ガーデンで果物を育てよう! おすすめのベリー&果樹と育て方のコツをご紹介
食べられる野菜や果物を自分の手で収穫するのは楽しいもの。自宅の庭で、新鮮な果実を摘んでそのまま一口…そんな暮らしも、ガーデンで果樹を栽培すれば実現できます。ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんが、いままでに栽培した体験談をもとに、自宅でも栽培できるおすすめの果樹やベリー類と、栽培のポイントをご紹介します。
目次
ガーデンで果物を育てよう!
昨秋にガーデンプランを練りながら決めたことの一つが、もっと我が家の庭や畑で果物を育てたい! ということ。そこで、まずはしっかりした苗木を探し始めました。私が普段よく利用する園芸ショップは、花苗の状態はよいのですが、果樹の苗木は入荷が不定期で、品種も1、2種類しかありません。しかし、我慢できずにそのお店で購入することもあります。品種こそ選ぶことはできませんが、お値段が破格の安さなのです! とはいえ、次に何が手に入るか分からない状態では植栽計画も立てにくいので、ナーセリーも利用しています。
今回は、私が育てているそんな果樹たちをご紹介したいと思います。
我が家の果樹コレクション
いままで私は、ブルーベリー3種、キウイフルーツ、ブドウ2本、イチジク、柑橘類をいくつか、ビワ2本、カキ、ザクロ、サクランボ、そして日本・中国・韓国に自生し、サクランボに似た実をつけるユスラウメ…といろいろな果樹を集めてきました。このほかに数年育てたポポーの木もあったのですが、冬の度に傷んでしまい、それでも以前はなんとか回復していたのですが、昨年ついに回復せず枯れてしまいました。植え場所や土が悪かったのか、相性が悪かったのか、そうした失敗からも学んでいきたいものです。
さて、春に満開の花を咲かせてくれたユスラウメは、たくさんの果実が採れることを願うばかり。甘酸っぱい果実やそれを使ったケーキ、ジャムが待ち遠しいです。1粒ずつではなく、1掴みずつ楽しめたら、どんなに嬉しいでしょうか。欲を言えば、バケツ単位で数えるほど収穫したいものです。そんな夢を見られるのも、ガーデンで果樹を育てる醍醐味ですよね。
成長著しいキウイフルーツ
梅雨前のこの季節、キウイフルーツが驚くほどのスピードで成長しています。キウイフルーツは長いシュートを出して伸びていくので、その枝を誘引できるよう、この春トレリスを新設しました。選んだのは農業でよく使われる、トマト用のトマトトレリス。アーチが連なるトンネルのような形のトレリスは、過湿に弱いトマトを守る雨除けのカバー付きです。90cm幅の3連アーチを持つ長さ180cmのトレリスを、2セット購入しました。組み立てや設置は、夫の助力もあって、わずか30分ほどで完了。庭に緑のトンネルができました。構造物は、庭にフォーカルポイントをもたらしてくれる効果もあります。
これから枝葉がもっと茂ってくれば、トンネルの中に隠れることもできるようになるので、子どもたちにとって絶好の日陰や隠れ家になるでしょう。子どもたちが、こうした体験を通して、自然や昆虫たち、ガーデニング、パーマカルチャーなどについて保護者の方と一緒に学びながら、自然豊かな環境でリラックスした時間を過ごすことができたら、これほど嬉しいことはありません。20年以上にわたり、私の目標は、子どもたちとその両親を、自然と触れ合えるようにすることなのです。ドイツではこうした活動は「WALDKINDERGARTEN」、つまり「森の幼稚園」と呼ばれ、とても一般的。大人から子どもまで多くの人に喜びやリラックスを届けています。私も参加したことがありますが、ドイツ内各地の学校や幼稚園を訪れ、いろいろな見学や体験を行いました。
「森の幼稚園」に利用されるガーデンには、必ず果樹が植えてあります。よく植えられているのはリンゴやプラム、チェリー、そしてラズベリーやブラックベリー、ブルーベリー、カシス、グースベリーなどさまざまなベリー類です。
ブルーベリーにおすすめのコンパニオンプランツ
栽培される果樹の中でも人気のブルーベリーは、じつはミントとの相性が抜群。栽培の際には、鉢植えのミントをブルーベリーのそばに置いて育てるのがおすすめです。香り高いハーブであるミントは、その香りがガーデンでよく発生するアブラムシや、ブルーベリーにつくショウジョウバエなどの害虫を寄せ付けないといわれています。また、ミツバチなどの花粉媒介者を呼び寄せることで、ブルーベリーの受粉にも役立ちます。地植えにしてもよいのですが、ミントは生育旺盛で繁茂しすぎることがあるので、鉢植えのほうが扱いやすいでしょう。
