【初心者向け】ヒメシャラの魅力と育て方|シンボルツリーに人気の理由・育て方・剪定のコツまで完全ガイド

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初夏に涼しげな白い花を咲かせ、なめらかな赤褐色の幹肌と自然に整う繊細な樹形が魅力のヒメシャラ。和洋どちらの庭にもなじみ、四季を通じて楽しめるため、シンボルツリーとして高い人気を誇ります。この記事では、ヒメシャラの特徴や花言葉、庭木としての魅力、育て方のコツまで、分かりやすく解説します。
目次
ヒメシャラの基本情報

植物名:ヒメシャラ
学名:Stewartia monadelpha
英名:Tall Stewartia、Japanese stuartia
和名:ヒメシャラ(姫沙羅)
その他の名前:シャラノキ(沙羅木)、アカラギ、サルスベリなど
科名:ツバキ科
属名:ナツツバキ属
原産地:日本(関東地方以西、四国、九州)
形態:落葉性高木
ヒメシャラはツバキ科ナツツバキ属の花木です。学名はStewartia monadelpha。原産地は日本(関東地方以西、四国、九州)で、寒さにやや弱い性質です。冬には葉を落とす落葉樹で、生育スピードが遅くあまり手がかからないので、古くから庭木として愛されてきました。樹高は12〜15mほどと大きくなりますが、毎年の剪定によって程よい大きさにコントロールすることも可能です。
ヒメシャラの花や葉、幹、実の特徴

園芸分類:庭木
開花時期:5〜7月
草丈・樹高:12〜15m
耐寒性:やや弱い
耐暑性:普通
花色:白
ヒメシャラの開花期は5~7月で、花色は白が基本ですが、淡くピンクがかるものもあります。葉の付け根から花茎を伸ばし、1.5~2cmほどのツバキに似た5弁花が咲きます。花の中央には多数の雄しべと、先端が5つに裂ける雌しべがのぞきます。
美しい赤褐色の幹が特徴

成木の樹皮はなめらかで美しく、アオギリ、シラカバと並んで「日本三大美幹」と称されることもあり、葉を落とした冬の林では特に美しさが際立ちます。別名の「アカラギ」は、幹の美しさが由来で、木材としては赤褐色で硬く、彫刻や器具、床柱などに利用されています。樹形は自然に整い、箒を逆さにしたように木姿になります。若木の樹皮は赤褐色でなめらかですが、次第にグレーがかった模様が出現して樹皮がまだらにはがれますが、最終的には再び赤褐色へと変化していきます。
秋には紅葉が楽しめる

ヒメシャラの葉は長さ5cm前後の楕円形で、先端がとがっているのが特徴です。落葉樹で、秋には赤く紅葉する姿を楽しめます。乾燥が進んでしまうと秋に葉が傷み、観賞価値が下がってしまうので注意。花色がピンクのヒメシャラは、紅葉時により発色の美しい赤い葉になります。
実もなるが食用には向かない
開花後には1cmほどの丸い果実をつけます。9~10月に熟すと5つに裂けて中から種子が飛び出し、自然に落下します。実は枝全体にたくさんつき、種子が飛び散った後も実は殻となって枝に付き続け、落葉後もびっしりと付いたままに見えるのが特徴です。美観を保つため、冬に行う剪定時に取り除いておくとよいでしょう。
ヒメシャラの名前の由来と花言葉

ヒメシャラという名前は、シャラノキとも呼ばれるナツツバキよりも花や葉が小さいことが由来。ナツツバキがシャラノキやサラノキと呼ばれるのは、仏教の聖木の1つであるサラノキに由来し、本来のサラノキが日本の気候では育たたないため、花姿の似ているナツツバキを代用としたためと考えられています。
ヒメシャラの花言葉は「愛らしさ」「謙虚」などがあります。「愛らしさ」は外見の美しさが由来です。「謙虚」はヒメシャラの花があまり目立たず、葉の間からのぞく奥ゆかしい姿から来ているようです。
ナツツバキ(シャラノキ)との違い

ヒメシャラとナツツバキ(シャラノキ)は混同しやすい木ですが、見分けやすい違いもあります。ヒメシャラの葉や花はナツツバキより小型で、ヒメシャラの葉は先端が細長く尖っているのが特徴。ヒメシャラは葉裏に細かな白い毛があり、花の外面にも同様の毛があるのに対し、ナツツバキの葉は無毛で葉脈がはっきり浮き出ているという違いもあります。また、ヒメシャラの幹は成長すると皮がむけ、常に新しい幹肌を見ることができる一方、ナツツバキの幹は樹皮がむけた跡が斑模様として残りやすい特性があります。ほかに見分けやすいポイントとして、種子が弾けた後の実がらが残っている場合、ナツツバキは先端が尖って突き出しているという特徴があります。
和洋の庭園に合うヒメシャラはシンボルツリーに最適

