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庭木にオススメの樹木と選び方、助成金も賢く利用しよう!

庭木にオススメの樹木と選び方、助成金も賢く利用しよう!

草花のことはよく知っていても、樹木の種類や育て方はあまり知らないという方は少なくないのではないでしょうか。樹木は庭づくりにおいて骨格となる大切な要素です。上手に選べば目隠しとして機能してくれたり、庭をゆったり見せる効果がありますが、選び方を間違うと他の植物の生育に影響したり、大きく育ちすぎて思わぬアクシデントを招くことも。ここでは造園家の阿部容子さんに、庭木選びのポイントと活用方法についてアドバイスしていただきます。

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庭の中での樹木の役目

樹木も草花と同様にさまざまな種類があり、樹高や樹姿、落葉、常緑といった特徴を踏まえて庭に適したものを選びます。樹木を選ぶときは、庭のどこに何の目的で植えるかを明確にしておく必要があります。

生け垣に向く樹木の特徴

レッドロビン
生け垣によく使われるレッドロビン。TMsara/Shutterstock.com

植える目的が分かりやすいのは、生け垣。生け垣は、主にフェンスなどと同様に、敷地の境界線を示し、公道からの視線を遮るという明確な目的で植えられます。ですから、向こう側が見通せないよう枝葉の密度が高く、下部から葉が茂り、病害虫に強いものが適しています。また、公道に面している生け垣は、美観はもちろんのこと、枝葉が伸びすぎて通行の邪魔にならないように、常に形を保っておく必要があります。このため、年に3回程度は刈り込みますが、刈り込んでもすぐに新芽が発生する性質も生け垣にする樹木の条件です。これらの特徴を備えているのが、生け垣によく用いられるレッドロビン、オウゴンマサキ、トキワマンサク、アラカシ、シルバープリペットなどです。

生け垣に助成金が出る自治体も

生け垣はフェンスと同様の目的と書きましたが、そのほかにも防音効果や火災の際の延焼防止、空気の浄化、さらに街の景観の一部としてなど、公共的な役目も果たします。そこで、自治体によっては新たな生け垣の造成に助成金制度を設けている地域があります。一軒あたり、総額500,000円という決して少なくない額を示している地域もあるので、生け垣を作ろうと思っている場合は、一度お住まいの自治体の制度を調べてみるとよいでしょう。

シンボルツリーとは

シンボルツリー

シンボルツリーとは、その家の象徴となる樹木のことです。家の外観に調和させるため、低木ではなく、ある程度高さのある樹木が植えられます。花が楽しめるハナミズキやヤマボウシ、ヒメシャラに加え、近年は常緑でおしゃれな雰囲気のオリーブやシマトネリコなども人気です。ただし、これらの樹木はいずれも「高木」といわれる樹種で、10年もすると見上げるような姿になるので、植え場所をよく検討し、高くなりすぎる場合は剪定で樹高を抑えて育てる必要があります。ちなみにシンボルツリーの植樹にも助成金が出る自治体があります。

小さな庭に向く樹木

紅葉が見事なニシキギ

ニシキギ

日本の狭小な住宅事情を考えると、前述の樹木より樹高の低い樹木のほうが扱いやすく、親しみやすいかもしれません。小さな庭にオススメなのが、ニシキギです。ニシキギは低木といわれる部類に入り、樹高は大きくなっても2〜3mで自然に止まります。このくらいの樹高で止まってくれれば、自分で剪定もしやすいでしょう。それになんといっても葉の美しさが格別です。ニシキギという名の通り、最大の魅力は錦のごとく見事な紅葉です。晩秋には実がはじけてオレンジ色のタネがぶら下がり、その姿はなんとも可愛らしいものです。冬は落葉します。春から夏にかけては明るく柔らかい黄緑色の葉が茂り、「翼(よく)」と呼ばれる特徴的な姿をした枝は生け花の花材としても重宝されています。剪定によく耐え、新芽を素早く吹くため生け垣にもしばしば用いられますが、自然樹形で育てても写真のような品のよい姿にまとまります。季節ごとにさまざまな表情で楽しませてくれるオススメの樹木です。

ニシキギの紅葉
ニシキギの紅葉。poupine/Shutterstock.com
ニシキギの実
ニシキギのオレンジ色の実。F_studio/Shutterstock.com

