2020年のクリスマスは、いつもの年とは異なる一日となりました。2020年12月現在、厳しいロックダウン政策がとられているドイツでも、今年は特別な冬になっています。ドイツで暮らすガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんに、静かなクリスマスイヴの朝の様子と、冬の間に考えたいガーデンデザイン、そしてある冬の日に出合った美しい光景についてレポートしていただきます。

Print Friendly, PDF & Email

2020年のクリスマス

クリスマス
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Linnhoff, Angelica

今年のクリスマスは、新型コロナウイルスの影響で特別なものになりました。ドイツではこの記事を書いている時点で、2週間以上前から2度目の厳しいロックダウンが始まっています。以前の記事でもお伝えしているように、ロックダウンの期間中はほとんどすべてのビジネスが休業します。営業しているのは、日常品を取り扱うスーパーやガソリンスタンド、そしてベーカリーや肉屋さんなどのみ。美容室も閉店しています。

クリスマスツリー
我が家のクリスマスツリー。
クリスマス

24日のクリスマスイヴの早朝、私は6時半頃に家を出て、家から一番近い、4km先のベーカリーに買い物へ。同じようなことを考える人はいるもので、ベーカリーにはすでに先客が2組いたため、しばらく店外で待たなければなりませんでした。この日のベーカリーには、クリスマスに先立って予約されていた、焼きたてのパンがたくさん並んでいます。バゲットやクロワッサン、そしていろいろな種類の白パンや全粒粉パンなどが、自動販売のエリアに並びます。クッキーがほんの少し、そしてケーキもあと一つだけ残っていました。

もっとも、日本でクリスマスケーキというようなイチゴなどのフレッシュフルーツを使ったケーキや、シュークリームなどのように生クリームを使ったデザートは見当たりません。ドイツでは、クリスマスにこのようなケーキ類を食べることはほぼないのです。

クリスマスのプレゼピオ

クリスマスのイルミネーション

クリスマスの教会
canadastock/Shutterstock.com

イヴの日の早朝に出かけたおかげで、愛らしい光景に出合うことができました。それが、まだ暗い中にきらめくクリスマスのイルミネーション。中でも、ベーカリーに行く途中にある小さな村のイルミネーションは、特に美しいものでした。この村の4分の1ほどの土地を持つ地主の方は、いくつかの大きな建物に加え、3階建てのホテルなども所有しているのですが、それら全ての建物の周りを、それぞれイルミネーションで飾ってあったのです。このようなデコレーションができるのは、高所に電飾を取り付けるための、昇降式作業場のような特殊な機材を持っているためです。彼の仕事を請け負うスタッフも経験豊富。個人邸の庭や学校のガーデン、公共の公園、さらに大きな住宅街の景観プロジェクトまで、デザインや実際の飾りつけをしているチームです。そんなわけで、1週間ほど作業が行われた結果、素晴らしい景色が完成するのです。

イルミネーション

イルミネーションに彩られたこの一帯は、暗闇の中で美しくきらめき、横を通り過ぎるのも楽しいもの。ここのイルミネーションは、時にアメリカなどで見られるような、電飾が点滅するような華やかなものではありません。色数は控えた優しい光に、可愛らしいオブジェなどが飾られます。オブジェは、トナカイの曳くそりや、白いリボンがついた赤い小包、雪だるまや星など。光をまとった大きなアーチもありました。駐車場の正門のアーチで、少なくとも高さ5mはあるでしょうか。温かな光に輝き、とても印象的な光景でした。

ローテンブルクのクリスマス
こちらは観光地としても有名な、バイエルン州ローテンブルクのクリスマス風景。kavalenkava/Shutterstock.com

街中のクリスマスデコレーション

窓辺のデコレーション
窓辺のデコレーション。Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

街に出ると、多くの家々の窓辺が、星やイルミネーションなどで飾られていました。光の色は、ほとんどが温かみのある白色か、ほのかに黄色がかった色です。

クリスマスのデコレーション

ガーデンでは、木々がフェアリーライトで輝いている様子があちこちで見られます。このようなイルミネーションを飾り付ける木は、クリスマスツリーのようなピラミッド型でも、普通の生け垣でもよいらしく、種類を問わず行われていました。イルミネーションに加え、玄関エリアには、フォーカルポイントとなるオブジェを一つ。クリスマスツリーや、木々の枝で手作りしたアレンジ、大きなモスボール、つまり苔玉がライトアップされている家も見つけましたよ。

苔玉
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

このように飾られる苔玉は、直径30cmほどのビッグサイズで、小さなレストランの入り口などによく吊るされています。木の枝やフェアリーライトと組み合わせると、素敵なディスプレイに。光が差し込まない暗がりの一画も、苔玉を置くだけでいい雰囲気になるので、苔が手に入りやすい日本でもぜひトライしていただきたいアイデアです。苔玉の素材は軽く、ボール型にするのも簡単。ドイツの冬は、東京近郊ほど空気が乾燥していないため、苔玉が乾燥しにくいのも、ドイツで苔玉デコレーションが人気の理由かもしれません。

屋外にライティングのシステムがあれば、一年中ガーデンや家をさまざまにライトアップして楽しむことが可能です。例えば私の近所の家は、ガーデンの中にクリスマスデコレーション専用の電源ソケットをいくつか用意しています。もっとも彼の庭は、およそ300㎡というなかなかの広さなのですが。クリスマスのガーデンデコレーションを終えた今はきっと、次のライトアッププロジェクトを考えている頃でしょう!