幹や枝も細く、繊細な樹形が楽しめるヒメシャラは和洋問わず景色に調和するので、シンボルツリーにぴったり。軽やかなシルエットのため、3~4mサイズの木を植栽しても圧迫感が生まれず、ナチュラルで優しい印象をもたらします。自然に樹形が整う木姿を生かし、主に透かし剪定をして自然味のある表情を保つのがおすすめです。
ヒメシャラの木の値段

ヒメシャラは大きく育った成木で購入すると、木の値段のほかに植え付けの費用などもかかってきますが、樹高1mほどの若い苗木であれば2万円前後で購入でき、自分で植え付けることも可能です。さらに2年生苗などの幼い木なら数千円で購入することができます。
ヒメシャラの栽培12カ月カレンダー
開花時期:6〜7月
植え付け・植え替え:12〜2月
肥料:2〜3月、6月
剪定:12〜2月
ヒメシャラの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たり、風通しのよい場所を好みます。半日陰の環境でも十分育ちますが、暗すぎる場所では花つきが悪くなるので注意。西日が強く当たる場所では、夏の強い日差しによって葉が傷みやすくなるので、避けたほうが無難です。
【日当たり/屋内】基本的に屋外で栽培しますが、寒冷地では冬は室内に取り込むとよいでしょう。
【置き場所】樹高が高くなるので、枝葉を伸ばした時に邪魔にならないような場所をあらかじめ確保しておきましょう。また、適度に水はけ、水もちのよい土壌を好み、乾燥に弱い性質をもっています。
耐寒性・耐暑性
ヒメシャラはある程度寒さに耐えて関東以西では地植えでも育ちますが、寒冷地などでは鉢栽培で楽しむほうが無難です。季節ごとに適した場所に移動しながら管理するとよいでしょう。
ヒメシャラの育て方のポイント
用土

【地植え】
植え付けの2〜3週間前に、直径、深さともに50cm程度の穴を掘ります。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきましょう。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の花木用培養土を利用すると手軽です。
水やり

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の土を狙って与えてください。
真夏は、気温が高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に行うと凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
植え付け後にしっかり根付いたら、下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続いて乾燥するようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつも湿った状態にしていると根腐れの原因になるので、与えすぎに注意。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。特に開花期や真夏は水を欲しがるので、水切れしないように注意しましょう。
肥料

【地植え・鉢植えともに】
植え付け時には、元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。
越年後は、毎年生育が旺盛になる前の2〜3月と、開花後に有機質肥料を施し、木の勢いを保ちます。
注意する病害虫

【病気】
ヒメシャラに発生しやすい病気は、さび病や白紋羽(しろもんぱ)病などです。
さび病は、かびによる伝染性の病気です。葉にくすんだオレンジ色で楕円形の斑点が現れます。この斑点は、やや細長くイボ状に突起するのが特徴です。症状が進むと斑点が破れ、中から粉のように細かい胞子を飛ばします。発症すると株が弱り、枯死することもあるので注意。発病した葉は見つけ次第切り取って処分し、適用する薬剤を散布して防除します。
白紋羽(しろもんぱ)病は、発症すると、木全体の葉が縮れて枯れ込み、根や地際に近い樹皮に白灰色の菌糸束や菌糸膜が見つかります。手遅れになると枯死し、周囲に病気が蔓延するのを防ぐために早めに抜き取って土ごと処分することも考えなければなりません。樹勢が弱ると発症する傾向にあるので、勢いのある健康な状態を保つことが大切です。
【害虫】
ヒメシャラに発生しやすい害虫は、チャドクガやコガネムシなどです。
チャドクガは蛾の幼虫で、多数の細かい毛に覆われた毛虫です。体長は2〜3cmくらいで、ツバキ科の植物によく発生します。葉裏などに幼虫が大発生することがあり、見た目にも大変不愉快なので見つけ次第駆除しましょう。このチャドクガは毒をもっており毛に触れるとかぶれて皮膚炎を起こすので、駆除の際には注意が必要です。毛が皮膚につかないように長袖、長ズボン、手袋を着用して作業し、枝ごと切ってビニール袋に入れて処分してください。
コガネムシは主に5〜8月に発生しやすい昆虫です。成虫の体長は2〜3cm。主に葉を旺盛に食害し、網目状態になっていたら近くにいることが疑われます。外部から飛来してくるので防除しにくく、見つけたらすぐに補殺して対処しましょう。また、土中に産卵されると、今度は幼虫が根を食い荒らして株を弱らせます。幼虫は食欲旺盛で、根のほとんどを食いつくすため、枯死に至ることもあるので注意が必要です。
ヒメシャラの詳しい育て方
植え付け・植え替え

