キッチンの風景を瑞々しく。ベルテッセンを「吊して」涼を運ぶインテリア
奔放に伸びるつるの美しさに、ベルのような愛らしい花。夏のインテリアに涼を運んでくれる「ベルテッセン(クレマチス)」を、“空中”に軽やかに飾ってみませんか?
外の景色が見えないマンションのキッチンでも、ほんの少しの植物を宙に浮かべるだけで、空間が見違えるほど瑞々しく居心地のよい場所に変わります。今回は、フラワー&フォトスタイリストの海野美規さんが実践する、簡単でおしゃれに見える吊し方のコツや軽量化のポイントを解説。さらに、海野さんがインスピレーションを受けた、今夏注目の展覧会「スウェーデンのうつわ グスタフスベリのある暮らし」の魅力も併せてご紹介します。
目次
軽やかな「吊す」アレンジ

私のキッチンには、ずっと変わらない花を飾るための「指定席」があります。それは、シンクの上にある開口枠からぶら下げた、小さなバスケットです。
普段は下げていないことも多いのですが、ふと、植物を空中に泳がせたい気分になる日があります。そんな時は、迷わずこの場所にバスケットを引っ掛けます。

近々、静岡市美術館で開催中の「スウェーデンのうつわ グスタフスベリのある暮らし」展へ足を運ぶ予定です。展覧会のチラシに並ぶ器たちの、あの静かで凛とした佇まい。写真を見つめているだけで、まだ見ぬ北欧の美しさに思いが募り、心がそっと浮き立ちます。
きっと、そんな展覧会への期待感が、私も何かおもしろく、かわいらしく、花を飾りたいと思わせるようです。
今日は、バスケットの隣に小さなガラスのジョウロも一緒に吊してみました。
活ける花には、つるの動きがとびきり素敵な植物を選びます。

特別なことは何もありません。いつものキッチンに、いつものバスケット。けれど、私の頭の中は今、北欧の美しいデザインがぐるぐる渦巻いています。
「いつもの場所」に、美術館で出会うはずの「北欧の風」を、ほんの少し先取りして呼び込んでみる。
そんなふうに、皆さんもぜひ、お気に入りの植物を空中に遊ばせて、この夏だけの涼やかなしつらいを楽しんでみませんか。
キッチンシンクの上の緑

実家のキッチンに立つと、窓の向こうにはいつも庭の緑が広がっていました。食器を洗いながら季節の移ろいや雨の気配を感じられるあの場所が、私は大好きでした。
今のマンションのキッチンは、残念ながら外の景色が見える間取りではありません。
けれど、あの日感じた「植物を眺める心地よさ」を諦めたくなくて、シンク上の開口枠からバスケットを吊し、花を飾ることを思いつきました。
それが、私の暮らしにおける「吊すアレンジ」の始まりです。
ほんの少しの植物であっても、家事の合間にふと視線を上げた時、瑞々しいグリーンや花が目に入る。たったそれだけで、気持ちがぱっと明るくなります。リフレッシュ効果抜群なのです。
「吊すアレンジ」の注意点:軽量化と安全性

空中に植物を飾る「吊すアレンジ」には、いくつか大切にしたいコツがあります。
一番のポイントは、なんといっても軽くすること。
我が家では、キッチンにある焦げ茶色の開口枠を利用しています。この枠には小さな段差があるので、そこに耐荷重性のある画鋲を刺し、麻紐を巻きつけています。吊す際は、しっかりと安定した場所を選んでくださいね。吊り下げ用のフック付きピンなどを利用するとより安心。花器を下げる前にゆるみがないかも確認しましょう。
花器は、軽量で視覚的にも重く見えないよう、小さめのバスケットや、透明な試験管のような軽やかなものを選ぶのがおすすめです。重たい花瓶を吊るすのは危険ですし、空間に圧迫感を与えてしまいます。万が一落下してもケガのリスクがない器を選びましょう。