レモンバームも同じようにコンパニオンプランツとして利用できますが、こちらも生育旺盛なので注意が必要。どちらもブルーベリー同様に半日陰で生育しますが、ブルーベリーは土壌酸度が酸性の状態を好むので、エリアを分けて植栽するとよいでしょう。
クランベリーもブルーベリーのコンパニオンプランツとしておすすめ。クランベリーはブルーベリーと同じくやや湿った酸性土壌を好む植物で、低く茂ってグラウンドカバーの役割を果たしてくれます。赤い実はブルーベリーとのコントラストも可愛いですよ。
コンパニオンプランツの利用のほか、ブルーベリーの栽培では、異なる品種を一緒に育てるのもポイントです。多様な品種の中には1株でも実がなる自家結実性のものもありますが、よりたくさん収穫するためには、異なる品種を育てて受粉させるとよいでしょう。
好みが分かれるマルベリーとゴジベリー
クワ(マルベリー)はドイツでは滅多に見られず、まだほとんど知られていません。私はクワの実の濃厚な紫色と、マルベリージャムが大好き。ジャムを作るときは手や服を汚してしまいがちですが、それだけの価値はあります。枝が込み合って収穫がちょっと面倒なので、摘んでそのまま食べるにはやや不向きなベリーです。
クコ(ゴジベリー)は非常に健康によい果実として知られていますが、個人的にはあまり気に入らなかった果樹。ドイツでも育ちますが、枝ぶりが野生的で見た目が好みではなく、収穫もほとんどできませんでした。クコのほうも私が気に入らないのを分かっていて、へそを曲げてしまったのかもしれませんね! はたして、植物にも感情はあるのでしょうか? 何はともあれ、しばらくクコの栽培はお休みしています。
花も食べられるエルダーベリー
ドイツ語ではHolunderと呼ばれるセイヨウニワトコは、ほかのベリーとは異なり、高さ3~10mまで大きく生育します。実だけでなく花も食用でき、ハーブとして人気。エルダーベリーやエルダーフラワーという名前のほうがなじみ深いかもしれませんね。ドイツではとても身近な植物で、森に沿って生えているのをよく見かけます。私の故郷には、この花に由来する地名もありますよ。
春に咲くシャンパンイエローの美しい色彩の花は目にも優しく、丸い花房を集めてシロップを作るのは素敵な春の恒例行事です。野山を歩き、花を集めて甘いシロップにし、冷たい水で割れば、美味しいノンアルコールドリンクの出来上がり。
受け皿のような形の花は、フレッシュでも美味しく、冷たい水でさっと洗って花の中によく潜んでいる羽虫を取り除いてから使います。キッチンペーパーで水気を取り、薄くパンケーキのタネをつけ、エルダーフラワーの天ぷらにするのもおすすめ。粉砂糖を少しふりかけて、バニラアイスと一緒に食べると絶品です。アイスなしでも美味しいですよ。エルダーフラワーの花期は1~2週間と短いので、ほんのひと時だけ楽しめる季節の味。ドイツの庭には2m以上になったエルダーフラワーが3本あり、日本で暮らしていても時々恋しくなってしまいます。
ガーデンで果樹が育つ楽しみ
ほかにも多様なベリーがありますが、今のところ私が育てたことがあるのはこれくらい。これから少しずつ、いろいろなベリーの栽培にチャレンジしていきたいと思います。魅力的な種類がたくさん掲載されたカタログの売り文句のようにはなかなか育ってくれませんが、ガーデンでベリー類を育てると、スムージーやケーキ作りに、またそのままトッピングとしても楽しめますよ!
現在、私はトンネルの片側にキウイフルーツを、もう一方に2株のブドウを植えて育てています。このコンビが成長してどのような姿になるのか、とても楽しみ。試行錯誤中ですが、格闘技のように、強いほうが生き残るでしょう! ひょっとしたら、自然のチョイスに任せず、私のほうで剪定するなど手を加えるかもしれません。強風や大雨によって傷むことなく、1年後、実り多い結果が得られるよう願っています。
現在私が楽しみにしているのは、これから実るサクランボ。小さな緑のふくらみができてきたので、みんな無事に赤く甘くなってくれる日を心待ちにしています。目下の私の悩みの種は、この実を野鳥たちからどう守るか。彼らもまた、私と同じぐらい熱心に実を観察していることでしょう。庭や畑の周りに、豊かな自然を感じられるのは素晴らしいことですが、その反面植物にとっての敵もいっぱい。何事もバランスが大切ですね。
Credit
話 / Elfriede Fuji-Zellner - ガーデナー -
エルフリーデ・フジ・ツェルナー/南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。
Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood
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