花や緑に親しみ、季節感に溢れる暮らしを訪ねる「私の庭・私の暮らし」。SNSで全国のガーデニング仲間とつながりながら、自身も千葉の自宅でDIYと庭づくりを楽しむ橋本景子さんが、お気に入りの庭をご案内します。今回は、土壌環境があまりよくない土地でも美しいガーデンづくりを諦めず、独自の手法で多種類の植物を育てている愛知県の藤井由紀さんの庭をご紹介します。

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ブログ仲間のお庭へ初訪問

藤井邸
白い壁と茶色の屋根が真っ青な空に映える洋風家屋を庭の南側から見たところ。一番手前に広がっているグリーンの植物はタイム。

私が夢中で庭をつくっていた頃から、ブログでの交流が続いている庭づくり仲間のお一人、愛知県在住の藤井由紀さん。10年という長い年月の間、SNS上だけでのお付き合いでしたが、今回、2019年の5月と10月に訪問することが叶いました。

お会いした由紀さんは、ちょっとシャイで全く飾り気のない爽やかなガーデナーさん。春の庭訪問では、少ししかお話ができませんでしたが、2回目の訪問となった秋には、じっくりと由紀さんの庭づくりについてお聞きすることができました。

藤井邸
サンタフェスタイルの建物の北側は大きな通りに面している。

愛知県の郊外にある住宅街に、250坪という敷地に建つ白い家屋と、その前にゆったりと広がるガーデン。いつもブログで見ていた景色が目の前に現れた時、これまで10年間に私が掲載してきたガーデンの過去の画像もリンクするかのように瞬時に脳内を流れました。

由紀さんのガーデニング初めて物語

藤井邸
こちらにも植栽できる部分はたくさんあるのだけど「とっても手がまわらなくて(笑)」と由紀さん。

2002年、もとは畑だった場所に自宅を建て、翌年2003年頃から庭づくりを始めたという由紀さん。それまで植物を自分で育てた経験はなかったのですが、生まれ育った実家では祖母が畑作や稲作をしていたことから、植物の名前や野菜の育て方、挿し木の仕方なども、何となく身についているという感覚を持っていました。ですから「この季節にはこれが咲く」という植物の生育サイクルもしっかり分かっていました。

藤井邸の5月の庭
ピンクの濃淡のジギタリスやサルビア・ネモローサ‘カラドンナ’、オルラヤなどが咲く5月の庭。*

100坪はある広い庭で、まずはお隣との間に杭を打ってネットを張ることからスタート。次に、雨が降る度にドロドロにぬかるむ庭に入っていけるようにと道をつくりました。そして、畑のような要領で畝をつくってタネを播いて、「ワイルドガーデンにしよう!」と挑戦したものの、結局あまり花が咲かずに、ワイルドガーデンというよりも雑草だらけの庭になってしまったのです。

その頃は、ちょうどイングリッシュガーデンが流行っていた時代。図書館に通ったり、洋書を手に入れたりして、美しいイングリッシュガーデンの写真を眺めては、気になる植物をインターネットで調べて苗を買って……。しかし、植えてはみたものの、ことごとく育たず失敗。悔しい思いをしたのです。

失敗から成功へ大逆転の庭作業とは?

植物がなぜ育たないのか全く見当がつかないまま、そんなことを5、6年も繰り返していましたが、ある日ふと「もしかして、原因は土かしら?」とひらめいた由紀さん。

藤井邸の庭
奥の薄いピンクの大紅ウツギと、右のグミ‘ギルドエッジ’、手前のオレンジの花はガザニア。*

ちょうど新しくつくっていた花壇に、試しに買ってきた土を入れて植えてみたら、なんと今までの苦労が嘘のようによく育つではないですか!