クリスマスデコレーション

ちなみに、イルミネーションで飾られるのは、屋外ばかりではありません。室内では、フラワーブーケをあしらったデコレーションもよく見られます。マツの木や青々としたトウヒの枝を、バラやアマリリスなどの生花とアレンジし、フェアリーライトで飾り付け。このようなディスプレイを楽しむためのちょっとしたコツは、近くに電源ソケットを用意すること、そしてライトの電源コードをうまく隠すことです。

冬のガーデニング

多くのガーデナーにとって、冬はやがて来る春と、翌年のガーデンプランについて考える時期です。ガーデンプランで欠かせないのが、エクステリア。つるバラを絡ませる新しいアーチや、新しいエントランスドア、もしくは家の周りのフェンスを全て取り替えよう! なんて人もいるかもしれませんね。

ガーデンフェンス
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich
ガーデンフェンス
ガーデンの背景など、フェンスはガーデン演出に効果抜群。Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

ウッドデッキは傷んでいたら交換が必要ですし、育ちすぎの植物は植え替えなどで対処しなければなりません。新しいアイデアは次々浮かび、ガーデンアイテムのカタログ(最近はもう紙ではなくホームページですが)も目を通しておかなければ…。そんな時間のかかる作業に先立ってアイデアを得るため、私は一年中、家の近所を散歩して魅力的なガーデンを探索することにしています。同じ庭でも、季節によってずいぶん様子が変わるので、できるだけいろいろな季節の庭を見るのがポイント。こうして見つけた好みのガーデンの中で、大雨や荒天の後でも、綺麗な印象を維持しているような庭があれば、自分の庭にもそのアイデアを拝借してみることにします。

庭巡りをしながら気づいたのは、よくウッドデッキやフェンスの色が変わっていること。私の庭も、そろそろ塗り替えをしてもいい時期かもしれませんね。

そういえば、ここ数年ほど、日本で暮らしている家の玄関前にぴったりなガーデンライトを探しているのですが、どうしたことか、まだ見つけられていません。数年前、現在のライトの横にある大きな木を剪定している時、枝が落ちて角が少し割れてしまったのです。まだ明かりは点きますが、デコレーションとしてはちょっといまいち。数年の間に問題の木も抜いてしまったので、家の印象を決める玄関前のスペースをいかにデザインし直すかで頭を悩ませています。とりあえず、今のところは小さなベジタブルガーデンとして活用しています。実用的ですが、あまり見た目に美しいとはいえませんね。

何が言いたいかというと、よい解決策や改善案を見つけるには時間がかかるときもありますし、その間に状況も変わっていくということです。だから、素敵なガーデンアクセサリーやガーデンアイデアを見つけたら、写真に記録しておくといいでしょう。いつか役に立つ時が来るかもしれませんよ。

特に、このコロナ禍のいま、解決策を見つけるのに急ぐ必要はありません。時間に追われて妥協するのではなく、じっくりと考え、よりよい方法を探しましょう。

冬の贈り物

樹氷
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

先日、日曜日の早朝に、どうしても新聞が読みたくなり、渋る娘を説得して、短いドライブに出かけることにしました。新聞が販売されている小さな村のガソリンスタンドでは、焼き立てパンも一緒に売られているのです。なかなか面白い組み合わせですね。もっとも、ガソリンスタンドとパンの組み合わせ自体は珍しいものではありませんが、このスタンドのオーナーはもともとプロのパン屋さんで、とても美味しいパンを売ってくれるのです。

冬のドイツ

この村までのおよそ10kmの道のりは、出かけてみると、まさに冬のワンダーランドの旅路となりました。家を出てから3kmほどで、すでにおとぎ話の世界の景色へ。道路脇の木々は白い霜に覆われています。それも普通の霜ではありません。すべての枝が、1cm以上の長さのある、水晶のような氷に覆われているのです。目的地であるガソリンスタンドに近づくにつれ、凍り付いた景色はますます息を呑むほどの美しさになっていきます。何度か車を止めて写真を撮ろうとしたのですが、周囲は霧に覆われていたためにコントラストがほとんどなく、白っぽい部分とグレイがかった部分、そしてこの美しい木々があるばかり。そのため、この景色を写真に収めるのは難しく、目で見た通りの感動をお伝えできないのが残念です。特に、枝垂れるようなヤナギと、松の木はとても装飾的で美しいものでした。

霜に覆われた植物

家に戻ってランチを済ませた後、このような光景をもっと楽しむことができそうな森の中に散歩に行ってみることにしました。素敵な散歩をゆっくり楽しみたかったのです。しかし、残念ながらこのプランは失敗。気温がほんの少し上昇し、凍り付いたような景色はもう見られなくなってしまっていたのです。また、こんなユニークな光景に出合えるようなちゃんとした散歩道も見つけられませんでしたしね。

この日に出合った美しい光景は、日本の駅でよく見かけた、秋田県や青森県の大きな観光案内ポスターを思い出させるものでした。魅力的なゴーストのような、真っ白に凍り付いた“モンスター”。別名スノーモンスターやアイスモンスターともいわれる冬の風物詩、「樹氷」のポスターです。

翌日、同じ村を通る用事があったので、ぜひもう一度あの光景を見たいと思ってワクワクしながら同じ道を行きました。そうすると…残念ながら、霧は消え、気温が少し上がって、霜は跡形もなく溶けてしまっていました。道の途中、前日は美しい光景を見せてくれた木々の下も通り過ぎたのですが、まるでその枝の部分にだけ大雨が降り注いでいたかのようでした。

冬の朝
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

この経験は、その瞬間にある美しさを味わうことがどれほど大切であるかを、改めて教えてくれました。同じ瞬間は、もう戻ってこないのかもしれないのですから。

特に、ますます多くの家族や友人と過ごす時間を諦めなければならない現在において、ガーデンや家の周りで小さな喜びを探すのが、私たちの大きな慰めになってくれると思います。

Credit

ストーリー&写真(記載外)/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood

取材/3and garden 

Print Friendly, PDF & Email