鮮やかな花と葉が美しい赤葉紅花トキワマンサク

赤葉紅花トキワマンサク
左は自然樹形。右は生け垣仕立ての春の開花時。

もう一つおすすめなのが、赤葉紅花トキワマンサクです。常緑の葉は鮮やかな赤色になり、春になるとフューシャピンクの花が木の全体を覆うように咲き、華やかこの上ない姿になります。よく垣根にも利用される樹種ですが、単独で自然樹形に仕立ててもシンボルツリーや庭木として活躍してくれます。3m以上伸びる中木に分類されますが、主幹を好みの高さで切って樹高をコントロールすることが可能です。下のほうにも枝葉が茂るので、見上げることなく目線で美しい葉が楽しめます。手入れも比較的楽で、芽吹きがよいので、あまり時期や切る場所を気にせず剪定ができます。枝の伸びがよいので、花が咲き終わるのを待って5月くらいに切り戻すとよいでしょう。また、枝が混み合う場合には枝元から剪定して枝数を間引き、風通しをよくしておきましょう。

赤葉紅花トキワマンサクの花
赤葉紅花トキワマンサクの花。リボン状の花弁がヒラヒラと愛らしい。

花も実も紅葉も楽しめるジューンベリー

ジューンベリー
樹高をコントロールしやすいジューンベリー。

ジューンベリーも庭木にオススメの樹木です。春には白い小さな花が咲き、初夏には赤いベリーがたくさん実ります。果実は甘酸っぱく生食もできますし、ジャムにして保存も可能です。秋の紅葉も見事です。高木に育ちますが、生育がゆっくりなので毎年、落葉期に剪定することで樹高のコントロールが容易です。剪定も難しいルールは一切ないので、伸びすぎた枝や混み合った箇所の枝を切るようにしましょう。また、果樹の多くが害虫被害を受けやすいのに対し、ジューンベリーはほとんど心配がありません。ただし、この赤い果実は鳥たちも好物。いろいろな野鳥がやってきますが、庭でバードウォッチングができると思って、彼らをあまり敵視しないほうが楽しいガーデンライフを送ることができるでしょう。

ジューンベリー
樹高をコントロールしやすいジューンベリー。
ジューンベリーの実
初夏になるジューンベリーの実。

株立ちと単幹(一本立ち)

株立ち・単幹(一本立ち)の雰囲気の違い

ガーデンの庭木

樹木には株立ちと単幹(一本立ち)という樹姿があります。株立ちとは、根元から複数の幹が生えている状態の木で、上の写真では左側のカツラのような樹姿です。複数の幹に栄養が分散されるため、幹が細く繊細で優しい雰囲気になります。1株で雑木林っぽい雰囲気を出せるのも特徴です。

一方、単幹(たんかん)とは、幹が1本の樹姿です。上の写真では右側のクローブが単幹です。1本の幹に栄養が集約されるため、太くしっかりとした幹になり、堂々とした雰囲気が出ます。

株立ち・単幹(一本立ち)のそれぞれの役割

株立ちの樹木
屋上ガーデンに植えられた株立ちの樹木。

こうしたビジュアルや雰囲気の違いだけでなく、株立ちと単幹では、同じ樹種でも育ち方に違いが出てきます。複数の幹に栄養が分散される株立ちは、上に伸びるスピードが比較的遅く、樹高も単幹より低くなります。ですから、住宅街の庭などで、あまり大きくしたくないけれど、どうしても高木の樹種を植えたい場合などは、株立ちを選ぶことで解決できることもあります。

株立ちの樹木
デッキ空間や2階のベランダなどで洗濯物の目隠し効果を発揮する株立ちの樹木。

また、株立ちは横に広がって育つため、隣家からの視線を遮る目隠しの効果もあります。さらに、株立ちの樹木は屋上ガーデンやベランダガーデンなど、根が張れるスペースが限られている場所にも向いています。単幹は台風などの場合に強い風にあおられ根こそぎ倒れてしまうことがありますが、株立ちは幹の間から風を逃がすことができるので、倒れにくいからです。

一本立ちのシラカバ

一方、単幹はスッキリとした樹姿を生かしてフォーマルな雰囲気をつくることができます。上の写真ではシラカバを小道の両脇に左右対称に植え、ゲートのようにしました。落葉樹なので冬には葉が落ちますが、白い幹肌が際立って美しい風景をつくってくれます。

アベマキとハンモック
アベマキの大木にかけたハンモックがゆったりくつろいだ雰囲気。

また、単幹は使い方次第で庭を実際よりも広く見せることができます。伝統的な庭園の構成には、樹木の足元に「根締め」といって、低木のツツジなどを植えるセオリーがありますが、小さな庭ではそれとは逆に、意識して何も植えずに空白をつくります。この空白のことをエアポケットといいます。あえて何もない余白の空間をつくることで印象を操作し、庭にゆったりとした雰囲気を生み出すことができるのです。ですから株元に植栽をするなら、グラウンドカバー程度にとどめておくといいでしょう。

このように樹種や樹姿の選び方、使い方によって印象操作が可能になり、より魅力的な庭をつくることができます。樹木は一度植えたら変更や移動が難しい植物です。キレイだから、好きだからということはもちろん大事ですが、それに加えて、その場所でのその木の役割を考えてみることも、樹木選びのポイントです。

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