ヒメシャラの植え付けの適期は休眠期の12月〜翌年2月です。植え付け適期以外にも苗木は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。ただし、真夏と真冬は避けたほうが無難です。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、根鉢を軽くくずして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。苗木が若いうちは、支柱を立てて誘引し、強風などによる倒伏を防ぎます。しっかり根付いたら支柱を取り外しても構いません。
地植えの場合、環境に合って健全に育っていれば、植え替えの必要はありません。
【鉢植え】
ヒメシャラを鉢で栽培する場合は、入手した苗木よりも1〜2回り大きな鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから花木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗木をポットから取り出して鉢の中に仮置きし、高さを決めたら、根鉢を軽くほぐし、少しずつ土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3㎝下を目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。苗木が若いうちは、支柱を立てて誘引し、強風などによる倒伏を防ぎましょう。しっかり根付いたら支柱を取り外しても構いません。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、2〜3年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出してあまり根鉢を崩さずに、新しい培養土を使って植え直しましょう。
剪定・切り戻し

ヒメシャラの剪定適期は、落葉して休眠している時期の12月〜翌年2月です。自然樹高は12〜15mに達しますが、家庭で栽培するなら管理をしやすくするためにも5m以内にとどめ、剪定によって樹高をコントロールしましょう。ヒメシャラは成長スピードがやや遅いほうです。もともと枝数が少なく、繊細な枝ぶりが美点といえるので、強い切り戻しをせずに自然に整う樹形を楽しむ剪定を心がけます。
まず樹高の半分くらいまでの高さの下の位置で幹から出ている下枝は、すべて元から切り取ります。次に、幹の内側に向かって伸びる枝を切り、さらに込み合っている部分があれば、不要な枝を元から切って風通しをよくしましょう。枝はどこで切ってもいいわけではなく、必ず枝の分岐点まで遡って切り取ってください。剪定した部分から雑菌が入って病気を誘発したり、木の水分を失ったりするのを防ぐために、切り口には必ず癒合剤を塗っておきましょう。癒合剤は園芸店などで手に入ります。
増やし方

ヒメシャラは、挿し木、種まきで増やすことができます。
【挿し木】
挿し木とは、枝を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物のなかには挿し木ができないものもありますが、ヒメシャラは挿し木で増やすことが可能です。
ヒメシャラの挿し木の適期は、6〜7月です。その年に伸びた新しい枝を10cmほどの長さで切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を切り取ります。3号くらいの鉢を用意してゴロ土を入れ、新しい培養土を入れて水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して表土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて管理し、その後は日当たりのよい場所に置きましょう。ポットに根が回るまでに成長したら、少し大きな鉢に植え替えて育苗します。成長とともに鉢増ししながら管理し、苗木として十分な大きさに育ったら、植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
【種まき】
ヒメシャラは10月頃に果実が熟します。果実を採取して種子を取り出し、流水できれいに洗い流してそのまま種まきしましょう。
黒ポットに新しい培養土を入れて十分に水で湿らせます。ヒメシャラの種子を黒ポットに数粒播いて軽く土をかぶせ、明るい日陰で管理します。カラカラに乾燥しないように水の管理に注意し、発芽後は日当たりのよい場所に置きましょう。本葉が2〜3枚ついたら勢いのある苗を1本のみ残し、ほかは間引いて育苗します。ポットに根が回るまでに成長したら、少し大きな鉢に植え替えて育苗します。鉢増ししながら育成し、苗木として十分な大きさに育ったら植えたい場所に定植しましょう。
自然で美しい樹姿のヒメシャラをシンボルツリーに

株立ちの美しい樹形を楽しめるヒメシャラは、春の新緑、初夏の開花、秋の紅葉と四季の移ろいを強く感じることのできる花木の一つです。和洋を問わず景観に馴染むので、家の顔となるシンボルツリーとして取り入れてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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