いま高尾山で出会える春のスミレ7選 タカオスミレの見頃と見分け方も
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春の高尾山は、足元に小さな宝石が次々と現れる季節。首都圏からアクセスしやすいこの山では、18種ものスミレが見られ、雑種や変種を含めれば40種以上が確認されています。なかでも、高尾山の名を冠したタカオスミレは、この山を象徴する特別な存在。この記事では、高尾山で出会いやすい代表的なスミレ7種を、見頃の目安や観察しやすいコースとともに紹介。さらに、葉の形や花色、距(きょ)など、初心者でも楽しめる見分け方のポイントも解説します。春の週末は、“スミレの山”高尾山へ、小さな花を探す散策に出かけてみませんか。
目次
高尾山で出会いたい代表的なスミレ7種

東京都心から約1時間。東京都八王子市にある、標高599mの高尾山は、都心からのアクセスもよく、日帰りでもハイキングや自然を堪能できる人気の国定公園です。多種多様な動植物が生息する高尾山にあって、特に人気が高い花の1つが「スミレ」。
日本には50~60種の野生のスミレがあり、スミレ大国ともいわれますが、そのうち、18種のスミレを見ることができるといわれているのが、この山です。じつは高尾山は「スミレの山」とも呼ばれるほど、スミレ観察で有名な山。登山道沿いで十数種類のスミレを観察することができ、スミレ愛好家にとってはまさに宝の山なのです。
高尾山ではコースによって出会いやすいスミレが異なるため、歩く道を意識すると観察がいっそう楽しくなります。そんな高尾山で代表的なスミレを7種、観察しやすいルートの目安とともにピックアップしてご紹介します。
<高尾山の登山ルート>

タカオスミレ(高尾菫)

高尾山のスミレを語る上で欠かせないのが、その名を冠したタカオスミレ(高尾菫)です。高尾山で発見され、1928年に新種として発表されたこのスミレは、まさに高尾山のスミレを象徴する存在です。約1.5~2cmの小さな花は白く、花びらには細かい紫色の筋が入り、繊細な美しさを持ちます。
タカオスミレの最大の特徴は葉の色。白い花とのコントラストが美しい、濃いチョコレート色の葉を持ちます。じつは、タカオスミレはヒカゲスミレというスミレの変種なのですが、ヒカゲスミレは葉が緑色。高尾山の特定の環境で葉が茶色くなったものが「タカオスミレ」として定着したため、この葉の色がタカオスミレを成立させるポイントになるのです。
- 見頃:4月中旬〜下旬
- 観察できる場所:1号路、6号路、蛇滝コース、日影沢コース(裏高尾)など
アオイスミレ(葵菫)

名前の由来は、葉の形がフタバアオイの葉に似ていることから。フタバアオイは徳川家の家紋にも使われています。スミレの中でも早咲きで、林床部の日当たりのよい場所でよく見られます。花色は淡紫色で、白に近いものもあり、花弁が波打つようになるのが特徴です。展開前の葉は両側から巻いてくるのも特徴。
- 見頃:3月中旬~4月上旬
- 観察できる場所:3号路、稲荷山コース、日影沢コースなど
ヒナスミレ(雛菫)

小さめで可愛らしいことから「雛」という名がついた可憐なスミレ。早咲きで、透明感のある淡いピンク色の花を咲かせます。日陰を好みますが、開花にはある程度の光が必要です。先が細く尖った葉は、裏側が紫色を帯びます。
- 見頃:3月中旬~4月上旬
- 観察できる場所:3号路、稲荷山コースなど
タチツボスミレ(立坪菫)

日本を代表するスミレの1つで、全国のたいていの場所で見ることができ、高尾山でも最もよく見られるスミレです。淡紫色の花はすっきりと整った印象で、群れ咲く様子を見ることができます。個体数が多いことから、変異も多くあります。
- 見頃:3月中旬~4月下旬
- 観察できる場所:全てのコース
エイザンスミレ(叡山菫)

比叡山に咲くことが名前の由来。一見スミレとは思えないほど、葉が深く裂けているのが特徴です。花は直径2~2.5cmとやや大きめで、紅色が強いものから白に近いものまであります。
- 見頃:3月下旬~4月中旬
- 観察できる場所:3号路、5号路、稲荷山コースなど
マルバスミレ(丸葉菫)
花も葉も丸みを帯び、親しみやすい印象のスミレ。純白の花を咲かせますが、時に淡いピンクを帯びることもあります。群生している姿もよく見ることができます。
- 見頃:3月下旬~4月中旬
- 観察できる場所:1号路、3号路、蛇滝コース、日影沢コースなど
ナガバノスミレサイシン(長葉の菫細辛)

その名のとおり、細長い葉が特徴で、葉の裏側は紫色を帯びます。淡紫色のやや大きめの花を咲かせ、距(きょ)は短め。開花期にはまだ葉が展開しきらず基部が巻いていることも多いです。太平洋側の雪の少ない地域に多く分布します。
- 見頃:3月下旬~4月中旬
- 観察できる場所:全てのコース
<高尾山のスミレ 開花の目安カレンダー>

