インテリアとしても注目され、最近名前をよく聞くようになった、テラリウム、アクアリウム、パルダリウム、ビバリウム。それぞれどんなものを指すのか、ご存知ですか? ここでは「その違いはどこにあるのか」、専門誌や実践者など、詳しい方たちによる解説をご紹介します。

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屋内で動植物を楽しめる、さまざまな「リウム」

パルダリウム

最近はガラス容器や水槽で植物を育てたりするのがポピュラーになってきています。また、熱帯魚や、爬虫類などを水槽や透明の栽培ケースで育てるのもとても人気があります。魚を水槽で育てる「アクアリウム」はどんなものか、想像がつく人も多いでしょう。

最近人気の苔をガラス容器で育てるものを「苔テラリウム」などと呼びますが、このあたりまでは「ガラスの容れ物に植物を入れて育てるのをテラリウムと呼ぶのかな?」などと、なんとなく分かったような気持ちになりそう。

しかし、「ビバリウム」「パルダリウム」となると、初めて聞くという人も多いのではないでしょうか。

ちなみに、それぞれの言葉の最後につく「リウム」(-arium)は「~な場所、空間」を意味します。今回の話とは関係ありませんが、天体の運行を見ることができるプラネタリウムもplanet(惑星)+ariumですね。

「ビバリウム」「アクアリウム」「テラリウム」「パルダリウム」と呼び方は異なりますが、これらはいずれも、「動植物を育てるための環境」を指します。

それぞれの辞書的な意味と、主に日本国内での使われ方の違いを見ていきましょう。

「動植物を育てる環境」全てを意味するビバリウム

ビバリウム
ChooChin/Shutterstock.com

権威ある英語の辞書である『Oxford English Dictionary(OED)』によると、ビバリウムの意味は

動物を観察または研究するため、またはペットとして準自然環境下に保つのに合うように作られた囲い、容器、または構造物。アクアリウムやテラリウム。

https://www.lexico.com/en/definition/vivarium

となっています。

ビバリウムはviva(生命)+ariumです。

生き物を育てるための環境全体を指す言葉で、規模の大きな動物園も含む概念のように思えます。あくまで動物飼育が主眼のようですが、「準自然環境」を作るために、植物を取り入れることもありますよね。

日本語圏ではあまり耳慣れない言葉ですが、「囲ったり容器に入れたりした、動植物を育てる空間」全体を含むのが本来の意味のようです。辞書の文言の中に「アクアリウムやテラリウム」とあるので、それらもビバリウムの一領域ということになります。

日本国内でビバリウムという場合は、住空間に入るくらいの大きさの栽培ケースや水槽の中に植物を植え込んだり景観を作り、両生類や爬虫類などを飼育するためのものを指すことが多いようです。

ビバリウムを謳った専門雑誌もありますが、主に両生類、爬虫類の飼育について扱っています。

『ビバリウムガイド』(エムピージェー)
http://www.mpj-aqualife.com/vivariumguide.html

水が入った水槽で楽しむアクアリウム

アクアリウム
Yo Choowa/Shutterstock.com

今回取り上げている言葉の中では、最もよく目にするのがアクアリウムではないでしょうか。

同じくOEDでは、アクアリウムはこう定義されています。

生きている魚や水生の動植物が維持飼育される透明な水槽。
異なる種の生きた魚の水槽を置く施設(水族館)。

https://www.lexico.com/en/definition/aquarium

アクアリウムはaqua(水)+ariumなので、やはり水の中のものが主眼となるようです。

熱帯魚やイソギンチャクなどの水の中で生きる生き物を飼うためのものだけでなく、植物を栽培するために水をためた水槽もアクアリウムと呼びます。魚の飼育を主眼としない、水草と石、流木などで作られる「水草水槽」もアクアリウムに含まれます。