由紀さんの庭のように粘土層の地面のままでは、植物は土の中にしっかりと根を伸ばすことができず、さらには、水分や養分を吸収することができなかったのですね。植物が健全に育つためには、日当たりの良し悪しだけではなく、土も重要な要素の一つだということが、それでやっと分かったのです。

試行錯誤の末、たどり着いた独自のガーデニング法

バラの絡む小屋
小屋に絡むバラ‘トレジャー・トローブ’とクレマチス。ここでも中央のサルビア・ネモローサ‘カラドンナ’と左のベロニカ‘グッドネスグロー’が引き締め色で大活躍。*

しかし、その時点では庭の大部分に植物を植えてしまっていて、全部の土を入れ替える作業をするのはコスト的にも作業量的にも、ほぼ不可能だということにも気づいてしまったのです。

そこで由紀さんは、土壌の悪さにも負けずに育つ植物を探しては試行錯誤を繰り返しました。その方法というのは、植物を過保護にしないこと。地植えの植物には水やりをしないことです。そんな厳しい環境にも耐える植物を中心にして、悪環境を逆手に取った「費用と手間をかけないでつくるきれいな庭」を目指すガーデニングへと舵を切りました。

藤井邸の小屋の窓辺
‘トレジャー・トローブ’の花の白から優しいオレンジへのグラデーションと、グリーンの葉の対比が美しく、レースの模様が引き立つ小屋の窓辺。*

植え替えや、新たに植物を植える時には、その都度30cmほど土を掘り、堆肥を入れて、腐葉土やパーライト、バーミキュライトなどを混ぜ込みました。また、赤玉土も使ったりして、常に土壌改良作業を繰り返してはいますが、今でもまだ終わっていない花壇が多くあるのです。

「買ってきた植物もポットのままで何年も植える場所に悩む」と言う、とても慎重な由紀さん。これからはさらに将来の老後のことも考えて、脚立を使わなくても植物の手入れができるような工夫や、安価でコントロールしやすいグラウンドカバーになる植物を探したり。今よりもさらにローメンテナンスにしようと、じっくりとマイペースで庭づくりを実践中です。

藤井邸のガザニア
通路にこぼれたガザニアも、好きなように咲かせてあげるナチュラルな植栽。

同じように年を重ねていく私にとっても、これからの自分の庭の一番の課題は「ローメンテナンス」。由紀さんを見習って、これ以上手間をかけなくても大丈夫なように、どんどんローメンテナンス化していかねばと、ひそかに考えているのです。

丈夫でおすすめの植物セレクション

無灌水の庭づくりを実践している由紀さんの庭でも丈夫に育っている、彼女が好きな植物を教えていただきました。

クレマチス‘ロマンチカ’と‘バックランドビューティー’
クレマチス‘ロマンチカ’と‘バックランドビューティー’のコラボ。*
エリンジウム‘ブルーグリッター’
青みがかったオーナメントプランツ、エリンジウム‘ブルーグリッター’。*
クガイソウ‘ファシネーション’
日本のクガイソウよりも暑さに強い、クガイソウ‘ファシネーション’。*
サルビア・クレべランディ
花茎を囲むように花がリング状に段になって咲く、サルビア・クレべランディ。*
グレープセンテッドセージ
グレープセンテッドセージは、名前の通りぶどうの香りがします。*

DIYした作業小屋が庭の楽しみをアップ

由紀さんの庭には、いくつかの小屋があります。

バラを誘引するための構造物だったり、道具をしまう場所だったりしますが、大工さんにお願いした1カ所以外は、ご主人がDIYした作品です。

藤井邸のDIYの小屋

こちらは、建物を目隠しする小屋。

和室の前に建てていたラティスが壊れたために、その頃流行っていたバス停をイメージしてご主人がつくりました。

藤井邸のDIYの小屋

雨が降った時の作業小屋として、またワークショップもできるスペース。これもご主人の作品です。

藤井邸の植栽

作業小屋の裏の植栽は、中央にサルビア・ネモローサ‘スノーヒル’、左の宿根フロックス‘ホワイトパフューム’、ユーパトリウム‘チョコラータ’の銅葉や、銀葉セントーレア・ギムノカルバなど、色とりどりに組み合わせてありました。

Credit

写真・文/橋本景子
千葉県流山市在住。ガーデングユニットNoraの一人として毎年5月にオープンガーデンを開催中。趣味は、そこに庭があると聞くと北海道から沖縄まで足を運び、自分の目で素敵な庭を発見すること。アメブロ公式ブロガーであり、雑誌『Garden Diary』にて連載中。インスタグラムでのフォロワーも26,000人に。大好きなDIYで狭い敷地を生かした庭をどうつくろうかと日々奮闘中。花より枯れたリーフの美しさに萌える。
Noraレポート https://ameblo.jp/kay1219/
インスタグラム kay_hashimoto

写真(*)/藤井由紀
藤井由紀さんのインスタグラム t.neige

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