ない寒い冬の貴重な存在になります。
素敵なクリスマスギフトのアイデア
クリスマスや誕生日、または日々の庭からのちょっとしたギフトとして、こうした自家製ジャムはとても人気です。ガラスの小瓶にジャムを詰め、カラフルなリボンをかけて、「Specially for you」「Greetings from my garden」「Please enjoy」、または単に「Thank you」などのメッセージを書いた小さなカードを添えれば、世界に1つの特別なプレゼントになります。
また、クリスマスに欠かせないのがグリーティングカード。先日、50年以上の歴史があり、母のお気に入りだったフラワーショップで、娘が面白いグリーティングカードを見つけました。そのショップは花だけでなく、野菜やフルーツ、キャンドル、装飾品、フラワーアレンジやグリーティングカードなども扱っているのですが、今回見つけたものは、フルーツティーの茶葉が入ったものです。ギフトを送るには、宛名を書いてポストに入れるだけ。素敵なアイデアですし、オリジナルのブレンドティーを入れて贈っても楽しそうです。
その会社のHPを見てみると、さまざまなタイプのグリーティングカードがあり、メッセージもいろいろありました。例えば「Best Grandpa」「Many greetings」「Best wishes」「I like you」「You are so special」「Cheer you up」……などなど。こうしたカードの中には、茶葉と一緒に、バーベキュー、塩とドライフラワー、ドレッシングやトッピング用のドライハーブなど、いろいろなスパイスが入っています。
バリエーションの中には自分で作れそうなものもあり、寒い日に手作りするにもぴったりのアイデアです。夏や秋に収穫したドライハーブを使って、オリジナルな組み合わせを作り、それにマッチするユニークな名前を考えてみてはいかがでしょうか。単なるプレゼントではなく、心のこもった庭からの宝物になるでしょう。
クリスマスマーケットに並ぶホームメイドの品々
今回の原稿執筆のお供は、「Angles Eyes(天使の瞳)」という素敵な名前の手作りクッキー。丸いクッキーの中心にたっぷりと自家製ジャムを入れて瞳に見立てたものです。ジャムの種類はいくつかありますが、もっとも華やかなのは、真っ赤なチェリージャムのクッキー。コントラストも可愛いですし、味も美味しいです。ホームメイドのものは、やっぱり嬉しいですね。
さて、ドイツ各地のクリスマスマーケットを訪れると、それぞれに素敵な名前が付けられた、膨大な量のハーブティーのセレクションが目に付きます。いろいろなフレーバーの自家製スプレッドもズラリと並び、面白い名前や短い小話が記されたラベルがさらに興味をそそります。テーブルの中央には白いパンのスライスが用意され、色、味、スパイスの風味の異なるスプレッドのバリエーションを試食することもできます。ちなみに犬や猫用のスペシャルクッキーのブースもあるので、ペットにちょっとしたおやつを買うのもいいですね。
マーケットでは、マツの枝を、赤や白のリボンと、マツボックリや小さなクリスマスオーナメントで飾ったデコレーションも人気があります。木やワラ、ブリキ、クローブやシナモン、アニスなどのスパイスで作られた製品です。こうしたデコレーションには墓地用のものもあり、墓地用のアレンジメントは、常緑樹の枝に愛らしい木の実、ドライフルーツ、時に生花を組み合わせたものが主流。ドイツの冬はとても寒いので、こうしたアレンジはお墓の上で凍り付き、かなり長い間美しい姿を保ってくれます。
年末はいろいろなことを終わらせるのにぴったりの時期。掃除も気分転換になってすっきりします。もっとも庭の掃除をする際は、全てをきっちり整理するのではなく、虫たちが冬越しをするためのスペースと、鳥たちのための木の実を十分に残すようにしています。
街に音楽が流れ、多くの店が閉店する年末は、冬の庭を眺めて春の計画を立てるのがリラックスタイム。誰にも必要な休息が、庭にとっては冬の期間なのでしょう。
皆様が楽しい冬を過ごし、そしてよいお年を迎えられますように!
Credit
話 / Elfriede Fuji-Zellner - ガーデナー -
エルフリーデ・フジ・ツェルナー/南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。
Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood
まとめ / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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