今回は、バスケットの中に小さなプラスチックの小瓶を忍ばせ、そこに水を入れています。今回吊したベルテッセンは、枝が繊細で水あげもよいので、これくらいの小さな器で十分なのです。
また、一緒に吊るしたガラス製の小さなジョウロも、軽さを意識して。こちらはもともと付いていたワイヤーを使い、麻紐でさらにしっかりと結びつけています。水はあくまで少量に留めるのが、吊すアレンジの鉄則です。

バスケットの持つ「温かみ」と、ガラスジョウロの「透明感」。この異素材の対比が、キッチンにささやかな面白さを添えてくれます。
動きのあるベルテッセンをメインにアレンジ

今の季節、フラワーショップを覗くとベルテッセンの姿をよく目にします。
ベルテッセンは、キンポウゲ科のつる植物クレマチスの中でも、ベル(壺)のような形をした可憐な花を咲かせる系統の総称です。ベルのような愛らしい花が、繊細なつるにポツ、ポツと連なる様子は、何度見ても飽きることがありません。

この花の魅力は、なんといっても自由奔放なつるの動き。
吊すアレンジにするなら、あれこれと詰め込まず、1〜2本のつるを主役にして、その伸びやかなラインを生かすのがおすすめです。

また、少し違った雰囲気を楽しみたい時は、「つるの垂れ」を主役にしたアレンジも素敵です。
脚付きのガラスベースや、細身のフラワーベースを選び、あえてつるを長めに。無造作に、風に揺れるままに活けてあげると、まるで野の植物をそのまま切り取ったような、自然体で清々しい雰囲気が生まれます。


心躍る、北欧の美しいデザイン「グスタフスベリ」

最後に、私の心を「北欧モード」に引き上げてくれた展覧会のご紹介を。
静岡市美術館で開催中の「スウェーデンのうつわ グスタフスベリのある暮らし」展。
「すべての人に美しさを」という理想のもと、生み出された日常を彩るテーブルウェアや愛らしいフィギュリン。日用品に美を採り入れようと貢献した4人のデザイナーを取り上げています。
このポスターを見るたびに、私はニヤニヤ、ワクワクがとまりません。
リサ・ラーソンの猫。我が家の柴犬あんの背中の丸みとそっくりです。
「グスタフスベリ」は、1825年創業のスウェーデンを代表する陶磁器メーカー。スティグ・リンドベリやリサ・ラーソンといった著名なデザイナーたちが手がけた作品は、どれも機能的でありながら、私たちの暮らしに温かな彩りを添えてくれるものばかりです。
展覧会では、そんなデザイナーの美しいコレクション300点に出会うことができます。
「スウェーデンのうつわ グスタフスベリのある暮らし」
- 会期:2026年6月27日(土)〜9月6日(日)
- 会場:静岡市美術館
- HP:https://shizubi.jp/exhibition/20260627_gustavsberg/260627_01.php
本物の北欧デザインが並ぶ展覧会の空間は、暑い夏を忘れるほど静かで心地よい時間を与えてくれるはずです。
この展覧会は、静岡市美術館を皮切りに、秋田、東京、長野、京都など全国に6会場で開催予定の巡回展だそうです。
皆さんの街で開催される際には、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。美しい器たちと出会った帰り道には、いつもの景色も少しだけ違って見えるかもしれません。

Credit
写真&文 / 海野美規 - フラワー&フォトスタイリスト -

うんの・みき/フラワー&フォトスタイリスト。ハーバルセラピスト。愛犬あんとの暮らしを通じて、動物のための自然療法を学ぶ。パリで『エコール・フランセーズ・ドゥ・デコラシオン・フローラル』に入門、ディプロムを取得。『アトリエ・サンク』の山本由美氏、『From Nature』の神田隆氏に師事。『草月流』師範。フランス、ハンガリー、シンガポールでの暮らしを経て、現在日本でパリスタイル・フラワーアレンジメントの教室『Petit Salon MILOU(プチ・サロン・ミロウ)』を主宰。
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