スミレを見分ける観察ポイント

スミレはよく似た種類も多く、一見同じ花に見えるかもしれませんが、識別ポイントを押さえて種類を同定できると、スミレ観察の楽しさは何倍も広がります。はじめは図鑑を引きながらでも、次第に顔見知りの品種も増えてくるはず。スミレ識別の主な4つのチェックポイントをご紹介します。
地上茎の有無

スミレの仲間を見分ける大きなポイントが地上茎の有無。茎を伸ばしてそこから枝分かれして茎葉や花を付けているものは地上茎があるタイプ。一方、地際から直接葉柄や花茎を伸ばしているものは地上茎がないタイプ。どちらのタイプなのかを見分けることで、よく似たスミレも品種が異なることを発見できます。
花弁の色と側弁(そくべん)の毛

スミレというと紫色のイメージがあるかもしれません。ですが、薄紫色、黄色、紅紫色、白など、花弁の色はさまざまで、品種を絞りこむ糸口になります。また、側弁の基部の内側に毛が生えているかどうかも、品種を識別する上での重要なポイント。
葉の色形
スミレを観察する際は、花だけでなく葉の色や形もぜひ観察してみてください。種類によって卵形やハート形、細長いものなどの特徴があり、識別のヒントになります。また、葉の表側だけでなく裏側の色も忘れずにチェックを。
距や托葉の形

距とは、花の後ろに突き出るようにして伸びる筒のような部分のこと。短いものから細長いものまであります。また、葉柄の基部につく小さな托葉の形も品種同定の手がかり。
そのほか、本格的な同定では、めしべの形や根、地下茎の状態なども重要な手がかりになります。ただし、高尾山のような自然公園で掘って確かめたりするのはNG。野のスミレはその場でそっと観察するのが基本です。
<高尾山のスミレ 簡易見分け表>

今回ご紹介した7種以外にも、高尾山にはたくさんの種類のスミレを見ることができます。中には特徴がよく似たスミレもあり、また個体差により中間的な特徴を持つものもあるので、この表はあくまで目安として、図鑑で前後のページなども確認してみましょう。ガイドウォークなどに参加すれば、解説付きで一層スミレの世界を楽しめますよ。
スミレ観察の際の持ち物と注意
スミレを観察する際はハイキング用の動きやすい恰好とともに、次の2つを準備しておくのがおすすめです。
- ルーペや接写レンズ
小さなスミレの細かい部分をじっくり観察するには、ルーペや接写レンズなど、拡大して見られるツールがあると便利です。
- ポケット植物図鑑
スミレを見つけたらその場で種類を確認できるように、持ち運べるポケットサイズのスミレ図鑑があると、観察が一層楽しくなります。スマホのアプリやインターネットサイトなどを利用するのも一案です。
スミレを始め、高尾山に生息する植物は貴重な自生種です。絶対に摘んだり持ち帰ったりせず、傷つけないのがマナーです。また、うっかり踏んでしまわないように、登山道を外れないで観察するようにしましょう。
身近に出会えるスミレ

さて、高尾山は別名「スミレの山」といわれるほどたくさんのスミレが生息していますが、そもそも日本はスミレ大国。各地域にさまざまな種類のスミレが咲き、高度によっても異なる種類のスミレに出会うことができます。
そして、スミレは人間の手が入っていない原生林に多く見られるかというと、決してそんなことはありません。最も多くのスミレを見ることができるのは、人の手が入った雑木林の林縁や、田んぼのあぜ道など、人間の生活に近い場所。スミレは人の暮らしの傍らに咲いている花なのです。
ですから、いつもの暮らしの中でも足元に目を向ければ、道端や空き地、時に道路のアスファルトの隙間から、小さな花を咲かせるたくましいスミレの花を見ることができるはず。そんな身近なスミレにも、もちろん名前があるので、同定に挑戦してみても楽しいですよ。
スミレに会いに出かけよう

春を告げるスミレは、その小さな花にたくさんのチャームポイントがあり、古くから人々に愛されてきた花です。一度その魅力に気づくと、繊細な美しさやわずかな違いに魅了され、ハマってしまう人も後を絶ちません。今年はカメラやルーペを片手に、高尾山の足元に広がる小さな世界を覗きに行ってみませんか?
高尾山へのアクセス
最寄り駅は京王線・高尾山口駅。新宿駅から高尾山口駅は約50分。
https://www.hkc.or.jp/takaosan/
参考
東京都 高尾ビジターセンター https://takaovc.ces-net.jp/
山渓ハンディ図鑑6 増補改訂日本のスミレ(写真・解説/いがりまさし 山と渓谷社発行)
高尾山花手帖(黒木昭三著 けやき出版発行)
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。「ガーデンストーリー」書籍第1弾12刷り重版好評『植物と暮らす12カ月の楽しみ方』、書籍第2弾4刷り重版『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(2冊ともに発行/KADOKAWA)発売中!
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