透明な水槽で楽しむものということは、陶器の鉢で楽しむ金魚や、桶などに入れて観賞する錦鯉などは含まれないのかもしれませんね。

陸上の動植物を楽しむテラリウム

テラリウム

最近は苔をガラス容器に入れて育てたり観賞するのが人気なので、苔テラリウムという言葉もポピュラーになりつつあります。

OEDによると、テラリウムは

①小型の陸生動物、特に爬虫類、両生類、または陸生無脊椎動物用のビバリウム。通常はガラス張りのケースの形をしている。

②植物が栽培されている密封された透明な球体、または同様の容器。

https://www.lexico.com/en/definition/terrarium

①は日本で「ビバリウム」と呼ばれることが多いようです。

②は、最近目にすることが増えた苔テラリウムなどが当てはまりそうです。

ところで、高い湿度を好む熱帯性植物を栽培するために使われる、ワーディアンケースというものがあります。

これはガラス張りの戸棚のようなもので、これを使うとすると鉢植えの植物まで②の定義に当てはまりそうですが、多くの場合はワーディアンケースに直接土を入れるのではなく、鉢に植えるなどしたものを収納することが多く、やや趣が異なります。

湿地の環境を再現するパルダリウム

パルダリウム

パルダリウムは一部では大きな盛り上がりを見せていますが、まだそれほどポピュラーではないかもしれません。海外でもそれほど浸透はしていないようで、OEDにはまだ載っていませんでした。

パルダリウム(paludarium)はラテン語で湿地、沼地を意味するpalusとariumからなる言葉ですが、英語版のWikipediaでは、「陸生と水生の両方の要素を取り入れたビバリウム」と説明されています。

最近はアクアリウム専門誌でもパルダリウムを取り上げています。

『アクアライフ』2019年7月号

こちらの『アクアライフ』2019年7月号では、「水を張らない、または水が少ない水槽やそのレイアウト」を「パルダリウムやアクアテラリウム」である、としています。

また、2017年6月号では「熱帯地方原産の多様な植物をガラスのケージに飾り、水はあまり張らずに熱帯雨林を再現したもの、それが『パルダリウム』です」としています。

同じ2017年6月号p.33には、カイマントカゲを飼育するために植物を植え込んだ栽培ケースを紹介し、「このように爬虫・両生類の世界では、原産地を再現した飼育スタイルが確立され(ビバリウムとも呼ばれる)」との記述も見られます。

ちなみに前述の『ビバリウムガイド』と『アクアライフ』は同じ出版社から刊行されている雑誌です。

もともと湿地の植生を再現した環境の中でのヤドクガエルなどの飼育について『ビバリウムガイド』で紹介してきたところに、アクアリウムの流れからパルダリウムという言葉が使われるようになり、『アクアライフ』でも同様のものをパルダリウムと呼んで取り上げたなどの事情がありそうです。

また、同じ出版社からは『パルダリウムで楽しむヤドクガエル』という本も出版されています。

この本には巻末に「ヤドクガエル&パルダリウム用語集」というページがあり、その中で

パルダリウム【Paludarium

熱帯雨林や雲霧林など、湿潤な環境の生態系を作る設備のこと。生態の生育環境を再現するビバリウム(Vivarium)の中の一ジャンルと捉えることもできる。

としています。

アクアリウムメーカーの意見

パルダリウム

国内有数のアクアリウムメーカー、ADA(アクア・デザイン・アマノ)では、最近パルダリウムに使う資材などにも注力しています。

そこで、ADAとしては「パルダリウムはどんなものとして捉えているのか」と問い合わせてみたところ、以下のサイトでも語られているものが、ADAとしてのパルダリウムの定義だそうです。

水場を作って生物を飼育するのがテラリウムやアクアテラリウムですが、熱帯性植物を取り入れ、その植物の成長を楽しむことに焦点をあてたのがパルダリウムです。

https://tokosie.jp/green/11971/

水が入った水槽で魚を育てる → アクアリウム

水場+陸地で生物を育てる  → テラリウム、アクアテラリウム

水場+陸地で熱帯性の植物を育てることが主眼 → パルダリウム

というとらえ方のようです。

ユーチューバーが考えるパルダリウム

パルダリウムチャンネル

You Tubeにはさまざまなテーマを扱うチャンネルがありますが、パルダリウムのチャンネルもあります。

パルダリウム専門チャンネル「パルダリウムの全て」を運営するながのさんは、まだ目新しい言葉だけに、「パルダリウム」が何を指すか疑問に思う人も多いだろうということで、パルダリウムという言葉が何を意味するのか、という動画をアップしています。

