アークトチスは愛らしく華やかな花が魅力! 特徴や育て方のポイント、霜よけ方法もご紹介

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アークトチスは、マーガレットやガーベラに似た花を咲かせる、キク科の草花です。花付きがよく、春から初夏にかけて次々と開花して、ガーデンやベランダに彩りをもたらしてくれます。この記事では、アークトチスの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、種類、詳しい育て方など、掘り下げて解説します。
目次
アークトチスの基本情報

植物名:アークトチス
学名:Arctotis
英名:Arctotis、African daisy
和名:ハゴロモギク(羽衣菊)
その他の名前:アフリカギク、アルクトティス
科名:キク科
属名:アークトチス属
原産地:南アフリカ
形態:宿根草(多年草)
アークトチスはキク科アークトチス属の多年草です。ただし、高温多湿が苦手で日本の暑い夏を乗り切れずに枯死しやすいため、一年草として流通していることが多くなっています。原産地は南アフリカで、約60種以上が確認されています。和名はハゴロモギクで、草丈は20〜70cmほどです。
アークトチスの花や葉の特徴

園芸分類:草花
開花時期:4〜7月
草丈:20〜70cm
耐寒性:普通
耐暑性:やや弱い
花色:オレンジ、黄色、ピンク、白など
開花期は種類によって異なりますが、基本的に4〜7月です。花色はオレンジ、黄色、ピンク、白など。花茎を長く伸ばした頂部に一輪の花を咲かせ、日中に開いて夜には閉じる性質をもっています。細長く放射状に伸びる舌状花と中央の筒状花とがある、マーガレットやガーベラなどに似た花です。葉は種類によって異なり、切り込みが入る楕円形タイプが一般的。茎葉には細かい毛が生えています。
アークトチスの名前の由来や花言葉

アークトチスの名は、ギリシア語で「arktos(熊)」「ous(耳)」、また代表的な種類であるグランディスは「grandis(大きい)」という単語からきており、「大きな熊の耳」を意味します。これは、種子についている毛をイメージしたものとされています。和名の「羽衣菊(ハゴロモギク)」は、天女の羽衣をまとっているような花の美しさを表現して名付けられたようです。
アークトチスの花言葉は「個性豊か」「若き日の思い出」などです。
アークトチスの種類
国内で流通しているアークトチスは、主にグランディスとアカウリスの2種。それぞれの特徴について見ていきましょう。
アークトチス・グランディス

アークトチスとして日本で最初に導入されたのが、グランディスです。花のサイズは6cm前後で存在感があります。白い花色とシルバーの葉は、清楚な印象。草丈は50〜70cmになるので、花壇の中段向きです。
アークトチス・アカウリス

最近では、園芸店でアークトチスというと、アカウリスを指すことが多くなっています。アカウリスはオレンジや黄色などのビビッドカラーのほか、サーモンピンクやクリーム色などのパステルカラーも揃い、品種が多様です。人気の高い草花のため品種改良が進んでおり、キク科ベニジウムと交配して生まれたベニディオ・アークトチスも、近年はアークトチスとして流通しています。さらには違う種同士を掛け合わせた交配種もあり、それらはアークトチス・ヒブリダ(雑種)と呼ばれて分類がややこしくなっているようです。
アークトチスの栽培12カ月カレンダー
開花時期:4〜7月
植え付け・植え替え:11月頃、4〜5月
肥料:4月〜6月中旬
種まき:9月下旬~10月中旬
アークトチスの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】アークトチスは日当たり、風通しのよい場所を好みます。日当たりの悪い場所では、ひょろひょろと徒長した軟弱な株になり、また花つきも悪くなるので注意しましょう。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】水はけのよい環境を好むので、水はけの悪い土壌であれば、軽石や砂を混ぜ込み、10〜20cmくらい土を盛って周囲よりも高くしておくとよいでしょう。
耐寒性・耐暑性
アークトチスの耐寒性はマイナス4℃程度とされ、低温で傷みやすいので、冬越しの際は霜や雪、寒風を避けられる場所で管理するとよいでしょう。また、高温多湿を嫌うので、込み合いすぎているようなら茎葉をすかす切り戻しをして、風通しよく管理します。
アークトチスの育て方のポイント
用土

【地植え】
植え付けの約2週間前に腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕してください。水はけが悪い場合は軽石や砂を混ぜ込み、水はけをよくしましょう。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の草花用培養土を利用すると手軽です。
水やり

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏は、気温が上がっている昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に行うと凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった日中に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。アークトチスは乾燥に強く多湿を嫌う性質です。極端な乾燥は避けますが、乾かし気味に管理しましょう。いつもジメジメとした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬に生育が止まってもカラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。
肥料

【地植え・鉢植えともに】
やせ地でも育ち、肥料が多いとは徒長や立ち枯れの原因になるので、通常の草花よりもやや控えめに与えたほうが姿もよく、立ち枯れにくくなります。ただし、開花期間中は肥料が不足すると花が途切れやすくなるので、必要に応じて肥料を与え、株の勢いを保ちましょう。
注意する病害虫