【パルダリウム学➀】パルダリウムとは何か ~辞書的意味から使われ方まで

その中で、ながのさんは、辞書的な言葉の定義や歴史的な文脈を踏まえると、

・テラリウムに該当するもののうち、熱帯雨林などの湿性環境の表現があるもの

・植物に重点があるもの

をパルダリウムと呼べそうだ、と説明しています。

また、水槽の中に作られたものが、アクアリウム、アクアテラリウムからの流れではないという含みをもたせたい場合、あくまでも陸生の植物に重きを置いているのだということを表明したい場合は、パルダリウムとして提示するのがよいのではないかと提案しています。

まとめ

パルダリウム

●アクアリウム

これは水槽に水をため、その中で魚や水生動物、水草などを育てるものということで、通る言葉です。

●ビバリウム

ビバリウムは、本来はある空間の中に作られた動植物を育てるための環境のことです。

その意味が浸透する前に、日本では、「両生類・爬虫類などの小動物を飼育するための擬似的な自然環境、あるいはそうした環境の中でそれらの小動物を飼っているケース全体(飼育環境+小動物)」、という意味が一部で受け入れられています。

なので、日本語圏で「ビバリウムを作っている」と言った場合は、「ガラスケースなどの中に植物を植え込んで、ヤドクガエルなどを飼っている」というような意味になりそうです。

●テラリウム

テラリウムも本来は、日本語圏で言われる「ビバリウム」に当たる意味(観賞or観察できるようにガラスの壁面を一面は持った入れ物の中に、自然を模した環境、景観を作り、そこで爬虫類などの小動物を飼うもの)を持っていましたが、日本では「ガラスの容器に植物を植え込んで栽培、観賞するもの」という意味合いで使われることが多いようです。

アクアテラリウムは、地上部と水中で魚や植物を育てることを指します。

現在は苔テラリウムが人気なので、今後はガラス器の中で植物を育てるという意味合いが強くなっていくかもしれません。

●パルダリウム

パルダリウムは生き物を入れるにせよ入れないにせよ、土中・空中の湿度を好む植物を植え込んだもの、そうした環境を水槽や容器内に作ったものを指します。

生き物を入れるかどうか、入れることを想定しているかどうかについては、人によって考え方に幅がある状態です。

苔をガラス容器に入れて育てるものが「苔テラリウム」と呼ばれることがありますが、湿度と湿潤な環境を好む苔を植え込んであるのであれば、パルダリウムと呼ぶこともできそうです。

しかし実際には、その人が「苔テラリウム」として作っているのか、湿地の環境を再現するために「パルダリウム」として作っているのかで、意味合いは変わってくるのではないでしょうか。

◆最後に

世間的に「アクアリウム」については、あまり認識のブレがないかと思いますが、「パルダリウム」「ビバリウム」については、そもそも聞いたことがないという人もいる言葉なだけに、日本語圏においては、決定的な定義はない状態です。

そのため、「かもしれない」「のようだ」など、断定しない言い方が多くなっています。

言葉は通貨のようなもので、そのもの自体に絶対的な意味や価値があるわけではなく、時代の変遷の中で意味が変わったり、時には消えていくものです。

日本語圏においては、「パルダリウム」と「ビバリウム」は、もうしばらく定義が不安定な時期が続くでしょう。

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Credit

写真&文/土屋 悟(つちや さとる)
フリーライター。
園芸雑誌の編集に携わりながらフリーランスのライターとしても活動。都内在住のベランダー。鉢の置き場所がなくなったため、最近はランを中心とする着生植物にシフト中。その延長で、コンパクトで清潔に植物を楽しめる、水槽、透明ケースなどを使いながら試行錯誤している。ときおり実家の庭の手入れも行い、家の中、外での園芸ノウハウを蓄積。

参考:

ADA アクアデザインアマノ
http://www.adana.co.jp/jp/

YouTube「パルダリウムのすべて」
https://www.youtube.com/channel/UCb2Hh1bbc9Y3LMBa09MtFcw

 

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