【病気】
アークトチスに発生しやすい病気は、うどんこ病、灰色かび病などです。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放置するとどんどん広がって光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用する殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほど、かつ多湿の環境下にて発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合っている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。
【害虫】
アークトチスに発生しやすい害虫は、アブラムシ、ハダニなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
ハダニは、葉裏に寄生して吸汁する害虫です。体長は0.5mmほどと大変小さく、黄緑色や茶色い姿をしています。名前に「ダニ」がつきますが、クモの仲間です。高温で乾燥した環境を好み、梅雨明け以降に大発生しやすいので注意が必要。繁殖力が強く、被害が大きくなると、葉にクモの巣のような網が発生することもあります。ハダニは湿気を嫌うため、予防として高温乾燥期に葉裏にスプレーやシャワーなどで水をかけておくとよいでしょう。
アークトチスの詳しい育て方
苗の選び方
アークトチスは、種まきからでも簡単に育てられます。花苗店で苗を購入する際は、節間が短く茎ががっしりと締まった丈夫なものを選びましょう。
種まき

アークトチスは、ビギナーでも種まきから育てやすい花。種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなりますね。
ただし、アークトチスの苗は春から花苗店に出回り始めます。手軽にスタートしたいなら、苗の植え付けからのスタートがおすすめ。1〜2株あれば十分という方は、苗から栽培するとよいでしょう。
アークトチスの発芽適温は20℃前後で、種まき適期は、9月下旬〜10月中旬です。
まず、種まき用のトレイに市販の培養土を入れ、種を数粒ずつ播きます。浅く水を張った容器に入れて底から水を給水します。これはジョウロなどで上から水やりすると水流によって種が流れ出してしまうことがあるからです。発芽までは明るい半日陰で管理し、乾燥しないように適度に底から給水しましょう。
発芽後は日当たりのよい場所に置き、乾燥気味に管理します。勢いがあって元気のよい苗を1本のみ残し、ほかは間引きましょう。ヒョロヒョロと伸びて弱々しい苗や葉が虫に食われている苗、葉が黄色くなっている苗などを選んで間引きます。本葉が2〜3枚ついたら黒ポットに鉢上げして育苗し、十分に育ったら花壇や鉢などの植えたい場所に植え付けます。
植え付け・植え替え

アークトチスの植え付け適期は、種子から育てて育苗した場合は11月頃、花苗店で苗を購入する場合は4〜5月です。植え付け適期でない時期も苗は園芸店などに出回っているので、入手したら早めに植え付けます。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗よりもひと回り大きな穴を掘って植え付けます。複数の苗を植え付ける場合は、30〜40cmほどの間隔を取りましょう。最後に、たっぷりと水やりします。
真夏の暑さに弱い傾向にあるので、夏前に鉢へ植え替えて涼しい場所で管理するとよいでしょう。
【鉢植え】
鉢の大きさは、5〜7号鉢を準備しましょう。
用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。苗を鉢に仮置きし、高さを決めたら、根鉢を軽くほぐして植え付けましょう。水やりの際にすぐあふれ出ないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下を目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して根鉢をくずし、新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢をくずす程度にして植え替えてください。
日常のお手入れ

【花がら摘み】
アークトチスは次から次へと花が咲くので、終わった花は園芸用バサミで切り取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも終わった花を残しておくと、種子をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
夏越し・冬越し

【夏越し】
アークトチスは高温多湿を嫌うため、夏越しの際は可能なかぎり水はけのよい土で風通しよく管理することが大切です。地植えで育てている場合は、鉢に植え替えて、風通しがよく涼しい場所に移動するのも一案です。ただし、真夏の暑さを乗り越えられずに枯死してしまうことが多く、日本では一年草扱いもされることから、一年草と割り切って楽しむのもおすすめです。
【冬越し】
アークトチスは寒さにも弱く、耐寒性はマイナス4℃程度とされていますが、0℃以下では枯死してしまう確率が高まります。冬越しの際は、霜や雪を避け、寒風が当たらない場所で管理します。
寒さ対策や霜よけとして、地植えの場合は株元にバークチップなどをかぶせて凍結を防ぐとよいでしょう。鉢栽培の場合は霜の当たらない軒下などに移動して管理します。品種によっては耐寒性に優れるものと、寒さに弱いものとがあるので、購入の際にラベルをチェックし、適した環境で冬越しさせてください。
増やし方
アークトチスは、種まきや挿し木で増やすことができます。
【種まき】
アークトチスを種まきから増やしたい場合、開花後に種子を採取します。開花期が終わりを迎える頃に花がら摘みをやめ、熟したら種子を採取して密閉容器に入れ、種まき適期まで保管しておきましょう。ただし、交配された園芸品種の場合は、親と同じ性質になるとは限らないことを知っておいてください。流通しているアークトチスはほとんどが交配種で種子が採れないため、挿し芽でないと増殖できません。
種まきの方法については、「種まき」の項目を参照してください。
【挿し芽】
挿し芽とは、茎葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物のなかには挿し芽でができないものもありますが、アークトチスは挿し芽で増やせます。
アークトチスの挿し芽の適期は、6月頃か9月下旬〜10月です。新しく伸びた茎葉を2節以上つけて切り口が斜めになるように切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、水の吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を2〜3枚取ります。黒ポットを用意して新しい培養土を入れ、水を入れて十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて管理します。成長して根が回ってきたら植えたい場所へ定植しましょう。挿し芽のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
アークトチスを咲かせて華やかな庭をつくろう

ビビッド系からパステル系まで、色幅が豊富に揃うアークトチスには、「どんなタイプを育てようかな」という選ぶ楽しみがあります。花のサイズがやや大きめなので、寄せ植えの主役としても活躍。ぜひアークトチスを庭やベランダで育ててみてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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